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au版ニッカン★バトル

原功「BOX!」

元世界王者同士オルティス対ルイスなど8、9月はヘビー級注目ファイトが続々

今年に入りヘビー級トップ戦線は4月にWBC王者のタイソン・フューリー(33=英国)が初防衛に成功した以外に大きな動きがなかったが、その静寂を破るかのように8月と9月に複数の注目ファイトが予定されている。最たるものは8月20日(日本時間21日)にアラブ首長国連邦(UAE)で行われるオレクサンダー・ウシク(35=ウクライナ)対アンソニー・ジョシュア(32=英国)のWBAスーパー、IBF、WBO3団体統一タイトルマッチだ。この11カ月ぶりの再戦の展望は次回にまわすとして、今回はそれ以外のランカー対決を紹介しよう。

ウシク対ジョシュアの前座では張志磊(ツァン・チレイ 39=中国)対フィリップ・フルゴビッチ(30=クロアチア)のIBF挑戦者決定戦が組まれている。2008年北京五輪スーパー・ヘビー級銀メダリストの張はプロでは25戦24勝(19KO)1分の戦績を残しており、現在はIBF15位にランクされている。IBF3位のフルゴビッチは2016年リオデジャネイロ五輪同級銅メダリストで、プロ戦績は14戦全勝(12KO)。大柄なサウスポー、張の体力は無視できないが、パンチ力とスキルで勝るフルゴビッチが8対1で有利と見られている。

9月4日にはアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスでルイス・オルティス(43=キューバ)対アンディ・ルイス(32=アメリカ)の元世界王者同士のサバイバルマッチが行われる。元WBA暫定王者のオルティスはサウスポーの技巧派強打者で、43歳のいまもWBC8位、IBF2位、WBO5位にランクされている。一方、3年前にジョシュアを7回TKOで破ってWBAスーパー、IBF、WBO王座を獲得した実績を持つルイスは現在、WBA12位、WBC5位に名を連ねている。戦績はオルティスが37戦33勝(28KO)2敗2無効試合、ルイスが36戦34勝(22KO)2敗。オルティスが直近の試合で2度のダウンを喫していることが響いてかオッズは10対3でルイス有利と出ている。

9月24日には英国マンチェスターでWBOの挑戦者決定戦が組まれている。1位のジョー・ジョイス(36=英国)と2位で元WBO王者のジョセフ・パーカー(30=ニュージーランド)が拳を交えるのだ。

2016年リオデジャネイロ五輪スーパー・ヘビー級銀メダリストのジョイスは身長198センチ、体重120キロの巨体を生かした攻撃型で、プロ転向後は14戦全勝(13KO)をマークしている。対するパーカーはスピードが持ち味の選手で32戦30勝(21KO)2敗の戦績を残している。壁のように迫るジョイスをパーカーはさばけるのか。オッズは地の利もあるジョイス有利と出ているが3対2と接近している。

そして、最大の注目カードは8月20日にサウジアラビアのジッダで行われるWBAスーパー、IBF、WBO3団体統一王者のウシク対前王者、ジョシュアの一戦だ。両者は昨年9月に英国で対戦し、技巧派サウスポーのウシクがジョシュアの強打を封じて12回判定勝ち、3本のベルトを奪い取っている。ともに1試合も挟まずに臨むダイレクト・リマッチ。ウシクの再びテクニックが冴えるのか、それとも今度こそジョシュアの強打が炸裂するのか。

<次回につづく>

アルバレス対ゴロフキン、ウシク対ジョシュア…この夏から秋にかけて注目カードが目白押し

サウル・カネロ・アルバレス(32=メキシコ)やアンソニー・ジョシュア(32=英国)ら、直近の世界戦で敗北を喫したトップ選手たちが8月から10月にかけて相次いで再起戦やリベンジマッチを予定している。彼らにとっては背水の陣で臨む戦いだが、決して楽観視できないカードが並んでいる。

先陣を切るのはライト級の元4団体統一王者、テオフィモ・ロペス(24=アメリカ)だ。今月13日(日本時間14日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでWBO世界スーパー・ライト級11位のペドロ・カンパ(30=メキシコ)と対戦する。ロペスは2020年10月にワシル・ロマチェンコ(34=ウクライナ)を破って王座統一(WBCはフランチャイズ王座)を果たしたが、昨年11月にジョージ・カンボソス(29=オーストラリア)に不覚の判定負けを喫して4本のベルトを失った。無冠に戻ったのを機に1階級上のスーパー・ライト級に転向することになり、今回は新階級でのテストマッチでもある。戦績はロペスが17戦16勝(12KO)1敗、カンパが36戦34勝(23KO)1敗1分。

8月20日(日本時間21日)、サウジアラビアのジッダではオレクサンダー・ウシク(35=ウクライナ)対ジョシュアのWBAスーパー、IBF、WBO世界ヘビー級タイトルマッチが行われる。両者は昨年9月、今回とは逆の立場で対戦し、技巧派サウスポーのウシクが12回判定勝ちで3団体王座を奪った。中盤から後手にまわったジョシュアは最終回にはスタミナも切れてダウン寸前に追い込まれるほどの完敗だった。その印象が強いためか再戦のオッズは8対5でウシク有利と出ている。戦績はウシクが19戦全勝(13KO)、ジョシュアが26戦24勝(22KO)2敗。

9月17日(日本時間18日)にはアルバレスがラスベガスでゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)との第3戦に臨む。両者は2017年と2018年にミドル級で2度拳を交え、初戦は引き分け、再戦はアルバレスが判定勝ちを収めた。しかし、「2試合ともゴロフキンが勝っていた」という意見も多く、長いこと決着戦が待たれていた。現在、アルバレスはスーパー・ミドル級の4団体統一王者だが、5月に1階級上のライト・ヘビー級で判定負けを喫しており、これが再起戦となる。一方、4月に村田諒太(36=帝拳)に9回TKO勝ちを収めたゴロフキンはミドル級のWBAスーパー王座とIBF王座を持ったままアルバレスの持つスーパー・ミドル級王座に挑むことになる。戦績はアルバレスが61戦57勝(39KO)2敗2分、ゴロフキンが44戦42勝(37KO)1敗1分。オッズは4対1でアルバレス有利に傾いている。

今年2月、フェルナンド・マルチネス(31=アルゼンチン)に判定負けを喫し、5年5カ月の長期政権に終止符を打つことになった前IBF世界スーパー・フライ級王者のジェルウィン・アンカハス(30=フィリピン)は、マルチネスとの直接再戦に臨むことになった。試合は10月8日(日本時間9日)、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで予定されている。戦績はアンカハスが37戦33勝(22KO)2敗2分、マルチネスが14戦全勝(8KO)。

ロペスの項で名前が出てきたカンボソスは6月、WBC王者のデビン・ヘイニー(23=アメリカ)に12回判定負けを喫し、WBCフランチャイズ王座を含め4本のベルトを失った。その試合契約に再戦条項があったため、10月16日にヘイニーとダイレクトリマッチに臨む。初戦ではヘイニーのスピードと技巧の前に闘志を空転させられて完敗を喫しているだけに、カンボソスにとっては厳しい戦いが予想される。戦績はヘイニーが28戦全勝(15KO)、カンボソスが21戦20勝(10KO)1敗。試合は初戦と同じくオーストラリアのメルボルンで行われる。

ロペス対カンパ、ウシク対ジョシュア、アルバレス対ゴロフキン、マルチネス対アンカハス、ヘイニー対カンボソス-これら夏から秋にかけて組まれているカードに要注目だ。

WBC王者ジェシー・ロドリゲス 22歳の若武者がスーパー・フライ級トップ戦線に参入

日本初にして唯一の世界4階級制覇王者、井岡一翔(33=志成)が13日、同じく4階級制覇の実績を持つドニー・ニエテス(40=フィリピン)を退けてWBO世界スーパー・フライ級王座の5度目の防衛に成功した。このクラスには井岡のほかにWBAスーパー王座とWBCフランチャイズ(特権)王座を持つファン・フランシスコ・エストラーダ(32=メキシコ)や元4階級制覇王者のローマン・ゴンサレス(35=ニカラグア)ら知名度の高い実力者が揃っているが、ここに来てさらに新しいタレントが登場した。WBC王者のジェシー・ロドリゲス(22=アメリカ)だ。この急成長中のサウスポーはスーパー・フライ級の勢力図を変える可能性を秘めている。

「ジェシー・ジェームス・ロドリゲス・フランコ」というフルネームを持つロドリゲスは、同じ階級のWBA王者、ジョシュア・フランコの4歳半下の弟としても知られている。世界ジュニア選手権準優勝、全米ジュニア選手権優勝などアマチュア時代から才能の一部を開花させていたロドリゲスは、2017年3月にミニマム級でプロデビュー。その後はライト・フライ級、フライ級、スーパー・フライ級、さらにはフェザー級と体重の幅をもって戦ってきた。

大きなチャンスが巡ってきたのは今年2月のことだ。WBC世界スーパー・フライ級王座決定戦に出場するはずだった元王者のシーサケット・ソールンビサイ(タイ)が体調不良のため棄権、代役のオファーが入ったのだ。もともと前座に出場予定だったロドリゲスは転がり込んだ好機に「イエス」と返事。本番では経験値の高い元王者のカルロス・クアドラス(メキシコ)を軽快な動きとスキルで寄せ付けず、大差の判定勝ちを収めて戴冠を果たした。3回にはサイドに瞬間移動、相手の死角から右アッパーを突き上げてダウンを奪うなど高等技術も披露した。

WBCの指令に従い6月にはシーサケットを相手に初防衛戦に臨み、またもテクニックで元王者の強打を封じた。8回TKOの完勝だった。

この2勝を含めた戦績は16戦全勝(11KO)。身長163センチ、リーチ170センチと決して大柄ではないが攻防のバランスがよく、ボクシングIQも高い。22歳と若いうえ勝負度胸もある。世界王者にして成長途上の逸材といっていいだろう。

指名防衛戦をクリアしたあとロドリゲスは適正階級と思われるフライ級への転向を示唆したが、それに反して9月17日にラスベガスでV2戦が決まった。サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)対ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)の大一番の前座でイスラエル・ゴンサレス(メキシコ)と対戦するのだ。33戦28勝(11KO)4敗1分のゴンサレスは過去に3度の世界挑戦経験を持っているが、王者を脅かすほどの力はないと思われる。ロドリゲスにとっては注目ファイトの前座で勝ち方が問われる試合といえそうだ。

この数年、スーパー・フライ級はエストラーダ、ゴンサレス、井岡、シーサケット、クアドラスといったビッグネームが支配してきたが、いずれも30歳を超えた。こうしたなか近い将来、WBO世界フライ級王者の中谷潤人(M.T)がスーパー・フライ級への転向を計画中と伝えられる。はたして井岡対ロドリゲス、あるいは中谷対ロドリゲスは実現するのか。

22歳の若武者が参入したことでスーパー・フライ級トップ戦線がさらに熱くなってきた。

ドニー・ニエテス、井岡一翔から王座奪取ならず フィリピン世界王者5カ月で5→0

去る13日、4階級制覇の実績を持つドニー・ニエテス(40=フィリピン)が、東京・大田区総合体育館でWBO世界スーパー・フライ級王者の井岡一翔(33=志成)に挑んだが12回判定で完敗した。勝てばフィリピンの世界王者不在を4日で止めるところだったが、かなわなかった。フィリピンのボクシング界は今年2月の時点では5人の世界王者を擁していたが、一転して半年後の現在はゼロの状態が続いている。

今年1月22日、マーク・マグサヨ(27)がゲイリー・ラッセル(アメリカ)に判定勝ちを収めてWBC世界フェザー級王座を獲得したことで、フィリピンは5人の世界王者を抱えることになった。バンタム級WBC王者のノニト・ドネア(39)と同級WBO王者のジョンリエル・カシメロ(33)、IBFスーパー・フライ級王者のジェルウィン・アンカハス(30)、IBFミニマム級王者のレネ・マーク・クアトロ(25)、そしてマグサヨである。ベテランと若手のバランスがとれていて、なかなかのメンバーといえた。

ところが、その後、雪崩現象に突入した。4年半に9度の防衛を果たしていたアンカハスが2月26日に伏兵に敗れると、5月3日にはカシメロが王座を剥奪された。英国で予定していた防衛戦を前に減量目的でサウナを使用したことが規定違反にあたるというのが直接の原因だが、それ以前から試合をドタキャンするなどマイナス点の累積ともいえた。

6月7日、ドネアが3団体王座統一戦で井上尚弥(大橋)に2回TKOで敗れ無冠になったことは日本のファンも周知のとおりだ。7月1日、クアトロがメキシコ遠征で僅少差の判定で王座を失い、8日後にはアメリカで初防衛戦に臨んだマグサヨも小差の判定負けを喫して失冠。こうして2月中旬まで5本あったベルトが4カ月半でゼロになってしまったのだ。この間、ジョナス・スルタン(31)がカシメロの後継王者決定戦に出場したが判定負け。ニエテスも井岡に大差の判定で敗れて空白を埋めることはできなかった。

フィリピンは21世紀に入るタイミングでマニー・パッキャオというスーパースターが現れたことで世界的な注目を集めることになったが、もともとボクシング強国として知られている。歴代の男子世界王者は45人(ボクサーのレコード専門サイトboxrec.com)と多く、日本(94人)、タイ(50人)とともに軽い階級の選手層が厚い。現在もニエテスを除き5人のフィリピン選手が軽量級で各団体の最上位(1位)にランクされている。

いつ、誰が世界王者不在にピリオドを打つのか。日本とも深い繋がりのあるフィリピンのボクシング界の今後に注目していきたい。

4団体統一王者ジョシュ・テイラー、試合せずWBAスーパー王座とWBC王座手放す

昨年5月にWBAスーパー、WBC、IBF、WBOの主要4団体の世界スーパー・ライト級王座統一を果たしたジョシュ・テイラー(31=英国)が、ここに来て試合をすることなくWBAスーパー王座とWBC王座を手放した。各団体が指名する防衛戦の相手が異なり、それぞれの義務を果たすことが難しいためだ。井上尚弥(29=大橋)も目指しているように近年は4団体王座統一がトップ選手たちのトレンドになっているが、王座とモチベーションをキープし続けることは簡単ではないようだ。

テイラーは2019年5月にIBF王座を獲得し、5カ月後にWBAスーパー王者に勝って2本目のベルト収集に成功した。2021年5月、WBCとWBOの王座を持つホセ・カルロス・ラミレス(アメリカ)と頂上決戦を行い、2度のダウンを奪ったすえ12回判定勝ちで4団体王座の統一を果たした。このときの戦績は18戦全勝(13KO)だった。各メディアが発表するボクサーの格付けランキング、「パウンド・フォー・パウンド」でトップ10入りするなど高い評価を受けた。

4王座の初防衛戦は今年2月のこと。同国人でWBO1位のジャック・カテロールにダウンを喫するなど大苦戦したが、12回判定勝ちを収め辛うじてベルトを守った。

しかし、この試合後、WBO以外の3団体が自団体の1位選手との防衛戦を課してきたため、テイラーは身動きできない状態に陥った。

さすがに短期間内に3選手との防衛戦は不可能だ。そのためテイラーは5月にWBAスーパー王座を放棄し、7月初旬にはWBC王座も返上した。IBFはテイラーの今後の判断待ちといった状態だが、1位と2位で暫定王座決定戦を行う方向で調整に入っていると伝えられる。テイラーがIBF王座を返上した場合は暫定王者が正王者に昇格することになる。

テイラー自身はウェルター級転向も視野に入れているようだが、そのウェルター級では3団体王者のエロール・スペンス(アメリカ)とWBO王者のテレンス・クロフォード(アメリカ)が今秋にも4団体王座統一戦を行う計画が浮上しており、すぐに割り込める状況とはいえない。そこで2月に対戦したカテロールとの再戦が浮上しているという。僅少差の判定勝負だっただけに決着戦としての意味はあるが、そもそも格の違いがあるだけにテイラーにとってモチベーションの上がるカードとはいえないのが辛いところだ。

ところで、1988年にWBOが新設されてから34年。4団体のベルトを同時に保持した世界王者は下記のとおり9人いる。

(1)バーナード・ホプキンス(アメリカ=ミドル級)(2)ジャーメイン・テイラー(アメリカ=ミドル級)(3)テレンス・クロフォード(アメリカ=スーパー・ライト級)(4)オレクサンデル・ウシク(ウクライナ=クルーザー級)(5)テオフィモ・ロペス(アメリカ=ライト級)(6)ジョシュ・テイラー(英国=スーパー・ライト級)(7)サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ=スーパー・ミドル級)(8)ジョージ・カンボソス(オーストラリア=ライト級)(9)デビン・ヘイニー(アメリカ=ライト級) ※WBCのフランチャイズ王座を含む

このうちジョシュ・テイラー、アルバレス、カンボソス、ヘイニーの4人は昨年以降の達成者である。いかに4団体王座統一が近年のトレンドになっているかが分かるだろう。そして、現時点で4本のベルトを最も長い期間キープしたのは、次戦が1年1カ月後だったロペスだ。こちらは4冠保持の難しさが伝わってくるデータといえる。昨年11月に統一を果たしたアルバレス、今年6月に4冠王になったヘイニーに記録更新の期待がかかる。

井上は年内にもバンタム級4団体王座統一を目指しており、目標が達成されたあとはスーパー・バンタム級への転向が既定路線となっている。モチベーションをキープし続けるためにはベターな選択になりそうだ。

4階級制覇「マイキー」ミゲール・ガルシア引退を表明 戦慄のKOシーンが忘れられない

フェザー級からスーパー・ライト級までの4階級で世界王座を獲得した実績を持つミゲール・ガルシア(34=アメリカ)が6月下旬、引退を表明した。「マイキー」の愛称で知られた正統派強打者のガルシアは16年のプロ生活で42戦40勝(30KO)2敗というレコードを残した。

父親エデュアルドがトレーナー、12歳上の兄ロベルトが元世界王者というボクシング一家に育ったガルシアは、アマチュアを経て2006年に18歳でプロデビューした。

2013年1月、オルランド・サリド(メキシコ)から4度のダウンを奪ったすえ8回負傷判定勝ちを収め、25歳でWBO世界フェザー級王座を獲得。初防衛戦を前に体調を崩して規定体重をつくれずに王座を剥奪されたが、5カ月後に1階級上のスーパー・フェザー級でWBO王座に挑むチャンスをつかみ、ローマン・マルチネス(プエルトリコ)に8回KO勝ちを収め2階級制覇を達成。このころが最初のピークだった。当時は父親に加え兄ロベルトの指導を受けていたが、ジムメートにはノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)もいた。

その後、プロモーターと摩擦が生じたためガルシアは2年半のブランクをつくることになってしまった。26歳~28歳という成長期を棒に振ったのは惜しまれるが、プロモーターを変えて戦線復帰後の2017年1月、22戦全勝のデジャン・ズラチカニン(モンテネグロ)を3回KOで下してWBC世界ライト級王座を獲得した。さらに2018年3月にはセルゲイ・リピネッツ(カザフスタン)を12回判定で破って4階級目となるIBF世界スーパー・ライト級王座を奪取。4カ月後にはIBF王者に勝って2団体統一も果たした。このころが2度目のピークといえた。

身長168センチ、リーチ173センチとライト級、スーパー・ライト級では小柄な部類に入る体格だったが、巧みな位置どりと正確な左ジャブ、そして伸びと破壊力のある右ストレートに定評があった。

スーパー・ライト級で王座統一を果たしたころは階級を超越したボクサーの格付けランキング「パウンド・フォー・パウンド」のトップ10の常連だった。

2019年3月には史上8人目の5階級制覇を狙ってエロール・スペンス(アメリカ)に挑んだが、身長で9センチ、リーチで10センチのハンデを克服することはできず大差の12回判定負け。これがプロ13年、40戦目での初黒星だった。翌年に再起を果たしたが、昨年10月、伏兵サンドル・マーティン(スペイン)に10回判定で敗れた。これがラストファイトとなった。

右アッパーから右フックをフォローしてズラチカニンを失神させた戦慄のKOシーンが忘れられない。

ウシク対ジョシュア8・20再戦 今春予定もロシアのウクライナ侵攻などで2度開催延期

ヘビー級のWBAスーパー王座、IBF王座、WBO王座に君臨するオレクサンダー・ウシク(35=ウクライナ)と、前3団体王者のアンソニー・ジョシュア(32=英国)のタイトルマッチが8月20日、サウジアラビアのジッダで開催されることが決定した。ふたりは昨年9月に対戦しウシクが12回判定勝ちで王座を奪取、クルーザー級に続いて2階級制覇を成し遂げている。初戦から11カ月、立場を変えて行われるダイレクト・リマッチはウシク有利と見られている。

昨年9月の初戦は英国ロンドンのサッカー場に6万人以上の観衆を集めて行われた。中盤まではほぼ互角の展開だったが、終盤に入ってサウスポーのウシクがペースを上げ、最終回には王者をダウン寸前に追い込んで試合終了のゴングを聞いた。採点は117対112、115対113、116対112で3人のジャッジ全員が新王者誕生を支持した。ウシクは4団体の王座統一を果たしたクルーザー級に続き最重量級も制覇。この5月にサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)が敗れたこともあり、階級を超越した格付けランキング、パウンド・フォー・パウンドで米国「リング誌」のNO.1に躍り出た。1カ月後、ノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)を2回TKOで下したバンタム級3団体王者の井上尚弥(大橋)がウシクに代わってトップの座についたのは周知のとおりだ。

もともとウシクとジョシュアの再戦は今春に計画されていたが、ロシアのウクライナ侵攻もあって開催が延び、その後、いったんは7月23日に内定した。しかし、新トレーナーとコンビを組んだジョシュア陣営が「もう少しトレーニング期間が必要」として8月20日に決まった経緯がある。

初戦は2012年ロンドン五輪金メダリスト対決(ジョシュアはスーパー・ヘビー級、ウシクはヘビー級)として注目を集め、7対3でジョシュアに分があると見られていた。今回は逆に2対1でウシク有利と出ている。11カ月前の内容と結果が大きく影響しているようだ。今回も身長198センチ/リーチ208センチ、体重108キロ(初戦)と大柄なジョシュアが圧力をかけ、身長191センチ/リーチ198センチ、体重100キロの技巧派サウスポー、ウシクが足をつかいながら距離と角度を変えつつ出入りする展開が予想される。互いに相手の手の内を知っているだけに偵察の時間は不要とばかりに、序盤から激しいパンチの交換になる可能性もある。

19戦全勝(13KO)のウシクは「私たちはゴール(勝利)に向かってやるべきことをやっている。私にとっての幸福はチャンピオンベルトではなく、まわりに家族や子どもたち、素晴らしいチームがあるということ」と話している。一方、3度目の戴冠を目指す26戦24勝(22KO)2敗のジョシュアは「前回の敗北は自分自身に責任があることは認める。8月20日、今度はそれを逆にしなければならない」と雪辱と王座奪回に意欲を見せている。

コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻が続くなか、まずは予定どおりに試合に辿り着くことを願うばかりだ。

スーパー・バンタム級アフマダリエフ対リオスに注目 「モンスター」井上尚弥が近い将来参入確実視

スーパー・バンタム級のWBAスーパー王座とIBF王座を持つムロジョン・アフマダリエフ(27=ウズベキスタン)が25日(日本時間26日)、WBA1位、IBF4位のロニー・リオス(32=アメリカ)を相手にアメリカのテキサス州サンアントニオで両王座の3度目の防衛戦に臨む。スーパー・バンタム級といえばバンタム級3団体王者の井上尚弥(29=大橋)が近い将来に参入することが確実視される階級だ。日本のファンならずとも王座の行方が気になるところといえる。

先ごろアメリカの老舗専門誌「リング・マガジン」で、階級を超越した格付けランキング、パウンド・フォー・パウンドでNO,1に躍り出た井上の近未来は、いまや世界中のボクシングファンの関心ごとといえる。6月7日にノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)を2回TKOで下してWBC王座を吸収した井上は試合直後、WBO世界バンタム級王者のポール・バトラー(英国)との4団体統一戦を第一希望として挙げた。そのうえで「年内にバトラーとやれないのならばスーパー・バンタム級に上げる」と加えた。このプランどおりに行けば早ければ2022年中、遅くとも来春にはバンタム級よりも約1.8キロ重いスーパー・バンタム級に転向することになる。

これにより俄然注目されるようになったのがスーパー・バンタム級のWBC、WBO王者のスティーブン・フルトン(27=アメリカ)とアフマダリエフだ。フルトンは井上対ドネアの3日前に2度目の防衛を果たしており、すでに「モンスター」を迎え撃つ態勢は整っている。そして今回、アフマダリエフが防衛を果たせば、こちらも準備完了となる。

ウズベキスタン出身のアフマダリエフは2016年リオデジャネイロ五輪バンタム級で銅メダルを獲得するなどアマチュアで320戦300勝(80KO)20敗の戦績を残している。プロ転向は2018年3月で、以来4年間に10戦全勝(7KO)をマークしている。2020年1月にダニエル・ローマン(アメリカ)に競り勝って2団体王座を獲得し、昨年4月にはIBF暫定王者の岩佐亮祐(セレス)を5回TKOで下して初防衛に成功。7カ月後には2度目の防衛を果たしている。

中間距離で強さを発揮するサウスポーの攻撃型で、外から巻き込むようにして叩きつける左フックと返しの右フックが主武器だが、やや攻防分離の傾向がある。井上が階級を上げた場合、アフマダリエフの体力とパンチ力には注意が必要になりそうだ。

挑戦者のリオスは33戦30勝(16KO)3敗の戦績を残している好戦派で、5年ぶり2度目の世界戦となる。こちらも中間距離での戦いを得意としているだけにアフマダリエフとは歯車が噛み合いそうだ。戴冠を果たせば井上との対決も考えられるだけにモチベーションは高いものと思われる。

1年以内に井上がスーパー・バンタム級に上げた場合、対戦が考えられる王者はフルトン、アフマダリエフ、リオス(勝った場合)ということになる。体重および体格差がどんな影響を及ぼすのか不確定要素はあるものの、総合力で井上が3人を上回っていることは間違いない。今後、スーパー・バンタム級も「モンスター」を軸に動いていくことになりそうだ。

まずは、25日のアフマダリエフ対リオスに注目しよう。

WBOバンタム級王者ポール・バトラー、井上尚弥との4団体統一戦に自信

ノニト・ドネア(39=フィリピン/アメリカ)との2年7カ月ぶりの再戦で衝撃的な2回TKO勝ちを収めた井上尚弥(29=大橋)の次戦が早くも注目を集めている。ドネア戦で獲得したWBC世界バンタム級王座を含め同級WBAスーパー王座とIBF王座に君臨する井上は、主要4団体のうち残るWBO王座の収集にも強い興味を抱いている。少々気が早いが、そのWBOのベルトを持つポール・バトラー(33=英国)を紹介しよう。

英国イングランド北西部に位置するチェスターで生まれたバトラーはアマチュアを経て、2010年12月に22歳でプロデビュー。スーパーフライ級の英国王座や英連邦王座を獲得したあと、2014年6月にスチュアート・ホール(英国)に競り勝ってIBF世界バンタム級王座を獲得した。このときは戴冠から1カ月足らずで「本来の階級であるスーパーフライ級に戻るため」という理由で王座を返上している。

その言葉どおりスーパーフライ級に戻ったバトラーは2015年3月、長身サウスポーのゾラニ・テテ(南アフリカ共和国)の持つIBF王座に挑んだが、左アッパーを浴びて痛烈なダウンを喫し8回TKOで敗れた。18戦目での初黒星だった。

再起して主戦場をバンタム級に定めたバトラーは2018年5月、IBF王座の決定戦に出場するチャンスを得たが、前日計量で約1.5キロの体重オーバーのため失格。その時点で戴冠資格を失いながら試合には出たが、初回に2度のダウンを喫したすえエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)に大差の12回判定で敗れた。ちなみに、この20日後に井上はジェイミー・マクドネル(英国)を1回TKOで下してWBA世界バンタム級王座を獲得。さらに、その1年後にはロドリゲスと対戦して2回KO勝ちで2団体王座統一を果たしている。もしも4年前に遡りバトラーがロドリゲスに勝ってIBF王者になっていたら、もっと早く井上対バトラーが実現していた可能性もあったわけだ。

ロドリゲス戦後、バトラーは8連勝を収めてWBO王座に挑む権利を得たが、王者のジョンリエル・カシメロ(フィリピン)の事情によって2度も直前に試合が中止となった。今年4月、カシメロの代役と対戦して12回判定勝ちを収め、WBO暫定王座を獲得した。のちにカシメロの王座が剥奪され、バトラーが正王者に昇格したという経緯がある。戦績は36戦34勝(15KO)2敗。

バトラーはガードを固めながら足をつかって動き、左ジャブから右ストレート、距離が詰まるとボディブローを多用する。右のボクサー型のカテゴリーに入る選手だ。KO率は約42パーセント。ただ、直近の8勝のうちKOはひとつだけで、23戦全勝(20KO)の「モンスター」と比較するとパワー不足の感は否めない。体格面でもバトラーが身長168センチ/リーチ165センチ、井上が165センチ/171センチとWBO王者に優位性はない。

バトラーは昨秋にドネアと同じプロベラム社とプロモート契約を結んだ。大きな試合を前提にしてのことである。その夢の大舞台が現実のことになろうとしているのだから、井上との一戦に対して「ノー」という返事はないと信じたい。バトラーは「条件が合えば日本に行って戦う準備がある。10月上旬なら調整が間に合う」と4団体統一戦に前向きなコメントを発している。そして「井上は特別な選手だが、私は勝てると信じている」と自信もみせている。

すでに交渉が始まっていると伝えられるだけに、今後の動きに注目していきたい。

圧倒的有利17戦全KO勝ちベテルビエフに「シンデレラマン」スミスが番狂わせ狙う

今年は各階級でチャンピオン同士が対戦して雌雄を決するケースが目立つが、18日(日本時間19日)にはアメリカのニューヨークでライト・ヘビー級の3団体王座統一戦が行われる。17戦全KO勝ちのハードパンチャー、WBC、IBF王者のアルツール・ベテルビエフ(37=ロシア/カナダ)と、何度も番狂わせを起こしてきたことから「シンデレラマン」と呼ばれるWBO王者、ジョー・スミス(32=アメリカ)が拳を交えるのだ。王者同士の頂上決戦だが、オッズは7対1でベテルビエフの圧倒的有利と出ている。

ベテルビエフは2008年北京大会(2回戦敗退)、2012年ロンドン大会(2回戦敗退)と五輪に2度出場したほか、2009年世界選手権で優勝、2007年世界選手権では準優勝するなど輝かしいアマチュア実績を持つ。

アマチュアで長いこと活躍したためプロ転向は28歳だったが、その遅れを取り戻すかのようにKO勝ちを続けていった。元世界王者を下したり複数の地域王座を獲得したりしながらトップ戦線に割り込み、2017年11月にはIBF世界ライト・ヘビー級王座を獲得した。このときの戦績は12戦全KO勝ちだった。その後、自身の故障やプロモーターとの摩擦が生じるなどして試合間隔が空いたが、そんななか2019年にはWBC王者に10回TKO勝ちを収めて2団体王者になっている。昨年は2試合こなし、半年のスパンで今回の3団体王座統一戦に臨む。

WBO王者のスミスは2009年10月にプロデビューした。6連続KO勝ち後、7戦目で4回TKO負けを喫したのが響いたのか出世までに時間がかかった。ベテルビエフとは対照的な歩みといえる。初めて大きな脚光を浴びたのは26歳のときだった。13対1という悲観的な予想のなか世界上位ランカーに1回TKO勝ちを収めたのだ。続いて元世界2階級制覇王者のバーナード・ホプキンス(アメリカ)との試合が組まれたが、またもスミスは5対2のオッズをひっくり返して8回KO勝ちを収めた。その後も不利とみられた試合で勝利を収め、「シンデレラマン」と呼ばれるようになった。

初の世界挑戦は失敗に終わったが、昨年4月に現在の王座を獲得している。ベテルビエフのような派手な戦績ではないが、31戦28勝(22KO)3敗となかなか高い勝率を残している。

鋼鉄のハンマーのような硬質感のある強打を持つベテルビエフが有利であることは間違いない。この2団体王者の右ストレート、左右フック、あるいは左右アッパーがクリーンヒットすればスミスは立っていられないだろう。打撃戦のなかでカウンターが打てるのもベテルビエフの強みだ。

そうしたなか、スミスは今度も番狂わせを狙っている。カギは相手の死角から巻き込むように打ち込む右だ。これがジャストミートすればベテルビエフも甚大なダメージを被るはずだ。一発でダウン、あるいはKOも考えられる。

7対1のオッズどおりの結果が出るのか、それとも「シンデレラマン」が意地をみせるのか。いずれにしてもKOで決着がつくことは間違いなさそうだ。

ライト級全勝対決カンボソス対ヘイニー どちらが名実ともに統一王者としてリングを下りるか

ライト級のWBCフランチャイズ(特権)王座を含む主要4団体すべてのベルトを持つジョージ・カンボソス(28=オーストラリア)と、WBC同級王者のデビン・ヘイニー(23=アメリカ)が6月5日、オーストラリアのメルボルンで拳を交える。20戦全勝(10KO)のカンボソスと27戦全勝(15KO)のヘイニー。どちらが名実ともに統一王者としてリングを下りるのか。

カンボソスは2017年から2019年にかけて6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(フィリピン)のスパーリング・パートナーを務めた経験があり、手合わせの総数は250ラウンド以上と伝えられる。

これで体力と自信をつけてトップ戦線に参入し、昨年11月に4団体王者のテオフィモ・ロペス(アメリカ)を12回判定で破って全王座を引き継いだ。ダウン応酬の激闘は「アップセット(番狂わせ)・オブ・ザ・イヤー」に選ばれるほどだったが、カンボソスが底力を発揮した試合でもあった。

初防衛戦はロペスの前の王者、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)を相手に行われる計画だった。しかし、ロシアがウクライナに軍事侵攻したことを受け、ロマチェンコが自国防衛を優先するとして挑戦を辞退。代わりにヘイニーがオーストラリアに遠征することになったという経緯がある。

そのヘイニーはアマチュアを経て17歳でプロデビューし、20歳の若さでWBC世界ライト級暫定王座を獲得した逸材だ。すぐに正王者に昇格して初防衛も果たしたが、その試合で右肩を負傷したため「休養王者」に格下げされるという不運にも見舞われた。その後、主張が認められて正王者に復帰し、ここまで4度の防衛に成功している。V3戦では元世界3階級制覇王者のホルヘ・リナレス(帝拳)と対戦し、終盤のピンチを凌いで判定勝ちを収めている。

13対8のオッズが出ているように潜在能力に加えスピードやテクニックで勝るヘイニーが有利と見られている。積極的に攻めて出ることが予想されるカンボソスに対し、ヘイニーは左ジャブで距離を保ってポイント稼ぎを狙うものと思われる。ただ、今回は凱旋試合となるカンボソスが極めて高いモチベーションでリングに上がるはずで、ファンの声援も4団体王者の背中を押すことになりそうだ。そんななかで若いヘイニーが冷静に戦えるかどうかがカギといえる。

なお、アンダーカードには2年前に井上尚弥(大橋)の持つWBA、IBF世界バンタム級王座に挑んで7回KO負けを喫したジェイソン・マロニー(オーストラリア)が出場し、アストン・パリクテ(フィリピン)と対戦する。このパリクテは3年前、WBO世界スーパー・フライ級王座決定戦で井岡一翔(志成)と対戦して10回TKO負けを喫した選手だ。現在はマロニーがWBC2位、WBO3位、WBA9位、IBF12位、バンタム級に転向したパリクテはIBF6位、WBO14位に名を連ねている。この“敗者復活戦”にも注目したい。

熱いライト級トップ戦線 デービス対ロメロ、カンボソス対ヘイニー、2週連続の全勝対決に注目

中量級で3階級制覇を成し遂げているWBA世界ライト級王者、ジャーボンテイ・デービス(27=アメリカ)が28日(日本時間29日)、アメリカのニューヨークで前WBA同級暫定王者のローランド・ロメロ(26=アメリカ)を相手に3度目の防衛戦に臨む。26戦全勝(24KO)のデービスに対しロメロも14戦全勝(12KO)と高いKO率を残している攻撃型だけに、KO決着間違いなしのカードといえる。

   ◇   ◇   ◇

元5階級制覇王者のフロイド・メイウェザー(アメリカ)がプロモーターを務めるデービスは、2017年1月に22歳でIBF世界スーパーフェザー級王座を獲得。このときはV2戦を前に体重超過のミスを犯して王座を失ったが、2019年12月にはWBAライト級王座を手に入れた。

翌年10月には再びスーパーフェザー級のWBAスーパー王座を奪取。この二つの王座を持ったまま昨年6月にWBA世界スーパーライト級王座に挑み、11回TKO勝ちを収めて特例として3階級の王座を同時に保持することになった。その後、スーパーフェザー級とスーパーライト級王座を返上し、適正体重のライト級での活動を選択した。

デービスは戦績が示すとおりの強打者で、左構えから相手の懐に潜り込んで多彩なブローを打ち込むスタイルを確立している。左ストレート、右フックに加え左アッパーも一撃で相手を失神させるパワーがあり、パンチの回転も速い。

単純なパンチ力比べならロメロも負けてはいない。相手に圧力をかけながら距離を測り、ここというタイミングで思い切りよく左右のフックを振り抜く。一見すると単調に見える攻撃だが、一発一発に力を込めて打つため、被弾した相手は甚大なダメージを負うことになる。デービスよりも攻撃偏重の傾向が強くディフェンスには常に不安が付きまとうが、これまでの14戦では大崩れしたことはない。

ふたりとも気の強さを隠さないタイプとあって昨年秋ごろから激しい舌戦を展開してきた。試合でも強気の姿勢を貫くものと思われる。そうなると短期決着も考えられる。11対1のオッズが出ているように総合力で勝るデービスが圧倒的有利と見られているが、ロメロの左右フックが先にヒットした場合は番狂わせの可能性も出てきそうだ。

この試合が注目されるもうひとつの理由として、1週間後の6月5日、オーストラリアのメルボルンで同じライト級の4団体タイトルマッチが行われることが挙げられる。WBAスーパー王座、WBCフランチャイズ(特権)王座、IBF王座、WBO王座を持つ20戦全勝(10KO)のジョージ・カンボソス(28=オーストラリア)と、27戦全勝(15KO)のWBC王者、デビン・ヘイニー(23=アメリカ)が対戦するのだ。

1週間後に控えるカンボソス対ヘイニーの試合を前にデービス、ロメロは圧倒的な存在感を示すことができるか。

ライト級トップ戦線から目が離せなくなってきた。

好カード目白押し 番狂わせ演じたビボルはアルバレスと再戦も 井上対ドネアは6月7日

4月9日のゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)対村田諒太(36=帝拳)の世界ミドル級王座統一戦に始まった世界チャンピオン同士の試合は、14日(日本時間15日)のスーパー・ウェルター級4団体王座統一戦まで6週連続で行われた。このあとも井上尚弥(29=大橋)対ノニト・ドネア(39=フィリピン/アメリカ)など次々とチャンピオン同士の好カードが予定されているが、その前に6試合を総括してみたい。

4月から5月にかけて行われた6試合は以下のとおりだ。

■4月9日@日本 WBA、IBF世界ミドル級王座統一戦

〇ゲンナディ・ゴロフキン 9回TKO ●村田諒太

※戦前のオッズは5対1でゴロフキン有利

■4月15日@アメリカ WBA、WBC、IBF世界ウェルター級王座統一戦

〇エロール・スペンス(アメリカ) 10回TKO ●ヨルデニス・ウガス(キューバ)

※戦前のオッズは6対1でスペンス有利

■4月23日@英国 WBC世界ヘビー級団体内王座統一戦

〇タイソン・フューリー(英国) 6回TKO ●ディリアン・ホワイト(ジャマイカ/英国)

※戦前のオッズは9対2でフューリー有利

■4月30日@アメリカ WBC、WBO世界スーパー・フェザー級王座統一戦

〇シャクール・スティーブンソン(アメリカ) 12回判定 ●オスカル・バルデス(メキシコ)

※戦前のオッズは5対1でスティーブンソン有利

■5月7日@アメリカ WBA世界ライト・ヘビー級タイトルマッチ

〇ドミトリー・ビボル(キルギス/ロシア) 12回判定 ●サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)

※戦前のオッズは4対1でアルバレス有利

■5月14日@アメリカ 世界スーパー・ウェルター級4団体王座統一戦

〇ジャーメル・チャーロ(アメリカ) 10回KO ●ブライアン・カスターニョ(アルゼンチン)

※戦前のオッズは7対4でチャーロ有利

世界チャンピオン同士の対決とあってゴロフキン対村田、スペンス対ウガス、チャーロ対カスターニョなど見応えのある試合が続いた。このなかで圧倒的な力を見せつけたのがフューリーで、暫定王者に何もさせずに一蹴した。

スティーブンソンはバルデスの強打を空転させて大差の判定勝ちを収めた。2016年リオデジャネイロ五輪銀メダリストは順調に成長しているが、物足りなさも感じさせた。今後は魅せるボクシングも求められることになりそうだ。

オッズどおりの結果が多かったが、唯一の番狂わせがビボル対アルバレスだった。世界的にみれば6試合のなかで最も注目度の高かった一戦だが、体格で勝るビボルが巧みな試合運びと手数で人気者を破るという結果に終わった。年内に再戦という計画が浮上しているだけに今後の交渉に注目が集まる。

このあとも再びチャンピオン同士の注目ファイトが続く。

★6月5日@オーストラリア 4団体統一世界ライト級タイトルマッチ

ジョージ・カンボソス(オーストラリア)対デビン・ヘイニー(アメリカ) 

★6月7日@日本 WBA、IBF、WBC世界バンタム級王座統一戦

井上尚弥対ノニト・ドネア

★6月18日@アメリカ WBC、IBF、WBO世界ライト・ヘビー級王座統一戦

アルツール・ベテルビエフ(ロシア)対ジョー・スミス(アメリカ) 

特に日本のファンにとっては井上対ドネアが気になるところだ。2年半前の初戦は歴史に残る激闘だったが、今回はどんな試合になるのか楽しみだ。井上が付け入るスキを与えずに完勝するのか、はたまたドネアが雪辱を果たすのか。オッズは14対3で井上有利と出ている。

スーパー・ウェルター級4団体王座統一戦チャーロ対カスターニョ再戦迫る

スーパー・ウェルター級の4団体王座統一戦が14日(日本時間15日)、アメリカのカリフォルニア州カーソンのディグニティ・ヘルス・スポーツ・パークで行われる。WBA、WBC、IBFの3本のベルトを持つジャーメル・チャーロ(31=アメリカ)とWBO王者のブライアン・カスターニョ(32=アルゼンチン)が対戦するもの。両者は昨年7月に今回と同じ立場で拳を交え、打撃戦のすえ三者三様の12回引き分けに終わっている。ふたりとも「今度こそ」の思いが強いだけに今回も激闘になりそうだ。

10カ月前の初戦は「年間最高試合」の候補に挙がるほどの熱戦だった。序盤はチャンスとピンチが交互に訪れるスリリングな展開になり、中盤はカスターニョ、終盤はチャーロが支配するという試合だった。ややカスターニョ優勢かと思われたが、採点は117対111(チャーロ)、114対113(カスターニョ)、114対114で決着はつかなかった。ふたりとも「接戦だったが俺が勝っていた」という思いを抱いてリングを降りた。

試合後、両陣営は再戦に向けて交渉を開始。今年2月26日が候補日に挙がったが締結には至らなかった。このあと3月19日に試合日が決まったが、2月にカスターニョがスパーリング中に右の上腕二頭筋を痛めたため2カ月延期された経緯がある。チャーロは「ただ単に練習する時間が欲しかったんだろう」と負傷に対して懐疑的な見方をしている。真偽のほどは分からないが、すでに場外で心理戦が始まっているのは間違いない。

初戦は9対4でチャーロ株が高かったが、今回は3団体王者有利は変わらないものの11対8に差が縮まっている。前回はカスターニョの知名度不足がオッズに響いたようだ。

WBC世界ミドル級王者、ジャモール・チャーロの双子の弟としても知られるチャーロは身長180センチ/リーチ185センチと体格に恵まれ、階級随一のスピードを誇る。36戦34勝(18KO)1敗1分とKO率は決して高くないが、最近はパンチに鋭さが出てきた。

対するカスターニョはこの階級では身長171センチ/リーチ171センチと小柄だが、頑丈な体を利して相手に肉薄、回転の速い連打を叩きつける好戦的なスタイルを持つ。戦績は19戦17勝(12KO)2分。

距離を詰めないと仕事がやりにくいカスターニョは初戦同様、積極的にプレッシャーをかけていくものと思われる。これに対しチャーロがどんな選択をするかがカギといえる。意地とプライドを見せて打撃戦に応じるのか、それとも初戦の反省を生かしてスピードと足をつかってアウトボクシングをしようとするのか。いずれにしても一瞬も目の離せない試合になることは間違いない。

高度円熟期を迎えたカネロ・アルバレス 1階級上のライト・ヘビー級王座に挑む

現在のボクシング界で最も高い評価を受けているスター選手、サウル・カネロ・アルバレス(31=メキシコ)が7日(日本時間8日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでドミトリー・ビボル(31=キルギス/ロシア)の持つWBA世界ライト・ヘビー級スーパー王座に挑む。4階級制覇を成し遂げ、現在はスーパー・ミドル級4団体統一王者の肩書を持つアルバレスにとっては1階級上の王座への挑戦となるが、4対1で圧倒的有利と見られている。

アルバレスは2011年から2022年にかけてスーパー・ウェルター級、ミドル級、スーパー・ミドル級、ライト・ヘビー級と約10キロの体重の壁を乗り越えて4階級制覇を成し遂げている。特に2018年以降はミドル級 → スーパー・ミドル級 → ミドル級 → ライト・ヘビー級 → スーパー・ミドル級と試合ごとに階級を上下させて世界戦を行ってきた。一時期は3階級の王座を同時に保持するなど、まさにスター選手の特権を享受してきたといえる。

それを非難する声があるのも事実だが、直近の8戦で全勝、しかもゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)をはじめ4人の無敗王者を下しているのだから実力を認めないわけにはいかない。20度の世界戦(18勝11KO1敗1分)を含むトータル戦績は60戦57勝(39KO)1敗2分というみごとなものだ。

15歳からプロとして戦ってきたアルバレスは7月で32歳になるが、歴戦のダメージや加齢による衰えは感じられない。むしろ2年前にスーパー・ミドル級に定着してから強さが増した印象だ。スピード、パワー、テクニック、耐久力、ボクシングIQに経験値が加わり高度円熟期に入ったといっていいだろう。

そんなアルバレスの挑戦を受けるビボルは、モルドバ人の父親と韓国人の母親の間にキルギスで生まれた。ロシア国籍だが現在はアメリカのカリフォルニア州インディオに住んでいる。ボクシングは6歳のときに始め、アマチュアで283戦(268勝15敗)を経験後、23歳でプロに転向した。初陣から1年半、わずか7戦目でWBA世界ライト・ヘビー級暫定王座を獲得し、2度防衛後に正王者に昇格。さらに8度防衛後にスーパー王者として認定された。11度の世界戦を含む戦績は19戦全勝(11KO)で、6年間に10度防衛中だ。

スピードのある左ジャブを突いて間合いをつくり、機を見て決め手の右ストレートを打ち込む。返しの左フックも正確で強い。ただし、王座を守る意識が強くなったのか直近の6試合はすべて12回判定勝ちで、アピール度に欠ける試合が続いている。アルバレスにとっては2年半ぶりのライト・ヘビー級での試合で、いわば冒険マッチともいえるが、最近のビボルを見て与し易しと感じた可能性もある。

ビボルは身長/リーチとも183センチで、それぞれアルバレスを10センチ/4センチ上回っている。このアドバンテージとスピードのある左ジャブで4階級制覇王者をコントロールできれば勝機は広がるだろう。加えてカウンターの右が機能すればポイントを奪うこともできそうだ。ただ、アルバレスの圧力に押されて距離を詰められ、中近距離での戦いに持ち込まれると苦しい。ビボルは長丁場の戦いに慣れてはいるが、終盤になってもパワーが落ちないアルバレスが相手となると分は悪い。番狂わせの可能性があることは否定できないが、オッズどおり20パーセント程度ということになるだろう。アルバレスがまたひとつ勲章を増やしそうだ。

バルデス対スティーブンソン 五輪出場、2階級制覇、全勝の王者が激突 尾川堅一も王座統一に興味

30日(日本時間5月1日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでスーパー・フェザー級のWBC王者、オスカル・バルデス(31=メキシコ)対WBO王者、シャクール・スティーブンソン(24=アメリカ)の王座統一戦が行われる。五輪出場、2階級制覇、全勝と共通項の多い両王者だが、バルデスが打撃戦を得意としているのに対しサウスポーのスティーブンソンは技巧派と戦闘スタイルは対照的だ。中量級の主役になると期待されているスティーブンソン有利とみられているが、バルデスの強打を推す声もある。

ふたりともトップランク社とプロモート契約を交わしているが、プロデビューはバルデスが5年早い。2008年北京大会、2012年ロンドン大会と2度の五輪出場を果たしたバルデスは2012年11月にプロ転向を果たし、4年後にWBO世界フェザー級王座を獲得。一方のスティーブンソンは2016年リオデジャネイロ五輪に出場したあと、バルデスのWBO世界フェザー級王座2度目の防衛戦の前座でプロデビューを果たした。2017年4月のことだ。

その後も両雄の縁は続く。バルデスが6度の防衛後に王座を返上してスーパー・フェザー級に転向すると、空位になったWBO世界フェザー級王座の決定戦にスティーブンソンが出場して判定勝ち、バルデスの後継王者になった。ただし、スティーブンソンは初防衛戦を行わずに王座を返上、スーパー・フェザー級に転向している。

昨年2月、バルデスがスーパー・フェザー級でWBC王座を奪取すると、その4カ月後、スティーブンソンはWBOの暫定王座を獲得。

9月にバルデスが初防衛を果たすと、1カ月後にスティーブンソンは団体内統一戦を制して正王者に昇格し、デビューから5年で“先輩”に追いついた。

5対1という一方的なオッズが出ているように、すでに評価ではスティーブンソンが上回っている。持ち味のスピードを生かしたアウトボクシングが冴えればWBO王者が序盤から着々とポイントを重ねることになりそうだ。バルデスのパンチを空転させ、戦闘能力と意欲を削いでしまえば終盤のストップ勝ちも考えられる。

厳しい戦いが予想されるバルデスは工夫を凝らして距離を潰し、破壊力のある左右フックやアッパーを狙いたいところだ。名匠エディ・レイノソ・トレーナーがどんな戦術を練るのかという点にも注目したいが、それでも勢いのあるスティーブンソンを捕まえるのは難しいと思われる。

戦績はバルデスが30戦全勝(23KO)、スティーブンソンが17戦全勝(9KO)。この階級にはIBF王者の尾川堅一(帝拳)がおり、近い将来の王座統一にも興味を持っているだけに勝負の行方が気になるところだ。

フューリー対ホワイト チケット売り切れ、収容9万ウェンブリー・スタジアム開催の対決に要注目

23日(日本時間24日)、英国ロンドンでWBC世界ヘビー級タイトルマッチ、正王者タイソン・フューリー(33=英国)対暫定王者ディリアン・ホワイト(34=ジャマイカ/英国)の12回戦が行われる。

フューリーに約36億円、ホワイトに約9億円の報酬が最低保証された注目ファイトだ。

身長206センチ、リーチ216センチ、直近の試合の体重が125キロのフューリーはヘビー級のなかでも超がつく大型選手だが、構えを右から左、左から右とチェンジしたりステップを踏んだりと器用な面もある。戦績は32戦31勝(22KO)1分で、KO率は70パーセント弱だが、スピードとテクニックに加え戦術にも長けている。パワー型の選手ではないが、2020年2月にデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)を7回TKOで下してWBC王座を獲得し、3度目の対決では11回KOで下している。2試合で計5度のダウンを奪っているようにパンチ力もある。引き分けに終わった2018年12月の初戦を加えたワイルダーとの世界戦3試合で経験値が大きく上がり、充実期に入った印象だ。

ホワイトは30戦28勝(19KO)2敗のプロ戦績を残している強打者で、2019年7月に暫定王座を獲得した。このときは初防衛戦で元WBA王者のアレクサンダー・ポベトキン(ロシア)に敗れて失ったが、昨年3月の再戦では4回TKOで雪辱、7カ月でベルトを取り戻した。フューリーと比較すると小さく感じられるが、身長193センチ、リーチ198センチ、体重112キロ(ポベトキンとの再戦時)は現在のヘビー級では平均的な体格といえる。右はストレートのほかに横殴りのフックもあり、またコンパクトな左フックも打てる。パンチは多彩でスピードもある。

当初、フューリーは3団体王者のオレクサンダー・ウシク(ウクライナ)との統一戦を目指したが交渉が進展せず、その間にWBCから団体内統一戦を義務づけられていた。興行権を巡って入札になり、フューリー側が両選手の合計報酬として約50億円を提示して落札した経緯がある。フューリーに約36億円、ホワイトに約9億円が保証され、勝者には5億円のボーナスが加算される。

この英国人同士の対決は注目度が高く、収容人員9万人のウェンブリー・スタジアムで行われる。チケットは早々に売り切れ、プロモーターが4000席を追加したほどだ。

オッズは13対3でフューリー有利と出ている。前後左右に動いて揺さぶりをかけ、遠い距離から右ジャブ、左ストレートで攻めるものと思われる。早い段階で正王者が主導権を握るようならば勝負は中盤を待たずに終わるかもしれない。一方、ホワイトはフューリーが攻め込んできたところに右のカウンターや左フックを狙ってひと泡吹かせたいところだ。ワイルダーとの3試合では尋常ならざる体力と回復力をみせつけたフューリーだが、初戦で2度、3度目の対戦でも2度のダウンを喫しており、打たれ脆くなっていることも考えられる。フューリーのKO勝ちが順当な線だが、番狂わせが起こる可能性も決して低くはないように思える。

ウェルター級3団体王座統一戦スペンス対ウガス どちらがクロフォードとの頂上決戦に駒を進めるか

ウェルター級のWBC王座とIBF王座を保持するエロール・スペンス(32=アメリカ)とWBAスーパー王者のヨルデニス・ウガス(35=キューバ)が16日(日本時間17日)、3団体の王座統一をかけてアメリカのテキサス州アーリントンで対戦する。万能型サウスポーのスペンスとテクニックが売りのウガス。攻撃力で勝るスペンス有利の予想のなか、昨年8月に元世界6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(フィリピン)を引退に追いやったウガスは再び番狂わせを起こすことができるのか。

この両者は昨年8月、ダブル世界戦に出場するはずだった。メインカードはスペンス対パッキャオで、セミ格としてウガス対ファビアン・マイダナ(アルゼンチン)が組まれていた。しかし、試合2週間前になってスペンスが眼疾のため出場不可となり、マイダナは負傷のため挑戦を辞退。それにともない急きょ、パッキャオ対ウガスにカードが変更され、ウガスが判定勝ちを収めた経緯がある。知名度の低いウガスは2戦連続でスター選手との試合に臨むことになり、実力をアピールする絶好の機会を得たといえる。ただ、4対1でスペンス有利のオッズが出ているように、ウガスにとっては厳しい戦いが予想される。

スペンスは2012年ロンドン五輪ではウェルター級ベスト8に甘んじたが、プロでは6度の世界戦を含めて27戦全勝(21KO)の戦績を残している。パワーとテクニックを兼ね備えたサウスポーで、世界的に高い評価を得ている。不安があるとすれば体調面だろう。2019年10月に車で自損事故を起こして入院し、1試合挟んで昨夏には左目の網膜剥離が判明。これが1年4カ月ぶりのリングとなる。

ウガスも五輪戦士だ。こちらは2008年北京五輪ライト級で銅メダルを獲得しているほか、2005年の世界選手権では優勝するなどトップアマとして活躍。24歳になる直前にプロデビューし、12年間で31戦27勝(12KO)4敗の戦績を残している。数字のインパクトではスペンスに遠く及ばないが、先のパッキャオ戦で評価と知名度を大きくアップさせている。

より攻撃的なのはスペンスだが、ウガスも正面から圧力をかけて出るタイプだけに、まずは序盤の主導権争いが注目される。地元の声援を背に右ジャブから左に繋げる攻めが見られるような展開ならばスペンスのペースといえる。逆にウガスが相手の打ち終わりを迎え撃って正確にパンチを当てることができればWBAスーパー王者のペースといえる。

この階級にはWBO王者のテレンス・クロフォード(アメリカ)がおり、今回の試合の勝者との4団体王座統一戦を熱望している。クロフォードとの最終的な頂上決戦に駒を進めるのはスペンスなのか、それともウガスなのか。

4・9ゴロフキン対村田諒太戦を前に歴史ある伝統の階級ミドル級のグレートたちを紹介

9日にさいたまスーパーアリーナで行われるWBA、IBF世界ミドル級王座統一戦、ゲンナディ・ゴロフキン(39=カザフスタン)対村田諒太(36=帝拳)の大一番まで3日-。ミドル級は140年近い歴史を持つ伝統の階級で、これまでに時代を彩るスター選手を数多く輩出してきた。ゴロフキンもそのなかのひとりといえる。注目の一戦を前に72.5キロを体重リミットとするミドル級のグレートたちを簡単に紹介しよう。

もともとボクシングは体重に関係なく戦われていたが、1800年代半ばに体重制が採用された。まずヘビー級(重量級)とライト級(軽量級)に分けられ、その間にミドル級(中間階級)が誕生したわけだ。近代ボクシング史最初の世界ミドル級王者はジャック・デンプシー(アイルランド)で在位は1886年から1891年とされる。

20世紀初頭にはスタンリー・ケッチェル(アメリカ)のようにミドル級王者がヘビー級王者に挑むケースもあったが、厚い壁に跳ね返されている。

1940年代になると「鉄人」と呼ばれたトニー・ゼール(アメリカ)や映画「傷だらけの栄光」で知られるロッキー・グラジアノ(アメリカ)らが登場して人気を博し、ヘビー級と並ぶ注目を集めるようになった。さらに1950年代に入るとウェルター級王者だったシュガー・レイ・ロビンソン(アメリカ)がミドル級に転向。史上最多となる同一階級5度の戴冠を果たした。同じ時代には映画「レイジング・ブル」でお馴染みのジェーク・ラモッタ(アメリカ)もいた。

1970年代には「アルゼンチンのライフル」カルロス・モンソンが7年間に14度の防衛を記録した。

1980年代に入るとマーベラス・マービン・ハグラー、シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ(いずれもアメリカ)、ロベルト・デュラン(パナマ)の4選手が直接対決をしてミドル級黄金時代を築いた。ミドル級史のなかでも特別に輝いた10年だった。

1990年以降ではロイ・ジョーンズ、バーナード・ホプキンス、オスカー・デラ・ホーヤ(いずれもアメリカ)らがミドル級を制覇。特にホプキンスは分裂していた4団体のベルトを統一し、連続20度の防衛も記録している。

ホプキンス以降ではゴロフキンとサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)の力量と実績が突出している。ゴロフキンはホプキンスと並ぶ20度の防衛を果たし、この間、史上最多タイの17連続KO防衛をマーク。ゴロフキンと1勝1分のアルバレスはミドル級を含めた4階級で戴冠を果たしている。ふたりともミドル級史を飾る名王者といっていいだろう。

このミドル級は欧米を中心に選手層が厚いだけにアジア圏のボクサーは割って入ることが難しいクラスでもある。東洋人の世界ミドル級王者はセフェリノ・ガルシア(フィリピン)、竹原慎二(沖)、そして村田の3人しかいない。ガルシアと竹原は長期政権を築くことはできなかった。

こうしたなか、すでに2度の戴冠と通算2度の防衛を果たしている村田は、さらに「ゴロフキン狩り」という実績を積み上げることができるのか。4月9日の大一番が待ち遠しい。

スーパー・ウェルター級ティム・チュー、近い将来の世界王座挑戦確実 当階級の注目度アップ

26日(日本時間27日)、アメリカのミネソタ州ミネアポリスで行われたスーパー・ウェルター級世界ランカー対決で、WBO1位、WBCとIBFで3位にランクされるティム・チュー(27=オーストラリア)がWBO10位のテレル・ゲシェイ(34=アメリカ)に12回判定勝ちを収め、近い将来の世界王座挑戦を確実にした。この階級では5月に4団体の王座統一戦が予定されていることもあり、最強の座を巡る争いが一段とヒートアップしてきた印象だ。

元世界王者を父に持つパワー型のチューと、2012年ロンドン五輪出場の実績を持つ技巧派のゲシェイの試合は戦前から9対1でチュー有利と見られていたが、そのとおりの結果となった。初回に右を浴びてチューがダウンを喫するなど波乱含みのスタートとなったが、攻撃力で勝るチューが中盤にはペースを掌握。そのままポイントを重ねて3対0の判定勝ちを収めた。これでデビューから21連勝(15KO)のチューは初の世界挑戦に大きく前進。敗れたゲシェイは2度目の世界挑戦から後退した。26戦22勝(11KO)3敗1分。

このあとスーパー・ウェルター級トップ戦線の試合としては、4月9日にアメリカのネバダ州ラスベガスでWBC1位のエリクソン・ルビン(26=アメリカ)と2位のセバスチャン・フンドラ(24=アメリカ)がWBC暫定王座決定戦で拳を交えることになっている。「ハンマー」と呼ばれる25戦24勝(17KO)1敗のルビンに対し、19戦18勝(12KO)1敗のフンドラは197センチの長身サウスポーとして知られる。才能に恵まれた強打者のルビンに分のあるカードだが、長い腕を折りたたんで意外な角度からパンチを打ち込んでくるフンドラの戦法に巻き込まれる可能性もある。

さらに5月14日には4団体の王座統一戦がアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで行われる予定だ。WBA、WBC、IBF3本のベルトを持つジャーメル・チャーロ(31=アメリカ)と、WBO王者ブライアン・カスターニョ(32=アルゼンチン)が対戦するもので、勝者が名実ともに階級最強を名乗ることになる。両者は昨年7月に対戦して三者三様の引き分けに終わっており、総合力は互角とみられている。オッズはチャーロ有利と出ているものの5対4と接近している。スピードとパンチの切れで勝るチャーロが4本目のベルトを手に入れるのか、それとも馬力とスタミナに定評のあるカスターニョがアルゼンチン人として初の4団体統一王者になるのか。戦績はチャーロが36戦34勝(18KO)1敗1分、カスターニョが19戦17勝(12KO)2分。

親子世界王者を狙うチュー、強打のルビン、長身サウスポーのフンドラに加え、WBO世界ウェルター級王者のテレンス・クロフォード(34=アメリカ)がスーパー・ウェルター級への参入を狙っていることもあり、この階級は注目度がアップしている。しばらくは目が離せない状態が続きそうだ。

原功(はら・いさお)

 1959年(昭34)4月7日、埼玉県深谷市生まれ。日大法学部新聞学科卒業。82年、ベースボール・マガジン社入社。以来18年間「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間同誌編集長。現在はWOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。著書に「タツキ」「ボクシング 名勝負の真実・日本編/海外編」ほか。