朝乃山、地元富山に3年ぶり凱旋 封印していた“てっぺん”横綱への思いを漏らす

1月の大相撲初場所で十両優勝した大関経験者の朝乃山(28=高砂)が、3年ぶりに地元富山に凱旋(がいせん)した。
12日、富山市内で行われた朝乃山富山後援会主催の「新年激励会」に出席。富山県内で公の場に姿を見せるのは、同後援会が20年2月に開いたパーティー以来だった。
壇上では少し緊張した表情で「初場所では、日ごろの皆さまの応援のおかげで十両優勝することができました。ありがとうございました。自分はこの結果に満足していないですし、通過点だと思っています。番付には、まだ上がありますので、そこを目標に、しっかりと稽古に精進して、皆さまの期待に応えられるように頑張っていきます」などとあいさつし、大きな拍手で迎えられた。
激励会に先立って報道陣に取材対応した際には、1年間の出場停止明け後は、封印していた横綱への思いを、ついに口に出した。地元メディアから、地元ファンにどう恩返ししていきたいか問われた時だった。
朝乃山 「元の番付に戻りたいですし、1番の恩返しは“てっぺん”になることだと思う。そこを目指すには、まず三役を目指していかないといけない。三役に早く上がりたいです」。
普段、相撲取材をしているわけではない地元メディアだけに「てっぺんとは幕内優勝のことか?」と確認された。すると「横綱です」と即答した。大関時代は「まだ上の番付がある」などと、横綱を意識した発言もあった。だが、新型コロナウイルス対応ガイドラインに違反したとして、6場所の出場停止処分が出て以降、横綱を目指したい思いは、胸の内に秘めていた。それが、地元の後押しを目の当たりにして、あふれる思いがこぼれ出た。
この冬、富山市は珍しく雪が少なく、町にも積雪は、日陰の道端に少し見かける程度しかない。それでも11日に故郷に帰り「無事に帰ってこれたことがうれしいですし、今も拍手していただいたことがうれしい。少し緊張します」と、富山の県民性を象徴するように、まじめに話した。富山でやりたいことを問われると「おいしいご飯を食べたい」と、照れ笑いを浮かべた。まだ実家に寄ることはできておらず、21年8月に亡くなった父の石橋靖さんの仏壇に、手を合わせることができておらず「時間を見て実家に帰って。父に手を合わせに行きたい」と話した。
3月1日には29歳の誕生日を迎えるが「28歳という年は悪い年でした。でも、まだ29歳なので、まだまだ若い子に負けないように、いい年にしていきたい」と、力を込めた。「1度、期待を裏切ったので、もう1度、応援されるような力士を目指していきたい。やるべきことは変わらない。また上を目指していきたいです」。地元で活力を得た朝乃山は、いっそうの飛躍を誓っていた。
- 3年ぶりに富山県内で開催された後援会パーティー「新年激励会」に出席し、乾杯する朝乃山(手前右から2人目)。手前右端は高砂親方、同右から3人目は若松親方
- 3年ぶりに富山県内で開催された後援会パーティー「新年激励会」の前に、大勢の地元メディアに囲まれて取材を受ける朝乃山