【珍事】前代未聞「まわし待った」照ノ富士動じず2敗守る 若元春「横綱に“切られた”感じ」

<大相撲名古屋場所>◇8日目◇17日◇ドルフィンズアリーナ
前代未聞の一番を、横綱照ノ富士(30=伊勢ケ浜)が制して2敗を守った。
東前頭4枚目若元春と2分を超える大相撲。若元春のまわしが緩んだことに、立行司の式守伊之助が「まわし待った」をかけ、照ノ富士が力を抜き、土俵を割った。約2分半の協議の結果、まわし待ったがかかった時の体勢から再開。横綱が下手投げで下した。平幕の逸ノ城が敗れ、2敗に7人が並んだ。
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立ち合いから有利な体勢を作ったのは、横綱初挑戦の若元春だった。左四つの膠着(こうちゃく)状態から、若元春が寄ろうと前に出た瞬間だった。若元春のまわしが緩んだのを見て、立行司の式守伊之助が両手を広げて「まわし待った」をかけた。若元春は気付かず前進。照ノ富士はその動きに気付いたようで、力を抜いて土俵を割る。直後に、式守伊之助を指さし、アピールするようなしぐさを見せた。
どよめく館内。審判らの協議は約2分半に及んだ。正面審判長の佐渡ケ嶽審判長(元関脇琴ノ若)は、行司がまわし待ったをかけたため、その体勢から再開するとアナウンス。どの体勢が最適かビデオ室と連絡を取りながら入念に確認。約6分後、土俵中央付近で、再び左四つに組んで勝負再開。照ノ富士が下手投げで、力強く転がした。
取組後、照ノ富士はリモート取材に応じなかったが、初金星を逃した若元春は「(まわし待ったは)全然分からなかった。体が離れた時、横綱が不思議そうな顔をしていて、何かあったのかなと気づいた。出し切って横綱に“切られた”感じ。頭の中は真っ白」と、けなげに話した。前代未聞の一番。最後は横綱が意地を見せ、トップタイとなる2敗を守った。
- 式守伊之助が「まわし待った」を掛けて取組を止めようとしたが若元春(右)が取組を続けたため、力を抜いた照ノ富士が土俵の外へ押し出される(撮影・小沢裕)
- 若元春と照ノ富士の一番で物言いが付き協議する審判団(撮影・小沢裕)
- 佐渡ケ嶽審判長(右)の見つめる中、組み直す若元春と照ノ富士(撮影・森本幸一)
- 再開後、若元春を下手投げで破る照ノ富士(右)(撮影・森本幸一)