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大相撲裏話

正代、豊山が「ペコちゃん」「ポコちゃん」化粧まわし 縁結びは東農大「多くの社員を採用」

大相撲夏場所 初日 正代は菓子メーカー「不二家」のペコちゃんがデザインされた化粧まわしで土俵入りする=2022年5月8日

大関正代(30=時津風)と平幕の豊山(28=同)が土俵入りした際に締める化粧まわしが注目を集めている。

老舗洋菓子メーカーの不二家のマスコットキャラクター「ペコちゃん」「ポコちゃん」が描かれ、正代はペコちゃん、弟弟子の豊山はポコちゃんを着用。同社が化粧まわしを制作したのは初めてで、そもそも相撲界との接点も今までなかったという。一体どんな経緯で贈呈に至ったのか。

同社の広報担当者は「2人は東京農業大学出身。食品メーカーということもあり、同大学から多くの社員を採用している縁がありました」と答えた。また、本社近くの護国寺で行われる節分行事で部屋の関係者と顔を合わせていたということもあり、応援する気持ちが強くなったという。

化粧まわしにペコちゃん、ポコちゃんを選んだ理由については「代表するキャラクターですし、当社を示すのに一番わかりやすい」と説明。気になるお値段は「回答を控えさせていただきます」。社内でも話題になっているようで「かわいらしくて、目立っていてインパクトもあると好評です」と答えた。千秋楽を残し2人とも負け越しが決まったが、「最後までケガなく、みんなが元気になれるような相撲を取ってほしい」とエールを送った。【平山連】

大相撲夏場所 初日 豊山は菓子メーカー「不二家」のポコちゃんがデザインされた化粧まわしで土俵入りする=2022年5月8日
大相撲裏話

鎮魂の思いが込められた幟…常盤山親方の元兄弟弟子が「きっと天国から」見守っている聖地の土俵

2月に死去した千葉公康さん名で贈られた常盤山部屋の幟(のぼり)

湿気を含んだ春風に乗って、色とりどりの幟(のぼり)が両国国技館の敷地内にはためく。ひいき筋が、身びいきする部屋や関取衆のしこ名を記し提供するものだ。その中に、鎮魂の思いが込められた幟がある。「常盤山部屋さん江 ちゃんこ料理新 千葉公康」。そのひいき筋は天国から聖地の土俵を見守っている。

新花山のしこ名で幕下まで相撲を取り引退後は大阪で、ちゃんこ料理店を営んでいた千葉公康さんが2月1日、57歳で死去した。その千葉さんの名前を借りて幟を作ったのが常盤山親方(元小結隆三杉)。現役時代、二子山部屋で兄弟弟子の関係にあった。引退後も親交があり相撲道場で指導していた千葉さんの教え子も同部屋に入門した。「心臓が悪かったのは現役時代から知っていたけど急だったからね。僕の5年ぐらい後輩だけど弟同然。20年以上も店を開けたのも千葉ちゃんの人徳だからね」。

春場所千秋楽翌日には千葉さんの教え子だった新隆山(三段目)、今場所から序ノ口に番付が載った雷輝勝を連れ千葉さん宅で線香を上げた。以前に立てた幟は「大阪ちゃんこ新」の名義だったが、今回の幟は前述のように本名も入れた新調品だ。毎年夏場所で、この幟を必ず掲出すると決めた常盤山親方は少し涙声だった。「きっと天国から応援してくれているからね」。【渡辺佳彦】

2月に死去した千葉公康さん名で贈られた常盤山部屋の幟(のぼり)
原功「BOX!」

好カード目白押し 番狂わせ演じたビボルはアルバレスと再戦も 井上対ドネアは6月7日

4月9日のゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)対村田諒太(36=帝拳)の世界ミドル級王座統一戦に始まった世界チャンピオン同士の試合は、14日(日本時間15日)のスーパー・ウェルター級4団体王座統一戦まで6週連続で行われた。このあとも井上尚弥(29=大橋)対ノニト・ドネア(39=フィリピン/アメリカ)など次々とチャンピオン同士の好カードが予定されているが、その前に6試合を総括してみたい。

4月から5月にかけて行われた6試合は以下のとおりだ。

■4月9日@日本 WBA、IBF世界ミドル級王座統一戦

〇ゲンナディ・ゴロフキン 9回TKO ●村田諒太

※戦前のオッズは5対1でゴロフキン有利

■4月15日@アメリカ WBA、WBC、IBF世界ウェルター級王座統一戦

〇エロール・スペンス(アメリカ) 10回TKO ●ヨルデニス・ウガス(キューバ)

※戦前のオッズは6対1でスペンス有利

■4月23日@英国 WBC世界ヘビー級団体内王座統一戦

〇タイソン・フューリー(英国) 6回TKO ●ディリアン・ホワイト(ジャマイカ/英国)

※戦前のオッズは9対2でフューリー有利

■4月30日@アメリカ WBC、WBO世界スーパー・フェザー級王座統一戦

〇シャクール・スティーブンソン(アメリカ) 12回判定 ●オスカル・バルデス(メキシコ)

※戦前のオッズは5対1でスティーブンソン有利

■5月7日@アメリカ WBA世界ライト・ヘビー級タイトルマッチ

〇ドミトリー・ビボル(キルギス/ロシア) 12回判定 ●サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)

※戦前のオッズは4対1でアルバレス有利

■5月14日@アメリカ 世界スーパー・ウェルター級4団体王座統一戦

〇ジャーメル・チャーロ(アメリカ) 10回KO ●ブライアン・カスターニョ(アルゼンチン)

※戦前のオッズは7対4でチャーロ有利

世界チャンピオン同士の対決とあってゴロフキン対村田、スペンス対ウガス、チャーロ対カスターニョなど見応えのある試合が続いた。このなかで圧倒的な力を見せつけたのがフューリーで、暫定王者に何もさせずに一蹴した。

スティーブンソンはバルデスの強打を空転させて大差の判定勝ちを収めた。2016年リオデジャネイロ五輪銀メダリストは順調に成長しているが、物足りなさも感じさせた。今後は魅せるボクシングも求められることになりそうだ。

オッズどおりの結果が多かったが、唯一の番狂わせがビボル対アルバレスだった。世界的にみれば6試合のなかで最も注目度の高かった一戦だが、体格で勝るビボルが巧みな試合運びと手数で人気者を破るという結果に終わった。年内に再戦という計画が浮上しているだけに今後の交渉に注目が集まる。

このあとも再びチャンピオン同士の注目ファイトが続く。

★6月5日@オーストラリア 4団体統一世界ライト級タイトルマッチ

ジョージ・カンボソス(オーストラリア)対デビン・ヘイニー(アメリカ) 

★6月7日@日本 WBA、IBF、WBC世界バンタム級王座統一戦

井上尚弥対ノニト・ドネア

★6月18日@アメリカ WBC、IBF、WBO世界ライト・ヘビー級王座統一戦

アルツール・ベテルビエフ(ロシア)対ジョー・スミス(アメリカ) 

特に日本のファンにとっては井上対ドネアが気になるところだ。2年半前の初戦は歴史に残る激闘だったが、今回はどんな試合になるのか楽しみだ。井上が付け入るスキを与えずに完勝するのか、はたまたドネアが雪辱を果たすのか。オッズは14対3で井上有利と出ている。

大相撲裏話

ウクライナ出身獅司対ロシア出身狼雅 国技館を包んだ温かい拍手

<大相撲夏場所>◇10日目◇17日◇東京・両国国技館

両者のしこ名と出身地がアナウンスされると、東京・両国国技館内は温かい拍手に包まれた。幕下上位のウクライナ出身初の力士の獅司(25=入間川)とロシア出身の狼雅(23=二子山)が対戦し、狼雅が下手投げで制した。勝ち名乗りがあがると、再び館内に大きな拍手が起こった。狼雅は2勝3敗、獅司は1勝4敗で負け越しが決まった。

狼雅(右)の寄りをこらえる獅司(撮影・野上伸悟)

この一番を特別な思いで見守ったのが、ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所代表の松江ヴィオレッタさん(37)。7月に米国で行われるアマチュア相撲の世界大会に出場するため、今月下旬から大分・宇佐市などで事前合宿を行うウクライナ選手団をサポートしている。仕事の都合でテレビ観戦できなかったが、ウクライナを訪れた際に会った獅司が負け越したと聞いて残念がった。それでも両力士をたたえる拍手が館内から送られたと伝えると「相手のことを深く敬う相撲の良さを感じます」と、ひときわ感慨深げに話した。

ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所代表を務める松江ヴィオレッタさん(左)と共同代表の三池さん(撮影・平山連)

母がロシア人、父が日本人の松江さんは「どこの国で生まれたかということよりも、人と人の信頼関係が大事」と信じる。「負けた相手を敬う相撲の考え方を広めたい」(ウクライナ相撲連盟のセルゲイ名誉会長)という言葉に共感して設立したJAPAN事務所はまだ始まったばかりだが、この日の取組から受けた刺激を活力にして自分の道を突き進む。

【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

リングにかける

棚橋弘至「歴史残せた」USヘビー初防衛戦敗れても気分は別格 再奪取へ「止まっていられない」

5月15日、新日本米ワシントンDC大会で、ハイフライアタックを仕掛ける棚橋(新日本プロレス提供)

成長させてくれて、ありがとう-。14日(日本時間15日)開催の新日本プロレス米ワシントンDC大会で、IWGP・USヘビー級王座の初防衛に失敗したエース、棚橋弘至(45)は、敗れたにもかかわらず、どこか晴れやかな表情を浮かべていた。

それもそのはずだ。初戴冠となった昨年8月以来、約9カ月ぶりとなった米国での「USヘビー」タイトル戦。地元の大歓声。昨年から「アメリカで巻いてこそ意味がある」と“ベルトがあるべき場所”での対戦を熱望してきた通り、気分は別格だった。「ここにベルトを巻いて戻ってこられた。俺としても歴史は残せたかな」。試合後はそう、しみじみと振り返った。

メインイベントの同級選手権試合でジュース・ロビンソン、ジョン・モクスリー、ウィル・オスプレイと4WAYマッチで対戦した。場外の長机にモクスリーをセットし、コーナーポストから場外へハイフライフローをさく裂するなど見せ場を作ったが、王者から直接勝利しなくても他3選手のいずれから白星を挙げれば新王者が決まる一戦だ。リング内で戦っていたロビンソンが、オスプレイにHHB(フィッシャーマンズドライバー)を決めて3カウントを奪取。その瞬間、3度巻いた愛着のあるベルトとともに帰国するという夢は、はかなく散った。

昨年8月、米ロサンゼルス大会でランス・アーチャーを破り、初の日本人同級王者となった。ジェイ・ホワイトに続き史上2人目となる新日本4大シングル王座全戴冠を達成。順風満帆かと思われたUSヘビー級王者だったが、その道のりは険しかった。

昨年11月にKENTAに敗れてベルトを失うと、今年1月の東京ドーム大会ではKENTA発案のノーDQ(反則裁定なし)タイトルマッチを経験。高さ5メートルの巨大ラダーからハイフライフローを決めて勝利するも、「あるのは虚無感だけ」と話した混沌(こんとん)の一戦に、わだかまりは残った。2月にはSANADAに敗れて防衛に失敗。3度目の戴冠は、王者のケガによる返上で巡ってきたチャンスだった。今月1日の福岡大会(ペイペイドーム)で、石井智宏との王座決定戦。20分超の熱戦を制し、再び米国への切符をつかんだ。

酸いも甘いも、ともにしてきたベルトだ。今回のワシントンDC大会では、自身が直接3カウントを奪われて負けたわけではない。もちろんそこには、悔しさも、もどかしさもあったはずだった。だが、棚橋は言い切った。「止まってられないから。次に進むから。USヘビーで得た経験は俺を成長させてくれたから」。そう、敗戦も前向きに捉えている。

4度目に会う時は、一回り大きくなった棚橋を約束する。「またいつか巡り合う日が来るのを俺は信じてる。最後に、USヘビー。本当にありがとう。また、いつか…」。そう、相棒に一時の別れを告げた。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

大相撲裏話

「忘れてもらいたくない」人がいる 御嶽海が育った長野・上松町で続くパブリックビューイング

<大相撲夏場所>◇8日目◇15日◇東京・両国国技館

長野・木曽郡上松町は「相撲どころ」と称される。本場所初日を迎えると、同町の公民館は地元住民でにぎわいを見せる。大関御嶽海(29=出羽海)を応援しようと、PV(パブリックビューイング)が行われるから。初土俵を踏んだ時から続く恒例行事だ。

遠藤(右)をはたき込みで破る御嶽海(撮影・野上伸悟)

主催する同町のスポーツクラブ「木曽ひのきっ子ゆうゆうクラブ」事務局長の辺見元孝さん(63)は「優勝争いに絡む場所では、ほぼ毎日やりますよ」と胸を張る。コロナ禍では感染症対策のために大会議室でイスの間隔を空けるなどして開催。今場所は従来通り公民館玄関のロビーに会場を移した。初日に平幕の高安を退けた一番には、テレビ中継を見ようと25人が駆けつけた。しこ名が入ったそろいのタオルやうちわを手にして応援する姿は、地域に一体感を与える。

PVは今後も実施していく。なぜ続けるのかと尋ねると、辺見さんは「上松町で育った大道久司(御嶽海の本名)のことを忘れてもらいたくないから」と答えた。厳しい戦いが続く今場所だが、「10勝は絶対最低限クリア」と誓う29歳の巻き返しを期待していた。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

7月世界相撲大会へウクライナ代表の日本合宿をサポート “日本の代理人”松江ヴィオレッタさん

ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所代表を務める松江さん(左)と共同代表の三池さん(撮影・平山連)

「ウクライナの相撲文化を知る私だからこそやれることがある。このまま見過ごすことはしたくない」。ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所代表の松江ヴィオレッタさん(37)が、4月に発足した団体の経緯を切実な声で訴えた。7月に米国で行われる世界大会に出場する代表選手たちは、ロシアの軍事侵攻により満足に稽古を積めていない。大分・宇佐市などで事前合宿を行うため今月下旬に来日するにあたり、松江さんはサポートを買って出た。

ウクライナの競技人口は3000人ほどだが、同国初の力士で幕下の獅司(25=入間川)がいる。松江さんは仕事で過去に2回現地を訪れ、相撲連盟名誉会長のセルゲイ氏の教えの下で老若男女幅広い世代が稽古に励む姿を見た。

第2の都市ハリコフは第48代横綱、大鵬の納谷幸喜さんの父親の出身地。日本との縁を感じた。セルゲイ氏が「負けた相手を敬う相撲の考え方を広めたい」と話す言葉にも共感し、JAPAN事務所の旗揚げに協力した。

ロシアの軍事侵攻で隣国に避難した代表選手もいる。稽古を再開できていない人も多い中、世界大会が刻々と迫る。大会に向けてピークに持っていこうとする選手団20人のために、「日本の代理人」という松江さんは仲間とともに準備を急ぐ。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

東大・須山2連勝 同部屋・志摩ノ海「東大生らしい学ぼうという姿勢」宇良「自分たちも刺激に」

前相撲で須山は若大根原を破り2連勝(撮影・足立雅史)

日本の最難関大学とされる東大から初の角界入りを果たした須山(24=木瀬)が前相撲2日目も白星を挙げ、初日に続き2連勝を飾った。対戦相手はともに10代だったが、「(土俵に上がれば)年齢なんて関係ないです」ときっぱり言った。師匠の木瀬親方(元前頭肥後ノ海)から言われた「前に出ろ」というアドバイスを忠実に実践している。

異色の経歴を持つ須山は、一から学ぼうとする姿勢を崩さない。先輩の幕内力士たちも、そんな弟弟子に大きな注目を寄せている。

同じ木瀬部屋に所属する平幕の志摩ノ海(32)と宇良(29)に後輩について尋ねると、2人とも貪欲な姿に好感を持っていた。志摩ノ海は「すごく学ぼうという姿勢がある。いろいろ聞いてきてくれて、そこが東大生らしい」と答えた。

宇良は須山とまだ世間話程度しか会話したことがないようで、「(相撲を学ぶ相手として)この人は違うなと思われてるかもしれない」と笑った。それでも「学ぼうという姿勢は自分たちも刺激になる。こちらも東大に興味があるし、(須山は)相撲取りに興味がある。これからが楽しみですね」と、後輩との交流を心待ちにしていた。【平山連】

前相撲で須山(左)は若大根原を破り2連勝(撮影・足立雅史)
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スーパー・ウェルター級4団体王座統一戦チャーロ対カスターニョ再戦迫る

スーパー・ウェルター級の4団体王座統一戦が14日(日本時間15日)、アメリカのカリフォルニア州カーソンのディグニティ・ヘルス・スポーツ・パークで行われる。WBA、WBC、IBFの3本のベルトを持つジャーメル・チャーロ(31=アメリカ)とWBO王者のブライアン・カスターニョ(32=アルゼンチン)が対戦するもの。両者は昨年7月に今回と同じ立場で拳を交え、打撃戦のすえ三者三様の12回引き分けに終わっている。ふたりとも「今度こそ」の思いが強いだけに今回も激闘になりそうだ。

10カ月前の初戦は「年間最高試合」の候補に挙がるほどの熱戦だった。序盤はチャンスとピンチが交互に訪れるスリリングな展開になり、中盤はカスターニョ、終盤はチャーロが支配するという試合だった。ややカスターニョ優勢かと思われたが、採点は117対111(チャーロ)、114対113(カスターニョ)、114対114で決着はつかなかった。ふたりとも「接戦だったが俺が勝っていた」という思いを抱いてリングを降りた。

試合後、両陣営は再戦に向けて交渉を開始。今年2月26日が候補日に挙がったが締結には至らなかった。このあと3月19日に試合日が決まったが、2月にカスターニョがスパーリング中に右の上腕二頭筋を痛めたため2カ月延期された経緯がある。チャーロは「ただ単に練習する時間が欲しかったんだろう」と負傷に対して懐疑的な見方をしている。真偽のほどは分からないが、すでに場外で心理戦が始まっているのは間違いない。

初戦は9対4でチャーロ株が高かったが、今回は3団体王者有利は変わらないものの11対8に差が縮まっている。前回はカスターニョの知名度不足がオッズに響いたようだ。

WBC世界ミドル級王者、ジャモール・チャーロの双子の弟としても知られるチャーロは身長180センチ/リーチ185センチと体格に恵まれ、階級随一のスピードを誇る。36戦34勝(18KO)1敗1分とKO率は決して高くないが、最近はパンチに鋭さが出てきた。

対するカスターニョはこの階級では身長171センチ/リーチ171センチと小柄だが、頑丈な体を利して相手に肉薄、回転の速い連打を叩きつける好戦的なスタイルを持つ。戦績は19戦17勝(12KO)2分。

距離を詰めないと仕事がやりにくいカスターニョは初戦同様、積極的にプレッシャーをかけていくものと思われる。これに対しチャーロがどんな選択をするかがカギといえる。意地とプライドを見せて打撃戦に応じるのか、それとも初戦の反省を生かしてスピードと足をつかってアウトボクシングをしようとするのか。いずれにしても一瞬も目の離せない試合になることは間違いない。

リングにかける

現役続行表明した矢吹正道、「終わり」から「復活」へ駆り立てた子どもたちの存在と伝えたい思い

21年9月22日、チャンピオンベルトを腰に声援に応える矢吹正道

前WBC世界ライトフライ級王者の矢吹正道(29=緑)が現役続行を表明した。8月11日に愛知・刈谷市でWBO世界同級5位のタノンサック・シムシー(21=タイ)と契約50・0キロの10回戦で対戦する。

昨年9月に安定王者の寺地拳四朗(30=BMB)から10回TKOでベルトを奪った矢吹だが、今年3月の初防衛戦、ダイレクトリマッチで3回KO負けを喫した。「もう辞めようと思って1週間ぐらいだらだら暮らしていました」。そんな「終わり」から「復活」へ駆り立てたのが子どもたちの存在だった。

長女の夢月(ゆづき)ちゃん(11)、長男の克羽(かつば、8)くんとも、お父さんの影響を受けてか、ボクシングを始めた。特に克羽くんは通学前、毎朝6時に矢吹を相手にミット打ちを行うのが日課。そのセンスは、この時点で一目瞭然だ。

矢吹はボクシングの底辺拡大を目指し、昨年から所属の名古屋市内の緑ジムでこどもの日、5月5日に「スパーリング大会」を開催する。「この中から世界王者が誕生してほしいですね」と夢を語る。

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もちろん、相手の脳を揺らす生死をかけた危険なスポーツだが、人生をかけた魅力的な競技でもある。厳しい体重制。各自の減量法によっては数日で10キロ近く落とす過酷なスポーツだからこそ、勝利にたどりつくドラマは深い。

矢吹も補導歴50回超の壮絶な少年時代から、ボクシングと出会って世界王者にまでなった。そんな逆転人生をいまだくすぶっている少年少女に伝えたい思いがある。

そんな子どもたちの存在にも刺激を受けて、矢吹は再び立ち上がる。「立て、立つんだジョー!」は不朽のボクシングマンガ「あしたのジョー」で、悪事に手を染め少年院に行った「悪童」の主人公・矢吹丈をボクシングで更正させた丹下段平の名セリフだ。

ボクシングとは、奥が深い。これまで長い取材担当で極めていた気になっていたが、子どもを通じた矢吹の思いにあらためて教えられた思いだ。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

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原功「BOX!」

高度円熟期を迎えたカネロ・アルバレス 1階級上のライト・ヘビー級王座に挑む

現在のボクシング界で最も高い評価を受けているスター選手、サウル・カネロ・アルバレス(31=メキシコ)が7日(日本時間8日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでドミトリー・ビボル(31=キルギス/ロシア)の持つWBA世界ライト・ヘビー級スーパー王座に挑む。4階級制覇を成し遂げ、現在はスーパー・ミドル級4団体統一王者の肩書を持つアルバレスにとっては1階級上の王座への挑戦となるが、4対1で圧倒的有利と見られている。

アルバレスは2011年から2022年にかけてスーパー・ウェルター級、ミドル級、スーパー・ミドル級、ライト・ヘビー級と約10キロの体重の壁を乗り越えて4階級制覇を成し遂げている。特に2018年以降はミドル級 → スーパー・ミドル級 → ミドル級 → ライト・ヘビー級 → スーパー・ミドル級と試合ごとに階級を上下させて世界戦を行ってきた。一時期は3階級の王座を同時に保持するなど、まさにスター選手の特権を享受してきたといえる。

それを非難する声があるのも事実だが、直近の8戦で全勝、しかもゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)をはじめ4人の無敗王者を下しているのだから実力を認めないわけにはいかない。20度の世界戦(18勝11KO1敗1分)を含むトータル戦績は60戦57勝(39KO)1敗2分というみごとなものだ。

15歳からプロとして戦ってきたアルバレスは7月で32歳になるが、歴戦のダメージや加齢による衰えは感じられない。むしろ2年前にスーパー・ミドル級に定着してから強さが増した印象だ。スピード、パワー、テクニック、耐久力、ボクシングIQに経験値が加わり高度円熟期に入ったといっていいだろう。

そんなアルバレスの挑戦を受けるビボルは、モルドバ人の父親と韓国人の母親の間にキルギスで生まれた。ロシア国籍だが現在はアメリカのカリフォルニア州インディオに住んでいる。ボクシングは6歳のときに始め、アマチュアで283戦(268勝15敗)を経験後、23歳でプロに転向した。初陣から1年半、わずか7戦目でWBA世界ライト・ヘビー級暫定王座を獲得し、2度防衛後に正王者に昇格。さらに8度防衛後にスーパー王者として認定された。11度の世界戦を含む戦績は19戦全勝(11KO)で、6年間に10度防衛中だ。

スピードのある左ジャブを突いて間合いをつくり、機を見て決め手の右ストレートを打ち込む。返しの左フックも正確で強い。ただし、王座を守る意識が強くなったのか直近の6試合はすべて12回判定勝ちで、アピール度に欠ける試合が続いている。アルバレスにとっては2年半ぶりのライト・ヘビー級での試合で、いわば冒険マッチともいえるが、最近のビボルを見て与し易しと感じた可能性もある。

ビボルは身長/リーチとも183センチで、それぞれアルバレスを10センチ/4センチ上回っている。このアドバンテージとスピードのある左ジャブで4階級制覇王者をコントロールできれば勝機は広がるだろう。加えてカウンターの右が機能すればポイントを奪うこともできそうだ。ただ、アルバレスの圧力に押されて距離を詰められ、中近距離での戦いに持ち込まれると苦しい。ビボルは長丁場の戦いに慣れてはいるが、終盤になってもパワーが落ちないアルバレスが相手となると分は悪い。番狂わせの可能性があることは否定できないが、オッズどおり20パーセント程度ということになるだろう。アルバレスがまたひとつ勲章を増やしそうだ。

リングにかける

ボクシング王者フューリーが好む“異種格闘技マッチ”UFC王者&WWE元王者との対決に意欲

4月23日の試合後リングでUFCヘビー級王者ガヌー(右)と対戦希望を口にするWBC世界ヘビー級王者フューリー(トップランク社公式ユーチューブより)

プロボクシングWBC世界ヘビー級王者タイソン・フューリー(33=英国)は本当に“異種格闘技マッチ”が好きなのだろう。

4月23日(日本時間24日)、英ロンドンのウェンブリースタジアムに9万4000人の観客を集め、WBC世界同級暫定王者ディリアン・ホワイト(34=英国)との団体内王座統一戦に臨むと右アッパーで粉砕。6回2分59秒、TKO勝ちで王座統一&2度目の防衛に成功した。すると現役引退の意向を示した。

その直後、試合視察していたUFCヘビー級王者フランシス・ガヌー(35=カメルーン)と並び、対戦実現を誓い合った。フューリーは「この対戦が実現すれば爆発的な戦いになるだろう」と真剣な表情。ガヌーも「地球上で誰が一番強いのかを知りたいだろう」と応じると「おお良い男だ、フランシス!」と絶叫していた。

しかしホワイト戦後の会見で、今度は米プロレスWWEへの再参戦にも意欲をみせた。絶妙のタイミングで、9月3日にWWEの英スタジアム興行「WWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスル」が予定される。ウェールズ・カーディフのプリンシパリティ・スタジアム(収容7万4009人)が会場。92年にロンドンのウェンブリースタジアムでビッグイベントのサマースラムを開催して以来の英スタジアム大会だ。この興行を見据え、まずフューリーは7月30日、米ナッシュビルで開催されるサマースラム大会への出場を希望した。

19年にWWEに初参戦した際には、サウジアラビアで「巨獣」ブラウン・ストローマンとプロレスルールで対戦。TKO(リングアウト)勝利を飾っている。フューリーは「(9月に)カーディフにいたい。特にレスリングのために、英国の中心舞台にいたい。前回のサウジアラビアは楽しませてもらった。素晴らしい経験をここ(英国)でするのは驚異的だ。(WWEと)連絡を取り、サマースラム(の出場)を実現できるかを確認する」とノリノリなのだ。

これまでフューリーは英国人初のWWEヘビー級王者となったドリュー・マッキンタイア(36=英国)との対戦を熱望していた。母国で人気の高い元王者マッキンタイアとのヘビー級対決が実現すれば、大きな話題になるだろう。WWEでマッキンタイアと対決した後には、現UFCヘビー級王者ガヌーとのメガマッチを迎えることになるのだろうか。

ボクシングでは3団体(WBAスーパー、WBO、IBF)統一ヘビー級王者オレクサンドル・ウシク(35=ウクライナ)が前3団体統一同級王者アンソニー・ジョシュア(32=英国)との再戦を予定しており、4団体王座統一戦の実現は先の話になる。

試合後リングでアカペラで歌い、愛称「ジプシーキング」通り、キングの王冠を装着して入場するフューリーはボクシング界のエンターテイナーそのもの。ただ4本のベルトを統一するチャンスをじっと待つことよりも、他格闘技の王者クラスとの対決が魅力的に見えるのだろう。その心意気が、大金を稼ぐ世界的スターにのし上がった理由なのだとつくづく思う。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

大相撲裏話

元兄弟子の元稀勢の里が見た高安「力強さ戻り培った経験が加わった」優勝あと1歩に迫った春場所

高安(2022年3月18日撮影)

若隆景による新関脇優勝で幕を閉じた3月の春場所。千秋楽時点で優勝の可能性があったのは3人と盛り上がりを見せた春場所だったが、序盤戦から場所を引っ張ったのが平幕の高安(32=田子ノ浦)だった。

勝てば優勝が決まる結びの一番で関脇阿炎に負け、優勝決定戦では若隆景に土俵際で逆転負け。千秋楽の数日前までは「ついに初優勝か」と周囲もうずうずしていただけに、肩を落としたファンも多かったはず。

場所中に取材に応じた高安の元兄弟子の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)もその1人だろう。春場所14日目に高安の優勝に備えて取材したのだが、お蔵入りになってしまってはもったいないので、当時取材した話を当コラムに記そうと思う。

昨年8月に独立するまでの約16年間、二所ノ関親方は高安の苦楽を間近で見てきた。厳しい稽古や集団生活になじめず、何度も部屋から脱走して実家に逃げ帰った新弟子時代を思い返し「まさか関取になるとは思わなかった力士ですから。優勝するなんて夢にも思っていない」と笑った。

春場所では“新高安”を実感したという。ちょうど1年前。部屋付き親方として田子ノ浦部屋にいたころ、高安と三番稽古をしていても力強さや重さを感じなくなった。「あぁ、もう高安これで終わりかなって諦めた時もあった」という。その後に独立し、高安の姿を見るのは本場所だけに。昨年九州場所の時も印象は変わっていなかったが春場所は違った。実際に体重は大関時代の183キロまで増量。同親方は「肩から背中の張りがすごい。腰まわりもかなり太い。ハムストリングも復活した」と目を見張った。

加えて、経験の多さが高安の強みでもあった。「苦しいことやつらいことをたくさん味わってきた。今場所は集大成」と同親方。「高安の良さと今までやってきた我慢強い相撲が融合している。ここ何年も見てないような相撲になっている」と分析した。体を大きくしたことで本来の力強さが戻り、そこに培ってきた経験が加わり結果につながった。「考え方と技術と体力が融合されて新しい高安になってきた」と話す。

環境が変わったことも大きな要因となった。二所ノ関親方が独立し、高安の稽古相手は幕下以下の力士だけとなった。最近、高安の胸まわりの体毛が薄くなったのでは、と記者に問われると「胸を出しているんじゃないですか。『稽古しない力士は毛が増える』って先代(故鳴戸親方=元横綱隆の里)がよく言っていたから」と冗談交じりに話したが「非常に工夫しながら若い衆と稽古できているのかもしれない」と推測していた。

二所ノ関親方は取材当時、「優勝できる」「優勝して欲しい」といった直接的な言葉こそ使わなかったが、言葉の端々には、今場所こそは、という思いがにじみでていた。

兄弟子や周囲の大きな期待を背負った高安だったが、あと1歩届かなかった。それでもまだまだ視線は下に落とさない。

大相撲夏場所(5月8日初日、東京・両国国技館)の番付発表前の4月下旬、両国国技館の相撲教習所で行われた合同稽古に参加した際、高安は春場所を振り返り「優勝は出来なかったけど、たくさんの人から激励の言葉をいただいた。まだまだ頑張れるというのは示せたので、裏切らないように、もっと頑張っていきたいですね」と語った。大関経験者の実力あるベテランの視界には、まだ賜杯が色濃く映っている。【佐々木隆史】

原功「BOX!」

バルデス対スティーブンソン 五輪出場、2階級制覇、全勝の王者が激突 尾川堅一も王座統一に興味

30日(日本時間5月1日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでスーパー・フェザー級のWBC王者、オスカル・バルデス(31=メキシコ)対WBO王者、シャクール・スティーブンソン(24=アメリカ)の王座統一戦が行われる。五輪出場、2階級制覇、全勝と共通項の多い両王者だが、バルデスが打撃戦を得意としているのに対しサウスポーのスティーブンソンは技巧派と戦闘スタイルは対照的だ。中量級の主役になると期待されているスティーブンソン有利とみられているが、バルデスの強打を推す声もある。

ふたりともトップランク社とプロモート契約を交わしているが、プロデビューはバルデスが5年早い。2008年北京大会、2012年ロンドン大会と2度の五輪出場を果たしたバルデスは2012年11月にプロ転向を果たし、4年後にWBO世界フェザー級王座を獲得。一方のスティーブンソンは2016年リオデジャネイロ五輪に出場したあと、バルデスのWBO世界フェザー級王座2度目の防衛戦の前座でプロデビューを果たした。2017年4月のことだ。

その後も両雄の縁は続く。バルデスが6度の防衛後に王座を返上してスーパー・フェザー級に転向すると、空位になったWBO世界フェザー級王座の決定戦にスティーブンソンが出場して判定勝ち、バルデスの後継王者になった。ただし、スティーブンソンは初防衛戦を行わずに王座を返上、スーパー・フェザー級に転向している。

昨年2月、バルデスがスーパー・フェザー級でWBC王座を奪取すると、その4カ月後、スティーブンソンはWBOの暫定王座を獲得。

9月にバルデスが初防衛を果たすと、1カ月後にスティーブンソンは団体内統一戦を制して正王者に昇格し、デビューから5年で“先輩”に追いついた。

5対1という一方的なオッズが出ているように、すでに評価ではスティーブンソンが上回っている。持ち味のスピードを生かしたアウトボクシングが冴えればWBO王者が序盤から着々とポイントを重ねることになりそうだ。バルデスのパンチを空転させ、戦闘能力と意欲を削いでしまえば終盤のストップ勝ちも考えられる。

厳しい戦いが予想されるバルデスは工夫を凝らして距離を潰し、破壊力のある左右フックやアッパーを狙いたいところだ。名匠エディ・レイノソ・トレーナーがどんな戦術を練るのかという点にも注目したいが、それでも勢いのあるスティーブンソンを捕まえるのは難しいと思われる。

戦績はバルデスが30戦全勝(23KO)、スティーブンソンが17戦全勝(9KO)。この階級にはIBF王者の尾川堅一(帝拳)がおり、近い将来の王座統一にも興味を持っているだけに勝負の行方が気になるところだ。

リングにかける

相手も逆境も関係ない「格闘技が好き」な堀口恭司 ベラトールで敗退も早期カムバックに意欲

ベラトール・バンタム級GP1回戦敗退から一夜明けて、オンラインで日本メディアの取材に応じる堀口恭司(2022年4月25日撮影)

「どんな形でも勝つことを目標に掲げます」。米総合格闘技ベラトールのバンタム級グランプリ(GP)初戦で敗れたRIZINバンタム級王者の堀口恭司(31=アメリカン・トップチーム)が大会後に語ったのは、そんな力強いひとことだった。

23日(日本時間24日)、米ハワイで臨んだ同GP1回戦でベラトール同級2位パトリック・ミックス(28=米国)と対戦した。10センチ以上身長差のある相手。長い手足を使って引き寄せられ、得意とするグラウンドの攻防に誘(いざな)われた。5回フルラウンドを戦い抜き、最後まで極めさせなかったが、判定で1ポイント差の敗退。現地で見届けたRIZIN榊原信行CEO(58)が「ここまで(堀口の)良さが消された試合は記憶にない」とするなど、そのポイント差以上に厳しい展開を強いられた戦いだった。

昨年12月、王者ペティスに4回KO負けを喫して以来の再起戦も、プロ入り初の連敗。19年11月以来の同級ベルト奪回のチャンスも、遠ざかった。

それでも、一夜明けた24日(日本時間25日)、日本メディアの取材に応じた堀口が口にしたのは、後悔よりも将来に向けた言葉だった。「メシをばかばか食って筋肉をつけまくる。マッチョになる」と、バンタム級仕様の肉体強化を宣言。「夏ぐらいには(次の試合を)できるのではないかと思います」と、早期カムバックに強い意欲を示した。完敗ともいえる敗戦直後の会見。そこで、これほどまでにビジョンを明確にできる選手は、決して多くはないはずだ。

何が堀口を突き動かすのか。それは「格闘技が好き」というシンプルな思いだ。大会前に言っていた。ケガをしても練習がきつくても、ペティスに敗れても体格差が歴然のミックスが相手でも…「格闘技を忘れたいと思ったことは1度もありません」。どんな相手であろうと、どんな逆境であろうと、ワクワクする戦いに変えてしまうのが堀口なのだ。

18年9月、神童、那須川天心と対戦した時もそうだった。グラップリングを封印し、キックボクシングルールで対戦。当然、不利の状況だが、試合では笑顔を隠さなかった。「自分はなんでも言われるがままなので(笑い)。対戦相手を拒まないし『なんでもいいからやります』って言っちゃうんです」。それは、どうしてか。「これが嫌だ、あれが嫌だというのは、自分の考えでは『逃げ』。誰が来ても問題ないと思っているので」。そう、自信あふれる笑顔で教えてくれた。

ケガに対する考え方にも表れる。19年11月には、右膝前十字靱帯(じんたい)断裂と半月板損傷により、RIZINとベラトールのベルトを返上。ここ2年間は1年1試合のペースで実戦をこなしてきた。それでも「コンディションは全く問題ない。マイナスになるようなことは考えてもしょうがない。壊れるときは壊れるなって」と、あっけらかん。どこまでも前向きだ。

今回のGPでは、同級暫定王者のベルトも優勝賞金100万ドル(1億2500万円)も、手にすることはできなかった。だが、これまで幾度となく逆境を乗り越えてきた堀口だ。こんなところで足踏みしている暇はないと、そう言うだろう。「日本人史上最強ファイター」は、既に次を見据えている。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

2022年4月23日、ベラトールのバンタム級ワールドグランプリで、ミックス(奥)の蹴りを受ける堀口(ベラトール公式インスタグラムより)
大相撲裏話

大相撲でも裏話でもないけれど…伝説の佐々木朗希2戦を生で見届け、目の当たりにした健全な姿

10日のオリックス戦で完全試合を達成したロッテ佐々木朗希

その還暦は超えていると思しき男性は、懇願するような口調で球場係員に問い掛けていた。「当日券ないの? 当日券。ないの?」。手には1000円札2枚が握り締められていた。スポーツ観戦のチケットもオンライン販売が幅を利かせ、ましてやコロナ禍の折、当日券販売も多くはない、このご時世。あえなく「当日券は売り切れました」の返答に、うなだれる男性の姿は実に気の毒だった。試合開始まで3時間以上もあるというのに。ただ、こんなシーンに少しだけ、スポーツが日常に戻ったことを感じさせられた。めったにお目にかかれない快投を見に行きたい、という衝動に駆られた人も多かっただろう。4月17日のことだった。

その1週間前。ZOZOマリンスタジアムで佐々木朗希の完全試合を生で見届けた。柄にもなく「ああ、もう思い残すことはない」と、しばらく座席から立てないほどの充足感、脱力感に体中が襲われた。背番号17が演じた、21世紀初の快挙を生で見届けてから1週間。再び足はスタジアムに運ばれていた。幸い、快挙前に前売り券はオンラインで購入していた。あの千円札を握り締めていた男性には、本当に申し訳ないが…。

2試合連続? よもや再び? まさかねえ…などという凡人の思いをよそに、令和の怪物は凡打の山を築いていく。いや、プロだよ、一回りすれば1本ぐらい打たれるだろうに…。裏腹にある期待の思いを胸の中に押し殺し、それでも4回、5回、6回とイニングを重ねても走者を1人も許さぬ快投。だが8回の攻撃が終わって、佐々木朗希がマウンドに上がることはなかった。

昭和のオジサン記者としては、投げる姿を見たかった。せめて9回まで。大切に育てたいのは分かる、分かるけど、ここを乗り越えたらもっと成長出来るんじゃないのか、100球を超えると肩、肘が壊れるのか…。さまざまな感情が込み上げてくる中、交代がアナウンスされ次に投げる守護神のアップテンポな登場曲が流れる。手拍子と小躍りで迎える場内の空気になじめず、喫煙所まで小走りした。その狭いスペースには、恐らく私と同じような感情を胸に押し殺していたような、何とも言えない空気が充満していた。

ただ、世間の受け止めからすれば、私のような「昭和のオジサン」的な思考は少数派のようだ。各種のネットアンケートなどを見れば「交代は正解」が7、8割を占める。今後10年、20年と将来のある青年のことを考えれば…ということのようだ。それも時代か…。そう自分を納得させると同時に、物議を醸す事象が起こるのは決して悪いことではないとも感じた。

今回の交代劇にファンの論調は「二分(にぶん)」どころか昭和のオジサン大劣勢の8対2ほどの差があるが、人ぞれぞれ感情や思いを抱き、発することは精神衛生上、悪ではない。ヘイトや誹謗(ひぼう)中傷は、もっての外であることは言うまでもない。たとえ9回以降を投げていたとしても、勝ち投手となって達成される完全試合が成立していた保証はない。予測を含んだ議論に「正解」などないはずだ。何かと思考停止になりがちなコロナ禍の中、あの男性が当日券を求めてスタジアムに足を運んだことも、交代劇で論議を呼んだことも、至って健全な姿だったと思う。

週明けには大相撲夏場所の番付発表があり、5月8日には初日を迎える。佐々木朗希と同じ東北出身の若隆景には、大関昇進への足固めが期待される(こじつけも度が過ぎるか…)。再び若武者に立ちはだかる横綱照ノ富士の復帰土俵にも注目したい。東大生力士の初土俵やいかに…。背番号17ほどの衝撃は与えられないにしても、プロ野球に負けず劣らずの白熱戦をファンは待っている。最後に。「大相撲裏話」のタイトルからは大きく逸脱してしまいました。「大相撲」でも「裏話」でも何でもない話ばかりに終始してしまい、申し訳ございません。この借りは必ずや…。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

ロッテ佐々木朗希(2022年4月17日撮影)
優勝決定戦で若隆景(右)は高安を上手出し投げで破り初優勝を飾る(2022年3月27日撮影)
原功「BOX!」

フューリー対ホワイト チケット売り切れ、収容9万ウェンブリー・スタジアム開催の対決に要注目

23日(日本時間24日)、英国ロンドンでWBC世界ヘビー級タイトルマッチ、正王者タイソン・フューリー(33=英国)対暫定王者ディリアン・ホワイト(34=ジャマイカ/英国)の12回戦が行われる。

フューリーに約36億円、ホワイトに約9億円の報酬が最低保証された注目ファイトだ。

身長206センチ、リーチ216センチ、直近の試合の体重が125キロのフューリーはヘビー級のなかでも超がつく大型選手だが、構えを右から左、左から右とチェンジしたりステップを踏んだりと器用な面もある。戦績は32戦31勝(22KO)1分で、KO率は70パーセント弱だが、スピードとテクニックに加え戦術にも長けている。パワー型の選手ではないが、2020年2月にデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)を7回TKOで下してWBC王座を獲得し、3度目の対決では11回KOで下している。2試合で計5度のダウンを奪っているようにパンチ力もある。引き分けに終わった2018年12月の初戦を加えたワイルダーとの世界戦3試合で経験値が大きく上がり、充実期に入った印象だ。

ホワイトは30戦28勝(19KO)2敗のプロ戦績を残している強打者で、2019年7月に暫定王座を獲得した。このときは初防衛戦で元WBA王者のアレクサンダー・ポベトキン(ロシア)に敗れて失ったが、昨年3月の再戦では4回TKOで雪辱、7カ月でベルトを取り戻した。フューリーと比較すると小さく感じられるが、身長193センチ、リーチ198センチ、体重112キロ(ポベトキンとの再戦時)は現在のヘビー級では平均的な体格といえる。右はストレートのほかに横殴りのフックもあり、またコンパクトな左フックも打てる。パンチは多彩でスピードもある。

当初、フューリーは3団体王者のオレクサンダー・ウシク(ウクライナ)との統一戦を目指したが交渉が進展せず、その間にWBCから団体内統一戦を義務づけられていた。興行権を巡って入札になり、フューリー側が両選手の合計報酬として約50億円を提示して落札した経緯がある。フューリーに約36億円、ホワイトに約9億円が保証され、勝者には5億円のボーナスが加算される。

この英国人同士の対決は注目度が高く、収容人員9万人のウェンブリー・スタジアムで行われる。チケットは早々に売り切れ、プロモーターが4000席を追加したほどだ。

オッズは13対3でフューリー有利と出ている。前後左右に動いて揺さぶりをかけ、遠い距離から右ジャブ、左ストレートで攻めるものと思われる。早い段階で正王者が主導権を握るようならば勝負は中盤を待たずに終わるかもしれない。一方、ホワイトはフューリーが攻め込んできたところに右のカウンターや左フックを狙ってひと泡吹かせたいところだ。ワイルダーとの3試合では尋常ならざる体力と回復力をみせつけたフューリーだが、初戦で2度、3度目の対戦でも2度のダウンを喫しており、打たれ脆くなっていることも考えられる。フューリーのKO勝ちが順当な線だが、番狂わせが起こる可能性も決して低くはないように思える。

リングにかける

女子ボクシング界の新星「赤林檎」は元GK 日本拳法、キックボクシング経て世界へ羽ばたく

WBOアジアパシフィック王座を獲得した赤林檎(2022年4月16日撮影)

女子ボクシング界に登場した楽しみな新星と言っていいだろう。

16日にエディオンアリーナ大阪第2競技場で、女子のタイトルマッチ3試合が行われた。メインはWBO女子アジアパシフィック・バンタム級王座決定戦で3戦3勝(2KO)無敗の新王者が誕生した。その名も赤林檎(あか・りんご、27=真正)。もちろん本名ではない。

「自分らしい、楽しめる試合ができた。これからもガンガンいくスタイルで派手にいけたら。世界を目指します」

この試合が24戦目とキャリア豊富な平安山裕子(35=平仲BS)と対戦。攻撃的なスタイルで序盤から圧倒。2回TKOで戴冠を果たした。

「赤林檎」につながる、そのキャリアがおもしろい。大阪・山田高ではサッカー部。対人でバチバチやれるフィールドプレーヤーを望んだが、GKに指名されて「おもしろくなくてやめました」。

追手門学院大で高校から取り組んでいた日本拳法へ本格転向。卒業後は本格的に格闘技にのめり込んだ。総合格闘技から立ち技のキックボクシングへ。リングネームは“地下格闘技”時代、まわりのおもしろいリングネームに負けじと友人が名付けてくれたという。

しかし、その由来は「分からないですね」。しいて言えば「赤いほお」という。本名は中井麻美(なかい・あさみ)だ。

ボクシング転向を決めて真正ジムに2年前、入門した。まだ総合格闘技の時代から、スパーリングでジムを訪れていた。「こんなわけの分からないやつも受け入れてくれた」と感動したことが決め手だった。

昨年4月にデビューを飾り、順調に進んできた。次戦は今夏にも計画される。真正ジムの山下正人会長も「ハートが強いわね」と期待し、チャンスがあれば早期の世界挑戦にも前向きだ。「今は蹴らなくていい。投げなくていい。充実しています」と笑顔を見せる生粋の格闘家が、まずは最初のベルトを手にした。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

大相撲裏話

悲願の賜杯にあと1歩届かなかった高安「もう1回優勝を目指します」夏場所での挑戦に期待

優勝決定戦で若隆景(右)は高安を上手出し投げで破り初優勝を飾る(撮影・和賀正仁)

大相撲春場所は関脇若隆景(27=荒汐)が、初優勝を飾った。千秋楽に優勝の可能性があった3力士がいずれも本割で敗れる波乱。12勝3敗で並んだ優勝決定戦を若隆景が、高安(32=田子ノ浦)を上手出し投げで制した。

勝者よりも、敗者に目がいってしまう。悲願の賜杯はあと1歩、手の届くところにあった。東前頭7枚目で迎えたこの場所、初日から10連勝するなど優勝争いをけん引した。しかし、11日目に若隆景に初黒星を喫すると、終盤5日間で3敗と失速した。

それでも望みをつないだ優勝決定戦。相撲の流れは高安だった。土俵際まで追い詰めた圧力に膝がくの字に折れた若隆景。勝機は九分九厘、高安にあったが最後に見放された。

「これが結果です」と声を絞り出した取組後のオンライン取材が印象的だった。悔しさを全身からにじませながら、現実を受け止めているように映った。

「力足らずです。最後は気持ちしかなかった。すべてを出し尽くしました。負けたということはまだまだ稽古が足りないということです。本当に勉強させていただきました」

決してエリートではない、苦労人だ。10年九州場所の新十両昇進まで34場所を要した。11年名古屋場所の新入幕後も、好成績のあとはけがに泣く。そんな繰り返しだった。

17年名古屋場所で大関に昇進も在位15場所中、途中休場を含めて6度の休場。大関陥落となった19年九州場所では幕内土俵入りの後にぎっくり腰を発症して休場を余儀なくされた。

不完全燃焼による悔しさをかみしめてきた。それだけに今年の春場所は期するものがあったのだろう。170キロ台に落ちていた体重をトレーニングで183キロまで増やした。その重みを生かした相撲で初優勝に迫り、届かなかった悔しさは見ている側にも伝わった。

「もう1回優勝を目指します。この気持ちを忘れず、挑戦したいです」。この思いが稽古に、土俵に向かわせるはず。5月8日、東京両国国技館で初日を迎える夏場所。注目したい力士の1人にあげたい。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

ウェルター級3団体王座統一戦スペンス対ウガス どちらがクロフォードとの頂上決戦に駒を進めるか

ウェルター級のWBC王座とIBF王座を保持するエロール・スペンス(32=アメリカ)とWBAスーパー王者のヨルデニス・ウガス(35=キューバ)が16日(日本時間17日)、3団体の王座統一をかけてアメリカのテキサス州アーリントンで対戦する。万能型サウスポーのスペンスとテクニックが売りのウガス。攻撃力で勝るスペンス有利の予想のなか、昨年8月に元世界6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(フィリピン)を引退に追いやったウガスは再び番狂わせを起こすことができるのか。

この両者は昨年8月、ダブル世界戦に出場するはずだった。メインカードはスペンス対パッキャオで、セミ格としてウガス対ファビアン・マイダナ(アルゼンチン)が組まれていた。しかし、試合2週間前になってスペンスが眼疾のため出場不可となり、マイダナは負傷のため挑戦を辞退。それにともない急きょ、パッキャオ対ウガスにカードが変更され、ウガスが判定勝ちを収めた経緯がある。知名度の低いウガスは2戦連続でスター選手との試合に臨むことになり、実力をアピールする絶好の機会を得たといえる。ただ、4対1でスペンス有利のオッズが出ているように、ウガスにとっては厳しい戦いが予想される。

スペンスは2012年ロンドン五輪ではウェルター級ベスト8に甘んじたが、プロでは6度の世界戦を含めて27戦全勝(21KO)の戦績を残している。パワーとテクニックを兼ね備えたサウスポーで、世界的に高い評価を得ている。不安があるとすれば体調面だろう。2019年10月に車で自損事故を起こして入院し、1試合挟んで昨夏には左目の網膜剥離が判明。これが1年4カ月ぶりのリングとなる。

ウガスも五輪戦士だ。こちらは2008年北京五輪ライト級で銅メダルを獲得しているほか、2005年の世界選手権では優勝するなどトップアマとして活躍。24歳になる直前にプロデビューし、12年間で31戦27勝(12KO)4敗の戦績を残している。数字のインパクトではスペンスに遠く及ばないが、先のパッキャオ戦で評価と知名度を大きくアップさせている。

より攻撃的なのはスペンスだが、ウガスも正面から圧力をかけて出るタイプだけに、まずは序盤の主導権争いが注目される。地元の声援を背に右ジャブから左に繋げる攻めが見られるような展開ならばスペンスのペースといえる。逆にウガスが相手の打ち終わりを迎え撃って正確にパンチを当てることができればWBAスーパー王者のペースといえる。

この階級にはWBO王者のテレンス・クロフォード(アメリカ)がおり、今回の試合の勝者との4団体王座統一戦を熱望している。クロフォードとの最終的な頂上決戦に駒を進めるのはスペンスなのか、それともウガスなのか。