【若乃花の目】カーッとなってしまった阿武咲、一枚上手だった貴景勝 ともに出した張り手で明暗

<大相撲初場所>◇13日目◇20日◇東京・両国国技館
「1人大関」貴景勝が意地を発揮した。単独トップに立った阿武咲との直接対決。立ち合いから気迫を込めた押し相撲で圧倒した貴景勝が押し出しで勝利した。
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お互いに力を出し尽くした、熱のこもった結びの一番でした。勝負を分けたのは、ともに出した張り手の意味にあります。貴景勝はいつも通り遠慮なく張りました。何を言われようと貴景勝には、あの張り手が必要なんだと思います。その貴景勝の張り手に対し、阿武咲が右から張り返したのは、ついカーッとなってしまってのものです。冷静に取ろうと阿武咲は自分に言い聞かせていたと思うし実際に冷静でした。それが、あの1発で全てが変わりました。張ったことで上体が上がり、そこをつけ込まれました。どちらが押し勝つか、と同時にどちらが冷静になれるかが明暗を分けました。ここは優勝争いを何度も経験している貴景勝が一枚上手でした。
これで琴勝峰を含めた3人が3敗でトップに並びました。琴勝峰は阿炎相手に突っ張りで応戦しました。無理にまわしを取りに行くとヒラリとかわされます。そこを腰を引かず怖がらないで突き返したのが勝因です。今場所はこの怖がらずに攻める姿勢が光ります。阿武咲も琴勝峰も三役や平幕上位から1度、ケガなどで落ちても、焦らず自分の足りないものは何かを学んで今を迎えています。そんな力士が優勝争いをしているのもいいことです。あとは個人的に11勝4敗の優勝は避けてほしいので、この3人の誰かが連勝して賜杯を抱いてほしいと願います。(日刊スポーツ評論家)
- 阿武咲(右)の攻めを耐える貴景勝(撮影・鈴木正人)
- 貴景勝(右)は押し出しで阿武咲を破る(撮影・小沢裕)
- 阿武咲を押し出しで破った貴景勝(撮影・鈴木正人)
- 貴景勝に押し出しで敗れ土俵を引き揚げる阿武咲(撮影・鈴木正人)
- 鼻血を流しながら懸賞金を手にする貴景勝(撮影・小沢裕)