笠松競馬騎手の子「大馬翔」新弟子検査受検 父とは対照102キロ「相撲界のオグリキャップに」

目指すは相撲界のオグリキャップ!? 日本相撲協会は4日、東京・両国国技館で春場所の新弟子検査を行い、笠松競馬の現役騎手を父に持つ森島優(15=追手風)が受検。身長は166センチの自身と同程度ながら、50キロに満たない父貴之(34)とは対照的に、森島は2倍以上の102キロ。体も顔も丸々とした愛嬌(あいきょう)のある笑顔を交えて「相撲界のオグリキャップになります」と、やや報道陣にたき付けられながらも宣言した。地方競馬の笠松から、中央競馬の最高峰G1を次々と制した希代のスターホースになぞらえ、今後の飛躍を誓った。
体重制限や節制といった「減量」のイメージが強い騎手とは反対に、どんどん食べて体を大きくする「増量」の世界の相撲界に身を置くことになった。森島も「不思議な感じ」と笑う。自宅は競馬場や厩舎(きゅうしゃ)など、笠松競馬の関係施設が広がるエリアの一角。当然、父の影響から乗馬経験も豊富で、小学3、4年ぐらいまでは、1人で乗っていた。競走馬が横になって休む際の、わらを運ぶなど、競馬に関連することが日常にあふれていた。ところが一気に体が大きくなった小学5年の時には、すでに体重は80キロ近くとなっていた。
そこから一気に方針転換した。小学5年から東海相撲クラブで相撲を始め「3位とかになった。たぶん県の大会」と、才能が開花し始めた。「もともと力が強くて、ちょっと触れただけで人をケガさせてしまっていた」と、まるで漫画の主人公のように、あふれるパワーを持て余していた。そんな中で「相撲の先生だけは、思い切りぶつかっても受け止めてくれた」と、全力でできる相撲に夢中になっていった。
父からは「つらいこともいっぱいあると思うけど、その時こそ我慢して、頑張っていけば、いつかうれしいことがある。とにかく我慢していけ」と、相撲界に進むにあたって言葉を授かった。目標とする力士は追手風部屋の兄弟子で、春場所では2度目の幕内優勝へ、あと1歩と迫った小結大栄翔。「自分も押し相撲。大栄翔関は強くて、かっこいいです」と、目を輝かせて話した。
すでに、しこ名は決まっている。あこがれの大栄翔と1字違い。さらに父の存在や自身の生い立ちを示すように「大馬翔(だいばしょう)」となった。夏場所(5月14日初日、東京・両国国技館)で初めて、本土俵に立つ。
卒業シーズンと重なり「就職場所」ともいわれる春場所は、例年、年間で最も新弟子検査の受検者が多い。少子化の影響もあり、今年は春場所としては最少に並ぶ34人が受検者リストに名を連ねた(うち1人は欠席)。その中でも3月21日生まれの森島は最年少。好きな食べ物は「抹茶アイス」と答え、その次に好きな食べ物も「抹茶どら焼き」で「甘い物が好きなんです」と、あどけない笑顔を振りまいた。
一方で3人の妹と、1番下に4歳の弟を持つ5人兄妹の長男とあって、責任感の強さもある。「番付の目標はないですけど、夢を与える力士になりたいです」と胸を張って話した。
本来は3月の春場所前に新弟子検査を受け、同場所で前相撲を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染症対策でいずれも延期となっていた。前相撲を経験せず、夏場所は序ノ口として番付に名が載る。オグリキャップのように、多くのファンに愛される力士となるのか。スピードが生命線の父のように、スピード出世を果たすことができるのか。この日、気付けば報道陣の多くを引きつけてやまなかった、愛くるしい笑顔がトレードマークの「大馬翔」。5日前まで中学生だった15歳は、相撲界で“1番人気”となる日を夢見ている。
- 笠松競馬の騎手を父に持つ森島優は、スピード出世への意欲を見せるように騎乗のポーズをつくった