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井上尚弥、6月防衛戦に自信「この先に4団体の王座統一がある」

2本のベルトを手にするWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(提供:WOWOW)

ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)が6月19日(日本時間20日)、米ラスベガスでIBF同級1位マイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)との防衛戦(WBA5度目、IBF3度目)に臨む。

昨年10月のジェーソン・モロニー(オーストラリア)戦に続く「聖地」ラスベガスの次期防衛戦はWOWOWで生中継されることが14日、発表された。このほどWOWOWのインタビューに応じ「この試合の先に4団体の王座統一があると思っているので高いモチベーションを持って戦える。いまは右でも左でもパンチが当たれば倒せる感覚がある」と自信をみせた。主な一問一答は次の通り。

◇  ◇  ◇  ◇

-モロニー戦から約8カ月ぶりのリング

井上 ケガで試合ができなかった(14年12月の)オマール・ナルバエス戦後の1年は長く感じたけれど、今回はずっとトレーニングはできているので割と早いなという感じですね。

-WBO王者ジョンリール・カシメロ(フィリピン)がメディアを通じて挑発的だが

井上 気にはなるけれどダスマリナスとの試合が決まっているので、いまはカシメロのことは考えていません。僕は4団体の王座を統一したいのであって、カシメロに興味があるわけではないので。でも、タイミングが合えば決着をつけるときが来ると思うので、そのときはパンチを当てさせずにフィニッシュに持っていきたいと思っています。

-今回はモロニー戦と同じラスベガスでの試合ですが、前回は無観客、今度は観客を入れての試合になりそうです

井上 そこがイメージできないんですよね。日本とラスベガスでどんな盛り上がりの違いがあるんだろうって。お客さんの熱によって自分のテンションの上がり方が変わってくるので、そのあたりが未知といえば未知です。

-初めて世界王座を獲得してから7年が経過

井上 あっという間といえばあっという間だけれど、じゃあこの7年間で何ができたのかと考えると物足りなさが残りますね。特にスーパーフライ級時代には7回防衛したけれど、納得できるような感じがないんです。

-バンタム級ではイメージ通り

井上 いや、イメージしていた以上です。バンタム級での初戦が(WBA正規王者)ジェイミー・マクドネルで、次がWBSSの初戦で(元WBAスーパー王者)ファン・カルロス・パヤノ。(IBF王者)エマヌエル・ロドリゲス、(4階級制覇王者)ノニト・ドネア、そして(WBA2位、IBF4位)モロニーと、スーパーフライ級時代と比べるとすごく充実しています。

-現在はウエートもバンタム級がもっともフィット

井上 そうですね、一番フィットしていると思います。でも少しずつ体重がきつくなってきているのも事実なので、今年、来年と様子を見ながら遠からずスーパーバンタム級に上げる日が来るかも。ただ、無理して階級を上げようとは思いません。(体重が)適正じゃないと意味がないと思っているので。

-この7年で成長したと感じる部分はどこか

井上 精神的にもそうですが、自分が試合でやらなくちゃいけない技術であったりメンタルの持っていき方であったり、そういう点が少しずつ成長してきて、それが今の階級で生きてきているのかなと思います。

-IBFの指名試合となるダスマリナス戦ではなく、王座返上で他相手との対戦は考えたのか

井上 4団体の王座を統一してバンタム級で一番強いということを証明したいので、この試合をクリアして統一戦に臨みます。

-ダスマリナスの印象は

井上 ひょろひょろと背が高くてリーチがあり、右フックを大きく振ってくる選手ですね。もっと攻撃的でゴリゴリと前に出てくるのかと勝手に思っていたけれど、弟(井上拓真)とのスパーリングや木村(隼人)選手との試合の映像を見る限り、意外と足を使ったりして動く選手だなという印象です。

-捕まえにくいタイプか

井上 来るときは来るので、そういうときにはカウンターが生きると思います。モロニーと比べると穴があるので、(どんな選手か)感覚としてはとらえています。

-ダスマリナスはIBF1位です

井上 ポイントはそこではなく、今回は次の統一戦に向けたステップの試合という位置づけですね。これをクリアすれば統一戦が組まれると思うので、かなりモチベーションは高いですよ。

-今回の注意点は

井上 ダスマリナスはパンチと一緒に頭を前に出してくるので、そこは注意しないと。パンチでは右フックですかね。角度が大きく、外から来るので。

-過去にナルバエス、パヤノと2度、サウスポーと対戦。早い回で倒したが

井上 (サウスポーは)やりにくくはないですね。アマチュア時代から苦手ではないです。ただ、ナルバエスやパヤノと違って今回の相手は長身のサウスポー。その点が初めてなので戦うのが楽しみですね。

-右構えとサウスポーでは戦い方が変わるのか

井上 サウスポーとの試合で気をつけなくちゃいけないのは相手の左ストレートなんです。特に上下に散らされると見えない角度で来ることがあるので。でも、サウスポーとの戦いは、前に出ている互いの手と足が当たるので駆け引きがしやすいんです。右構え同士の場合は左ジャブの差し合いがせわしないけれど、サウスポーとの戦いは左手で相手の右を押さえてしまえばいいので自分にとっては楽ですね。

-プロ20戦のうちフィリピン人と4度対戦済み

井上 4人ですか? デビュー戦と東洋太平洋タイトルを獲得した試合、それにワルリト・パレナス、ドネア…本当だ。でも4人には同じような特徴は感じませんね。スパーリングパートナーとして来てもらっていたフィリピン選手は、いかにもフィリピン選手独特という特徴があったけれど、そういう選手と試合はしたことがなかったんです。そういう意味ではダスマリナスはフィリピンのボクサー特有の選手かも。パンチの出し方、角度など独特ですから。初めて戦うタイプなので対戦が楽しみですね。KO率も高い(約61%)ですよね。

-どんな展開をイメージ

井上 僕が追いかける展開になると思います。

-早い決着も想像

井上 いや、早くないです(笑い)。長丁場も考えています。ともかくアグレッシブな試合をして、自分が納得できる試合をしたいですね。

-今回自らに課すノルマは

井上 判定まで行っちゃダメだなと。でも、そうすると自分でハードルを上げることになっちゃう(笑い)。今回は内容が問われる試合だから一方的な内容じゃないと次につながらないので、タイミングが合えば倒したいですね。

-その先、1年後の自分をイメージできるか

井上 タイトルを統一していたい…ですね。12月には3団体、そしてタイミングが合えば来年4月あたりに4団体統一。それがちょうど1年後ですね。

-最後に意気込み

井上 次の統一戦に向けて今回はしっかり結果を出さないといけないと思っています。いまは右でも左でもパンチが当たれば倒せる感覚があるので、相手に何もさせずに勝つだけです。

◆井上尚弥-マイケル・ダスマリナス戦放送=6月20日午前10時30分からWOWOWプライムで生中継

6・19ラスベガス防衛戦のWOWOW生中継が決まったWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(提供:WOWOW)

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井上拓真が東洋王座返上「世界戦の準備」大橋会長

井上拓真(2021年1月14日撮影)

ボクシングの元WBC世界バンタム級暫定王者で現東洋太平洋同級王者の井上拓真(25=大橋)が同王座を返上すると27日、発表された。井上は今年1月に栗原慶太(28=一力)を9回負傷判定で下し、新王者となり東洋太平洋王座の2階級制覇に成功していた。所属ジムの大橋秀行会長(56)は「拓真の世界戦準備のための返上になります」と説明した。

また空位となった同王座は5月13日、東京・後楽園ホールで開催されるフェニックスバトル(日刊スポーツ新聞社後援)で同級4位中嶋一輝(27=大橋)-同級12位千葉開(28=横浜光)による決定戦が開催されることも合わせて発表された。

5月に東洋太平洋バンタム級王座決定戦に臨む同級4位中嶋一輝(提供:大橋ジム)

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井上拓真が異例の早期スパー「鉄は熱いうちに」父

同門の松本亮(右)と4回のスパーリングに臨んだ井上拓真

ボクシングの元WBC世界バンタム級暫定王者井上拓真(25=大橋)が年内の世界王座返り咲きを見据え、早くもスパーリングを開始した。

14日に東洋太平洋同級王者栗原慶太(28=一力)に挑戦し、9回負傷判定勝ちを収めた井上は26日、神奈川の所属ジムで同門の元東洋太平洋スーパーフライ級王者松本亮(27)と4回のスパーリングを消化。試合から12日後で本格的な実戦トレに入った。

3日間休んだ後、既に18日からロードワークなどで体を動かしていたという井上は「試合のダメージは何もないし、(父)真吾トレーナーと相談してスパーリングを始めると決めました。1つ1つ、父も納得するような内容をみせていきたい」と充実した笑み。真吾トレーナーも「鉄は熱いうちにうて、の通り、良いイメージを継続するためにのスパーリング。良い内容だった」と合格点を出した。異例の早期スパーリング開始に大橋秀行会長も「恐るべき向上心です」と驚いていた。

19年11月、WBC世界同級正規王者ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)との王座統一戦に判定負けし、1年2カ月が経過。WBAスーパー・IBF世界同級王者の兄尚弥(27=大橋)と同じ時間帯で練習しており「年内には世界王座に再挑戦したい」と兄弟世界王者復活を目標に掲げている。その決意の表れとも言える早期スパーリング開始。「もう相手に付き合って打ち合ったりするのではなく、自分が思い描く試合、ボクシングスタイルをしていきたい」とイメージしながら、スパーリングを継続していく。

松本亮(左)とのスパーリングを消化した井上拓真

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井上拓真が結婚&第1子誕生をW報告 高校同級生と

井上拓真(2021年1月14日撮影)

ボクシングのWBC世界バンタム級暫定王者井上拓真(25=大橋)が16日、結婚と第1子(女児)の誕生をダブル報告した。

所属ジムと所属事務所のホリプロを通じ「昨年春にアマチュア時代からずっと支えてくれた高校時代の同級生と入籍しました。そして秋には待望の長女が生まれました」などとコメント。

8年の交際を経てのゴールインとなった。なおWBAスーパー・IBF世界同級王者の兄尚弥(27=大橋)は7年の交際を実らせ、15年に咲弥夫人と結婚している。

19年11月にWBC世界同級王座統一戦に敗れた井上は14日、約1年2カ月ぶりの再起戦に臨み、東洋太平洋同級王者栗原慶太(一力)に挑戦。9回負傷判定勝利を挙げ、スーパーフライ級に続く東洋太平洋2階級制覇を成し遂げた。

「今回の試合は家庭を持って臨む初めての一戦でした。妻と娘の存在は、これまでと比べものにならないくらいの原動力を僕に与えてくれました。これからも1人の男として夫として父として、より一層ボクシングと向き合い、目標に向かってまい進してまいります」と決意を示した。

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井上尚弥「これが拓真の強さ」2階級制覇弟に合格点

3回、パンチを放つ井上(左)。右は栗原(撮影・横山健太)

<プロボクシング:東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇14日◇東京・後楽園ホール◇日刊スポーツ新聞社後援

東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ12回戦(日刊スポーツ新聞社後援)は14日、東京・後楽園ホールで開かれ、元WBC同級暫定王者で挑戦者の井上拓真(25=大橋)がスーパーフライ級に続き、東洋太平洋2階級制覇を成し遂げた。

19年11月、WBC世界同級正規王者ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)との王座統一戦に判定負けして以来1年2カ月ぶりの再起戦で、王者栗原慶太(28=一力)に挑戦。左フックでリズムをつかみ、ワンツー、右アッパーも的確にヒットさせた。栗原の1回のバッティングによる左目上カットの影響で9回にレフェリーストップ。井上が同回2分25秒、3-0の負傷判定勝ちを収めた。

「REBORN」をテーマに掲げ、最大9ポイント差をつけて判定勝ちし「相手の土俵にいかず、自分のボクシングができた。生まれ変われたと思う。もう悔しい思いはしたくない。また兄弟世界王者を目指したい」と納得の笑み。コロナ禍で外国人パートナーが呼べない中、練習相手を買って出た2団体統一同級王者の兄尚弥(27=大橋)も応援に駆けつけ「パーフェクトゲーム。これが井上拓真の強さ。倒すまでの流れをつかめばもっと伸びる」と合格点を出していた。【藤中栄二】

5回、右ストレートを放つ井上(撮影・横山健太)
OPBF東洋太平洋バンタム級新王者となった井上(撮影・横山健太)
リングサイドから観戦する井上尚(撮影・横山健太)

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井上尚弥「パーフェクトゲーム」弟拓真が再起戦勝利

5回、右ストレートを放つ井上(撮影・横山健太)

<プロボクシング:東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇14日◇東京・後楽園ホール◇日刊スポーツ新聞社後援

元WBC世界同級王者で挑戦者の井上拓真(25=大橋)がスーパーフライ級に続き、東洋太平洋2階級制覇を達成した。

19年11月、WBC世界同級正規王者ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)との王座統一戦に判定負けして以来の再起戦で、同級王者栗原慶太(28=一力)に挑戦。体格で上回る王者に対し、スピードで対抗してポイントでリードし、9回にバッティングで左目上をカットした栗原の出血のためにレフェリーストップ。2分25秒、3-0の負傷判定勝利で新王者となった。

リングサイドで観戦したWBAスーパー・IBF世界同級王者の兄尚弥(27=大橋)は「1年2カ月ぶりの再起戦で、栗原選手との対戦でしたので、不安な気持ちもありましたが、結果はパーフェクトゲーム。拓真は拓真のボクシング。これが井上拓真の強さ。あとは倒すまでの流れをつかめばもっと伸びる。兄弟での世界王者目指して頑張っていきます」と所属ジムを通じてコメントした。

リングサイドから観戦する井上尚(撮影・横山健太)
OPBF東洋太平洋バンタム級新王者となり声援に応える井上(撮影・横山健太)

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井上拓真「兄弟世界王者を」尚弥との絆で2階級制覇

1回、パンチをヒットさせる井上(左)(撮影・横山健太)

<プロボクシング:東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇14日◇東京・後楽園ホール◇日刊スポーツ新聞社後援

元WBC世界同級王者で挑戦者の井上拓真(25=大橋)がスーパーフライ級に続き、東洋太平洋2階級制覇を達成した。

19年11月、WBC世界同級正規王者ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)との王座統一戦に判定負けして以来の再起戦として、同級王者栗原慶太(28=一力)に挑戦。体格で上回る王者に対し、スピードで対抗。序盤から左フックをヒットさせ、リズムをつかんだ。

1回に偶然のバッティングで左目上をカットした栗原の出血がひどくなり、9回途中でレフェリーストップ。井上が9回2分25秒、3-0の負傷判定勝利となった。

井上は「再起戦ということ、再起戦にして東洋太平洋王座に挑戦できたことを感謝しています。1年2カ月のブランクが空いたにしろ、少しでも自分のボクシングが出せて良かった。相手の土俵に付き合わないで自分のボクシングに徹する。それが少しでも出せたかなと思う」と納得の笑みを浮かべた。

新型コロナウイルスの影響で外国人の練習パートナーを呼べないこともあり、昨年11月に米ラスベガスで防衛に成功したWBAスーパー・IBF世界同級王者の兄尚弥(27=大橋)とのスパーリングなどで調整。兄弟の絆を深めつつ臨んだ1年2カ月ぶりのリングだった。井上は「前回の世界統一戦で負けて悔しい思いをした。また世界に向けてということで負けたくなかった。ここからまたスタート地点に立てた。兄に少しでも近づけるよう、兄弟世界王者を目指したい」と決意を新たにしていた。

リングサイドから観戦する井上尚(撮影・横山健太)
試合に勝利した弟・拓真(右)とタッチをかわす井上尚(撮影・横山健太)

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栗原慶太「KO狙う」井上拓真とのV2防衛戦に自信

前日計量をパスした東洋太平洋バンタム級王者栗原(左)と挑戦者で元WBC世界同級暫定王者の井上(提供:大橋ジム)

ボクシングの東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ12回戦(日刊スポーツ新聞社後援)は14日、東京・後楽園ホールで開催される。

同級王者栗原慶太(28=一力)は、元WBC世界同級暫定王者井上拓真(25=大橋)を迎え、2度目の防衛戦に臨む。13日に都内で前日計量に出席。リミット53・5キロでパスした挑戦者に対し、100グラム少ない53・4キロでクリアした王者にとって19年11月以来のリングとなる。

昨年9月に同カードが発表された後から反響も大きかったといい「国内バンタム級でNo.1で実力があるのは分かっている。元世界王者なので相手が格上。僕がどこまで通用するか。勝つつもりですが、挑戦でもある」と敬意を表しつつ、2度目の防衛成功への自信をのぞかせた。

新型コロナウイルス対策のため、試合2日前からホテル宿泊となるものの、減量も順調に終えて1発クリア。部屋では、最近手に入れたという2020年版スポーツ栄養学最新理論(寺田新・編著)を読みながら心身を整えている。15勝のうち13KOというハードなパンチ力を持つ栗原は「毎試合、万全に仕上げて勝つ気持ちしかない。KOは狙っていますし、何回でも、12回でも、僕が倒して勝てばいいことなので」と手応えを口にした。

前日計量をクリアした東洋太平洋バンタム級王者栗原(提供:大橋ジム)
2度目の防衛戦に備え、オンラインで取材に対応した東洋太平洋バンタム級王者栗原慶太

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井上拓真が前日計量をクリア「バッチリ整っている」

1年2カ月ぶりの再起戦を控える元WBC世界バンタム級暫定王者井上(提供:大橋ジム)

ボクシングの東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ12回戦(日刊スポーツ新聞社後援)は14日、東京・後楽園ホールで開催される。元WBC世界同級暫定王者井上拓真(25=大橋)が約1年2カ月のリングで、王者栗原慶太(28=一力)に挑戦する。13日には都内で開かれた前日計量に出席。53・4キロでパスした王者に対し、リミットの53・5キロでクリアし「コンディションはバッチリ整っている。また世界に向けての通過点になる試合」と静かに燃えた。スーパーフライ級に続く東洋太平洋2階級制覇をステップに世界王座への返り咲きを見据えた。

19年11月、WBC世界同級正規王者ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)との王座統一戦に判定負けして以来の再起戦となる。昨年11月に米ラスベガスで防衛に成功したWBAスーパー・IBF世界同級王者の兄尚弥(27=大橋)や元世界3階級制覇王者の田中恒成(25=畑中)ともスパーリングを消化。1年以上のブランク期間でフィジカル面、ディフェンスなどの技術のトータルでレベルアップできた手応えがある。

年内の世界王座返り咲きを目指しており、WBC王者ウバーリへのリベンジにも胸の内に秘める。兄尚弥からも細かいアドバイスをもらっているという井上は「ナオからは良い助言をもらっている。(世界挑戦)チャンスがあれば、いつでも」と気合十分だった。

前日計量をパスした東洋太平洋バンタム級王者栗原(左)と挑戦者で元WBC世界同級暫定王者の井上(提供:大橋ジム)

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ボクシング1都3県は自粛推奨 開催なら8時終了へ

ボクシングの興行は条件付きで開催続行となった。日本ボクシングコミッション(JBC)と日本プロボクシング協会は8日、新型コロナウイルス対策連絡協議会を開催。緊急事態宣言の1都3県について、興行自粛を推奨するものの、開催には医療体制確保を前提に午後8時終了をメドとすると決めた。

会議では中止の意見が多かったが、前回宣言時と違ってイベント中止要請はなかった。JBC安河内事務局長は「経験と知見を積み上げ、会場での感染、クラスターの発生はなかった」。日本協会新田事務局長も「自負と実績がある」と開催続行を判断した。

今後は救急時などの医療体制が確保できない可能性もある。安河内事務局長は「当日確保できずに中止もありえる。プロモーターの負担が大きいことから、自粛を推奨とした」と説明した。

他競技に比べると厳しい姿勢と言える。安河内事務局長は「コンタクトスポーツで感染の可能性は高い。屋内競技という特性もある。ボクシング界の医療機関の負担を考える意識も高い」と付け加えた。

移動が感染要因の一つから、1都3県外から出場選手の試合キャンセル希望には即時対応する。実際に鹿児島の選手から申し出があったという。入場券の販売も制限する方向となった。

宣言期間内に東京・後楽園ホールでは、タイトル戦4試合を含めて7興行が予定されている。今年は14日の東洋太平洋バンタム級王座戦が最初の興行となる。王者栗原慶太(27=一力)に元世界王者井上拓真(25=大橋)が挑戦する注目カード。興行の開始時間を早めて開催する。前回宣言時はジム運営も自粛したが、指針として午後8時で営業終了を示した。

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田中恒成「2個弱点がある」王者井岡一翔を攻略へ

リモートで練習を公開した田中恒成(C)畑中ボクシングジムAndre

世界最速16戦目での4階級制覇を狙うWBO世界スーパーフライ級1位の田中恒成(25=畑中)が、王者の2つの弱点を攻略する。大みそかの同級王者井岡一翔(31=Ambition)への挑戦に向けて18日、リモートで名古屋市内のジムから練習を公開した。

元世界王者の畑中清詞会長(53)は、前日17日に2年前の大みそかに井岡を2-1判定で下し、4階級制覇を成し遂げたドニー・ニエテス(38=フィリピン)から約1時間の“電話取材”で情報を入手したと明かした。その内容は「教えることはできません」としたが、田中は「(井岡には)2個弱点がある。具体的に? 2個です」と言った。

「弱点」の具体的な内容は明かさずも、イメージはできあがっている。「しっかり対策を練れてやれている。いろんなパターンを想定しながらやってます。今回は本当に自信あります。最後の1秒まで倒しにいきます」と力強い。

11月に約2週間、スパーリング修行で関東遠征を行った。“モンスター”井上尚弥の弟で、元WBC世界バンタム級暫定王者井上拓真(大橋)とも拳をまじえた。「世代交代をしたいと言っているタイミングで同世代とスパーして、あらためて俺らの世代は強いと実感できた。いい練習になりました」。技術的な吸収に加え、メンタル面でも大きな刺激を受けた。

「過去最高に順調です」。実績的に、日本選手同士の過去最高峰ともいえる決戦。新型コロナウイルスに苦しんだ20年最後に、田中が世代交代を遂げる。【実藤健一】

○…田中陣営は見えない敵「コロナ対策」も徹底してきた。畑中会長は、先月20日から田中以外のジム生の出入りを禁じ「恒成ジムにしました」。田中も父の斉トレーナーと自宅-ジムの往復だけ。換気や消毒などあらゆる対策を施した畑中会長は「ジムが一番、安全な場所です」と誇った。

リモートで練習を公開した田中恒成(C)畑中ボクシングジムAndre

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田中恒成「過去最高に順調」世界最速4階級制覇へ

オンラインで取材に応じる田中恒成(C)畑中ジム

世界最速16戦目での4階級制覇を狙うWBO世界スーパーフライ級1位の田中恒成(25=畑中)が18日、リモートで名古屋市内のジムから練習を公開した。

同級王者で日本選手初の4階級制覇を成し遂げた井岡一翔(31)に12月31日、東京・大田区総合体育館で挑む。田中は現状を「過去最高に順調です」と話し、「強い選手とスパー(リング)して、いい感じできている。手ごたえもあるし、メンタルも負けていない」と自信を示した。

11月に約2週間、関東遠征でスパーリングを積んだ。“モンスター”井上尚弥の弟で、元WBC世界バンタム級暫定王者井上拓真(大橋)とも拳をまじえた。「世代交代をしたいと言っているタイミングで同世代とスパーして、あらためて俺らの世代は強いと実感できた。いい練習になりました」と話した。

1月末にフライ級のベルトを返上。4階級制覇へ前哨戦をはさむ予定がコロナ禍で狂った。階級を上げた初戦が大舞台となるが、田中に不安はかけらもない。「今回は本当に自信あります。最後の1秒まで倒しにいきます」と今年最後の大一番へ、気合をみなぎらせた。

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新王者中谷「親孝行できた」店たたみサポートに感謝

8回KO勝ちでWBOフライ級新王者となり、トロフィーを手に笑顔を見せる中谷(代表撮影)

<プロボクシング:WBO世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇6日◇東京・後楽園ホール

待ちに待った鬱憤(うっぷん)爆発KOで世界奪取だ。WBO世界フライ級3位中谷潤人(22=M・T)が2度延期の末の世界初挑戦。同級1位ジーメル・マグラモ(26=フィリピン)を接近戦でも手数で圧倒した。8回に左でロープに吹っ飛ばし、2分10秒KOで仕留めた。

コロナ禍で外国選手を招いた国内初の世界戦。中1で世界を目指し、中卒で単身米国修業を経験した末にデビュー21連勝(16KO)で夢を結実させた。2年ぶりの新王者誕生で、国内男子の現役世界王者は7人となった。

   ◇   ◇   ◇

世界戦発表から266日。中谷は散々振り回されたコロナも相手も吹っ飛ばした。KO負けのなかった相手に10カウントを聞かせた。新王者誕生の熱気は控えめも、期待に応えたホープは大きな拍手に包まれた。リングサイドの家族に「ありがとう」と右拳を突き上げる。涙する母府見子さんの姿に「親孝行できた」と実感した。

初回に左ストレートをさく裂させた。「いいパンチを効かせて組み立てやすかった」とペースをつかむ。2回から接近戦も500回を越すスパーで徹底した対策が実る。手数で弱らせ、押し返した。「スタミナも精神的にも弱っているのが分かった」。

7回には「セコンドからしっかり仕留めろ」とKO指令が出た。得意の距離ある戦いに戻し、変化をつけての仕上げ。8回に頭からきたマグラモを左アッパーで起こしてのフィニッシュ。ダウンする相手に「終わったな」と確信した。

2月に待望の世界初挑戦が決まった。3月の米国キャンプ中に4月開催は延期となった。8月開催を再発表も再延期。この間に水面下でも3度日程調整したが、断念せざるを得なかった。走り込みには3度も行った。実質5度延期を乗り越えての試合だった。

15年に家族は三重・東員町から神奈川・相模原市に引っ越し、お好み焼き店をたたんでまでのサポート。昨年8月にはトンテキ名物の「とん丸」を開店し、再び家族で切り盛りも5月に閉店へ追い込まれた。「たくさん試練があったが、結果を出せてホッとした。反省もあるが王者になったので100点」と笑みを見せた。

中1でボクシングを始めると、父澄人さんが店の隣に練習場を作った。ある時、父が開店前に「縄跳びでも」と言ったきり、お客さんが来て忘れていた。1時間半後に気がつくとまだ跳んでいたという。「フライ級の世界王者になる」と書いた張り紙を見ながら。

その夢は実現した。テレビ解説したお手本の元世界王者山中慎介氏と同日奪取。「山中さんのように長く防衛し、統一戦やビッグファイトもやりたい。目標になる王者になりたい」。若き王者はさらなる飛躍を期した。【河合香】

▽中谷の父澄人さん 世界戦の舞台に立てたことだけでもうれしかった。1回で勝ったと思った。KOした瞬間は鳥肌が立った。

◆中谷潤人(なかたに・じゅんと)

・礼儀の空手 1998年(平10)1月2日、三重・東員町生まれ。両親が礼儀作法を学ばせるため、小3から自営する飲食店の常連で師範の極真空手道場に通わせた。小6で143センチに1度も勝てず。

・目標ロペス 常連に体重別のボクシングを勧められ、テレビでも見て興味を持つ。東員二中1年から桑名のKOZOジム入門。3度世界挑戦の石井広三会長が、世界目指して右利きをサウスポーにさせた。リカルド・ロペス(メキシコ)にあこがれ、U15全国大会では中2、3年と連覇。

・単身渡米 石井会長が中3時に交通事故死し、中卒と同時に単身米国修行を決断した。「高校はあとで行ける」と反対の両親を説得。石井会長が師事したマック・クリハラ・トレーナーに3週間指導を受け、試合にも勝った。

・ルディ師匠 その後はルディ・エルナンデス・トレーナー宅にホームステイし、週6日スパーで鍛えられた。岡部大介トレーナーにも指導を受け、3カ月おきに日米往来して米国を含めてアマ14勝2敗。プロでも米国でのスパーで強化してきた。

・デビュー 新人王出場のため、16歳で岡部トレーナーに紹介されたM・Tジムに入門する。17歳になった15年4月に岐阜で1回TKO勝ちしてプロデビュー。16年に東日本フライ級新人王でMVP、全日本新人王も制す。

・階段確実 17年に初代日本同級ユース王座、19年に日本同級王座を獲得した。東洋太平洋王座挑戦の代わりに、前哨戦で元世界王者メリンド(フィリピン)に6回TKO勝ち。

・愛の拳士 三重時代の常連から「愛の拳士」の愛称をもらう。知人が描いてくれたイラストをトレードマークに、三重に約200人の後援会がある。趣味は海釣り、卓球、バスケットボール。171センチ、普段は60キロ。両親と弟の4人家族。

◆記録メモ 中谷は日本ボクシングコミッションが公認する日本の世界王者として91人目となる。18年12月の井上拓真がWBC世界バンタム級暫定王座に就いた後は、世界王座獲得経験のない日本選手は世界戦9連敗中(日本人対決を含む)だった。三重県出身では初。デビューから全勝は24人目で、フライ級は20人目で最多を更新した。日本勢の対フィリピン通算は36勝(14KO)21敗(12KO)3分けとなった。

8回、マグラモからダウンを奪う中谷(代表撮影)

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ジーメル・マグラモ対中谷潤人 8回、マグラモ(右)からダウンを奪う中谷(代表撮影)

<プロボクシング:WBO世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇6日◇東京・後楽園ホール

WBO世界フライ級3位中谷潤人(22=M・T)が2度延期の末に世界初挑戦で世界王座をつかんだ。同級1位ジーメル・マグラモ(26=フィリピン)に8回2分10秒、KO勝ちをおさめた。ダウン経験のない相手を左ボディーからの左フックでダメージを与え、左右の連打でキャンバスに沈めた。コロナ禍で外国選手を招いた国内初の世界戦でデビュー21連勝(16KO)。中1で世界を目指し、中卒で単身米国修行で目指した目標を達成した。一家挙げてのサポートへも恩返しを果たせた。2年ぶりの新王者誕生で、国内男子の現役世界王者は7人となった。

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▽山中慎介氏(元WBC世界バンタム級王者) 中谷は体が強い。マグラモはついていけなかった。表情にも出ていたし、精神的にもダメージがあったはず。(9年前の)同じ日に世界王者になり、うれしいし、縁を感じる。海外でもやれると思う。井上尚弥のように世界でも評価されるだろう、面白いボクシングをする。

▽小林昭司氏(元WBA世界スーパーフライ級王者) 中谷は完璧で、狙った通りの展開になった。打たれ強さもある。統一戦も狙えるし、海外でも見てみたい。

◆記録メモ 中谷は日本ボクシングコミッションが公認する日本の世界王者として91人目となる。18年12月の井上拓真がWBC世界バンタム級暫定王座に就いた後は、世界王座獲得経験のない日本選手は世界戦9連敗中(日本人対決を含む)だった。三重県出身では初。デビューから全勝は24人目で、フライ級は20人目で最多を更新した。日本勢の対フィリピン通算は36勝(14KO)21敗(12KO)3分けとなった。

8回KO勝ちでWBOフライ級新王者となり、トロフィーを手に笑顔を見せる中谷(代表撮影)

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中谷潤人KO劇!初世界挑戦で奪取 2度の延期耐え

1R 攻める中谷潤人(右)(代表撮影)

<プロボクシング:WBO世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇6日◇東京・後楽園ホール

待ちに待った鬱憤(うっぷん)爆発KOで世界奪取だ。WBO世界フライ級3位中谷潤人(22=M・T)が2度延期の末の世界初挑戦。同級1位ジーメル・マグラモ(26=フィリピン)を接近戦でも手数で圧倒した。8回に左でロープに吹っ飛ばし、2分10秒KOで仕留めた。コロナ禍で外国選手を招いた国内初の世界戦。中1で世界を目指し、中卒で単身米国修行を経験した末にデビュー21連勝(16KO)で夢を結実させた。2年ぶりの新王者誕生で、国内男子の現役世界王者は7人となった。

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世界初挑戦発表から266日目。中谷はコロナに散々振り回されながらも、念願のベルトをつかんだ。いつもの新王者誕生の熱気は控えめも、国内一番のホープは拍手に包まれ、夢をかなえた喜びに浸った。

田中恒成が1月に王座を返上し、2月に待望の世界挑戦を発表した。コロナは感染拡大の兆しがあり、3月の米国キャンプ出発時から本人も懸念していた。不安は的中して、直後に4月は延期が決まった。8月に開催を再発表したが、これも延期となった。この間には水面下でも3度日程調整していたが、断念せざるを得なかった。

練習と気持ちを上げたり、落としたりの繰り返しとなった。8月はすでに減量にも入っていた。気持ちが切れかかりながらも57キロを維持し、走り込みは3度行った。試合前恒例の米国でのスパーによる強化には行けなかったが、世界王者寺地拳四朗らと500回以上をこなした。膨大な量をこなし、いつもと違う日常の中でも、その時に備えてきた。

プロデビューの15年に、家族は三重・東員町から中谷のいる相模原市に引っ越してきた。お好み焼き店「十兵衛」をたたんでまでサポートするためだった。昨年8月には郷里名物トンテキが看板の「とん丸」を開店した。再び家族で切り盛りの願いがかなったが、5月には閉店に追い込まれる事態も経験した。

中1でボクシングを始めると、父澄人さんが店の隣に練習場を作り、サンドバッグをつるした。試合前には澄人さんの手とグローブを合わせるのがルーティンだった。「あれで吹っ切れる」。当初は無観客予定が家族も観戦できた。ルーティンも実行して、恩返しのベルトを父に見せることができた。

▽中谷潤人のコメント「1ラウンド目で、いいパンチが入って(相手に)きかせることができて、組み立てやすかった。今後は1つ上の階級を視野に、統一戦、防衛戦と、チャンピオンロードを歩んでいきたい」

◆中谷潤人(なかたに・じゅんと)1998年(平10)1月2日、三重・東員町生まれ。中1でボクシングを始め、卒業後は単身米国修行でアマ14勝2敗。15年4月に1回TKO勝ちでプロデビュー。16年に全日本フライ級新人王、17年に日本同級ユース王座、19年2月に日本同級王座を獲得。171センチの左ボクサーファイター。家族は両親と兄の4人。

◆記録メモ 中谷は日本ボクシングコミッションが公認する日本の世界王者として91人目となる。18年12月の井上拓真がWBC世界バンタム級暫定王座に就いた後は、世界王座獲得経験のない日本選手は世界戦9連敗中(日本人対決を含む)だった。三重県出身では初。デビューから全勝は24人目で、フライ級は20人目で最多を更新した。日本勢の対フィリピン通算は36勝(14KO)21敗(12KO)3分けとなった。

1R 攻める中谷潤人(左)(代表撮影)
観戦に訪れた中谷潤人の(中列左から)父・澄人さん、母・府見子さん、弟・龍人さん(代表撮影)

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大橋ジム松本圭佑-ベジータ石川など対戦カード追加

松本圭佑(2020年8月24日撮影)

ボクシング大橋ジムのホープ2人が、来年1月14日に東京・後楽園ホールで第2戦に臨む。5日に対戦カードが発表された。

スーパーフライ級中垣龍汰郎(21)は興法裕二(27=新日本木村)、スーパーフェザー級松本圭佑(21)はベジータ石川(34=折尾)との6回戦となる。2人は東農大からプロ転向し、8月のデビュー戦でTKO勝ちしている。セミファイナルではスーパーフライ級桑原拓(25)が湊義生(22=JA加古川)と8回戦。メインは東洋太平洋バンタム級王者栗原慶太(27=一力)に、元世界王者の井上拓真(24)が挑戦する。

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井上拓真、兄尚弥の凄さ認め消えた悩み/プロに聞く

来年1月14日、再起戦に臨む井上拓真

各界のプロフェッショナルの子ども時代や競技との出会いなどに迫る「プロに聞く」。ボクシングの元WBC世界バンタム級暫定王者井上拓真(24=大橋)は、3階級王者の兄尚弥(27)とともに、幼少期から父真吾トレーナーの教えを受け、競技を続けてきた。世界王座返り咲きを誓う24歳が、偉大な兄と比較されてきた日々、その立場を受け入れた先の境地を語った。【取材・構成=奥山将志】

19年11月7日。尚弥が世界5階級王者ノニト・ドネアとの死闘を制し、スポットライトを浴びる横で、拓真は悔しさと向き合っていた。2万人が詰めかけた、さいたまスーパーアリーナ。兄との「ダブル世界戦」として行われたWBCバンタム級王者ウバーリとの王座統一戦に判定負けし、プロ初黒星を喫した。自身の試合を終え、勝利のタスキをつなぐはずの控室に戻った拓真は、「わるい」と声を絞り出し、戦いに向かう兄と拳を合わせた。感情を整理する間もなくジャージーに着替えると、急いで会場に戻り、リング下で兄に声援を送り続けた。

ボクシングを始めたのは4歳の時だった。物心つくと、目の前にはサンドバッグがあり、父から指導を受ける兄がいた。「ロープにぶらさがって遊んでいた」拓真も、小学生になると、その輪に加わり、井上家3人の長い戦いが始まった。

職人肌の真吾さんのモットーは「やるなら本気でやる」。自宅の鏡の前で、泣きながら1時間、シャドーを続けたこともあった。父は厳しかった。つらくて泣けば、また怒られた。それでも、根底にある愛情、情熱は幼心に響いていた。

拓真 ここまでやらないといけないのかと思ったこともありましたが、家族にとって、ボクシングは生活の一部のようなものでした。お父さんも、理不尽なこととかはまったくなくて、強くなるためにどうするのかって。ナオ(尚弥)と自分に本気で向き合ってくれているのは、幼いながらに感じていましたし、必死で食らいつく感じでした。

ボクシングの楽しさを知ったのは小4の時だった。横浜市内で行われたキッズのスパーリング大会に兄弟で出場した。実力が分からない同世代の選手と拳を交える、ヒリヒリとした緊張感がたまらなかった。

拓真 知らない選手が計量で集まってきて、この中の誰が自分の相手なんだろうって。すごく新鮮で、ワクワクしたのを覚えています。お父さんがセコンドについたのもこの時が初めてで、ナオも自分も勝って、ボクシングで最初にうれしいって思った瞬間ですね。

2歳上の兄の存在は、ずっと分かりやすい目標だった。だが、高校に進学すると、尚弥の才能は、一気に開花した。史上初のアマ7冠。尚弥が3年の時、拓真も高校に入学。1年時に総体を制す完璧な全国デビューも、それは同時に「井上の弟」としての難しい日々の始まりでもあった。

拓真 高校の最初は「井上に弟がいるらしい」って見られる感じでしたね。高校時代は、ナオのことはすごいとは思っていましたが、どこかで認めたくない部分もあったんです。感情だけのけんかのようなスパーになることもありましたし、100%すごいと思ってしまうと、負けを認めてしまうような気がして、それが嫌だったんです。

高校時代のそんな感情は、卒業後に飛び込んだプロの世界で、少しずつ変化していった。目の前で見ているからこそ分かる尚弥のすごさ。それを認めた時、拓真のボクシングに対する思いは、シンプルになった。

拓真 プロで5戦やった後ぐらいですかね。自分は判定勝ちが続いていましたが、ナオはずっと倒してきていた。当て勘というか、そういう部分ですよね。兄弟で試合をするわけではないですし、ナオの良いところどれだけ盗んで、自分がどこまでいけるかを考えればいいんだって。僕もボクサーとして諦めたくないですし、ナオと比べるとかではなく、自分が上を目指すだけだと自然と考えるように変わりました。

あの敗戦から約1年。再起戦は、来年1月14日、ハードパンチャーで知られる東洋太平洋バンタム級王者栗原慶太(一力)との対戦に決まった。「もう負けたくない」。自分のボクシングを一から見つめ直してきたこの期間、胸にあったのは、幼少期から変わることのない、父の教えだった。

拓真 お父さんが常に言っているのは、メリハリなんです。ジムに入った瞬間からスイッチを入れて、その集中力でやりきること。それは今も大切にしていることですし、これからもずっと意識していきたいと思っています。次の試合を良い形でクリアできるように、さらに集中してやっていきたいと思います。【奥山将志】

◆井上拓真(いのうえ・たくま)1995年(平7)12月26日、神奈川県座間市生まれ。4歳から元アマ選手の父真吾さんにボクシングを教わり、小1から本格的に競技を開始。高校2冠。13年12月にプロデビューし、15年7月に東洋太平洋スーパーフライ級王座を獲得し、2度防衛の後返上。18年12月にWBC世界バンタム級暫定王座を獲得。趣味は爬虫(はちゅう)類飼育。164センチの右ボクサーファイター。血液型A。

18年12月、判定勝ちで暫定王座に就き、兄尚弥(左)、父真吾さん(右)とポーズをとる

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井上拓真が来年1月14日に再起戦、高校8冠も登場

来年1月に試合が決まった元WBC世界バンタム級暫定王者の井上拓(大橋ジム提供)

大橋ボクシングジムは28日、来年1月14日に東京・後楽園ホールで開催する「フェニックスバトル」で、元WBC世界バンタム級暫定王者・井上拓真(24=大橋)が、東洋太平洋同級王者・栗原慶太(27=一力)とタイトルマッチを行うと発表した。

井上拓は、19年11月のノルディーヌ・ウバーリ(フランス)とのWBC世界バンタム級王座統一戦で0-3の判定負けして以来の再起戦となる。

また、19年全日本ミニマム級新人王の森且貴(大橋)は、18年同級新人王の竹田宙(S&K)との対戦が決定。「高校8冠」の実績を持ち、8月にプロデビューした中垣龍汰朗(大橋)の2戦目も行われる。

その他に、松本圭佑、桑原拓も出場予定だという。

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山内涼太「恩返しを」戸高達「最後の試合」計量パス

計量をクリアした戸高達(左)と山内涼太(角海老宝石ジム提供)

ボクシングWBOアジア太平洋フライ級王座決定戦の前日計量が18日に都内で行われた。同級4位山内涼太(25=角海老宝石)はリミットの50・8キロ、同級5位戸高達(30=レパード玉熊)は50・6キロでクリアした。19日に東京・後楽園ホールで、有観客で開催される。

山内は東農大出身で8戦目での王座挑戦となる。5戦目に中国でマイナー王座挑戦は判定負け。「こんなに早くチャンスをもらえるとは思わなかった。恩返ししたい」と話した。U15大会での優勝はあるが、高校以後は全国選抜で2位が最高成績で、決勝の相手は元世界王者井上拓真(大橋)だった。「タイトルをとったことがない。絶対に勝ちたい」と意気込んだ。

戸高は昨年2月の日本ライトフライ級以来2度目の王座挑戦となる。この試合では8回TKOされ、眼窩(がんか)底骨折した。再起は飾ったがその後も骨折。通算4度目ということもあり「2度目の舞台。これが最後の試合と思っている」。ホテルに持ち込んだ大好きなカレーのレトルトでエネルギー補給して、勝負の引退試合に臨む。

計量をクリアした戸高達(左)と山内涼太(角海老宝石ジム提供)

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井上尚弥、村田諒太ら審査員!高校生シャドー大会

井上尚弥(2019年12月23日撮影)

日本ボクシング連盟は26日、「高校生シャドーボクシングチャレンジ2020」を開催すると発表した。

新型コロナウイルスの感染拡大により、今年の高校生の全国大会がすべて中止や延期となったことを受け、練習の成果を発揮する場として設けられた。

1人で相手をイメージしながら行う練習がシャドーボクシング。同連盟に選手登録済みの現役高校生(男女不問)が、ツイッター上に指定のハッシュタグをつけて動画を投稿することでエントリーできる。応募期間は8月1日から16日まで。

審査員には超豪華な面々がそろった。井岡一翔、井上拓真、井上尚弥、岩佐亮佑、内山高志、京口紘人、清水聡、寺地拳四朗、村田諒太、八重樫東(50音順)らが現時点で参加が決定。今後も交渉中だという。

結果発表は8月22日で、「○○選手賞」など、優秀賞に選出した審査員の名前がついた賞を発表する。

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