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大相撲裏話

90連敗中の勝南桜には「絶対負けられない」序ノ口なりの意地や重圧

勝南桜(2021年1月撮影)

大相撲の序ノ口力士、勝南桜(22=式秀)が、3月の春場所で90連敗を喫した。もう2年以上、白星がない。不謹慎ながら、対戦が決まった相手は戦う前から勝ったも同然、ラッキーだと思うのだろうなと勝手に考えていた。ところが違った。

春場所後、勝南桜と対戦したある力士に聞くと「すごいプレッシャーでした。絶対に負けちゃいけないので」と打ち明けた。その力士の師匠も「そりゃあ、プレッシャーですよ。負けたらヤフーニュースになってしまいます。相撲に絶対はありませんから」と話していた。意外な事実だった。

確かに、相撲に絶対はない。力の差があっても、実力上位が足を滑らせることもある。何が起きるか分からない。90連敗と言っても、その一番一番をよく見ると、かなり善戦している取組もあるのだ。

勝南桜は2015年九州場所で序ノ口デビュー以来、3勝224敗1休。最長の連敗記録を現在継続中で、次の白星は、これまでの3勝以上に注目されるだろう。

ここで思い出すのは、二子山親方(元大関雅山)の行動だ。以前、二子山部屋の力士が服部桜(現在の勝南桜)に負けた。二子山親方がまずやったことは、弟子をしかることではない。ほかの兄弟子らに連絡を入れ、こう言った。

「いいか、絶対にバカにしちゃだめだぞ。服部桜だって一生懸命稽古して、強くなっているんだ」

頭が真っ白になったであろう、その力士の気持ちを思いやり、相手も尊重した。その一番で負けた力士は盛り返し、その場所で勝ち越した。

私は4年前、勝南桜(当時は服部桜)が所属する式秀部屋の稽古を見たことがある。本場所では立ち合いの当たりを怖がっているように見えたが、稽古場ではその改善に努めていた。式秀親方(元幕内北桜)の熱血指導のもと、強度を徐々に高めながら頭と頭をぶつけ合ったりと、本場所を意識して稽古していた。内容も濃い。これを続ければ、もっと勝てると思えた。やる気も感じた。どうやら、稽古場の力を本場所で発揮できないタイプのようだ。

まもなく夏場所が始まる。幕内が最高レベルであることは言うまでもないが、序ノ口には序ノ口なりの意地や重圧がある。それを心の片隅に置きつつ、勝負を見守りたい。【佐々木一郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

王者アルバレス圧倒的有利も楽観は禁物 全勝サンダースは苦手なサウスポー

スーパー・ミドル級のWBAスーパー王座とWBC王座を持つサウル・カネロ・アルバレス(30=メキシコ)が8日(日本時間9日)、アメリカのテキサス州アーリントンで同級WBO王者のビリー・ジョー・サンダース(31=イギリス)と3団体の王座統一戦に臨む。

全階級を通じた最強ランキング、「パウンド・フォー・パウンド」で現役トップの評価を受けているアルバレスが圧倒的有利と見られているが、過去に技巧派サウスポーに苦戦を強いられてきたデータがあるだけに楽観視できないものがある。

アメリカの老舗専門誌「リング・マガジン」の最新「パウンド・フォー・パウンド」では5位がウェルター級のWBC&IBF王者エロール・スペンス(アメリカ)で、4位が元4団体世界クルーザー級王者オレクサンデル・ウシク(ウクライナ)、3位にはWBO世界ウェルター級王者テレンス・クロフォード(アメリカ)がランクイン。2位はバンタム級のWBAスーパー王座とIBF王座保持者の井上尚弥(大橋)が入っている。そして彼らを抑えて堂々のトップに君臨しているのがアルバレスだ。

髪の毛が赤いことから「カネロ(シナモン)」という愛称で呼ばれることが多いアルバレスは15歳でプロの世界に飛び込み、16年のキャリアで57戦54勝(37KO)1敗2分の戦績を積み上げてきた。23歳のときにフロイド・メイウェザー(アメリカ)に判定で敗れたのが唯一の敗北だ。スーパー・ウェルター級、ミドル級、スーパー・ミドル級、ライト・ヘビー級の4階級で世界王者になり、一時は3階級の王座を同時に保持していたこともある。身長173センチ、リーチ179センチと決して体格に恵まれているわけではないが、スピードに乗った左ジャブ、破壊力のある右、回転の速い連打、堅い守りと打たれ強さ、そして高い経験値を備えている。離れてよし接近してよしの万能型だ。世界王者同士の対決にもかかわらず、今回も5対1で圧倒的にアルバレスが有利と見られている。

ただ、不安要素がないわけではない。その最たるものがサンダースがサウスポーの技巧派である点だ。アルバレスは世界王者になった2011年以降だけで22戦しているが、そのうち左構えの選手との対戦は4度と少ない(4勝2KO)。興味深いのは、技巧派のオースティン・トラウト(アメリカ)とエリスランディ・ララ(キューバ)に大苦戦していることである。トラウト戦は7回に奪ったダウンが判定の際の決め手となった、いわゆる“ダウン勝ち”で、ララ戦に至ってはジャッジの見解が2対1に割れる際どい勝利だった。ふたりは足をつかいながら距離と角度、タイミングをずらしてアルバレスに持ち味を発揮させなかったのだ。

2008年北京オリンピックに出場したこともあるサンダースはキャリア12年、ミドル級とスーパー・ミドル級の2階級で世界王者になり、30戦全勝(14KO)と無傷のレコードを残している。サンダースの支持者たちは、そんなWBO王者がテクニックと巧みな戦術を用いてトラウトやララ以上の結果を出すだろうと期待を寄せている。

アルバレスが前に出ながら圧力をかけ、サンダースが足をつかいながら的を絞らせずに迎撃する展開が予想される。番狂わせがあるとしたらアルバレスが必要以上に突っ込んでいなされ、印象点を失う場合だろう。サンダースの技巧に持ち味を封じられる可能性はあるものの、それでもアルバレスがしっかりと攻勢点は奪っていくものとみる。

リングにかける

勝利後泣きじゃくった寺地、眼窩底骨折し戦い抜いた久田…両者に拍手喝采

試合後のインタビューで涙を見せる寺地(2021年4月24日撮影)

4月24日に国内で今年初の男子世界戦、WBC世界ライトフライ級タイトルマッチがエディオンアリーナ大阪で行われた。王者寺地拳四朗(29=BMB)と同級1位久田哲也(36=ハラダ)の日本人対決。見どころたっぷりの攻防はフルラウンド、12回を戦い抜いて判定で王者が8度目の防衛に成功した。

コロナ禍の昨年に王者が起こした泥酔騒動で、12月に予定されていたのが延期となったカードだった。試合後、寺地は「いろいろとすみませんでした」と久田に謝罪し、インタビューでは泣きじゃくった。常にクールなイメージが強かっただけに意外だった。それだけ自分がやってしまったこと、多大な迷惑をかけた挑戦者陣営らに対し、とてつもなく重いものを背負っていたことを感じた。

試合前からの模様も含めたこの一戦のドキュメントが、関西テレビで深夜に放送されて、見た。寺地もだが、36歳で2度目の世界戦に挑んだ久田もしっかり追っていた。会場に応援に駆けつけていた奥さんと3人の娘さん。家族の絆、涙はグッとくるものがあった。

魂のこもった戦いだった。2回にダウンを食らった久田は、3回にも「ジャブが刺さって」と左目眼窩(がんか)底を骨折した。それでも残り9ラウンドも立ち続け、戦い抜いた。試合後のインタビューに答える久田の左目は腫れて完全にふさがっていた。視界を奪われても、パンチを振るう。素晴らしいボクサーの本能を感じた。

戦いを終えて、久田は引退を表明した。寺地はあらためて元WBA世界ライトフライ級王者具志堅用高氏が持つ連続防衛の日本記録13回の更新と、他団体のベルトも狙うと宣言した。勝者と敗者の道は分かれても、戦いそのものは拍手喝采でしかない。憎き新型コロナウイルスの影響で興行が制限される中、もやもやを吹き飛ばす戦いに心を打たれた。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

寺地拳四朗に敗れた久田哲也(2021年4月24日撮影)
久田(右)にボディーを見舞う寺地(2021年4月24日撮影)
2回、久田哲也(左)に右ストレートでダウンを奪う寺地拳四朗(2021年4月24日撮影)
大相撲裏話

【コラム】先代東関親方、寅さん見守る 一門の枠超え二子山部屋が柴又移転

東関部屋(2018年2月18日撮影)

寅さんの街に相撲部屋が残る。3月いっぱいで部屋が閉鎖された東京・柴又にある旧東関部屋に1日、埼玉・所沢から二子山部屋(元大関雅山)が移転して活動を始動させる。

部屋は先代東関親方(元前頭潮丸)が、東京都墨田区東駒形から、18年1月に柴又へ移転。だが、その先代が翌19年12月に死去し、現東関親方(元小結高見盛)が部屋を継いだが、精神的負担の重さから難色を示し、継承から1年で部屋封鎖となった。

思い出すのは18年2月17日、柴又で部屋開きをした時の、希望に満ちあふれた先代東関親方の満面の笑みだ。部屋開きには八角親方(元横綱北勝海)はじめ一門の親方衆や、部屋を創設したジェシーこと先々代東関親方(元関脇高見山)が祝福に駆けつけ、現在大関の朝乃山(高砂)ら関取衆が稽古し門出を祝った。取材ノートをひもとくと、師匠の言葉の端々に、その心情がくみ取れた。「こういう形で、いろいろな方にも来てもらってうれしいです」「まず最初にすることは関取を出すこと」…。

約150坪の土地は、葛飾区が観光戦略など地域活性化の狙いから、有償で貸し出されたもの。そのことも忘れず「外国の方にも稽古場に来てもらって(柴又の名所)帝釈天にも足を運んでもらえれば」と、うれしそうに話していた姿が、昨日のことのように思い出される。それから2年もたたず、41歳の若さで天寿を全うするとは思いもしなかった。志半ばでこの世を去り、部屋も移転からわずか3年ほどで閉鎖。地元も一時は落胆した。

部屋から徒歩5分にある「もんじゃ お好み焼き あかり」。住宅街に囲まれた静かな環境にあるため、部屋からは最も近い飲食店だ。光るちょうちんが目印の、アットホームなその店が力士たちの数少ない、いやしの場だった。「礼儀正しい、とてもいい若い子たちばかりで、本当に応援したいと思いました。ネットニュースで部屋がなくなることを知って、お客さんも『さみしいね』と残念がってました」。そう語るのは店主の水戸貞子さん。コロナ禍でも場所明けは、師匠の許可を得て力士は外出が許される。「(PCR)検査を受けて陰性だから大丈夫です」「ぜひ稽古見学に来てください!」と元気な声で来店する若い衆の姿に、水戸さんも心和まされた一人だ。

部屋から歩いて1分もかからない所にある「リヨンセレブ柴又店」。名物の塩豆あんぱんや、カリカリのカレーパンなど美味の焼きたてパンを求めて、前東関部屋の力士たちも通ったベーカリーショップだ。「柴又は3世代で住んでいらっしゃる家が多く(3年前に)部屋ができたときは、おじいちゃん、おばあちゃんが『どこに部屋があるんだ?』と店に訪ねてきたり、皆さん喜んでましたよ。外国人のツアーも来て話題になりました」と当時を振り返るのは店長の山下裕子さん。何年か前に台風で大型倉庫が転倒した際には、力士たちが率先して直してくれたという。「その時はスタッフが不在で、そんなことがあったのは知らなかったんですが後日、おかみさんから教えてもらいました」と山下さん。「買い物に来ていただく時は特に会話はなかったんですが、無口な分、優しい。表には決して出さない縁の下の力持ちというんでしょうか。いい人たちばかりでした」。先代が亡くなった時、そして部屋閉鎖が決まった報道が広まった時は、来店客も「部屋はどうなるんだろう」「どこかの部屋が来るんだろうか」と気をもんでいたという。それも二子山部屋の移転で好転する。「強い力士さんがいなくても応援しますよ。コロナ禍にあって明るい話題ですね」と山下店長は周辺住民の気持ちを代弁するように話してくれた。

周囲も落胆した閉鎖のニュースから、わずか1カ月。新しい部屋が引っ越して、再び相撲部屋が存続する。亡き先代が部屋を構えた時に「帝釈天でパレードできるような力士を育てたい」と夢を膨らませ語っていたことも心に残る。ただ、寅さんシリーズとなった映画「男はつらいよ」の舞台となった、その帝釈天周辺を取材すると、相撲熱はいまひとつ。部屋からは徒歩15分ほどかかり、力士が散策していた姿を見たことがあるという声は、地元観光案内所はじめ関係者からは聞かれない。力士たちの“通勤ルート”から外れていることも一因だ。

先代の夢をかなえ、明るい話題を帝釈天周辺にももたらす期待も、移転してきた二子山部屋は担う。先々代と1歳年上の二子山親方は言う。「亡くなった(先代東関親方の)潮丸さんとは現役時代から仲が良かったので、その遺志を引き継ぎたい。今はコロナ禍で、すぐには難しいかもしれませんが、地元の方々と触れ合って地域の活性化に貢献したい」。優勝パレード、昇進パレードが帝釈天周辺や参道で実現すれば、天国から先代東関親方も、そして寅さんも、ほほ笑みながら見つめることだろう。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

【コラム】地方場所の「お茶屋さん」は死活問題 昨年東京開催で数千万円損

ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)

大相撲夏場所は5月9日に初日を迎える。新型コロナウイルス感染症の影響を受け、昨年の7月場所から丸1年、6場所連続東京・両国国技館での開催となる。ただ今年の7月場所(7月4日初日、ドルフィンズアリーナ=愛知県体育館)は、東京五輪・パラリンピック開催で両国国技館が使用される関係上、名古屋で行われる方向。昨年は東京に開催変更となり、開催がなかった。名古屋のお茶屋さんに話を聞いた。

-昨年は東京に代替開催

お茶屋さん 直前のことで対応も苦慮しました。(損失は)数千万円になると聞いております。

-今年は名古屋で

お茶屋さん これまでのごひいきさんから、すでに購入していただいております。ただ、どうなるか分からない情勢ですので「開催できるかどうかは分かりません」と話しております。

-食事、土産ものは

お茶屋さん まだ発注できていません。開催が決まった時点で発注したいと思っています。発注してから中止となると、相当なダメージを受けます。昨年のケースを受けて、慎重に対処したいと思っています。

名古屋場所は年に1度。そのイベントをふまえて、1年以上前から営業活動を行っているが、新型コロナウイルスの影響は想定できるはずもない。各地方場所の「お茶屋さん」は、死活問題に直面している。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

「タワーリング・インフェルノ」長身フンドラ世界挑戦へ試金石の一戦

約69.8キロが体重上限のスーパー・ウェルター級で、身長197センチ、リーチ203センチというヘビー級並みのサイズを持つセバスチャン・フンドラ(23=アメリカ)が、世界挑戦を視野に入れた前哨戦ともいえる試合に臨む。5月1日(日本時間2日)、アメリカのカリフォルニア州カーソンでWBA同級12位のホルヘ・コタ(33=メキシコ)と対戦するもの。WBA2位にランクされているフンドラにとっては極めて重要な一戦だ。

スーパー・ウェルター級では群を抜く長身のフンドラのニックネームは「タワーリング・インフェルノ」。超高層ビル火災の恐怖を描いて1970年代にヒットした映画から命名されたものと思われる。長身というだけでも相手にとっては厄介なのに、加えてフンドラはサウスポーでもある。これほど戦いにくいタイプはそうそういるものではない。直近の2試合を見ても、身長180センチ、リーチ185センチの元世界ランカー、ナサニエル・ガリモア(ジャマイカ/アメリカ)と、身長183センチ、リーチ188センチの世界挑戦経験者ハビブ・アーメド(ガーナ)との体格差は歴然だった。特にWBAの挑戦者決定戦と銘打って行われたアーメド戦はフンドラのベストファイトのひとつに挙げられるほどで、相手に何もさせずに一方的に打ちまくってレフェリー・ストップに持ち込んでいる。

フンドラは体格を生かした典型的なアウトボクサーというわけではなく、好んで接近戦にも応じるという一面がある。相手が飛び込んでくるタイミングに合わせて迎え撃つことも多い。長い腕を巧みに折りたたんでアッパーや鋭角なフックをボディと顔面に打ち分けるのだ。プロ5年間の戦績は17戦16勝(11KO)1分。

現在、スーパー・ウェルター級はジャーメル・チャーロ(30=アメリカ)がWBAスーパー王座、WBC王座、IBF王座に君臨しており、7月にはWBO王者のブライアン・カスターニョ(31=アルゼンチン)と4団体の王座統一戦を行うことになっている。日程的にみてフンドラが世界挑戦できるとしても早くて今秋ということになる。

それを見据えて今回のコタ戦がセットされたわけだが、フンドラにとってはリスキーなカードといえる。34戦30勝(27KO)4敗のコタは80パーセント近いKO率が示すとおりの強打者で、直近の2試合もKO勝ちを収めている。この危険度の高いコタに周囲も認める内容で勝てば世界挑戦の機運は高まるはずだ。

リングにかける

WWEが管理職をクビ、退団選手の荷物をごみ袋郵送で厳罰処分に

元WWE女子王者ミッキー・ジェームスがWWEから届けられたという自らの荷物が入ったごみ袋の写真(ジェームスのツイッターより)

米プロレスWWEの「選手ファースト」の理念が示された処分だった。先月までWWE選手部門の責任者だったマーク・カラノ氏が突然、クビになった。今月のレッスルマニア翌週に解雇された9選手の1人、WWEの女子王座を計6度戴冠したミッキー・ジェームス(41)による皮肉まじりのSNS投稿が導火線となっていた。

ジェームスは自らの荷物が入っている黒いごみ袋の写真を添え「親愛なるビンス・マクマホン会長、ご存じかどうかは分かりませんが、今日、WWEからの荷物を受け取りました。ありがとうございました」とつづった。この投稿を受け、次々とWWEファンが「パワーハラスメントだ」と騒ぎ出した。

即座にWWEの最高ブランド責任者となるビンス会長の娘ステファニー・マクマホン氏は自らのツイッターで「ミッキー・ジェームスさん、あなたや他の誰かにこのような仕打ちをしたことは恥ずかしいこと。個人的に、そしてWWEを代表しておわび申し上げます」と深く謝罪。その上で「(当該の)責任者はもう会社にはいません」と解雇したと明かした。さらにステファニー氏の夫で、WWE副社長を務めるトリプルHも「最近、解雇された一部の選手が無礼な扱いを受けたことを知り、即座に行動を起こしました。この軽率に行動した責任者は解雇され、もう会社にはいません」とSNSで報告した。

米メディアは、解雇されたカラノ氏がWWEに20年近く勤務しながら、選手の評判は決して良くなかったと報じている。選手部門の責任者という立場で、他にもパワハラとみられる言動があったとの関係者の証言も伝えられた。「選手ファースト」ではない人材は、たとえ中枢の管理職であっても即座に解雇に踏み切る。ハラスメントに関して米国は「シビア」と言われればそれまでだが、WWEの企業理念が貫かれているとすがすがしく思えた。

処分の重さには、さまざまな意見があるだろうが、パワハラ=解雇という強いメッセージが、世界中のファンを納得させたことだけは間違いない。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

WWEから荷物がごみ袋に入って届いたことをツイッターで報告した元WWE女子王者ミッキー・ジェームスのツイッター
大相撲裏話

【コラム】合同稽古を最も“有効活用”?阿武咲は三役復帰までもうひと息

夏場所に向けた合同稽古で関取衆との申し合いに参加した阿武咲(右)(2021年4月22日・代表撮影)

合同稽古に参加している関取の中でも、元気いっぱいの姿はひときわ目を引く。

夏場所に向けた合同稽古が22日に終わった。前回の6日間から短縮されて今回は計4日間。10人の関取(明生が最終日のみ欠席)が皆勤した。

平幕の阿武咲(24=阿武松)は、部屋では唯一の関取。他の部屋の関取との貴重な稽古の機会に「いつもよりは短い中でしたけど、その中でもしっかりできたので良かったと思う」と、時折笑顔を見せながら好感触を口にしていた。取材後「自分、部屋(千葉県習志野市)が遠いので…」とペコリと頭を下げ、足早に国技館を引き揚げていた。

今回のメンバーの中で、昨年12月から3回連続で皆勤しているのは阿武咲ただ1人だった。関取衆の申し合いでは誰よりも表情豊か。稽古でも負ければ悔しさを前面に出す。前回の2月は最終日に横綱白鵬から指名を受け、稽古後に「楽しかったです! ありがたい気持ちと楽しい気持ちと。プラスな感情しかなかったです」と笑っていた。コロナ禍で外出も制限され、出稽古もできないこの1年間。表情には充実感がにじんでいた。

西前頭筆頭として臨んだ春場所では4勝11敗と大負けを喫した。それでも、優勝した照ノ富士に完勝するなど見せ場はつくった。18年初場所以来の三役復帰までもうひと息。「(修正点は自身の中で)分かっている。腰の位置だったり、重心だったり、角度だったり…。どこで爆発させるか、圧力を。(合同稽古で)そういうところをつかめたので良かった」。合同稽古を最も“有効活用”しているかもしれない24歳は、夏場所(5月9日初日、東京・両国国技館)に向けて調整は順調の様子だ。【佐藤礼征】

原功「BOX!」

ベルランガ連続1ラウンドKO勝ち記録「17」に伸ばせるか

プロデビューから5年、16試合すべてで1ラウンドKO勝ちを収めているエドガー・ベルランガ(23=アメリカ)が24日(日本時間25日)、アメリカのフロリダ州キシミーのリングに上がる。スーパー・ミドル級8回戦で拳を交える相手はディモンド・ニコールソン(28=アメリカ)。こちらも27戦23勝(20KO)3敗1分と74パーセントのKO率を誇る強打者だ。「ザ・チョーズン・ワン(選ばれし者)」というニックネームを持つベルランガは連続1ラウンドKO勝ちを「17」に伸ばすことができるのか。

ベルランガは2016年4月にプロデビューし、組まれた16試合をすべて3分以内で片づけてきた。最も長い試合で2分45秒、最も短い試合は41秒で終わらせている。こうした記録は色眼鏡で見られる傾向があるが、ベルランガは全米ユース選手権で準優勝するなどアマチュアで179戦(162勝17敗)のキャリアがあり、基礎的な技術もしっかりしている。試合開始のゴングと同時に積極的にプレッシャーをかけて距離を潰し、ワンツーや左フックを顔面とボディに打ち分ける。相手が防御にまわるとパンチの回転を上げ、ガードの合間を縫って正確に強打を当てて倒すことが多い。パワーだけでなく勘の良さも目を引く。

約76キロが体重リミットのスーパー・ミドル級にあってベルランガは身長、リーチとも185センチと体格にも恵まれている。まだ世界的な強豪との対戦は皆無だが、すでにWBAは5位、WBOも8位にランクしている。さすがにこれは先物買いの印象が強いが、それだけの勢いと強さを見せつけているのは事実だ。

今回対戦するニコールソンはアマチュア時代に全米選手権で3位に入った実績を持っており、基本に忠実なタイプといえる。8年前にプロ転向後、のちに世界挑戦する選手や世界ランカーと対戦した経験もある。ワンツー主体の選手で鋭い右ストレートが主武器だ。

このところ5連勝(3KO)と好調で、現在のベルランガの力量を測るには恰好の相手といえる。

連続1ラウンドKO勝ちの世界記録は、ライト・フライ級のアリ・レイミ(ソマリア)が2011年~2014年にかけてマークした「21」で、2位がタイロン・ブルンソン(アメリカ)の「19」、のちに世界2階級制覇王者になったエドウィン・バレロ(ベネズエラ)の「18」が続く。

連続1ラウンドKO勝ちの記録に加え世界王座への挑戦も視野に入ってきたベルランガは、大きなプレッシャーがかかるなか今度も3分以内で仕事を終わらせることができるのか。

リングにかける

社長vs社長 平均年齢41歳オジサンたちの格闘技 試合後は名刺交換

「EXECUTIVE FIGHT 武士道」格闘家デビューする安彦(中央)ら(2021年4月16日撮影)

元K-1王者の小比類巻貴之氏(43)が主催するキックボクシングの大会「EXECUTIVE FIGHT ~武士道~」が16日、都内で行われた。今大会は、元120円Jリーガーの安彦考真(43)の格闘家デビュー戦となったが、安彦以外はほとんどが格闘技に打ち込む会社経営者同士の対戦だった。会場は選手の家族や社員などが、感染対策をした上で、結婚式のように円卓に座って応援。ラウンドガールにはシェイプUPガールズの中島史恵が務め、タレントの猫ひろしらがマイクパフォーマンスで盛り上げ、元光GENJIの大沢樹生も応援に駆けつけた。

出場14人中12人が初出場。減量も前日計量も花道を歩くことも、登場曲にのってリングに上がるのも、すべてが初めてだ。フラフラになりながらも、殴り合い戦う姿に会場からは惜しみない拍手が送られた。試合後にはそれぞれが「応援してくれてありがとうございました」と、集まってくれた仲間に感謝の言葉を述べた。試合後には社員同士が名刺交換する姿が多く見られ、今後に向けた“営業”もしっかり行われていた。

普段、社員に対して話し慣れているからか、マイクパフォーマンスはスムーズ。第3試合で勝利した島岡潤さん(41=ファーラウト代表取締役)は「スタミナがなさ過ぎてKOできなかったけど、また引き続き頑張りたい」とさらなる飛躍を誓った。一方で敗れた佐々木裕馬さん(34=Luup副社長兼CEO)は「勝ち負けにもこだわりたかった。悔しいのが正直な気持ち。4カ月で14キロ落としたので、明日からラーメンを復活させる。来月からはアフリカで事業を起こすので、よろしくお願いします」とジョーク混じりのあいさつ。また最年長出場で敗れた飯島正光さん(53=マサイイジマボーリング代表取締役社長)は「勝ったら辞めようと思っていたけど、負けたので最年長記録更新しようと思う」と“現役続行”を宣言した。

赤と青コーナーそれぞれに分けてトレーニングに励み、スパーリングも合宿も一緒には行わず、前日計量が初顔合わせ。小比類巻氏は「みんな経営者だし、仲良くしない方がおもしろい」と素人同士の対決の魅力を語る。会社のトップがファイターとして新たな挑戦をする姿に、ファンだけでなく、普段一緒に仕事をする社員も「格好いい」と大きな拍手を送った。第2回となった今大会。試合後には「今度は自分が参戦したい」という人もいた。今大会の中にも、前回大会を会場で観戦して魅力を感じ、出場を決めた選手もいる。

平均年齢41歳のオジサンたちの戦い。試合後は各選手が相手をたたえ、爽やかな笑顔を見せた。仕事も忘れ? トレーニングに励み、格闘技にひた向きに取り組む熱い姿は、プロアスリートとなんら変わりはない。彼らの熱い魂は、普段から会社を支える社員たちの心にも届いたに違いない。【松熊洋介】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

大相撲裏話

照ノ富士の復活劇で頭に浮かんだ力士、ケガや病と戦い続けた道のりに感動

名寄岩(1951年1月16日撮影)

大相撲春場所は東関脇照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が12勝3敗で3度目の優勝を飾り、場所後に大関復帰を果たした。17年秋場所以来、21場所ぶりの返り咲きは、現行のかど番制度となった1969年名古屋場所以降、魁傑の所要7場所を上回る。両膝のけがや内臓疾患などで序二段まで番付を下げながらはい上がってきた、史上最大のカムバック劇だった。

大関まで上り詰めながら序二段で相撲をとる心境とは。照ノ富士は師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)に何度も引退を申し出たという。師匠が「まだやれる」とはね返して今があるが、これまで付け人を務めてくれてきた世代の力士と相撲をとる。その思いは照ノ富士にしか分からない。

それだけに、ケガを克服し、再び番付のピラミッドを上ってきた照ノ富士には拍手しかない。その復活劇を見ながら、ふと頭に浮かんだ力士が名寄岩だった。

初めて相撲担当を命じられた時、勉強のために数冊の本を手にした。過去の名力士が描かれた物語で、個人的に最も心に刺さったのが名寄岩だった。資料を参考に紹介させてもらう。

◇◇◇

鍼灸(しんきゅう)師になろうと上京していたが、体格のよさを見込まれて立浪部屋に入門した。1932年(昭7)5月の初土俵。順調に番付を上げて43年1月に大関昇進。関脇に陥落も、46年11月に大関復帰を果たしたが、そこから糖尿病や腎臓疾患など数々の病に苦しめられた。

2度目の大関陥落後も相撲を取り続け、50年5月に西前頭14枚目で敢闘賞を受賞。「涙の敢闘賞」として映画にもなった。54年9月、40歳を超えるまで現役を続けた不屈の力士だった。

◇◇◇

当時を知らない。時代も違う。しかし、通じるものを感じた。心技体がそろわないと勝てない、厳しい相撲の世界。心であきらめず、体を整え、技を磨いて戦い続けてきた道のりは、感動しかない。

大関再昇進の伝達式後の会見。照ノ富士は「あらためて元の位置に戻った実感を感じています。(前回は)思い出すというか、また違う形でうれしく思います。前は本当にそのまま素直に思っていたが、今はたどり着いた。ホッとしている」と話し、最後に「やってるうちに相撲が好きになる自分がいる。今、相撲大好きです」と言った。

大相撲夏場所(東京・両国国技館)は5月9日に初日を迎える。照ノ富士にとって角界の頂点、横綱を目指す次のステージの幕が上がる。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

今年は熱い! 有観客でアルバレスら注目ファイトがめじろ押し

前回、コロナ禍のなか引退した元世界王者たちのエキジビションマッチが相次いで決まっていると伝えたが、ここに来て現役組の活動も活発になりつつある。現代のボクシング界を代表するスター選手、WBA&WBC世界スーパー・ミドル級王者のサウル・カネロ・アルバレス(30=メキシコ)が5月8日(日本時間9日)に登場するのを皮切りに、6月にかけて毎週のように注目ファイトが続くのだ。いずれも会場の収容能力の半数程度に抑える有観客試合の予定で、アルバレスの試合は5万人超が見込まれている。

すでに発表されている試合を日程順に並べてみよう(いずれも現地時間)。

■5月8日@アーリントン(アメリカ テキサス州) WBA、WBC、WBO世界スーパー・ミドル級王座統一戦 アルバレス対ビリー・ジョー・サンダース(31=イギリス)

■5月22日@ラスベガス(アメリカ ネバダ州) WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパー・ライト級王座統一戦 ジョシュ・テイラー(30=イギリス)対ホセ・カルロス・ラミレス(28=アメリカ)

■5月29日@アンカスビル(アメリカ コネチカット州) WBC世界バンタム級タイトルマッチ ノルディーヌ・ウバーリ(34=フランス)対ノニト・ドネア(38=フィリピン/アメリカ)

■5月29日@ラスベガス(アメリカ ネバダ州) WBC世界ライト級タイトルマッチ デビン・ヘイニー(22=アメリカ)対ホルヘ・リナレス(35=帝拳)

■6月19日@ラスベガス(アメリカ ネバダ州) WBA、IBF世界バンタム級タイトルマッチ 井上尚弥(28=大橋)対マイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)

最初の2カードは世界王者同士による王座統一戦だ。アルバレスがサンダースに勝って3団体王者になった場合は、9月にIBF王者との最終決戦が計画されている。テイラー対ラミレスは2団体王者同士の全勝対決で、勝者が4団体の統一を果たすことになる。

後半の3カードは日本のファンにとって気になる試合といえる。ドネアがWBC王座を獲得し、その3週間後に井上が防衛を果たせば秋にも両者の再戦が計画される可能性がある。返り咲きを狙うリナレスは、若くて勢いのあるヘイニーに挑戦する。

このほか、ヘビー級のWBA、IBF、WBO王者、アンソニー・ジョシュア(31=イギリス)とWBC王者のタイソン・フューリー(32=イギリス)の4団体統一戦も内定している。下半期に2試合する契約と報じられており、初戦が6月か7月、再戦が11月か12月という。また、ライト級の4団体王者、テオフィモ・ロペス(23=アメリカ)も6月にIBF1位のジョージ・カンボソス(27=オーストラリア)を相手に初防衛戦を計画している。さらにウェルター級のWBO王者、テレンス・クロフォード(33=アメリカ)と6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(42=フィリピン)の大一番が内定したというニュースもある。「6月5日に中東のアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開催」という具体的な日程と場所を報じているメディアもある。これらの正式決定の報が待ち遠しい。

昨年はコロナ禍の影響で不毛に終わったが、今年は熱くなりそうだ。

リングにかける

「足を使え」から「指」を使う時代 コロナ禍でLINEやSNS取材に拍車

岩佐亮佑(2019年12月9日撮影)

記者になった40年前、よく言われたのは「サボるな。足を使え」だった。あの「ネタは足で稼げ」ということだ。

取材を終えると、デスクに公衆電話から連絡する。社に上がって記事を書くはずも、時間があったり、大した記事でないと「次はどこに行くんだ?」と突っ込まれた。

実際に足を使わないと、取材にならなかった。事が起こると、現場や関係者の元に飛んでいく。最初は相撲担当だったが、実際に電話では取材にならなかったものだ。

各部屋には親方用、力士用と電話が2台ある。取り次ぎを面倒くさがって、居留守を使われる。本人が出ても「出掛けてます」なんてことも。親方や関取に電話取材は失礼ともとられ、出てもまともに答えてくれなかった。

一方で関取の自宅の住所、電話番号入手も仕事だった。ある時に緊急も夜も遅いために、初めてある大関の自宅に電話した。「なんでこの番号を知ってるんだ?!」と怒鳴られただけだった。

記者は1度もないが、今やLINEで取材する時代になったと聞く。新聞に紹介すると喜ばれることも多かったが、選手自身が情報を発信する時代にもなった。コロナ禍で取材も限られたオンラインが多くなり、一層拍車をかけることになった気がする。

記者にはそのSNSやネットのチェックが当たり前になった。今年に入って日本人のボクシング世界戦2試合は、いずれも海外での開催だった。現地から陣営によって情報やコメントが提供されたが、他の情報集めも欠かせなかった。

岩佐はウズベキスタンに乗り込んでの統一戦だった。ツイッターをのぞくと最初にある写真に目がいった。フェラーリに乗ってVサインし、助手席に祖母高橋シヲノさんが座っていた。車好きで知られ、17年に世界王座を奪取すると、後援者から贈られた。その後に福島の祖母の自宅までドライブした話を思い出した。

インスタグラムには遺影が投稿されていた。シヲノさんが3月に94歳で亡くなっていた。昨年11月下旬にようやく再会も窓越しで、会話したのはインターホンを通じてだったという。

その後もガウン、トランクスに加え、金のネックレスも新調したと投稿していた。デビュー戦ファイトマネーで購入した愛用品。シヲノさんは孫7人も岩佐だけ独身で、生前に結婚祝儀を用意していたという。愛用品を売り、葬儀で渡された祝儀を加えて、形見として18金を購入したそうだ。

岩佐は「ウズベキスタンでも上から見てくれているはず」と、2本のベルト奪取を誓っていた。おばあちゃん子の思いは強く伝わってきたが、願いはかなわなかった。

帰国後の投稿で現地のコロナ陰性証明書の不備でホテルに3日間隔離され、現在も自宅での2週間自主隔離中という。「瞑想の時間。今後をゆっくり考えたい」と投稿していた。足から指を使う時代にいまだに慣れない記者にとっては、悪戦苦闘はまだまだ続きそうだ。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

大相撲裏話

鶴竜は人としても“横綱”「土俵に入ったら鬼、下りたら笑顔」を体現

鶴竜親方

大相撲春場所中に、横綱鶴竜(現鶴竜親方)が現役を引退した。引退会見で印象に残ったのは、報道陣から「モンゴルの後輩へどんなエールを送るか」と質問された時の答えだった。

鶴竜 人に慕われる、後輩にも慕われる、人間としても成長して、いい人間になって欲しい。お相撲さんとしてだけじゃなくて人間としても成長して欲しい。

鶴竜の人柄の良さを、あらためて実感することができる返答だった。と同時に、ある出来事を思い出した。

16年、福岡・九州場所でのことだった。同場所で3度目の優勝を達成した鶴竜は、千秋楽から約1週間後に控えていた冬巡業参加のため、帰京せずに福岡に滞在していた。各地方場所後には通常、地方巡業が控えていて、参加する関取や付け人は本場所後に地方の宿舎に滞在することが多い。その際、千秋楽以降はちゃんこを作らない部屋がほとんどで、食事はおのおので調達しなければならない。当時、巡業参加のために福岡に滞在していた旧井筒部屋の若い衆と話す機会があった。巡業開始までの約1週間の日々の食事をどうしているのかと聞いたら「今日の昼は横綱が弁当を買ってきてくれました」と言った。

鶴竜自らが、宿舎近くの弁当屋に所属力士5人分程度の弁当の買い出しに行ったという。買い出しに行った経緯を聞くと「横綱が『場所中の付け人業務とかで疲れているだろうから俺が行くよ』と言ってくれました。こんな横綱いませんよね。本当に頭が上がりません」と恐縮しきりだった。後日、鶴竜本人に真相を聞こうとすると「まぁ、いいじゃない」と恥ずかしそうに笑い、多くは語らなかった。

心優しい横綱だった。報道陣にはいつでも快く対応。海外サッカーやNBAなどの他スポーツへの興味と理解も深く、海外で活躍する日本人選手がいると、評論家のように流ちょうに思いを語ってくれた。いつも穏やかな口調で話し、弟子にも当たり散らさない。周囲からの人望は高かった。

鶴竜は母国・モンゴルで相撲中継を見たのがきっかけで、角界への入門を望むようになった。角界へのつてが全くない中、15歳の時に相撲愛好会「日本相撲振興会」に送った手紙が、関係者を通じて先代井筒親方(元関脇逆鉾)に渡ったのがきっかけで旧井筒部屋に入門。「手紙を受け取ってくれて、拾ってくれて感謝の気持ちでいっぱい。一生忘れることはない」と当時を振り返った。

先代井筒親方からは「土俵に入ったら鬼のようになって、土俵を下りたら笑顔でみんなと接しなさい」と教えられたという。まさに、それを体現し、人としても“横綱”を張った横綱だった。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

チャベスら一時代築いた名王者たちが今夏リングに帰ってくる

フリオ・セサール・チャベス(メキシコ)にミゲール・コット(プエルトリコ)、そしてマルコ・アントニオ・バレラ(メキシコ)-。

1980年代から2010年代にかけて一時代を築いた名王者たちが、この夏、エキシビションマッチで続々とリングに戻ってくる。

コロナ禍の影響で昨年からボクシング界も大きなイベントの開催が難しい状況が続いている。そうしたなか昨年11月、元世界ヘビー級王者のマイク・タイソン(54=アメリカ)対元4階級制覇王者のロイ・ジョーンズ(52=アメリカ)のエキシビションマッチが注目され、有料配信で大成功を収めた。要は50歳を超えた元世界王者同士のスパーリングなのだが、抜群の知名度がある選手同士の“レジェンド対決”という付加価値が加わり好評を博したようだ。

これに触発されたのか、かつての大物たちが続々とリングに戻ってくることになった。6月12日、アメリカのフロリダ州マイアミでは元4階級制覇王者のコット(40)と、同じく4階級制覇の実績を持つファン・マヌエル・マルケス(47=メキシコ)がスパーリングで拳を交える予定だ。ラストファイトからコットは3年半、マルケスは7年が経っているが、どんなパフォーマンスを披露するのか注目される。

その1週間後の6月19日、メキシコのグアダラハラでは、89連勝や3階級制覇など記録にも記憶にも残るメキシコの英雄、チャベス(58)が、かつて拳を交えたこともある故ヘクター・カマチョの息子、カマチョ・ジュニア(42=プエルトリコ)とスパーリングを披露する予定だ。チャベスはWBC世界スーパー・ライト級王者時代の92年にカマチョ父に12回判定勝ちを収めている。因縁含みのカードだけに、こちらも注目を集めそうだ。

7月16日にはアメリカ(開催地は未定)でバレラ(47)対エリック・モラレス(44=メキシコ)のライバル対決PART4が予定されている。両者はスーパー・バンタム級、フェザー級、スーパー・フェザー級でいずれも世界王座をかけて対戦し、初戦はモラレス、2戦目と3戦目はバレラが勝利を収めている。いずれの試合も激闘で、どちらが勝ったか分からない僅差の勝負だった。すでにバレラは引退して10年、モラレスも8年以上が経っているが、エキシビションマッチとはいえ決着戦としての意味を持つだけに両者の士気も高いものがあるという。

このほかタイソン対イベンダー・ホリフィールド(58=アメリカ)のエキシビションマッチも計画に上がっている。また、元6階級制覇王者のオスカー・デラ・ホーヤ(49=アメリカ)はエキシビションではなく公式試合での現役復帰を目論んでいると伝えられる。

こうした趣向のイベントはなかなか興味深いものではあるが、やはり現役バリバリのスター選手たちのビッグマッチが見たいものだ。

そういった意味でもコロナ禍の収束が待たれる。

リングにかける

比嘉の強打は脚で封じる!元陸上部西田凌佑が金星へ

宣言通りの大番狂わせを起こせるか。4月24日に沖縄コンベンションセンターで元WBC世界フライ級王者で、WBOアジアパシフィック・バンタム級王者の比嘉大吾(25=Ambition)に日本スーパーバンタム級6位の西田凌佑(24=六島)が挑む。

4戦目で元世界王者比嘉に挑む西田

西田のプロのキャリアはまだ3戦(3勝無敗=1KO)。相手はキャリア豊富な元世界王者で、西田にとっては敵地となる沖縄での試合となる。常識的に考えて、完全に不利の見立てだが、指導する武市トレーナーは「キャリアは雲泥の差があるが、みなさんが思っている以上にあっと言わせる。沖縄の皆さんは比嘉選手の凱旋(がいせん)を楽しみにしていると思うが、会場を静まらせる自信があります」と言った。

その根拠は西田の「脚」にある。比嘉は17勝(17KO)1分け1敗で、勝利はすべてKO勝ちというバリバリのファイター。強打を認めた上で、それを不発に終わらせれば勝機が見えてくる。西田は奈良・香芝中時代、陸上部に所属。3000、1500、800メートルを主戦場にしていた。1500メートル4分30秒の走力が、大どんでん返しを起こす可能性だ。

意外に「走るのは嫌いです」と言い切るが、「スタミナは自信があります」。右利きのサウスポー。比嘉の突進をうまくかわしてパンチを当てていけば、大金星も夢物語ではない。

「4戦目でチャンスをもらえた。相手は比嘉選手でモチベーションは上がっている。こんなチャンスはめったにない。素直にうれしい。しっかり練習してベルトを持ち帰りたい」

15年、近大時代の西田凌佑(後列右から3人目)。後列左端は名城信男ヘッドコーチ、同左から3人目は赤井英和総監督

近大ボクシング部時代は、元WBA世界スーパーフライ級王者の名城信男監督(39)に鍛えられた。比嘉との対戦が決まると、ラインで報告。「1日も無駄にせず、集中するように」と返信があり、引き締まった。比嘉に勝てば世界ランク入りは確実。夢物語は大きく膨らむ。

ちなみに。近大といえば今、プロ野球阪神に入団して大活躍の佐藤輝明選手が欠かせない。「刺激になってます」などの答えを求めて西田に振ったところ、「えっ、そうなんですか?」って、知らんのかい。佐藤輝、まだまだやな。西田が比嘉に勝って、世界への挑戦権を得て、「近大」の代表格に躍り出るか。楽しみしかない。【実藤健一】

◆西田凌佑(にしだ・りょうすけ)1996年(平8)8月7日、奈良県香芝市出身。香芝中は陸上部、王寺工からボクシングを始める。同校3年時、国体フライ級少年の部で優勝。近大をへて19年10月にプロデビュー。戦績は3勝(1KO)無敗。身長170センチの左ボクサー。

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

大相撲裏話

還暦も相撲熱意衰えず 裏方さんの角界支える気概

取組のあと土俵上で動けなくなった響龍のもとに担架が運び込まれる(2021年3月26日)

春場所13日目。三段目の取組でアクシデントは起こった。響龍(28=境川)が相手の投げに、頭から激しく俵に落ちた。あおむけのまま動かず土俵に緊張が走る。土俵上で心配そうに容体をうかがう審判の親方衆から「動かさないで!」の声が飛ぶ。控室で見ていた部屋付きで元大関豪栄道の武隈親方も慌てて駆けつけた。医師が到着しても反応はなし。倒れてから6分後、ようやく担架に乗せられて土俵から下り、その後、救急搬送された。

ちょうど当番で、花道から土俵の進行を見守っていた若者頭の伊予桜さん(高砂)も、土俵溜(だまり)に駆け寄った1人だ。行司、呼出といった表舞台には立たないが、土俵を進行させる上で影武者のような、欠かせぬ存在の若者頭。土俵に上がり、医師の了解を得た上で担架に乗せ、響龍を花道から通路に運んだ。

無駄な動きは一切なく、動揺するそぶりもない。本場所の土俵でケガなどアクシデントはつきもの。慣れているといえばそれまでだが、感情を差し挟めばその後の進行に支障を来す。救急搬送までを無駄なく務めた。何があっても、土俵は進行させなければならない-。そんな使命からだろう。アクシデントがあったことを各所に伝えながら、この日も無事、興行は終わった。その6日前に60歳の還暦を迎えても、相撲に対する熱意、陰で支えようという気持ちに衰えなどない。

多くの一般企業などと違い(最近は引き上げる傾向にあるが)、日本相撲協会の定年は65歳。だからだろう、節目を迎えても「ピンと来ないね。年齢が60になったというだけで、仕事自体も役割もポジションも何も変わらないしね」と特別な感慨はない。職人かたぎと言えばいいだろうか。「その日、その日で、与えられた仕事を淡々とこなすだけだからさ」。受話器の向こうで、笑いも交えた野太い声が聞こえた。

伊予桜さんが還暦を迎えた春場所7日目の3月20日。若者頭の控室に、39歳の“青年師匠”高砂親方(元関脇朝赤龍)がやってきた。「本当だったら、みんなでお祝いの食事会でもしたかったんですが」。身に染みる、その言葉とともに部屋の親方や大関朝乃山からの、お祝い金を贈られた。若い衆からは特大の高級バスタオル。受け取ると伊予桜さんは仕事の合間を縫い、お礼のために高砂部屋所属の行司や呼出が待機する控室を回った。「幸せだよ、俺の人生はさ。こうやって相撲界で生きていられる。ありがたいことだよね」。33年前の誓いに間違いはなかった。

76年春場所で初土俵を踏んだ伊予桜さんは、8年半後の84年九州場所で念願の関取の座を射止めた。ただ、その場所は負け越し、1場所で幕下に陥落。関取復帰を目指していた、27歳を迎えようという88年春場所。高砂一門の若者頭が定年を迎えるにあたり、後任探しが一門内であった。おはちが回ってきたのが伊予桜さん。だが、まだ27歳でケガもなく現役は続けられる。「もう1回、十両に戻りたいという気持ちもあったし、やめるにしてもせめて30歳ぐらいまではと思っていたしね。高砂部屋の高見山さんや富士桜さんとか40になっても現役の人が目の前にいたこともあるし、遠慮しようかなと」。さらに「この世界しか知らないから他の世界も見てみたいという気持ちと、相撲界に残りたいという気持ちが半々だったな」と振り返る。考え抜いた末、最後は「この世界で頑張ろうと、決めたんだ」。45年の角界人生、ここまで悔いはない。

高砂一門では4人の、そうそうたる横綱にかかわってきた。千代の富士(故人、元九重親方=九重)、北勝海(現八角理事長=九重)、外国出身初の横綱の曙(東関)、そして朝青龍。「4人もの横綱の綱を作ったり、目の前で土俵入りを手伝ったり、本当に幸せだった」と懐かしむ。中でも朝青龍は、それまでの一門内ではあるが部屋が別の3人とは違い、高砂部屋の横綱誕生。「やっぱり部屋から横綱が出たのは、俺にとって最高の出来事だったかな。綱を作る時は本当に、うれしかった」と、その後の顚末(てんまつ)は別としても、大切な思い出として胸にしまっている。5年後に迎える定年までに、部屋からもう1人、横綱が誕生すればこれ以上の幸せはない。朝乃山へ期待する気持ちも胸に納めている。

コロナ禍で、埼玉県内にある自宅と両国国技館を往復する本場所以外は、自粛生活が続く。もう1年になり、緊急事態宣言の効果も薄れ、再び感染拡大は第4波を迎えているともいわれる。ただ、1人前になる十両に上がるまで数年を要し、その昇進確率も低い角界は「我慢」の2文字には耐えられる。「力士もみんなストレスがたまって大変だと思うけど、本場所中は感染者が出ない。世の中に比べれば、すごいと思うよ。いい意味の縦社会というか、みんなで『こうしよう』と決めたら、従順に我慢できるからね」。

愛媛県出身の伊予桜さん。花の色が時期ごとに変化することから「伊予桜」(山アジサイ)の花言葉は「移り気」「浮気」…。いや、名前に偽りあり! 角界を支える気概に、いささかの揺れもない。テレビ画面には映らない、こんな裏方さんたちにも支えられ角界は生き続ける。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

“白鵬特需”なるか コロナ直撃のぼり旗老舗が期待

白鵬・のぼり(2018年2月26日撮影)

大相撲7月場所(7月4日初日)が19年以来2年ぶりに名古屋・ドルフィンズアリーナで開催することが1日に決まり、相撲のぼりなどを製作する「吉田旗店」(岐阜市)からも歓迎の声が上がった。

同店は戦前から大相撲ののぼり旗を製作している老舗で、約6割のシェアを誇るという。名古屋開催の発表を受けて、5代目で会長の吉田稔さん(81)は「発注は例年も5月前後なのでまだきていないが、とりあえずはうれしく思います。ホッとしているのが正直なところです」と胸をなで下ろした。

昨年はコロナ禍で大きなダメージを受けた。大相撲ののぼり旗は縁起物のため1場所ごとに新品となり、通常は年間800から900本は製作するが、昨年は100本程度。夏場所と地方巡業の中止に加えて、通常の本場所でも受注が少なかったという。吉田さんは「1場所80本ほどは作りますが(3月の)春場所は12本ほどでした。少なからず、過去のものを再利用しているんじゃないか。相撲界だけじゃなくて、今はどこも苦しい懐事情なんだと思います」と話す。

2年ぶりの名古屋開催となる7月場所では“白鵬特需”に期待する。5場所連続休場となった横綱白鵬(36=宮城野)は、進退を懸けて7月場所に臨む意向。名古屋開催の7月場所は、通常の本場所よりも受注本数が多い傾向にある。「白鵬関ののぼりで、どのくらい発注がくるのかは楽しみです」と吉田さん。春場所では横綱鶴竜が引退。「やっぱり、新しい横綱が出てきてほしいですよね。白鵬関が仮に引退して横綱がいなくなったら(会場周辺の)見た目的にも商売的に寂しいですよ」。新たなスターの誕生にも期待した。【佐藤礼征】

2019年ドルフィンズアリーナにて、大相撲名古屋場所 友風がはたき込みで鶴竜に勝利し座布団が舞う中、足早に引き上げる白鵬(2019年7月19日撮影)
ドルフィンズアリーナにて、子どもたちと笑顔でハイタッチする白鵬(2018年7月8日撮影)
原功「BOX!」

フランプトン身長&リーチ差克服し3階級制覇なるか

4月3日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでWBO世界スーパー・フェザー級タイトルマッチが行われる。2年前に伊藤雅雪(伴流⇒横浜光)から王座を奪ったサウスポーのジャメル・ヘリング(35=米国)は、3度目の防衛を目指す。一方、スーパー・バンタム級とフェザー級の元世界王者、カール・フランプトン(34=英国)は3階級制覇を狙っての挑戦となる。

現在、この階級にはIBF王座決定戦出場が決まっている尾川堅一(帝拳)のほか東洋太平洋王者の三代大訓(ワタナベ)、日本王者の坂晃典(仲里)が世界ランクに名を連ねており、そういった意味でも王座の行方が気になるところだ。

海兵隊出身のヘリングは「センパー・ハーイ(忠誠を誓う)」というニックネームを持つサウスポーで、178センチの長身から繰り出す長い右ジャブと、細かなテクニックに定評がある。伊藤との試合では相手が得意とする打撃戦を許さず、自分の距離とペースを守って判定勝ち、ベルトを奪った。2度の防衛戦はアピールに欠けるものだったが、それこそがヘリングの持ち味といえる。相手の長所を潰したうえで巧みに迎え撃ちながらポイントを重ねていくことが多いのだ。

フランプトンは基本に忠実な右のボクサーファイター型で、テンポよく左ジャブを突き刺し、右ストレートに繋げる攻撃パターンを持つ。身長とリーチは165センチと体格に恵まれているとはいえないが、鋭く踏み込んで放つ左は正確でタイミングがいい。これまで合計9度(7勝2KO2敗)も世界戦のリングに上がっている。手数の多さと経験値の高さがフランプトンの長所だ。

この試合は昨年6月に計画されていたが、ヘリングが新型コロナウィルス検査で2度の陽性反応だったりV2戦で負傷したり、さらにはフランプトンも拳を痛めたりとトラブルが重なった。そのため開催地を英国ロンドンから中立国のアラブ首長国連邦に移して行われることになった。

オッズは4対3でフランプトン有利と出ているが、そう簡単に3階級制覇が達成できるとは思えない。最大の注目はフランプトンが13センチの身長差、18センチのリーチ差をどう克服するのかという点だ。フランプトンが鋭く踏み込んで距離を潰すことができれば耐久力に課題のあるヘリングを倒すシーンが見られるかもしれない。その一方、フランプトンが王者の体格とテクニックに戸惑い、攻めあぐねるようだと王座の移動はないまま終わりそうだ。

リングにかける

パンチに笑顔の武尊は二重人格スイッチ入り作戦無視

武尊対レオナ・ペタス 2回、レオナ・ペタスをKOで破って喜ぶ武尊(2021年3月28日撮影)

不敵な笑みは「二重人格」から生まれていた。28日に行われたケイズフェスタ4 Day2(日本武道館)でスーパー・フェザー級王者・武尊(29)が、Krush同級王者・レオナ・ペタス(28)を2回KOで破り、ベルトを守った。試合中、相手のパンチを浴びながらも笑顔を見せるシーンが何度も見られた。その真意は何だったのか。29日の一夜明け会見で明かした。

武尊 AB型なので二重人格なんですよ。リングに上がると別の人格になって、楽しく戦おうと。絶対に負けられない試合だったし、まともな神経だったら安全に戦うと思う。

ボクシングなどでは相手を威嚇するために“強気に”笑顔を見せることもあるが、武尊は「仲のいい友だちのような。憎くて、ではなく、戦っていて楽しい特別な相手。フィーリングが合って、楽しく打ち合えると思った」と明かす。もともと打ち合う作戦ではなかったが、リングに上がった瞬間にスイッチが入り、作戦を無視して殴り合いを始めた。

試合前は、これまで味わったことのない重圧に悩まされていた。「気持ちの部分で耐えられない時期もあった。寝ていても朝まで記憶があった感じで熟睡できなかった」。今試合は自身のケガとコロナで2度の延期の末、4カ月たってようやく実現。さらに那須川天心との一戦への期待もあって「今までで一番いろんなものを背負った。こんなきついことやりたくないくらい」とプレッシャーに押しつぶされそうになった。そんな状況下ではあったが、リング上で別人格に“変身”することで、普段通りのパフォーマンスを見せることができた。

勝利後はプレッシャーからも解放。観戦に訪れた那須川に「最高の舞台で最高の試合をしたい。よろしくお願いします」と語りかけた。さらに応援に駆けつけた西川貴教と満面の笑みでツーショットも披露。「久しぶりにプライベートで笑った。昨日(28日)は記憶ないくらいよく寝ましたね」。プライベートも好調。テレビ番組の企画ながら、今月放送された恋愛バラエティーで、タレント・トリンドル玲奈の妹・瑠奈に思いを伝え、友人からの交際がスタート。以前から「今年30歳なので相手を探したい」と話しており、もう1つの夢の実現も近づいているかもしれない。

「負けたら引退する覚悟だった。勝たないとやりたい試合(那須川戦)も実現しないと思っていた」。さまざまな問題を抱え、水面下で動いていたが、レオナに勝利したことで、公の場でようやく「戦いたい」と言えるところまで来た。歴史に名を刻む世紀の決戦の実現までこれから1歩ずつ歩みを進めていく。そして、那須川戦でも、笑顔で戦う。【松熊洋介】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

スーパーフェザー級のタイトル防衛に成功して、トロフィーを掲げる武尊(2021年3月28日撮影)