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原功「BOX!」

タイソン・フューリー、かつての好敵手チゾラとの防衛戦は調整試合 ウシクとの統一戦を希望

WBC世界ヘビー級王者、タイソン・フューリー(34=イギリス)の3度目の防衛戦が12月3日(日本時間4日)、同級14位のディレック・チゾラ(38=ジンバブウェ/イギリス)を相手にロンドンで行われる。両者は2011年と2014年に地域王座をかけて戦ったことがあり、フューリーが12回判定、10回終了TKOで連勝している。世界王座をかけて行われる3度目の対決は、当然のことながら圧倒的にフューリー有利と見られている。

フューリーとチゾラが最初に拳を交えたのは2011年7月のこと。当時、22歳のフューリーは14戦全勝(10KO)だった。一方、イギリス国内王座と英連邦王座を保持していた27歳のチゾラも14戦全勝(9KO)で、ホープ同士の対決だった。オッズはわずかにチゾラ有利と出ていた。小柄なチゾラが積極的に仕掛け、体格で勝るフューリーが応戦するというエキサイティングな展開になったが、フューリーは相手のパンチの多くを巧みにブロックして優勢を印象づけ、118対111、117対112、117対112の3-0で判定勝ちを収めた。

再戦は2014年11月、初戦と同じくロンドンで行われた。チゾラ(24戦20勝13KO4敗)の持つEBU欧州王座とWBOインターナショナル王座、さらに空位のイギリス国内王座がかけられた試合だったが、3年前と一転してフューリー(22戦全勝16KO)が左構えでスタート。右ジャブを有効につかってアウトボクシングを展開し、チゾラを懐に入り込ませなかった。初戦のような打撃戦を期待したファンからブーイングも飛んだが、劣勢のチゾラが10回終了時点で棄権して試合は終わった。

その1年後、フューリーはウラジミール・クリチコ(ウクライナ)を攻略してWBA、IBF、WBO3団体統一世界ヘビー級王者になり、引退を挟んで2021年にWBCで返り咲きを果たしている。現在の戦績は33戦32勝(23KO)1分。今年4月のV2戦後に引退を示唆したが翻意し、前3団体王者のアンソニー・ジョシュア(イギリス)に対戦を呼びかけていた。その試合が実現しなかったため、チゾラとの第3戦に臨むことになった経緯がある。

一方のチゾラはフューリーとの再戦に敗れたあとも強豪との対戦を続け、勝ったり負けたりを繰り返しながらも辛うじて世界挑戦圏内をキープしている。2019年から2021年にかけて3連敗を喫したが、今年7月に世界挑戦経験者のクブラト・プーレフ(ブルガリア)を破ってトップ戦線に踏みとどまっているというのが現状だ。戦績は45戦33勝(23KO)12敗。

身長206センチ/リーチ216センチ、体重120キロ前後のフューリーに対し、チゾラは187センチ/188センチ、117キロ前後と体格差は歴然としている。初戦のようにファイター型のチゾラが相手の懐に潜り込めれば勝機は出てくるが、フューリーが再戦のように距離を保った戦いに徹した場合は一方的な試合になりそうだ。オッズは14対1の大差でフューリー有利と出ている。3団体王者のオレクサンダー・ウシク(ウクライナ)との統一戦を望んでいるフューリーにとっては調整試合といえそうだ。

この日はWBA世界ヘビー級タイトルマッチも組まれており、19戦18勝(17KO)1敗の王者、ダニエル・デュボア(25=イギリス)が、29戦28勝(14KO)1敗のケビン・レリーナ(30=南アフリカ共和国)の挑戦を受けることになっている。パワーで勝るデュボアが10対1で有利と見られているが、スピードのある小柄なサウスポーの挑戦者に手を焼く可能性もある。

ヘビー級トップ戦線は安泰なのか、それとも大きな変化が起こるのか。

ゴンサレス対エストラーダ3度目の対戦迫る 風雲急を告げるスーパーフライ級トップ戦線に注目

井岡一翔(33=志成)がWBO王座に君臨し、前WBO世界フライ級王者の中谷潤人(24=MT)が参入するなど注目度が増しているスーパーフライ級のWBC王座決定戦が12月3日(日本時間4日)、アメリカのカリフォルニア州グレンデールで行われる。元世界4階級制覇王者のローマン・ゴンサレス(35=ニカラグア)と、このクラスを含め2階級制覇の実績を持つファン・フランシスコ・エストラーダ(32=メキシコ)が拳を交えるもの。両者は過去に世界戦で2度対戦して1勝1敗と星を分けており、実力は伯仲している。今回も接戦が予想される。

ふたりが最初に戦ったのは10年前の2012年9月で、このときはWBA世界ライトフライ級王者のゴンサレスがエストラーダを12回判定で退けた。すでに世界的な注目を集めていたゴンサレスが無名の挑戦者に手を焼いたという印象の試合だった。採点は118対110、116対112、116対112の3-0だった。

2度目の対戦は昨年3月で、ゴンサレスがWBA世界スーパーフライ級のスーパー王者、エストラーダがWBC王者としてリングに上がった。試合は初戦よりもさらに競ったものになり、ふたりとも一歩も引かずに最後まで打ち合った。のちに集計されたパンチ数はゴンサレスが1317発、エストラーダが1212発だった。軽量級でも800発パンチを打てば多いといわれるが、ふたりともその1.5倍以上を繰り出したところに意地が感じられる。パワーパンチに限ってみればゴンサレスが883発打って352発命中、エストラーダは817発打って297発命中させたというデータが残っている。採点は際どいものになったが、終盤で印象点を稼いだエストラーダが117対111、115対113でジャッジ二者から支持された。しかし、もうひとりが115対113でゴンサレスを支持したようにゴンサレス優勢と見たファンや関係者の方が多かったようだ。

「年間最高試合」の声も出るほどの激闘だっただけに決着戦が8カ月後に行われることになったが、折悪くゴンサレスが新型コロナウィルスに感染。試合は今年3月にリセットされたが、今度はエストラーダが感染。こうして3度目の対決は再び先送りになり、このほど12月3日に行われる運びとなった。この間、ゴンサレスは今年3月にWBC世界フライ級王者のフリオ・セサール・マルチネス(メキシコ)に大差の12回判定勝ちを収めて健在ぶりを印象づけている。一方のエストラーダは今年9月、1年半ぶりの試合で無名選手に苦戦、辛うじて12回判定勝ちを収めている。

戦績はゴンサレスが54戦51勝(41KO)3敗、エストラーダが46戦43勝(28KO)3敗。第2戦の印象に加え直近の試合の内容が反映されてかオッズは12対7でゴンサレス有利と出ている。

スーパーフライ級ではWBO王座に井岡が君臨しており、年内にもWBA王者のジョシュア・フランコ(27=アメリカ)との統一戦が計画されている。その勝者に対してWBOは中谷の挑戦を受けることを課している。

風雲急を告げるスーパーフライ級トップ戦線。まずはゴンサレス対エストラーダに注目だ。

グーラミリアン、2年11カ月ぶりリングへ エゴノフも1年8カ月ぶり、両者ブランク吹き飛ばせ

コロナ禍のなか、たび重なる試合延期によって3年近いブランクをつくった世界王者がいる。WBA世界クルーザー級スーパー王者、アーセン・グーラミリアン(35=アルメニア/フランス)だ。「Feroz(獰猛な男)」というニックネームを持つグーラミリアンは19日、フランスでWBA1位のアレクセイ・エゴノフ(31=ロシア)を相手に2度目の防衛戦に臨む。2019年12月28日以来、実に2年11カ月ぶりのリングとなる。

新型コロナウィルスは2020年2月ごろから世界中に感染拡大していったが、ボクシング界もその影響をもろに受けた。その年3月中旬を最後にアメリカをはじめ世界中のイベントが開催見送りとなり、約3カ月の空白ができた。日本でも世界ミドル級スーパー王者の村田諒太(帝拳)の試合が内定しては流れ、結局、今年4月の試合まで2年4カ月のブランクができてしまったほどだ。こうした事情を考慮して各統括団体は結果として活動不活発になってしまった王者から無闇に王座剥奪することを避けてきた。グーラミリアンもそんな対象のひとりといえる。

2019年11月15日に4回KO勝ちでWBA世界クルーザー級スーパー王座を獲得したグーラミリアンは、戴冠からわずか43日後の12月28日に初防衛戦に臨み、9回終了TKO勝ちで王座を守った。翌年、2度目の防衛戦が計画されたタイミングでコロナ禍に突入したため試合が組みにくくなったことは想像に難くない。やっと2020年12月に防衛戦が決まったが、折悪くグーラミリアンが負傷、試合をキャンセルせざるを得なかった。

1年後の2021年12月、今回の相手、エゴロフとの防衛戦が決定したが、今度はグーラミリアンが新型コロナウィルスに感染。試合を中止しただけでなく自身の回復に努めなければならなかった。こうした経緯があって今回、やっとエゴロフを相手に2度目の防衛戦が実現することになったわけだ。

26戦全勝(18KO)のグーラミリアンは積極的に相手を追って左右のフックやアッパーを叩きつけるパワー型のファイターで、小細工なしの分かりやすいボクシングをする。約3年ぶりの実戦に向け、ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)らを指導したアベル・サンチェス・トレーナーと一緒にアメリカのカリフォルニア州ビッグベアで集中トレーニング・キャンプを張り、攻撃力に磨きをかけてきたという。

挑戦者のエゴロフも11戦全勝(7KO)とプロでは挫折を知らないまま王座挑戦のチャンスをつかんだ。筋骨隆々の正統派で、中間距離で打ち込む右ストレートは破壊力がある。グーラミリアンへの挑戦が決まったあと試合がキャンセルになったため、こちらも1年8カ月ぶりのリングとなる。

下馬評はグーラミリアン有利に傾いているが、ともにブランクがあるだけに蓋を開けてみないと分からない不確定要素があるといえる。両者とも精神面でも肉体面でも難しい調整を強いられることになるだろうが、新型コロナウィルスを吹っ飛ばすような思い切りのいいボクシングを見せてほしいものだ。

スペンス対クロフォード 2022年最大の注目ファイトが先送り “賞味期限”を心配する声

2022年最大の注目ファイトになると見られていたウェルター級の4団体王座統一戦、WBA、WBC、IBF王者のエロール・スペンス(32=アメリカ)対WBO王者、テレンス・クロフォード(35=アメリカ)が、先送りになることが確実になった。クロフォードが12月10日に出身地のネブラスカ州オマハで元WBA同級暫定王者のダビド・アバネシャン(34=ロシア)と対戦することになったからだ。夏までに両陣営が対戦合意に至り、発表間近と伝えられただけに落胆したファンや関係者は少なくないはずだ。32歳のスペンス、35歳のクロフォード、ふたりはいつリング上で交わるのだろうか。

7度の世界戦を含め28戦全勝(22KO)の戦績を残しているスペンスと、3階級制覇を成し遂げ38戦全勝(29KO)をマークしているクロフォード。ふたりの頂上決戦が現在のボクシング界で最も注目度の高いカードであることは間違いないだろう。しかし、両者の力量が接近していればいるほど、条件面の詰めは難しいらしい。今回も最後の最後ですれ違いになったようだ。

こうしたなか、この黄金カードの“賞味期限”を心配する声が出始めている。いまのところ両雄に力の衰えは感じられないが、いつまでピークを持続できるかという疑問が芽生えつつあるのだ。

同じ中量級でシュガー・レイ・レナードやマービン・ハグラー、トーマス・ハーンズ(いずれもアメリカ)らスーパースターが何度も直接対決した1980年代を振り返ってみよう。レナード対ハーンズのウェルター級王座統一戦時、レナードが25歳、ハーンズは22歳の若さだった。8年後の再戦時はレナード33歳、ハーンズ30歳だったが、初戦と比べると明らかに両者の力量は落ちていた。ちなみに3回TKOで勝負が決したハグラー対ハーンズは30歳と26歳、その2年後に行われたハグラー対レナードは32歳と31歳だった。

ウェルター級でみると1999年に行われた全勝同士の統一戦、オスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ)対フェリックス・トリニダード(プエルトリコ)は、ふたりとも26歳だった。試合は噛み合わせの甘いものになったが、両雄とも全盛期だった。

21世紀に入ってからのデータを見ると、スーパーファイトに出場する選手の年齢が上昇傾向にあることが分かる。すなわちデラ・ホーヤ対メイウェザーが34歳と30歳、メイウェザー対サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)は36歳と23歳という世代間の対決だった。

さらに顕著なのが7年前のメイウェザー対マニー・パッキャオ(フィリピン)の対決だ。当時はメイウェザーが38歳、パッキャオが36歳だった。十分に堪能できる試合ではあったが「5年早く実現していたらなぁ」という慨嘆の声が多数あったものだ。

アルバレス対ゴロフキンのライバル対決3試合も同様だ。初戦がゴロフキン35歳、アルバレス27歳だった。1年後の再戦を経て今年9月に行われた3度目の対決時はゴロフキン40歳、アルバレス32歳である。第3戦のゴロフキンに全盛期の動き、迫力が感じられなかったことは残念としか言いようがないが、年齢を考えれば当然といえば当然か。

さて、スペンス対クロフォードだが、早くても実現は来年春になる。スペンスも一戦挟むとなると来夏にずれ込む可能性もある。「機が熟した」となるのか、それともメイウェザー対パッキャオのように「熟し過ぎた」となるのか。

ビボル対ラミレス、全勝の技巧派同士の好カード アルバレス下したビボル有利も番狂わせ十分

WBA世界ライトヘビー級スーパー王者、ドミトリー・ビボル(31=キルギス/ロシア)の12度目の防衛戦が5日(日本時間6日)、同級1位のヒルベルト・ラミレス(31=メキシコ)を相手にUAEアラブ首長国連邦の首都アブダビで行われる。20戦全勝(11KO)のビボル、44戦全勝(30KO)の元WBO世界スーパーミドル級王者のラミレス、高度な技術戦が展開されそうだ。

もともと左ジャブと右ストレートを軸にした堅実なボクシングに定評のあったビボルは2016年5月の戴冠後、4連続KO防衛を果たして早々とスター選手の仲間入りを果たすかと思われた。

ところが一転して2018年8月以降は慎重な戦いぶりが目立ち、5度目の防衛戦以降は12回判定勝ちが続いている。元世界王者のジャン・パスカル(ハイチ/カナダ)、のちに世界王者になるジョー・スミス(アメリカ)らが相手であることを考えれば十分な実績なのだが、アピールが不十分だったことは事実だ。

そんなビボルが11度目の防衛戦の相手として迎えたのが世界的なスター選手、4階級制覇王者のサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)だった。戦前のオッズは4対1で不利だったが、ビボルは体格の利を生かしつつ正確な左ジャブで主導権を握り、終盤には伸びのある右ストレートを打ち込んでアルバレスを追い込む場面もつくった。採点は接近していたが内容的にはビボルの完勝といえるものだった。結果として7連続判定防衛となったものの、それ以前とは価値の異なる勝利だった。ボクサーの総合的な評価ともいえる「パウンド・フォー・パウンド」では、アメリカの老舗専門誌リング・マガジンで7位にランクされている。

一方のラミレスは2016年4月にWBO世界スーパーミドル級王座を獲得した。このときの戦績は34戦全勝(24KO)だったが、戴冠後は5度の防衛のうち4度が判定勝ちに留まった。ビボル同様、自然と周囲の期待と評価は停滞した。

その一因が減量苦にあったのか、3年前に約3キロ重いライトヘビー級に転向してからは一転して5連続KO勝ちと好調だ。189センチの長身と191センチのリーチを生かしたサウスポーのボクサーファイター型で、好機には左ストレート、右フック、アッパーを思い切りよく上下に打ち分ける。

全勝の技巧派同士の好カードだが、試合が発表されてからオッズは6対1で王者有利が続いている。やはりアルバレスに完勝した実績が高く評価されているようだ。ただ、ビボルはサウスポーとの対戦が5年5カ月ぶりとなるだけに、ラミレスのスタイルに戸惑うことも考えられる。番狂わせの可能性も十分にあるカードだ。

この日はダブルメインとしてシャフカッツ・ラヒモフ(28=タジキスタン)対ゼルファ・バレット(29=英国)のIBF世界スーパーフェザー級王座決定戦も組まれている。6月に尾川堅一(帝拳)を2回KOで破って王座を獲得したジョー・コーディナ(英国)が負傷によって指名試合ができずベルトを剥奪されたことを受け、その後継王者を決める試合だ。17戦16勝(13KO)1分のラヒモフ、29戦28勝(16KO)1敗のバレット。好戦的なサウスポーと左ジャブの名手という興味深い組み合わせといえる。元王者の尾川も再起を宣言しているだけに、こちらにも注目したい。

「ハイテク」ロマチェンコ再起第3戦 「テクニシャン」オルティス倒しヘイニーへ挑戦アピール

2年前まで「パウンド・フォー・パウンド」現役最強の評価を受けていた元世界3階級制覇王者、ワシル・ロマチェンコ(34=ウクライナ)が29日(日本時間30日)、アメリカのニューヨーク市で再起第3戦に臨む。相手はライト級でWBC8位、WBO12位にランクされるジャメイン・オルティス(26=アメリカ)。17戦無敗の新鋭を侮ることはできないが、王座奪回に向けロマチェンコがどんなパフォーマンスを見せるかという点に注目が集まる。

ロマチェンコは五輪連覇後にプロに転向し、3戦目にフェザー級、7戦目にスーパーフェザー級、12戦目にライト級王座を獲得した技巧派サウスポーで、「ハイテク(高性能)」というニックネームを持つ。瞬間的に立ち位置を変えながら攻防を組み立て、攻めてよし守ってよしという極めて高度で隙のないボクシングに定評がある。世界中のボクサーのなかで最も高い評価を受けていたのもうなずける。

しかし、30歳を超えたころから故障やブランクが増え、2020年10月には若くて勢いのあるテオフィモ・ロペス(アメリカ)に12回判定負けを喫してライト級王座から陥落した。昨年6月、中谷正義(帝拳)に9回TKO勝ちを収めて再起し、12月には元世界王者のリチャード・コミー(ガーナ)に12回判定勝ちを収めている。戦績は18戦16勝(11KO)2敗。現在はライト級でWBCとWBOで1位、IBFで3位、WBAで4位にランクされている。

一方、「テクニシャン」というニックネームを持つオルティスは半年前までは無名に近い存在だったが、5月に元WBO世界スーパーフェザー級王者のジャメル・ヘリング(アメリカ)に10回判定で完勝し、WBC世界ライト級8位、WBO12位に浮上してきた。戦いの最中に右から左、左から右と頻繁に構えを変える変則のスイッチヒッターで、17戦16勝(8KO)1分と無敗をキープしている。どちらの構えでも細かくジャブを突き、それを突破口にして攻めることが多いがパワーには欠ける。

「ハイテク」と「テクニシャン」の試合だけに技術戦が予想されるが、オッズが14対1でロマチェンコ有利と出ているようにレベルの差は歴然としている。元3階級制覇王者が瞬間移動しながら速くて多彩な左右のコンビネーションを叩きつけて圧倒しそうだ。

ライト級は4団体王座に君臨するデビン・ヘイニー(アメリカ)、WBAレギュラー王座を持つジャーボンテイ・デービス(アメリカ)、そしてロマチェンコの「3強」が並走している状態が続いている。ロマチェンコは新鋭に圧勝してヘイニーへの挑戦をアピールしたいところだ。

井上尚弥対バトラー、4団体王座統一戦12・13決定 2度の“すれ違い”経て実現

バンタム級のWBAスーパー、WBC、IBF王者の井上尚弥(29=大橋)とWBO王者のポール・バトラー(33=英国)が12月13日、東京・有明アリーナで4団体王座統一戦として拳を交えることになった。

直接対決は今回が初めてとなる両者だが、実は過去に2度の“すれ違い”があった。

井上がバンタム級に転向したのは2018年5月25日のこと。東京でWBA王者のジェイミー・マクドネル(英国)に挑戦して1回TKO勝ち、ライトフライ級、スーパーフライ級に続く戴冠で3階級制覇を達成した。

これより20日前の5月5日、バトラーはエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)の持つIBF世界バンタム級王座に挑戦するはずだったが、前日計量で1.5キロ近くも体重超過して失格。試合は行われたが、バトラーは初回に2度のダウンを奪われたすえ大差の12回判定負けを喫した。

この1年後、井上とロドリゲスは階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」の準決勝で対戦することになる。ここから先は「たら、れば」を繋ぎ合わせた強引な仮説になるが、もしもバトラーが規定体重でロドリゲスに勝ってIBF王者になり、かつWBSSに参戦していれば、その時点で井上とバトラーは対戦していた可能性があったことになる。

もうひとつは2019年5月18日、英国スコットランドのグラスゴーで行われた井上対ロドリゲスの王者対決の際、バトラーが同じイベントに出場していたという事実だ。この日、バトラーは引き分けを挟んで3連敗中のサルバドル・エルナンデス・サンチェス(メキシコ)と戦い6回KO勝ちを収めている。当時、バンタム級でIBF3位にランクされていたバトラーが井上対ロドリゲスに興味を抱いていないはずはなく、会場のどこかで頂上対決を凝視していたものと思われる。もしかしたら記者会見や前日計量の際、井上とバトラーはすれ違っていた可能性もあるわけだ。当時のことに関して井上は「バトラーも出ていたんですか? 知らなかった」と話している。そもそも井上がバトラーの存在を意識するようになったのは、バトラーがジョンリエル・カシメロ(フィリピン)の持つWBO王座に挑戦することが決まったころ(2021年秋 ⇒ 2022年4月に延期 ⇒ 中止)だったというから、3年半前の時点で気にしていなかったのも当然といえよう。

2度の“すれ違い”を経て実現することになった井上対バトラーの4団体王座統一戦。オッズは25対1で圧倒的に井上有利と出ている。バトラーの勝利は20倍の配当になっているほどだ。それでも井上は「いつものように相手を過大評価して、自分が圧倒的不利だとイメージして(練習に)入っていく」と気を引き締めている。

ますます2カ月後の試合が楽しみになってきた。

ウェルター級4団体王座統一戦スペンス対クロフォード、暗礁に乗り上げる 半年以内に実現するか

ウェルター級のWBA、WBC、IBF王者、エロール・スペンス(32=アメリカ)対WBO王者のテレンス・クロフォード(35=アメリカ)の4団体王座統一戦は当初、11月19日にアメリカのネバダ州ラスベガスで行われる計画だったが、契約の詰めの段階に来て暗礁に乗り上げたと伝えられる。まだぎりぎり年内開催か来年1月か2月に開催の余地はありそうだが、先行きは不透明になってきた。

5年前にIBF王座を獲得し、2019年にWBC王座、今年4月にWBA王座を吸収したスペンスは28戦全勝(22KO)の戦績を誇る。アマチュア時代には2012年ロンドン五輪にも出場しウェルター級でベスト8入りを果たしており、10年以上もエリート街道を走り続けてきたことになる。身長177センチ、リーチ183センチと体格にも恵まれた万能型サウスポーで、「THE TRUTH(本物)」と呼ばれる。

一方のクロフォードはライト級時代にWBO王座を獲得し、2度防衛後に返上。転向したスーパーライト級では主要4団体王座を統一するなど通算6度の防衛を記録した。この王座も返上してウェルター級に転向し、初戦で現在の王座を獲得して5度防衛中だ。構えを左右に変えるスイッチヒッターで、38戦全勝(29KO)の戦績を残している。ライト級から上げてきたこともあり身長173センチと決して大きくはないが、直近の5年間で世界戦9連続KO勝ちと手の付けられない強さを見せつけている。

ちなみにボクサーの強さ指標ともいえるアメリカのリング誌の「パウンドフォーパウンド」ではクロフォードが3位、スペンスが4位にランクされている。

そんな両雄の直接対決はクロフォードが3階級制覇を果たした4年前から期待されてきたが、プロモーターが異なるため交渉は一向に進まないまま時間だけが無為に過ぎていった。しかし、昨年11月にクロフォードがトップランク社を離れてフリーになったことで両陣営は急接近。この夏には「11月19日、ラスベガス開催で基本合意」と報じられた。あとは細かな部分を詰めて発表-と思われた。

ところが、以後は情報が途絶え、最近は「11月19日開催はなくなった模様」と複数のメディアで報じられている。報酬面で折り合いがつかなくなった、再戦条項に関する意見が食い違っている、などと推測が飛び交っているが、真相は不明だ。

こうしたなかIBF1位にランクされるジャロン・エニス(25=アメリカ)が指名挑戦権の行使を主張し、スペンスへの挑戦をアピールするのではないかともいわれている。“三角関係”になってスペンス対クロフォードは先送りという可能性も出てきたわけだ。エニスは30戦29勝(27KO)1無効試合の戦績を残しているスラッガーで、身長178センチ、リーチ188センチと体も大きくて勢いがある。スペンス、クロフォードどちらと戦っても勝つ可能性を持っているスター候補だ。

待望のスペンス対クロフォードは半年以内に実現するのか、あるいは先にスペンス対エニスが行われることになるのか、そして勝者がクロフォードとの統一戦に臨むことになるのか-。ウェルター級戦線、場外戦の行方に注目したい。

ライト級4団体統一王者ヘイニーが前王者カンボソスと4カ月ぶり再戦 存在感示す結果出せるか

スター選手が揃うライト級の4団体統一王者、デビン・ヘイニー(23=アメリカ)が16日、オーストラリアのメルボルンで前王者のジョージ・カンボソス(29=オーストラリア)の挑戦を受ける。両者は今年6月5日に対戦し、そのときはWBC王者のヘイニーがWBAスーパー、WBCフランチャイズ、IBF、WBOの4王座を持っていたカンボソスに12回判定勝ちを収めている。4カ月の短期間で行われる直接再戦はヘイニーが圧倒的有利とみられている。

ヘイニー対カンボソスの初戦はメルボルンのマーベル・スタジアムに4万人超の観衆を集めて行われた。カンボソスは地元ファンの期待に応えようとしたが、闘志が空転。ヘイニーのスピードとテクニックの前に見せ場をつくれないまま敗れた。採点は118対110がひとり、116対112がふたり、完敗といえる内容だった。プロ21戦目にして初の敗北(20勝10KO1敗)を喫し4本のベルトを失ったカンボソスだが、意気消沈している間もなくダイレクト・リマッチを要求。初戦の際の契約に基づいて今回の試合が行われることになった。

再戦はメルボルンのロッド・レーバー・アリーナで行われる。集客数は約1万5000人で、マーベル・スタジアムの3分の1程度となる。これがそのままカンボソスに対する地元の期待度ということになりそうだ。初戦はヘイニー有利のオッズだったが5対4と接近。しかし、今回は8対1と大差がついている。「両者の力関係は初戦で証明済み」という見方が多いようだ。28戦全勝(15KO)のヘイニーが冷静にカンボソスの動きを見極めてテクニックでコントロール、ポイントを積み重ねていく可能性が高い。

今回の再戦よりも、むしろファンや関係者の関心はヘイニーの近未来、つまりいつ元王者のワシル・ロマチェンコ(34=ウクライナ)やWBAレギュラー王者のジャーボンテイ・デービス(27=アメリカ)と戦うのかという点に移っている感がある。そのためにもヘイニーは存在感を示す内容と結果を出す必要があるといえる。

この日は前座でWBC世界バンタム級挑戦者決定戦、1位のジェイソン・マロニー(31=オーストラリア)対2位のナワーポン・ソールンビサイ(31=タイ)の12回戦が組まれている。いうまでもなくWBCの世界バンタム級王者は井上尚弥(29=大橋)だが、この試合の勝者が井上に対する最優先挑戦権を手にするというわけだ。ただし井上は12月にWBO王者のポール・バトラー(33=英国)との4団体王座統一戦が計画されており、その試合後にスーパー・バンタム級に転向することが既定路線となっている。2年前、井上に7回KOで敗れたマロニーが悲願の戴冠に王手をかけるのか、それとも58戦56勝(46KO)1敗1分の戦績を誇るナワーポンが初の国外試合で力を発揮するのか。メインともどもメルボルンから届く結果を楽しみに待ちたい。

ユーバンク・ジュニア対ベン 親子2代にわたる壮大なライバル対決、どんな形で決着するか

元WBA暫定世界ミドル級王者のクリス・ユーバンク・ジュニア(33=英国)と、ウェルター級の世界ランカー、コナー・ベン(26=英国)が10月8日(日本時間9日)、英国ロンドンで対戦する。このふたりは、父親がともに元世界2階級制覇王者で1990年代前半に2度対戦したことがある。つまりユーバンク家とベン家は親子2代にわたってライバル関係にあるわけだ。親はユーバンクが1勝1分と勝ち越したが、はたして息子たちは?

父ユーバンクと父ベンは1990年11月に初対戦し、ユーバンクが9回TKO勝ちを収めてWBO世界ミドル級王座を奪い取った。最後は挑戦者のユーバンクが連打でレフェリー・ストップに持ち込んだのだが、それまではジャッジ二者が1ポイント差で王者のベン有利と採点していた接戦だった。1993年10月、ふたりは再び拳を交える。今度はユーバンクがスーパー・ミドル級のWBO王者、ベンがWBC王者として統一戦に臨んだのだ。結果は115対113(ユーバンク)、114対113(ベン)、114対114の三者三様のドローだった。この試合の観衆が4万7000人だったことでも両者の人気ぶりが分かるだろう。その後、ユーバンクはWBO王座の防衛回数を14まで伸ばしたが1998年に引退。ベンは9度防衛後、1996年の試合を最後に引退した。戦績はユーバンクが52戦45勝(23KO)5敗2分、ベンは48戦42勝(35KO)5敗1分。

そんな英雄ふたりの息子同士が対戦するのだから話題にならないはずがない。

ユーバンク・ジュニアは2011年11月にプロデビューし、2015年と2019年の2度、WBA暫定世界ミドル級王座を獲得している。自分から攻めて出るボクシングもできる一方、相手に攻めさせておいてカウンターを合わせる迎撃ボクシングもできる。ワンツー、左フック、右アッパーなどパンチは多彩だ。戦績は34戦32勝(23KO)2敗。現在は72.5キロが体重上限のミドル級でWBO2位、WBC3位にランクされている。

対するベンは2016年4月にプロデビューし、6年間で21連勝(14KO)をマーク。実績面ではユーバンク・ジュニアに及ばないが、2018年に獲得したWBAコンチネンタル王座を7度防衛中だ。特に直近の5試合は元世界王者ら強豪を相手に圧勝しており勢いを増している。卓抜したスピードと切れのあるワンツー、左ボディブローなどが主武器だ。66.6キロがリミットのウェルター級でWBAとWBOで4位、WBCとIBFで5位にランクされている。

本来ならばベスト体重が約6キロ異なるが、両者が歩み寄って157ポンド(約71.2キロ)の契約体重で試合が行われる。しかし、ユーバンク・ジュニアが身長180センチ、ベンが173センチと体格差は歴然で、実際にふたりが並ぶと一回り違う。それもありオッズは2対1でユーバンク・ジュニア有利と出ている。

「体重をつくることは厳しいが、それだけの価値がある試合だと思う。私にとって最も重要な試合」とユーバンク・ジュニア。ベンも「これは運命、避けては通れない戦い。タイトルやランキングは関係なく、私たちファミリーにとっては終わっていない試合なんだ」と父の仇討ちに意気込む。

親子2代にわたる壮大なライバル対決。どちらがどんなかたちでけりをつけるのだろうか。

リオ五輪銀スティーブンソンが同金コンセイサン破り王座防衛なるか

スーパー・フェザー級のWBC、WBO2団体統一王者、シャクール・スティーブンソン(25=アメリカ)が23日(日本時間24日)、アメリカのニュージャージー州ニューアークで防衛戦を行う。挑戦者は両団体で2位にランクされるロブソン・コンセイサン(33=ブラジル)。この試合が注目される要因のひとつとしてスティーブンソンが2016年リオデジャネイロ五輪バンタム級銀メダリストで、コンセイサンが同五輪ライト級金メダリストという点がある。プロでひと足早く成功を収めたスティーブンソンが王座を守るのか、それとも体格で勝るコンセイサンが五輪王者の意地をみせるのか。

スティーブンソンは19歳でリオデジャネイロ五輪に出場し、56キロ以下のバンタム級で3勝して銀メダル以上を確定させた。しかし、決勝で前大会フライ級覇者のロベイシー・ラミレス(キューバ)に1対2の判定で惜敗、最も高い表彰台に上ることはできなかった。

その悔しさを胸に2017年4月にプロ転向。2019年10月にWBO世界フェザー級王座を獲得し、昨年にはWBO世界スーパー・フェザー級王座も手に入れた。今年4月、WBC王者のオスカル・バルデス(メキシコ)に圧勝して2団体王者になった。スピードとスキルに長けたサウスポーの技巧派で、防御技術の高さに定評がある。一時はディフェンシブな戦いが目立ったため評価が停滞したが、最近は周囲の期待に応えようと積極性が出てきた。戦績は18戦全勝(9KO)。

挑戦者のコンセイサンは2008年北京大会、2012年ロンドン大会はいずれも初戦敗退だったが、3度目の五輪では4連勝して金メダルを獲得した。その3カ月後、28歳でプロに転向し、順調に勝利を重ねてきた。昨年9月、バルデスの持つWBC世界フェザー級王座に挑んだが、善戦したものの12回判定負けを喫した。これが18戦したなかで唯一の敗北だ(17勝8KO1敗)。今年1月の再起戦で17戦全勝のホープを下してトップ戦線に残った。身長178センチ、リーチ178センチの体格を生かして長距離から右ストレートを放つこともあれば中間距離で打撃戦を仕掛けることもある。パンチは左右ともチョップ気味のものが多く、それがKO率の低さ(44パーセント)に表れているようだ。

ともに中長距離での戦いを得意としているが、スティーブンソンの方がプロでの経験値で勝り、より洗練されている印象だ。序盤から互いにスピードのあるリードパンチを繰り出しながら二の矢、三の矢を継ぐタイミングを計ることになりそうだが、早々に王者が主導権を握るものとみる。オッズは12対1の大差でスティーブンソン有利と出ている。ライト級進出も視野に入れているスティーブンソンは、周囲の期待どおりにKO防衛を果たすことができるか。

まばたき厳禁アルバレス対ゴロフキン 3度目の対戦のカギはスーパー・ミドル級の体重

スーパー・ミドル級の4団体統一王者、サウル・カネロ・アルバレス(32=メキシコ)と、ミドル級のWBAスーパー、IBF王者のゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)が17日(日本時間18日)、アメリカのネバダ州ラスベガスで対戦する。両者は2017年9月と2018年9月にミドル級王座をかけて対戦。初戦は引き分け、再戦はアルバレスが12回判定勝ちを収めている。しかし、2試合ともゴロフキンの勝利を推す声が多く、決着戦が待たれていた。4年の歳月を経て実現する第3戦はアルバレスが保持するスーパー・ミドル級王座の防衛戦として行われる。オッズは約4対1でアルバレス有利と出ている。

2017年9月の初戦はゴロフキンが保持するWBAスーパー、WBC、IBF王座にアルバレスが挑むかたちで行われた。試合全般を通してゴロフキンが押し気味に戦っていたが、終盤にアルバレスが反撃して追いついたという内容だった。

1年後の再戦はアルバレスが積極的に仕掛け、ゴロフキンが左ジャブを軸に迎え撃つという展開になった。優劣の見極めが難しいラウンドが続いたが、ジャッジ二者が2ポイント差でアルバレス優勢と採点(ひとりは引き分け)したためゴロフキンはプロ40戦目で初黒星を喫し、WBAスーパー王座とWBC王座を失った。

2試合ともゴロフキン優勢とみる関係者やファンが多かったこともあり3度目の対戦が期待されたが、アルバレスが1階級上のスーパー・ミドル級、2階級上のライト・ヘビー級に進出したため決着戦は実現しないまま4年近くが経過した。この間、ゴロフキンはIBFでミドル級王座返り咲きを果たし、今年4月には村田諒太(帝拳)に9回TKO勝ちを収めてWBAスーパー王座も取り戻した。一方のアルバレスはスーパー・ミドル級で4団体の王座を統一し、またライト・ヘビー級でも戴冠を果たして4階級制覇を果たした。しかし、今年5月、ライト・ヘビー級のWBAスーパー王者、ドミトリー・ビボル(キルギス/ロシア)に12回判定で敗れている。その試合を含めた戦績は61戦57勝(39KO)2敗2分。

今回の決着戦はスーパー・ミドル級(76.2キロ以下)の体重で行われる点がミソといえる。ゴロフキンは16年のプロ生活で44戦(42勝37KO1敗1分)をこなしているが、過去の最重量体重は73.9キロに留まる。これに対しアルバレスは直近の8戦のうち7試合をスーパー・ミドル級、またはライト・ヘビー級(79.3キロ以下)で戦っているのだ。現在のベスト体重で試合に臨めるという絶対的な優位性がある。アルバレスが直近の試合で負けているとはいえ、40歳になったゴロフキンにとっては悪条件下の試合といっていいだろう。

村田がゴロフキンにしたようにアルバレスも序盤から圧力をかけて出ることが予想される。相手を下がらせておいて自分が踏み込む間合いをつくろうとするはずだ。これに対しビボルがアルバレスにしたようにゴロフキンは左ジャブを多用するものと思われる。相手の前進を押さえ込み、そのうえで右の強打に繋げるチャンスをうかがうのではないだろうか。試合は前半から中盤にかけてヒートアップしていき、終盤には打撃戦に突入する可能性が高い。もちろん、どちらかが前半でミスを犯すようなことがあれば衝撃の結末も考えられる。どちらがどんなかたちで決着をつけるのか。まばたき厳禁の試合だ。

アルバレス破った男ドミトリー・ビボルがUAEで12度目の防衛戦 ラミレスと高度な技術戦期待

WBA世界ライト・ヘビー級スーパー王者、ドミトリー・ビボル(31=キルギス/ロシア)が11月5日(日本時間6日)、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで同級1位のヒルベルト・ラミレス(31=メキシコ)を相手に12度目の防衛戦を行うことになった。ビボルは今年5月、ボクサーの強さ指標ともいえる「パウンド・フォー・パウンド」でNO,1の評価を得ていたサウル・カネロ・アルバレス(32=メキシコ)に判定勝ちを収めて知名度を上げている。元WBO世界スーパー・ミドル級王者のラミレスとの試合は技巧派同士の注目の対決といえる。

ビボルはプロデビューから1年半、わずか7戦目でライト・ヘビー級のWBA暫定王座を獲得した。25歳と若いこともあり高い期待を集めるなか4連続KO防衛をマークし、この間、正規王者への昇格も果たした。しかし、2018年以降は強打よりもテクニックを前面に出す戦い方が目立つようになり、5度目の防衛戦以降はKOから遠ざかり6試合続けて判定勝ちに留まった。危な気はないがスリルもない-極端な言い方をすれば守りのボクシングに変わったといっていいだろう。

そんなビボルに目を付けたのが1階級下のスーパー・ミドル級4団体統一王者のアルバレスだった。自慢のパワーで押し切れると判断したのだろう。事実、試合前は4対1でアルバレス有利というオッズが出ていた。ところがビボルは左ジャブでアルバレスの接近を許さず、終盤には正確なワンツーをヒットしてダメージを与える場面もつくった。ジャッジ三者の採点は115対113と接近していたが、ビボルの完勝といっていい内容だった。

試合直後には即再戦というプランも浮上したが、アルバレスがミドル級のWBAスーパー王座とIBF王座を持つゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)との第3戦を選択したため、ビボルはラミレスとの防衛戦に舵を切ることになった経緯がある。

2009年にプロデビューしたラミレスは身長189センチ、リーチ191センチの大柄なサウスポーで、スーパー・ミドル級時代にはWBO王座を5度防衛した実績を持っている。3年前にライト・ヘビー級に転向してからは世界挑戦経験者や世界ランカーを相手に5連続KO勝ちを収めており、勢いと自信を増している印象だ。

12度の世界戦を含め20戦全勝(11KO)の戦績を残しているビボルに対し、ラミレスも6度の世界戦を含め44戦全勝(30KO)と挫折を知らない。右構えと左構えの違いはあるが、ジャブで試合を組み立てる点も似ている。高度な技術戦になる可能性が高そうだ。

アルバレスに勝ったことで評価が急上昇したためか、8月下旬時点でのオッズは6対1でビボルの圧倒的有利と出ている。2カ月後の試合が待ち遠しい。

ルイス対オルティス、元世界ヘビー級王者同士のサバイバルマッチ 踏みとどまるのはどっちだ

元世界ヘビー級王者同士のサバイバルマッチが9月4日(日本時間5日)、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで行われる。WBAスーパー、IBF、WBOの王座を保持していた実績を持つアンディ・ルイス(32=アメリカ)と元WBA暫定王者のルイス・オルティス(43=キューバ)が拳を交えるもので、勝者がトップ戦線残留、敗者が脱落する非情な試合だ。

現在、WBC5位、WBA12位の肩書を持つルイスは身長とリーチが188センチ、直近の試合(2021年5月)の体重が116キロというポッチャリ型の選手で、アメリカ西海岸を中心に人気がある。2009年3月のプロデビューから13年間で36戦34勝(22KO)2敗の戦績を残している。相手の地元に乗り込んだ世界初挑戦試合では惜敗したが、2019年6月、22戦全勝(21KO)のアンソニー・ジョシュア(英国)に7回TKO勝ちを収めるという歴史的な番狂わせを起こして3団体王座を獲得した。一気にヒーローの座に駆け上がったもののパーティーが続いて自分自身を見失い、初戦よりも7キロ増で臨んだ再戦では12回判定で完敗。天下は半年に終わった。

その後、1年5カ月のブランクをつくったが、昨年5月に戦線復帰を果たした。そのときはジョシュアとの再戦時から12キロ以上も減量して試合に臨んでいる。

一方のオルティスはアマチュア強国キューバで368戦(349勝19敗)を経験後、30歳でプロ転向を果たした。以後、12年間に37戦33勝(28KO)2敗2無効試合の戦績を収めている。36歳のときにWBA暫定王座を獲得したが、1度防衛したあと放棄。2018年と2019年の2度、WBC王座に挑んだが、デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)に10回TKO、7回KOで敗れた。その後は2連続KO勝ちを収め、現在はIBF2位、WBO5位、WBC8位にランクされている。

ともに攻撃型だが、総合的な戦力ではサウスポーのオルティスが勝る。長中短どの距離でも戦えるタイプで、パンチがあるうえテクニックもあり、経験値も高い。ただ、最近は打たれ脆くなっており、今年1月の試合では2度のダウンを喫している。

ルイスは一見すると体が重そうだが、その印象に反して動きは俊敏で、瞬間的なハンドスピードはオルティスを上回っているかもしれない。チャンスをつかんだあとのパンチの回転も速い。アゴの強さにも定評がある。

32歳のルイスはともかく、43歳のオルティスにとっては敗北が引退に直結する可能性があるだけに失敗が許されない試合だが、オッズは3対1でルイス有利に傾いている。オルティスの年齢と打たれ脆さが響いているようだ。ルイスが前に出て中近距離の戦いに持ち込み、回転の速い連打で攻めたてる姿が目に浮かぶ。

WBC王者のタイソン・フューリー(英国)は去就が微妙だが、そんななか21日にはオレクサンダー・ウシク(ウクライナ)が前王者のジョシュアに判定勝ちを収めて3団体王座の防衛を果たした。フューリーに連敗したワイルダーも10月に再起戦が決まった。風雲急を告げるヘビー級トップ戦線に踏みとどまるのはルイスなのか、それともオルティスなのか。

注目のスーパー・フライ級主役のひとりエストラーダ、1年半ぶりのリング戦いぶりやいかに

2階級制覇を成し遂げているWBC世界スーパー・フライ級“フランチャイズ(特権)”王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(32=メキシコ)が9月3日(日本時間4日)、メキシコのソノラ州エルモシージョでアルギ・コルテス(27=メキシコ)の挑戦を受ける。エストラーダは同級WBO王者の井岡一翔(33=志成)が対戦を望んでいる意中の選手だが、統一戦実現の道のりは遠いようだ。

エストラーダは昨年3月、WBAスーパー王者だったローマン・ゴンサレス(35=ニカラグア)に僅少差の12回判定勝ちを収め、2団体の王座統一を果たすとともに9年前の借り(12回判定負け)を返した。7カ月後には3度目の対戦が組まれたが、ゴンサレスが新型コロナウィルス検査で陽性だったため試合は今年3月に延期。ところが、今年に入って今度はエストラーダが陽性だったため決着戦は再延期された。

こうしたなかエストラーダはWBAレギュラー王者のジョシュア・フランコ(26=アメリカ)との団体内統一戦を優先させることになったが、ここでも6月、7月と2度にわたって試合は延期された。これを受けWBAは今月、エストラーダのスーパー王座を剥奪した。

9月3日のコルテス戦は1年半ぶりの実戦となるエストラーダだが、「コンディションはすごくいい。勝つためにベストを尽くす」と意気込みを口にしている。12度の世界戦を含めた戦績は45戦42勝(28KO)3敗。

コルテスは27戦23勝(10KO)2敗2分の戦績を残しているが、メキシコを出て戦ったことがなく、世界的な強豪との対戦も皆無といえる。地域王座への挑戦も一度もなく、10回戦の試合も3度だけと経験不足の感は否めない。同じメキシコ人とはいえ地力はもちろんのこと実績と知名度で大きく勝るエストラーダの地元に乗り込んでの試合とあって厳しい戦いは覚悟しなければなるまい。不気味なのは数多くの世界王者を育成してきたイグナシオ・ベリスタイン・トレーナーの門下生という点ぐらいだろうか。

スーパー・フライ級ではWBO王者の井岡だけでなくWBC王者のジェシー・ロドリゲス(22=アメリカ)もエストラーダとの対戦を望んでいる。もちろんゴンサレスも3度目の決着戦を希望しており、エストラーダがコルテス戦をクリアすれば年内にも3度目の対戦が実現するのではないかと伝えられる。近い将来、フライ級のWBO王者、中谷潤人(24=M.T)の参入も確実視されており、スーパー・フライ級の注目度は上がっている。

こうしたなか主役のひとりであるエストラーダが1年半ぶりのリングでどんな戦いを見せるのだろうか。

ウシク対ジョシュア、王者と挑戦者の立場変え11カ月ぶり再戦 ガルシア・トレーナーがキーマン

ヘビー級のWBAスーパー王座、IBF王座、WBO王座を保持しているオレクサンダー・ウシク(35=ウクライナ)と、前3団体王者のアンソニー・ジョシュア(32=英国)が20日(日本時間21日)、サウジアラビアのジッダで対戦する。両者は昨年9月、3団体王者だったジョシュアの防衛戦として英国で拳を交え、7対3の下馬評を覆してウシクが12回判定勝ち、クルーザー級に続いて王座を獲得した。王者と挑戦者の立場を変えて臨む11カ月ぶりの再戦。今度はウシク有利というオッズが出ている。

昨年9月の初戦は技巧派サウスポーのウシクがジョシュアの強打を空転させたうえ、中盤以降にペースを上げてリードを広げた。特に最終回はウシクの攻勢が目立ち、疲労とダメージでダウン寸前に陥ったジョシュアはロープに寄りかかった状態で試合終了のゴングを聞くほどだった。三人のジャッジの採点は117対112、115対113、116対112だったが、それ以上の差が感じられた試合内容だった。

初戦の契約の際に再戦条項が含まれていたためジョシュア側は今春にもリマッチを希望と伝えられた。しかし、ロシアがウクライナに軍事侵攻したこともありウシクの準備が間に合わず、いったん日程は7月23日に内定した。ところが、今度はジョシュア側が新しく組んだロベルト・ガルシア・トレーナーと馴染むために時間が必要となり、「8月20日、ジッダで開催」という線に落ち着いた経緯がある。

互いに調整試合を挟むことなく再戦に臨むため、総合的な戦力そのものの上積みはないとみていいだろう。勝負を占ううえで重要視されるのは戦闘スタイルの違いだ。身長191センチ/リーチ198センチ/体重100キロのウシクがサウスポーの技巧派なのに対し、右ストレートを中心にパンチ力で勝るジョシュアは198センチ/208センチ/108キロと体格でも優位に立っている。初戦では足をつかって巧みに距離とタイミングを操るウシクの前に後手にまわったジョシュアだが、新トレーナーとどんな策を練ってリングに上がるのか注目される。自身が元世界王者でもあるガルシア・トレーナーはノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)や実弟のマイキー・ガルシア(アメリカ)ら10人以上の世界王者のコーチを務めた実績を持っているだけに、ウシク陣営も警戒しているはずだ。このガルシア・トレーナーが今回の試合のキーマンといっていいだろう。

それでも初戦で快勝しているウシク有利は変わらない。オッズは試合が発表された時点の2対1から5対3に差が縮まっているが、ウシクを推す声が多い。11カ月前と同じように相手に間合いを与えずに慎重に戦い、中盤から終盤にペースを上げて引き離したいところだ。ジョシュアは前半で主導権を握りたい。右ストレートで脅威を与えながら左ジャブで追い込むことができればチャンスは広がるだろう。もちろん右が炸裂すれば一撃KOで王座奪還の可能性も十分にある。

ヘビー級では、引退表明していたWBC王者のタイソン・フューリー(33=英国)の戦線復帰が確実になり、前WBC王者のデオンテイ・ワイルダー(36=アメリカ)も10月に再起戦を行う予定となっている。

この先も最重量級トップ戦線から目が離せない状況が続きそうだ。

元世界王者同士オルティス対ルイスなど8、9月はヘビー級注目ファイトが続々

今年に入りヘビー級トップ戦線は4月にWBC王者のタイソン・フューリー(33=英国)が初防衛に成功した以外に大きな動きがなかったが、その静寂を破るかのように8月と9月に複数の注目ファイトが予定されている。最たるものは8月20日(日本時間21日)にアラブ首長国連邦(UAE)で行われるオレクサンダー・ウシク(35=ウクライナ)対アンソニー・ジョシュア(32=英国)のWBAスーパー、IBF、WBO3団体統一タイトルマッチだ。この11カ月ぶりの再戦の展望は次回にまわすとして、今回はそれ以外のランカー対決を紹介しよう。

ウシク対ジョシュアの前座では張志磊(ツァン・チレイ 39=中国)対フィリップ・フルゴビッチ(30=クロアチア)のIBF挑戦者決定戦が組まれている。2008年北京五輪スーパー・ヘビー級銀メダリストの張はプロでは25戦24勝(19KO)1分の戦績を残しており、現在はIBF15位にランクされている。IBF3位のフルゴビッチは2016年リオデジャネイロ五輪同級銅メダリストで、プロ戦績は14戦全勝(12KO)。大柄なサウスポー、張の体力は無視できないが、パンチ力とスキルで勝るフルゴビッチが8対1で有利と見られている。

9月4日にはアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスでルイス・オルティス(43=キューバ)対アンディ・ルイス(32=アメリカ)の元世界王者同士のサバイバルマッチが行われる。元WBA暫定王者のオルティスはサウスポーの技巧派強打者で、43歳のいまもWBC8位、IBF2位、WBO5位にランクされている。一方、3年前にジョシュアを7回TKOで破ってWBAスーパー、IBF、WBO王座を獲得した実績を持つルイスは現在、WBA12位、WBC5位に名を連ねている。戦績はオルティスが37戦33勝(28KO)2敗2無効試合、ルイスが36戦34勝(22KO)2敗。オルティスが直近の試合で2度のダウンを喫していることが響いてかオッズは10対3でルイス有利と出ている。

9月24日には英国マンチェスターでWBOの挑戦者決定戦が組まれている。1位のジョー・ジョイス(36=英国)と2位で元WBO王者のジョセフ・パーカー(30=ニュージーランド)が拳を交えるのだ。

2016年リオデジャネイロ五輪スーパー・ヘビー級銀メダリストのジョイスは身長198センチ、体重120キロの巨体を生かした攻撃型で、プロ転向後は14戦全勝(13KO)をマークしている。対するパーカーはスピードが持ち味の選手で32戦30勝(21KO)2敗の戦績を残している。壁のように迫るジョイスをパーカーはさばけるのか。オッズは地の利もあるジョイス有利と出ているが3対2と接近している。

そして、最大の注目カードは8月20日にサウジアラビアのジッダで行われるWBAスーパー、IBF、WBO3団体統一王者のウシク対前王者、ジョシュアの一戦だ。両者は昨年9月に英国で対戦し、技巧派サウスポーのウシクがジョシュアの強打を封じて12回判定勝ち、3本のベルトを奪い取っている。ともに1試合も挟まずに臨むダイレクト・リマッチ。ウシクの再びテクニックが冴えるのか、それとも今度こそジョシュアの強打が炸裂するのか。

<次回につづく>

アルバレス対ゴロフキン、ウシク対ジョシュア…この夏から秋にかけて注目カードが目白押し

サウル・カネロ・アルバレス(32=メキシコ)やアンソニー・ジョシュア(32=英国)ら、直近の世界戦で敗北を喫したトップ選手たちが8月から10月にかけて相次いで再起戦やリベンジマッチを予定している。彼らにとっては背水の陣で臨む戦いだが、決して楽観視できないカードが並んでいる。

先陣を切るのはライト級の元4団体統一王者、テオフィモ・ロペス(24=アメリカ)だ。今月13日(日本時間14日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでWBO世界スーパー・ライト級11位のペドロ・カンパ(30=メキシコ)と対戦する。ロペスは2020年10月にワシル・ロマチェンコ(34=ウクライナ)を破って王座統一(WBCはフランチャイズ王座)を果たしたが、昨年11月にジョージ・カンボソス(29=オーストラリア)に不覚の判定負けを喫して4本のベルトを失った。無冠に戻ったのを機に1階級上のスーパー・ライト級に転向することになり、今回は新階級でのテストマッチでもある。戦績はロペスが17戦16勝(12KO)1敗、カンパが36戦34勝(23KO)1敗1分。

8月20日(日本時間21日)、サウジアラビアのジッダではオレクサンダー・ウシク(35=ウクライナ)対ジョシュアのWBAスーパー、IBF、WBO世界ヘビー級タイトルマッチが行われる。両者は昨年9月、今回とは逆の立場で対戦し、技巧派サウスポーのウシクが12回判定勝ちで3団体王座を奪った。中盤から後手にまわったジョシュアは最終回にはスタミナも切れてダウン寸前に追い込まれるほどの完敗だった。その印象が強いためか再戦のオッズは8対5でウシク有利と出ている。戦績はウシクが19戦全勝(13KO)、ジョシュアが26戦24勝(22KO)2敗。

9月17日(日本時間18日)にはアルバレスがラスベガスでゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)との第3戦に臨む。両者は2017年と2018年にミドル級で2度拳を交え、初戦は引き分け、再戦はアルバレスが判定勝ちを収めた。しかし、「2試合ともゴロフキンが勝っていた」という意見も多く、長いこと決着戦が待たれていた。現在、アルバレスはスーパー・ミドル級の4団体統一王者だが、5月に1階級上のライト・ヘビー級で判定負けを喫しており、これが再起戦となる。一方、4月に村田諒太(36=帝拳)に9回TKO勝ちを収めたゴロフキンはミドル級のWBAスーパー王座とIBF王座を持ったままアルバレスの持つスーパー・ミドル級王座に挑むことになる。戦績はアルバレスが61戦57勝(39KO)2敗2分、ゴロフキンが44戦42勝(37KO)1敗1分。オッズは4対1でアルバレス有利に傾いている。

今年2月、フェルナンド・マルチネス(31=アルゼンチン)に判定負けを喫し、5年5カ月の長期政権に終止符を打つことになった前IBF世界スーパー・フライ級王者のジェルウィン・アンカハス(30=フィリピン)は、マルチネスとの直接再戦に臨むことになった。試合は10月8日(日本時間9日)、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで予定されている。戦績はアンカハスが37戦33勝(22KO)2敗2分、マルチネスが14戦全勝(8KO)。

ロペスの項で名前が出てきたカンボソスは6月、WBC王者のデビン・ヘイニー(23=アメリカ)に12回判定負けを喫し、WBCフランチャイズ王座を含め4本のベルトを失った。その試合契約に再戦条項があったため、10月16日にヘイニーとダイレクトリマッチに臨む。初戦ではヘイニーのスピードと技巧の前に闘志を空転させられて完敗を喫しているだけに、カンボソスにとっては厳しい戦いが予想される。戦績はヘイニーが28戦全勝(15KO)、カンボソスが21戦20勝(10KO)1敗。試合は初戦と同じくオーストラリアのメルボルンで行われる。

ロペス対カンパ、ウシク対ジョシュア、アルバレス対ゴロフキン、マルチネス対アンカハス、ヘイニー対カンボソス-これら夏から秋にかけて組まれているカードに要注目だ。

WBC王者ジェシー・ロドリゲス 22歳の若武者がスーパー・フライ級トップ戦線に参入

日本初にして唯一の世界4階級制覇王者、井岡一翔(33=志成)が13日、同じく4階級制覇の実績を持つドニー・ニエテス(40=フィリピン)を退けてWBO世界スーパー・フライ級王座の5度目の防衛に成功した。このクラスには井岡のほかにWBAスーパー王座とWBCフランチャイズ(特権)王座を持つファン・フランシスコ・エストラーダ(32=メキシコ)や元4階級制覇王者のローマン・ゴンサレス(35=ニカラグア)ら知名度の高い実力者が揃っているが、ここに来てさらに新しいタレントが登場した。WBC王者のジェシー・ロドリゲス(22=アメリカ)だ。この急成長中のサウスポーはスーパー・フライ級の勢力図を変える可能性を秘めている。

「ジェシー・ジェームス・ロドリゲス・フランコ」というフルネームを持つロドリゲスは、同じ階級のWBA王者、ジョシュア・フランコの4歳半下の弟としても知られている。世界ジュニア選手権準優勝、全米ジュニア選手権優勝などアマチュア時代から才能の一部を開花させていたロドリゲスは、2017年3月にミニマム級でプロデビュー。その後はライト・フライ級、フライ級、スーパー・フライ級、さらにはフェザー級と体重の幅をもって戦ってきた。

大きなチャンスが巡ってきたのは今年2月のことだ。WBC世界スーパー・フライ級王座決定戦に出場するはずだった元王者のシーサケット・ソールンビサイ(タイ)が体調不良のため棄権、代役のオファーが入ったのだ。もともと前座に出場予定だったロドリゲスは転がり込んだ好機に「イエス」と返事。本番では経験値の高い元王者のカルロス・クアドラス(メキシコ)を軽快な動きとスキルで寄せ付けず、大差の判定勝ちを収めて戴冠を果たした。3回にはサイドに瞬間移動、相手の死角から右アッパーを突き上げてダウンを奪うなど高等技術も披露した。

WBCの指令に従い6月にはシーサケットを相手に初防衛戦に臨み、またもテクニックで元王者の強打を封じた。8回TKOの完勝だった。

この2勝を含めた戦績は16戦全勝(11KO)。身長163センチ、リーチ170センチと決して大柄ではないが攻防のバランスがよく、ボクシングIQも高い。22歳と若いうえ勝負度胸もある。世界王者にして成長途上の逸材といっていいだろう。

指名防衛戦をクリアしたあとロドリゲスは適正階級と思われるフライ級への転向を示唆したが、それに反して9月17日にラスベガスでV2戦が決まった。サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)対ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)の大一番の前座でイスラエル・ゴンサレス(メキシコ)と対戦するのだ。33戦28勝(11KO)4敗1分のゴンサレスは過去に3度の世界挑戦経験を持っているが、王者を脅かすほどの力はないと思われる。ロドリゲスにとっては注目ファイトの前座で勝ち方が問われる試合といえそうだ。

この数年、スーパー・フライ級はエストラーダ、ゴンサレス、井岡、シーサケット、クアドラスといったビッグネームが支配してきたが、いずれも30歳を超えた。こうしたなか近い将来、WBO世界フライ級王者の中谷潤人(M.T)がスーパー・フライ級への転向を計画中と伝えられる。はたして井岡対ロドリゲス、あるいは中谷対ロドリゲスは実現するのか。

22歳の若武者が参入したことでスーパー・フライ級トップ戦線がさらに熱くなってきた。

ドニー・ニエテス、井岡一翔から王座奪取ならず フィリピン世界王者5カ月で5→0

去る13日、4階級制覇の実績を持つドニー・ニエテス(40=フィリピン)が、東京・大田区総合体育館でWBO世界スーパー・フライ級王者の井岡一翔(33=志成)に挑んだが12回判定で完敗した。勝てばフィリピンの世界王者不在を4日で止めるところだったが、かなわなかった。フィリピンのボクシング界は今年2月の時点では5人の世界王者を擁していたが、一転して半年後の現在はゼロの状態が続いている。

今年1月22日、マーク・マグサヨ(27)がゲイリー・ラッセル(アメリカ)に判定勝ちを収めてWBC世界フェザー級王座を獲得したことで、フィリピンは5人の世界王者を抱えることになった。バンタム級WBC王者のノニト・ドネア(39)と同級WBO王者のジョンリエル・カシメロ(33)、IBFスーパー・フライ級王者のジェルウィン・アンカハス(30)、IBFミニマム級王者のレネ・マーク・クアトロ(25)、そしてマグサヨである。ベテランと若手のバランスがとれていて、なかなかのメンバーといえた。

ところが、その後、雪崩現象に突入した。4年半に9度の防衛を果たしていたアンカハスが2月26日に伏兵に敗れると、5月3日にはカシメロが王座を剥奪された。英国で予定していた防衛戦を前に減量目的でサウナを使用したことが規定違反にあたるというのが直接の原因だが、それ以前から試合をドタキャンするなどマイナス点の累積ともいえた。

6月7日、ドネアが3団体王座統一戦で井上尚弥(大橋)に2回TKOで敗れ無冠になったことは日本のファンも周知のとおりだ。7月1日、クアトロがメキシコ遠征で僅少差の判定で王座を失い、8日後にはアメリカで初防衛戦に臨んだマグサヨも小差の判定負けを喫して失冠。こうして2月中旬まで5本あったベルトが4カ月半でゼロになってしまったのだ。この間、ジョナス・スルタン(31)がカシメロの後継王者決定戦に出場したが判定負け。ニエテスも井岡に大差の判定で敗れて空白を埋めることはできなかった。

フィリピンは21世紀に入るタイミングでマニー・パッキャオというスーパースターが現れたことで世界的な注目を集めることになったが、もともとボクシング強国として知られている。歴代の男子世界王者は45人(ボクサーのレコード専門サイトboxrec.com)と多く、日本(94人)、タイ(50人)とともに軽い階級の選手層が厚い。現在もニエテスを除き5人のフィリピン選手が軽量級で各団体の最上位(1位)にランクされている。

いつ、誰が世界王者不在にピリオドを打つのか。日本とも深い繋がりのあるフィリピンのボクシング界の今後に注目していきたい。

原功(はら・いさお)

 1959年(昭34)4月7日、埼玉県深谷市生まれ。日大法学部新聞学科卒業。82年、ベースボール・マガジン社入社。以来18年間「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間同誌編集長。現在はWOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。著書に「タツキ」「ボクシング 名勝負の真実・日本編/海外編」ほか。