偉業昇進落合が果たした誓い 元白鵬の宮城野親方「これ以上のプレゼントない」まげ姿で会見同席

相撲界に現れた令和の怪物が、昭和以降初となる偉業を成し遂げた。日本相撲協会は25日、春場所(3月12日初日、エディオンアリーナ大阪)の番付編成会議を行い、初場所で幕下15枚目格付け出しデビューした落合(19=宮城野)の新十両昇進を決めた。落合は、師匠の宮城野親方(元横綱白鵬)とともに会見に臨み、「幕内で優勝して師匠を泣かせたい」「横綱になるという夢をかなえたい」と目標を掲げた。
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新十両会見に同席した元横綱白鵬の宮城野親方が「100点満点」と目を細めた。落合が将来について「横綱になりたい」と話すと、同親方は「もう1つ夢があったでしょ。最初から」と笑顔で促した。19歳が「幕内で優勝して師匠を泣かせたい」。そう宣言すると大横綱はうなずいた。
昭和以降で初となる所要1場所での十両昇進。落合は「自分自身も1場所で上がれると思ってなかった。すごくうれしい気持ちと感謝の気持ち。身の引き締まる思いになりました」と素直に喜んだ。実は28日の引退相撲を控える宮城野親方から、まげのあるうちに会見をしたいと場所前に言われていたという。落合は「心の中で優勝して記者会見したいと強く思っていた。実現できてすごく光栄」。昨年7月の部屋継承後、初の関取誕生となった同親方は「これ以上のプレゼントはない。落合とともに一生懸命頑張り、横綱を目指していきたい」と意欲を語った。
アマチュア時代から、その実力はトップクラス。鳥取城北高時代には20年度、21年度と2年連続で高校横綱に輝いた。卒業後に父の会社である「有限会社野田組」に所属し、昨年9月の全日本実業団選手権に優勝したことで幕下15枚目格付け出し資格を得た。デビュー場所となった初場所は7戦全勝優勝。幕下15枚目以内の7戦全勝は十両昇進の対象となるが、15枚目格付け出しは06年夏場所に日大出身の下田が見送られた例がある。落合は「春場所で関取を目指す気持ちだった」と驚く。しこ名は当面、本名のままで、宮城野親方は「じっくり考えて、皆さんが『おー』となるようなしこ名を付けたい」と予告した。
晴れて関取の仲間入りを果たしたが、まだ19歳。丸刈りに少し毛が伸びた程度でまげはもちろん、十両以上が結う大銀杏(おおいちょう)を結うことすらまだ先になりそうだ。相撲教習所に通いながら来場所に向けて準備する。宮城野親方は「組んでもよし、離れてもよしの相撲ではありますが、修正しなくちゃいけないところもある。左四つの型をもう少し自分のものにして、その型をベースに押したり、突いたり、投げたり。型に入った瞬間に会場から拍手を受けるような、そういう関取になってもらえたら」とさらなる飛躍を求めた。【平山連】
■空き「4枠」追い風
下田の例があり、編成を担う日本相撲協会審判部の判断が注目されていた。協会には「幕下15枚目以内の全勝者は十両昇進の対象にする。ただし、無条件に昇進させるものではなく、その時の状況による」との内規がある。審判部のある親方は「前例も踏まえて議論した。落合には権利があったということ。15枚目であって16枚目ではない」との認識を示した。下田は入れ替えが2枠しかなく見送られたが、落合は昇進対象4番手とみられながら4枠あったことでチャンスをつかんだ。
◆幕下15枚目格付け出し 「付け出し」は学生、アマ時代に実績を残した力士が入門する際、デビューする地位を優遇する制度で、幕下15枚目格は過去に19人。条件は全日本選手権、全国学生選手権、全日本実業団選手権、国体(成年男子)のいずれかでの優勝。落合は全日本実業団選手権を制した。デビュー場所を7戦全勝で優勝したのは過去に日大出身で06年夏場所の下田(のち若圭翔=追手風)。翌場所は西筆頭に据え置かれて2勝5敗と負け越した。結局、関取には上がれず、16年春場所を最後に引退した。
- 新十両会見で笑顔を見せる落合(左)と宮城野親方(日本相撲協会提供)
- 新十両会見に臨んだ落合(日本相撲協会提供)
- 新十両会見で笑みをこぼす落合(日本相撲協会提供)
- 初場所 幕下上位の勝ち越し
- 大相撲の番付