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原功「BOX!」

ヘビー級注目の一戦ジョシュア対ウシク ロンドン五輪金メダリスト対決

ヘビー級のWBAスーパー王座、IBF王座、WBO王座を保持しているアンソニー・ジョシュア(31=英国)が25日(日本時間26日)、英国ロンドンで元世界クルーザー級4団体統一王者で現在はヘビー級でWBA4位、IBF3位、WBO1位にランクされるオレクサンダー・ウシク(34=ウクライナ)の挑戦を受ける。88パーセントのKO率を誇るジョシュアが最重量級覇者の矜持を見せるのか、それとも技巧派サウスポーのウシクが2階級制覇を果たすのか。世界的に注目度の高い試合だ。

ふたりはともに2012年ロンドン五輪に出場し、ジョシュアが91キロ超のスーパー・ヘビー級、ウシクが91キロ以下のヘビー級で金メダルを獲得している。アマチュア戦績はジョシュアが43戦40勝3敗、ウシクは348戦333勝15敗と伝えられる。

ジョシュアはロンドン五輪から1年2カ月後2013年10月にプロデビューし、2016年4月にIBF王座を獲得したのを皮切りに1年後にWBAスーパー王座、さらに2018年3月にはWBO王座も手に入れた。通算6度の防衛を果たしたが、2019年6月に伏兵アンディ・ルイス(アメリカ)に7回TKOで不覚をとり、三本のベルトを同時に失った。半年後の再戦で王座を奪回し、昨年12月の初防衛戦ではIBF1位の選手に9回TKOで圧勝している。プロ戦績は25戦24勝(22KO)1敗。身長198センチ、リーチ208センチ、体重110キロ前後の恵まれた体から正確な左ジャブで距離とタイミングを計り、破壊力のある右ストレートを狙い撃つ正統派だ。

対するウシクは2013年11月にプロに転じ、2016年9月にWBO世界クルーザー級王座を獲得した。その後、階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」に参戦して優勝。同時にWBAスーパー王座、WBC王座、IBF王座も手に入れ4団体統一を果たした。通算6度の防衛を果たしたあとヘビー級にクラスを上げ、すでに2度のテストマッチをクリアしている。身長191センチ、リーチ198センチ、体重98キロ(直近の試合)とジョシュアと比べると体格面で見劣りするが、その分、重量級ばなれしたフットワークとハンドスピードを備えている。最大の特徴はサウスポーの技巧派であるという点であろう。戦績は18戦全勝(13KO)。

7対3のオッズが示すようにジョシュア有利は不動といえる。体格を生かして圧力をかけ、パワフルな右で仕留めるシーンが見られるかもしれない。その一方、気になるデータもある。ジョシュアがプロでサウスポーと戦ったのは初戴冠時の試合だけで、以来5年半、10試合ぶりとなるのだ。ウシクが左構えの利を生かして素早く動いてジョシュアに的を絞らせず、コツコツとパンチを当ててポイントを重ねていく可能性もありそうだ。

このあとヘビー級は10月9日(日本時間10日)にタイソン・フューリー(英国)対デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)のWBCタイトルマッチが控えている。期待される4団体の王座統一戦に向け、ジョシュアがパワーを生かして三本のベルトを守るのか、それとも技巧派のウシクが割って入るのか。2012年ロンドン五輪金メダリスト対決に要注目だ。

ローマン・ゴンサレスはじめコロナ禍による注目ファイトの延期相次ぐ

10月16日に計画されていた世界スーパー・フライ級タイトルマッチ、WBAスーパー王者、WBCフランチャイズ(特権)王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(31=メキシコ)対前WBA同級スーパー王者ローマン・ゴンサレス(34=ニカラグア)の試合が、ゴンサレスの新型コロナウィルス感染にともない延期されることが決まった。この試合を含め7月下旬以降、コロナ禍による注目ファイトの延期が相次いでいる。

コロナ禍のなか昨年3月から5月にかけて世界中でボクシングのイベントが開催できない状態が続いたが、その後、アメリカをはじめ世界各地で無観客状態のイベントが再開された。最近はアメリカではフルに観客を入れて開催するなど以前の活況が戻りつつある。

しかし、コロナとの戦いは依然として続いている。この2カ月だけを見ても以下のように世界王者を含むトップ選手の感染が確認され、下記のように注目ファイトが相次いで延期されているのだ。

★7月24日@アメリカ タイソン・フューリー(イギリス)対デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)=WBC世界ヘビー級タイトル戦 ※フューリーが感染 ⇒ 10月9日に延期

★8月28日@アメリカ デビッド・ベナビデス(アメリカ)対ホセ・ウスカテギ(ベネズエラ)=WBC世界スーパー・ミドル級挑戦者決定戦 ※ベナビデスが感染 ⇒ 11月13日に延期

★9月10日@日本 寺地拳四朗(BMB)対矢吹正道(緑)=WBC世界ライト・フライ級タイトル戦 ※寺地が感染 ⇒ 9月22日に延期

★9月11日@アメリカ オスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ)対ビトー・ベウフォート(ブラジル)=ライト・ヘビー級8回戦 ※デラ・ホーヤが感染 ⇒ 代替えカードでイベント開催

★9月18日@アメリカ ブランドン・フィゲロア(アメリカ)対スティーブン・フルトン(アメリカ)=WBC、WBO世界スーパー・バンタム級王座統一戦 ※フィゲロアが感染 ⇒ 延期(日時未定)

★10月16日@アメリカ ファン・フランシスコ・エストラーダ対ローマン・ゴンサレス ※ゴンサレスが感染 ⇒ 延期(日時未定)

検査で陽性反応を示した選手たちの多くが無症状か比較的軽い症状で済んでいることは幸いといえる。また、試合そのものが消滅ではなく延期という点も救いだ。

間接的にコロナの影響があるのかどうかは不明だが、トップ選手の負傷による試合中止や延期も目立つ。

8月20日に尾川堅一(帝拳)とIBF世界スーパ・フェザー級王座決定戦を行う予定だったシャフカッツ・ラヒモフ(タジキスタン/ロシア)が練習中に肋骨を負傷して試合をキャンセル。尾川は別の相手と王座決定戦を行うことになった(日時は未定)。翌8月21日にマニー・パッキャオ(フィリピン)と戦うことになっていたWBC、IBF世界ウェルター級王者のエロール・スペンス(アメリカ)は左目の網膜裂孔であることが判明。こちらはスペンスに代わってWBAスーパー王者のヨルデニス・ウガス(キューバ)が出場、パッキャオに12回判定勝ちを収めている。さらにIBF世界フライ級王者のサニー・エドワーズ(イギリス)は足首を痛めたため9月11日に予定されていたジェイソン・ママ(フィリピン)との初防衛戦を延期している。

コロナが一日も早く収束し、少しでも不安の少ないなかで試合が行われることを祈るばかりだ。

WBAから暫定王者消滅 王座乱造で失ったベルトの価値と信頼取り戻せるか

かねてWBA(世界ボクシング協会)のヒルベルト・ヘスス・メンドサ会長(50=ベネズエラ)が公言していたとおり、8月31日付で発表されたWBAランキングから暫定王者が消えた。前月まで10人いた暫定王者はすべて「オフィシャル・チャレンジャー」としてランキング最上位(1位)に位置づけられた。このまま団体内の整理が進むことを願うばかりだ。

もともと暫定王者は、正王者が負傷や病気で防衛戦義務を果たせない場合に、その留守を預かる仮の王者として存在するものだった。

負傷によって活動休止になった王者にとっても、また挑戦の機会を待っているランカーたちにとっても、さらにはイベント(世界戦開催)を保護するためにも、このシステムは正しく利用すれば万能の救済策といえた。正王者が戦線復帰した際には真っ先に暫定王者と団体内の統一戦義務を負うため、やがて王座は一本化される仕組みになっていた。

ところが近年、WBAは無意味な暫定王座を乱発し、団体内の統一戦も数えるほどしか行われていなかった。メンドサ会長は「暫定王者は正王者への最優先の挑戦権を持つという位置づけ」と苦しい弁明をしていたが、暫定王者にはベルトも贈呈され防衛戦も承認されていたのだから王者として認知されるはずだ。これではファンや関係者の信頼を失うのも当然で、日本は10年前から「必然性のないWBAの暫定王座は世界王座とは認めない」という方針を打ち出していたほどだ。

こうした流れのなか数年前、WBAは暫定王座を減らす方針を打ち出したものの実現には至らなかった。だから今回もファンや関係者の多くは半信半疑だったことだろう。

今回の暫定王者の消滅の動きは歓迎すべきだが、統括団体の方針転換によって突然ベルトを剥奪されたかたちの選手には同情したくもなる。今後、訴訟問題が発生したとしても不思議ではない。

ところで8月31日時点でWBAは17階級のうち15階級でスーパー王者を承認しているが、こちらは据え置きとなっている。暫定王者の一掃にともないスーパー王者、正王者、オフィシャル・チャレンジャー(8月までの暫定王者)たちに対戦の義務を伝えている階級もあるが、すんなりと団体内統一戦が行われるかどうかは不透明だ。王座乱造によって失ったベルトの価値と信頼を取り戻すことができるかどうか。これはWBAに限った話ではなく、ボクシング界全体の問題といえる。

バルデスvs.コンセイサン、全勝のオリンピアン対決に注目

9月10日(日本時間11日)、アメリカのアリゾナ州ツーソンでダブル世界戦が行われる。ひとつは中谷潤人(23=M.T.)対アンヘル・アコスタ(30=プエルトリコ)のWBO世界フライ級タイトルマッチで、もうひとつはオスカル・バルデス(30=メキシコ)対ロブソン・コンセイサン(32=ブラジル)のWBC世界スーパー・フェザー級タイトルマッチだ。

日本では中谷の初防衛戦が気になるところだが、メイン格のバルデス対コンセイサンは全勝のオリンピアン対決として注目を集めている。特に2016年リオデジャネイロオリンピック(五輪)ライト級金メダリストのコンセイサンにとっては重要な試合だ。

コンセイサンがボクシングを始めたのは13歳のときで、おじに勧められたのがきっかけだった。19歳のときに2008年北京五輪に出場したが、フェザー級で1回戦敗退。4年後のロンドン大会にはライト級で出場したが、またも初戦で敗れた。しかし、2013年の世界選手権で準優勝、2015年の世界選手権では3位に食い込むなど実力を蓄え、自国開催の2016年リオデジャネイロ五輪では4試合を勝ち抜いてライト級で金メダルを獲得した。アマチュア戦績は420戦405勝15敗。勝率は96パーセントを超える。ちなみにバルデスとは2009年のパンナム大会フェザー級決勝で対戦したことがあり、そのときはコンセイサンが6対5の1ポイント差で勝って優勝している。

アマチュアでの活動が長かったためプロ転向は28歳と遅かったが、村田諒太(帝拳)や井上尚弥(大橋)らも提携するトップランク社の後押しもあって順調に白星を重ねてきた。ここまでの戦績は16戦全勝(8KO)で、WBC14位にランクされている。

一方のバルデスはアマチュア時代に北京五輪(1回戦敗退)とロンドン五輪(ベスト8)に出場したが、ともにバンタム級だった。プロでは2016年7月にWBO世界フェザー級王座を獲得して6度防衛。今年2月、4年の在位を誇ったミゲール・ベルチェルト(メキシコ)を痛烈な10回KOで破って2階級制覇を果たした。戦績は29戦全勝(23KO)、KO率は79パーセントを超える。

強打に加え7カ月前の戴冠試合でスキルの面でも優れたものを披露したバルデスが圧倒的有利であることは間違いない。まだ強豪との対戦が少ない挑戦者は厳しい戦いを覚悟しなければなるまい。コンセイサンは相手を13センチ上回る長身(179センチ)と恵まれたリーチを生かして前半から飛ばし、バルデスが入ってくるところに右ストレート、右アッパーを狙い撃ちたいところだ。

もしもコンセイサンが勝てば、リオデジャネイロ五輪金メダリストとしては初のプロ世界王者誕生となる。また、コンセイサンが世界王者になると、ブラジルではエデル・ジョフレ(バンタム級、フェザー級)、ミゲール・デ・オリベイラ(スーパー・ウェルター級)、アセリノ・フレイタス(スーパー・フェザー級、ライト級)、バルデミール・ペレイラ(フェザー級)、現役のパトリック・テイシェイラ(スーパー・ウェルター級)に続いて6人目の世界王者誕生となる。

5年前、ブラジル国民を歓喜させたコンセイサンは再び旋風を巻き起こせるか。

PFPトップ4階級制覇王者アルバレス キャリア最高報酬で4団体統一果たす

現役のプロボクサーのなかで最も高い報酬を得ているスター選手、サウル・カネロ・アルバレス(31=メキシコ)が11月6日(日本時間7日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでIBF世界スーパー・ミドル級王者のケイレブ・プラント(29=アメリカ)と対戦する。4階級制覇を成し遂げているアルバレスは現在、スーパー・ミドル級のWBAスーパー王座とWBC王座、WBO王座を持っており、プラントが保持するIBF王座を獲得すると4団体統一を果たすことになる。アルバレスは「新たな歴史を刻むことに興奮している」と話している。

WBAスーパー王者だったアルバレスは昨年12月にカラム・スミス(英国)に12回判定勝ちを収めてWBC王座を吸収。今年2月に3回終了TKO勝ちで両王座の防衛戦を果たすと、5月にはWBO王者のビリー・ジョー・サンダース(英国)を8回終了時点で棄権に追い込み、3団体の王座統一を果たした。この勢いのまま9月にプラントと対戦する計画だったが、放映権がネックになって契約には至らなかった。しかし、プラント側と契約しているプレミアム・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)にアルバレス側が歩み寄ることで試合が実現することになった。

ちなみに試合はペイ・パー・ビュー(有料視聴)で放送される予定で、アルバレスには最低保証で4000万ドル(約44億円)、プラントには1000万ドル(約11億円)の報酬が約束されている。ふたりとも単独の試合報酬としてはキャリア最高額となる。

アルバレスはアマチュアを経て2005年10月に15歳でプロデビュー。16年間で59戦56勝(38KO)1敗2分の戦績を残している。世界戦だけでも19戦(17勝10KO1敗1分)を経験しており、今回が区切りの20戦目となる。万能型の右ボクサーファイターで、最近はパワーの面で秀でたものをみせている。現在、全階級のボクサーを比較した強さのランキング、パウンド・フォー・パウンド(PFP)ではアメリカの「リング・マガジン」で井上尚弥(大橋)らを抑えてトップに君臨している。

対するプラントは2019年1月にIBF王座を獲得し、3度の防衛を果たしている。こちらも右のボクサーファイター型だが、アルバレスのような強烈な個性は見当たらない。その分、欠点らしいものもない。すべてにおいて70点~90点というバランスのとれた選手といえる。戦績は21戦全勝(12KO)。

総合力はもちろんのこと実績と知名度にも大きな差があるのは事実で、オッズは7対1でアルバレス有利と出ている。

6階級制覇王者マニー・パッキャオが2年1カ月ぶりの実戦

6階級制覇の実績を持つスーパースター、マニー・パッキャオ(42=フィリピン)が21日(日本時間22日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでWBA世界ウェルター級スーパー王者のヨルデニス・ウガス(35=キューバ)と対戦する。当初、パッキャオはWBC、IBF同級王者のエロール・スペンス(31=アメリカ)と戦うはずだったが、スペンスの網膜裂孔が判明したため当日のセミファイナルに出場予定だったウガスに相手が変更された経緯がある。

パッキャオは2019年7月にキース・サーマン(アメリカ)に12回判定勝ちを収め、WBA世界ウェルター級スーパー王者になった。しかし、コロナ禍の影響もあって試合枯れ状態が続き、今年1月にWBAはパッキャオを“休養王者”に降格させた。代わりにスーパー王者に昇格したのがウガスだった。

さらに今回のイベントではウガスがセミファイナルでファビアン・マイダナ(アルゼンチン)と防衛戦を行う予定だったが、マイダナが負傷したためウガスのスケジュールは宙に浮いていた。そんなタイミングで今度はスペンスの眼疾が判明。こうした流れでパッキャオ対ウガスが急遽決定したわけだ。当人たちは関知しない部分ではあるが、パッキャオとウガスには因縁めいたものが感じられる。

2年1カ月ぶりに実戦に臨むサウスポーのパッキャオは26年のプロキャリアで71戦62勝(39KO)7敗2分の戦績を残している。そのうちの25戦は世界戦(19勝9KO4敗2分)だ。体重の上限が約66.6キロのウェルター級にあって身長166センチ、リーチ170センチと小柄だが、鋭く踏み込んで打ち抜く左ストレートは強烈で、さらに右フックや意表を突くアッパーなどパンチは多彩だ。高い経験値と勝負度胸もある。

ウガスは2008年北京五輪ライト級で銅メダルを獲得するなどアマチュアで活躍後、キューバから亡命して11年前にプロに転向。しばらくは地味な存在に甘んじていたが、日本でも指導経験のあるイスマエル・サラス・トレーナーとコンビを組んでから能力を発揮し始めた。2016年以降は12戦11勝(5KO)1敗と好調を維持している。この1敗はショーン・ポーター(アメリカ)の持つWBC王座に挑んだときのものだが、ジャッジの見解が割れる接戦だった。

昨年9月、王座決定戦を制して34歳で初の戴冠を成し遂げた。トータルの戦績は30戦26勝(12KO)4敗。

サウスポーのスペンスと対戦する予定だったパッキャオにとっても、また右構えのマイダナと対戦するはずだったウガスにとっても、相手の構えが左から右へ、右から左へと変わりはしたが条件は同じだ。ともにベテランだけに十分な対応力は備えている。

サウスポーのパッキャオが揺さぶりをかけながら飛び込み、中間距離で戦うことが多いウガスが迎え撃つ展開になりそうだ。パッキャオのブランクと年齢は気になるが、極端な勘の鈍りや衰えがないという前提で考えれば6階級制覇王者の中盤KO勝ちか判定勝ちが妥当な線だろう。オッズも3対1でパッキャオ有利と出ている。

井上尚弥の次期対戦相手は誰だ 8・14カシメロら続々登場

8月14日(日本時間15日)にアメリカのカリフォルニア州カーソンで行われるWBO世界バンタム級タイトルマッチ、王者のジョンリエル・カシメロ(32=フィリピン)対ギジェルモ・リゴンドー(40=キューバ)をメインとするイベントには、前座にもバンタム級のトップ選手が出場する。この階級の4団体王座統一を目指しているWBAスーパー王者、IBF王者の井上尚弥(28=大橋)にとっては誰が勝ち残るのか大いに気になるところだ。

8月14日のイベントのセミファイナルにはWBA世界バンタム級暫定王座決定戦が組まれている。2位にランクされるゲイリー・アントニオ・ラッセル(28=アメリカ)と7位のエマヌエル・ロドリゲス(29=プエルトリコ)が拳を交えるもので、勝者がスーパー王者(井上)、レギュラー王者(リゴンドー)に次ぐ“WBA第3王者”となる。現WBC世界フェザー級王者のゲイリー・ラッセルを兄に持つラッセルは18戦全勝(12KO)のサウスポーで、昨年12月には元WBAスーパー王者のファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国=井上に1回KO負け)に7回負傷判定勝ちを収めている。

対するロドリゲスは2018年5月にIBF王座を獲得したが、1年後に井上に2回KO負けを喫してベルトを失った。昨年12月にはWBCの暫定王座決定戦に出場したが、物議をかもす判定でレイマート・ガバリョ(24=フィリピン)に敗れ2連敗となった。戦績は21戦19勝(12KO)2敗。ガバリョ戦は内容では上回っていたものの精彩を欠く戦いぶりで、井上に敗れたショックを引きずっている印象だった。勢いのあるラッセルが相手だけに厳しい戦いを強いられそうだ。

セミファイナルの前には元WBAスーパー王者のラウシー・ウォーレン(34=アメリカ)が出場、世界挑戦経験者のダミエン・バスケス(24=アメリカ 18戦15勝7KO2敗1分)と対戦する。ウォーレンは五輪に3度出場した経験を持つサウスポーで、プロ戦績は22戦18勝(4KO)3敗1無効試合。動きは俊敏で戦いにくい相手だが、戦績が示すようにパワー不足の印象は否めない。今回も判定勝ちが濃厚だが、現WBA1位としてどれだけ存在感を示すことができるか要注目だ。

いまのところ井上の次期対戦候補はベルトを持つWBC王者のノニト・ドネア(38=フィリピン/アメリカ)、カシメロ対リゴンドーの勝者(WBO王者)が有力視されている。ただ、交渉ごとゆえ確証がないのも事実だ。井上に痛い目に遭っているロドリゲスはともかく、勢いのあるラッセル、経験値の高いウォーレンが井上の対戦候補としてクローズアップされる可能性もあるだけに14日の3試合からは目が離せない。

井上尚弥との統一戦の権利を手にするのはカシメロかリゴンドーか

昨年来、再三にわたってバンタム級のWBAスーパー王座とIBF王座を持つ井上尚弥(28=大橋)を挑発しているWBO同級王者のジョンリエル・カシメロ(32=フィリピン)が14日(日本時間15日)、アメリカのカリフォルニア州カーソンで2階級制覇王者、ギジェルモ・リゴンドー(40=キューバ)の挑戦を受ける。早ければ年内にも井上がこの試合の勝者と対戦する可能性があるだけに、日本のみならず世界的に注目度の高い試合だ。

もともと、この試合は王座統一戦として挙行される可能性があったが、WBOがWBA“レギュラー王者”であるリゴンドーを「井上の下に位置する二番手の王者」として格付け。団体を代表する世界王者とは認めず統一戦としての承認を見送った。その結果、リゴンドーがカシメロに挑むかたちになった。

ライト・フライ級、フライ級、バンタム級の3階級で世界王座を獲得してきたカシメロは34戦30勝(21KO)4敗の戦績を残している。全試合数の44パーセントに相当する15試合が世界戦(12勝10KO3敗)と中身も濃い。変則的な動きから飛び込んで繰り出す左右のフックやアッパーは強烈で、しばしば痛烈なダウンシーンやKOシーンを生み出してきた。カシメロは身長、リーチとも163センチで、165センチ/171センチの井上、170センチ/171センチのリゴンドーと比べて小柄といえる。しかし、「井上は俺から逃げている」などと言うこともデカいが、何度も相手国で戦い逆転KO勝ちを収めるなど逞しさを身につけている。これがWBO王座の4度目の防衛戦となる。

一方のリゴンドーは五輪と世界選手権で2度ずつ優勝を果たすなどアマチュアで475戦463勝12敗という戦績を残し、28歳でプロに転向(2009年)。スピードと卓越したスキルを武器に22戦20勝(13KO)1敗1無効試合の戦績を収めているサウスポーで、こちらも全試合数の6割近い13戦(11勝6KO1敗1無効試合)が世界戦だ。長いことスーパー・バンタム級の王座に君臨していたが、昨年2月に1階級下のバンタム級でも戴冠を果たしている。ニックネームは「ジャッカル」。試合の1カ月半後には41歳になるが、磨き抜かれた技巧は錆びてはいない。「みんなは私のテクニックにばかり注目しているようだが、この試合でパワーもあるということを証明する」と自信をみせている。

ラフファイター(カシメロ)と技巧派サウスポー(リゴンドー)の組み合わせから考えて、先に主導権を握った方が断然優位に立つことになるだろう。注目すべきはリゴンドーのスピードと右ジャブにWBO王者がどう反応するかという点だ。苦もなく距離を詰めることができるならばカシメロの強打が火を噴くシーンが見られるだろうし、対応に苦慮して後手にまわるようだとリゴンドーのスキルに翻弄されてしまうだろう。個人的には6-4で後者の可能性が高いとみる。

井上との統一戦に臨む権利を手にするのはカシメロか、それともリゴンドーか。

親子世界王者最有力候補「デストロイヤー」コナー・ベン、成長の証し見せる

1990年代にミドル級とスーパー・ミドル級で世界王座を獲得したナイジェル・ベン(イギリス)の息子、コナー・ベン(24=イギリス)が31日(日本時間8月1日)、イギリスのロンドン近郊ブレントウッドで元世界ランカーのアドリアン・グラナドス(31=アメリカ)と対戦する。18戦全勝(12KO)のベンは現在、ウェルター級でWBA9位、WBC10位、IBF13位にランクされている。層の厚いことで知られる階級だけに先の道のりは簡単ではないが、タフで知られるグラナドスを倒せば周囲の期待度はさらに膨らむはずだ。

父ベンは1987年から2006年まで約20年にわたって活躍した人気者で、「ダーク・デストロイヤー」の異名があった。1990年4月に手に入れたWBO世界ミドル級王座は2度目の防衛戦で失ったが、1992年10月に獲得したWBC世界スーパー・ミドル級王座は4年間に9度の防衛に成功。通算戦績は48戦42勝(35KO)5敗1分だった

息子ベンは1996年9月28日が誕生日だから、父親のラストファイトの1カ月半前に生まれたことになる。アマチュアで22戦(20勝2敗)したあと2016年4月に19歳でプロデビュー。ルーキー時代は経験値の低い相手と戦って勝利を重ねたが、2018年7月にWBA米大陸王座を獲得してからは一転して強豪と手合わせする機会が増えた。昨年11月には、つい3カ月前まで世界ランカーだったドイツの選手を大差の10回判定で下し、今年4月には同じくコロンビア出身の元世界ランカーに1回80秒TKO勝ちを収めている。伸びのある左ジャブを突いて距離とタイミングを計り、機を見て右ストレートを打ち下ろす。「デストロイヤー」のニックネームを持つ24歳は、まだ雑な面もあるが一戦ごとに成長している印象だ。

今回の相手、グラナドスは長いこと世界15傑の常連だった強豪で、13年のプロキャリアで33戦21勝(15KO)8敗3分1無効試合の戦績を残している。元世界王者との対戦も6度(4敗1分1無効試合)あり、経験値は高い。加えてKO負けは一度だけというタフガイでもある。グラナドスはパンチ力もあるだけに侮れないが、12対1のオッズが出ているように地元のベンが圧倒的有利であることは間違いない。

ちなみに130年を超す近代ボクシング史上、兄弟世界王者は35例を超すが、親子世界王者になると6組しか誕生していない。現在、スーパー・ウェルター級でWBO1位にランクされるティム・チュー(オーストラリア)が“7例目”の最有力候補と目されているが、ベンに対する注目と期待も負けず劣らず高いものがある。ちなみにチューとベンは階級がひとつ違うだけということもあり、近い将来、ひょっとしたら親子世界王者同士が大舞台で拳を交える日が来るかもしれない。

フューリー対ワイルダー再々戦10・9に決定 2カ月半延期の影響はいかに

WBC世界ヘビー級タイトルマッチ、初防衛を目指す王者のタイソン・フューリー(32=イギリス)対前王者デオンテイ・ワイルダー(35=アメリカ)の12回戦が10月9日(日本時間10日)、アメリカのネバダ州ラスベガスで行われることになった。この試合は7月24日にラスベガスで開催される予定だったが、7月に入ってフューリー自身とチームのメンバー数人が新型コロナウィルスに感染していることが判明したため延期が決まっていた。

延期が発表されたのは試合まで約2週間に迫ったタイミングだった。7月5日に受けた検査の翌日、フューリーの陽性が判明。チームのスタッフにも陽性反応者がいたため、ワイルダー戦は先送りにせざるを得ないと判断されたのだ。

延期も突然だったが、リセットの決定も早かった。一時は9月が候補として挙がっていたが、人気者のサウル・カネロ・アルバレス(31=メキシコ)の次戦が内定しているため、それを避けて10月上旬という日程が確定したようだ。なお、7月24日の前座として組まれていたヘビー級の無敗ホープ同士の対決、エフェ・アジャグバ(27=ナイジェリア)対フランク・サンチェス(29=キューバ)戦、同じく世界ランカー同士のヘビー級12回戦、ロバート・ヘレニウス(37=スウェーデン/フィンランド)対アダム・コウナツキ(32=ポーランド)戦もそのまま10月9日にスライドした。

フューリーとワイルダーは過去にWBC王座をかけて2度対戦したことがある。2018年12月の初戦はワイルダーが9回と12回にダウンを奪って引き分けに持ち込み、辛くも8度目の防衛に成功。2020年2月の再戦では逆にフューリーが2度のダウンを奪って7回TKOで快勝、王座を奪っている。初戦は年間最高試合の声が出るほどのドラマチックな試合で、再戦は1700万ドル(18億7000万円)近い入場料収入があった。当然、第3戦に対するファンや関係者の期待は高いものがある。

興味深いのは常に多弁なフューリーが「これまで以上に強くなった姿を披露するよ。10月9日には彼を完全にKOしてみせる」と強気のコメントを発しているのに対し、ワイルダーが沈黙を貫いている点だ。第2戦では互いに“口撃”し合ったことでワイルダーはペースを乱され、試合当日には重量18キロのコスチュームを身に纏って入場する派手なパフォーマンスを披露するなど心身ともに十分なコンディションをつくれなかったという苦い経験がある。それが今回の沈黙に繋がっていると思われ、不気味なムードを醸し出している。また、ワイルダーは第2戦後にトレーナーを変えており、延期によってコンビの連携を深める時間が増えたこともプラスといえそうだ。

戦績はフューリーが31戦30勝(21KO)1分、ワイルダーが44戦42勝(41KO)1敗1分。初戦のオッズは11対8でワイルダー有利、再戦は11対10でフューリー有利と接近していたが、今回は3対1でフューリー有利と明確な差が出ている。

2カ月半の延期がどちらにどんな影響を及ぼすのだろうか-。

井上尚弥、軽量バンタム級で驚異のKO率 日本歴代世界王者では最高

先月、WBA、IBF世界バンタム級王者の井上尚弥(28=大橋)は3回KO勝ちで両王座の防衛を果たした。これで井上の戦績は21戦全勝(18KO)となり、全試合数のうちKOが占める割合、つまりKO率は85.7%に上がった。53.5キロが体重上限で軽量級のカテゴリーに入るバンタム級では驚異的な数字といえる。これは主要4団体の全階級の現役世界王者のなかでは5番目に高いKO率だ。

最も高いKO率を残している現役世界王者は、約79.3キロが体重リミットのライト・ヘビー級でWBC王座とIBF王座に君臨しているアルツール・ベテルビエフ(36=ロシア)で、戦績は16戦全勝(16KO)。もちろんKO率は100%だ。パンチは左右ともパワフルで、しばしば痛烈なダウン、KOシーンを生み出している。

次いでKO率が高いのがスーパー・フェザー級、ライト級、スーパー・ライト級の中量級3階級でWBA王座を同時に保持している25戦全勝(24KO)のジャーボンテイ・デービス(26=アメリカ)で、KO率は96%。唯一の判定勝ちは6回戦時代のもので、2度のダウンを奪いながらフィニッシュできなかったもの。いまさらながら惜しまれる。こちらは小柄なサウスポーで、鋭く相手の懐に入って左右フックやアッパーで倒しまくっている。

3番目がヘビー級のWBA暫定王者ダニエル・デュボア(23=イギリス)で、戦績は17戦16勝(15KO)1敗、KO率は88%を超える。4番目は同じヘビー級の3団体統一王者のアンソニー・ジョシュア(31=イギリス)で、25戦24勝(22KO)1敗、KO率は88%。

こうした重量級のハードパンチャーが続くなか、KO率が5番目に高いのが井上だ。井上はベテルビエフやデービスのような目に見える攻撃型ではなく、カウンターでも倒せる万能型で、ダウンを奪ったパンチも右ストレート、顔面への左フック、ボディへの左フックなど多彩だ。特記すべきは21戦のうち16試合が世界戦で、そのうち14試合でKO勝ちを収めていることであろう。この点ではベテルビエフの世界戦5KO、デービスの(自身の体重超過で世界王座を剥奪された試合を含む)9KO、デュボアの1KO、ジョシュアの7KOを大きく上回っている。

このトップ5に迫っているのが、43戦41勝(36KO)1敗1分:KO率≒84%のIBFミドル級王者ゲンナディ・ゴロフキン(39=カザフスタン)、30戦28勝(25KO)2敗:KO率≒83%のWBCクルーザー級王者イルンガ・マカブ(33=コンゴ民主共和国)、24戦全勝(20KO):KO率≒83%のWBCバンタム級暫定王者レイマート・ガバリョ(24=フィリピン)、34戦33勝(28KO)1敗:KO率≒82%のWBOフェザー級王者エマヌエル・ナバレッテ(26=メキシコ)らだ。

すでに現時点で日本の歴代世界王者のなかで井上は最高KO率をマークしている。そういった意味では記録面でも記憶の面でも特別な存在になりつつあるといえる。今後、どれだけKO勝ちを上積みしていくのか楽しみだ。

7人目の「4団体統一王者」はチャーロかカスターニョか

スーパー・ウェルター級のWBAスーパー王座、WBC王座、IBF王座を持つジャーメル・チャーロ(31=アメリカ)と、同級WBO王者のブライアン・カスターニョ(31=アルゼンチン)が17日(日本時間18日)、アメリカのテキサス州サンアントニオで対戦する。勝者が4団体の統一王者になる注目の一戦だ。

先月19日にWBC世界ミドル級王座の5度目の防衛を果たした双子の兄ジャモールとともに兄弟世界王者として知られるチャーロは、14年のプロ生活で35戦34勝(18KO)1敗の戦績を残している。24歳のときにWBC王座を獲得して3度の防衛を果たしたが、V4戦で物議をかもす判定負けを喫して一度は失冠。しかし、1年後の2019年12月に11回KOでリベンジして王座を取り戻し、昨年9月にはWBA、IBF王者に8回KO勝ちを収めて3団体統一を成し遂げた。

KO率は51パーセントと特別高いわけではないが、7度の世界戦では6勝(5KO)1敗と倒しまくっている。以前はスピードとテクニックに頼っていたが、自信を深めたいまは切れのあるパンチで倒しに行くスラッガー型に変貌した印象だ。

一方のカスターニョは身長171センチ、リーチ171センチとこの階級では小柄で、チャーロよりも身長で9センチ、リーチは14センチも劣る。その分、上体は分厚く頑丈だ。プレッシャーをかけながら頭から突っ込んで左右のフックを叩きつけるファイター型でスタミナもある。チャーロとは対照的なタイプといえる。

こちらも2度の戴冠実績がある。最初は2016年11月、WBA暫定王座を獲得(のちに正王者に昇格)。3度の防衛を果たしたが、指名試合を巡って統括団体と衝突したため王座を放棄した経緯がある。

今年2月、WBO王者を圧倒して12回判定勝ち、返り咲きを果たしたばかりだ。戦績は18戦17勝(12KO)1分。チャーロと比べると世界的な強豪との対戦は少ないが、2年前にはサウスポーの技巧派として知られるエリスランディ・ララ(キューバ/アメリカ)と引き分けて評価を上げている。それを含めアメリカのリングは8度目となるが、今回はチャーロの出身地テキサス州での試合とあってアウェーの状況といえる。

スピードと切れのあるパンチを持つチャーロと、体力自慢のブルファイター、カスターニョ。対照的なスタイルを持つ世界王者同士の対決のオッズは、9対4でチャーロ有利と出ている。

なお、旧来のWBAとWBCに加えIBFが1983年、WBOが1988年に設立されて4団体時代になってから33年。統一戦を経て4本のベルトを収集した世界王者はバーナード・ホプキンス(アメリカ)、テレンス・クロフォード(アメリカ)、オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)、テオフィモ・ロペス(アメリカ)、ジョシュ・テイラー(イギリス)の5人。ホプキンスに勝って王座を継承したジャーメイン・テイラー(アメリカ)を含めても「4団体統一王者」は6人しか存在しない。

歴史に名前を刻むのはチャーロか、それともカスターニョか。

モンスター井上尚弥 フィリピン勢蹴散らし2階級4団体王座統一に現実味

去る19日(日本時間20日)、バンタム級のスーパー王座とIBF王座を持つ井上尚弥(28=大橋)がアメリカのネバダ州ラスベガスで3回KO勝ち、両王座の防衛を果たした。IBF1位にランクされる指名挑戦者のマイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)に何もさせず、ボディブローで3度のダウンを奪うという圧巻の完封劇だった。今後、4団体の王座統一を目指している井上が世界的なスター選手になるにはライバルの存在と話題性が不可欠だが、ここに来て近未来の好敵手が具体的に見えてきた。

モハメド・アリにはジョー・フレージャー(ともにアメリカ)というライバルがいた。80年代のミドル級ではシュガー・レイ・レナード、マービン・ハグラー、トーマス・ハーンズ(いずれもアメリカ)、そしてロベルト・デュラン(パナマ)の4強による直接対決が人気を博した。21世紀に入ってからも、6階級制覇の過程でマニー・パッキャオ(フィリピン)がマルコ・アントニオ・バレラ、エリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケスら人気と実力両面で秀でたメキシコ勢と何度も拳を交えたものだ。その先に真の栄光があったことはいうまでもない。

すでに3階級制覇を成し遂げている井上は先のダスマリナス戦を含めて16度の世界戦で16勝(14KO)を収めているが、客観的に見て力の拮抗した相手、あるいは大きな話題を集める相手は皆無だった。それほどに井上の力量が飛び抜けているのだ。

こうしたなか、ここにきて井上にとって理想的な流れができつつある。8月14日(日本時間15日)にWBC王者のノニト・ドネア(38)とWBO王者のジョンリエル・カシメロ(32)のフィリピン出身者同士が統一戦を行うことになったのだ。当然、その勝者と井上による4団体の王座統一戦が計画されるものと思われる。すでに井上は2年前にドネアに判定勝ちを収めているが、その試合は年間最高試合に選ばれるほどの激闘だった。井上対ドネアが実現するならば前回以上に世界的な注目を集めることは間違いない。悪役キャラで知られる強打者のカシメロとの対戦になっても新鮮味があって興味を引くはずだ。パッキャオがメキシコのトップ選手たちと連戦したように、「モンスターvsフィリピン勢」という分かりやすい構図とストーリーが見えてきたことは井上にとって大きなプラスといえる。

井上自身は1.8キロ重いスーパー・バンタム級への転向に関して、「適正体重じゃないと上のクラスに行く意味がない」と慎重だが、バンタム級で4団体制覇をしたあと体の成長に合わせてスーパー・バンタム級に上げる可能性が高い。早ければ来年のいまごろは4階級制覇に照準を合わせているかもしれない。

そのスーパー・バンタム級ではアメリカ勢が井上を待ち構えている。WBC王者のブランドン・フィゲロア(24=23戦22勝17KO1分)、WBO王者のスティーブン・フルトン(26=19戦全勝8KO)、WBA暫定王者のライース・アリーム(31=18戦全勝12KO)の3人に加え、ウズベキスタン出身でアメリカ西海岸に活動拠点を置くWBAスーパー王座とIBF王座を保持するムロジョン・アフマダリエフ(26=9戦全勝7KO)である。4王者とも無敗で、合計の戦績は69戦68勝(44KO)1分。しかも4人全員が身長、リーチで井上を上回っている。井上にとっては挑戦のしがいがある階級といえるだろう。「モンスターvsアメリカ勢」という構図になれば話題性も十分だ。

バンタム級でフィリピン勢を総なめにしたあとで転級。スーパー・バンタム級でアメリカ勢を連破-そのころには2階級で4団体王座を統一という壮大なプランが現実味を帯びているはずだ。

24戦全勝の戦車デービス 体格のハンデ乗り越え3階級制覇なるか

24戦全勝(23KO)という驚異的な戦績を残している2階級制覇王者のジャーボンテイ・デービス(26=アメリカ)が26日(日本時間27日)、アメリカのジョージア州アトランタでWBA世界スーパー・ライト級王者のマリオ・バリオス(26=アメリカ)に挑む。WBAのスーパー・フェザー級スーパー王座とライト級王座を保持しているデービスが勝てば同時に3階級の王座に君臨することになる。下馬評もデービス有利に傾いている。

あのフロイド・メイウェザー(アメリカ)にプロモートを委ねているデービスはサウスポーの攻撃型で、スピードとパワーに秀でている。体重調整に失敗したり私生活で問題を起こしたりとトラブルメーカーとしても知られるが、リング上のパフォーマンスの質の高さは誰も認めるところだ。2017年1月に最初の世界王座を獲得した試合を含め8度の世界戦をすべてKOで終わらせてきた。昨年10月には自身の持つライト級王座も賭け、WBAスーパー・フェザー級スーパー王者だったレオ・サンタ・クルス(メキシコ)と対戦。6回に左アッパーを直撃して豪快な6回KO勝ちを収めている。ニックネームは「TANK(装甲戦車)」。相手を蹂躙してしまう戦いぶりはたしかに戦車をイメージさせる。

そんなデービスだが、今回のバリオス戦が発表された際は多くの関係者やファンが驚いたのではないだろうか。身長166センチ、リーチ171センチのデービスはライト級でも小柄な部類に入り、スーパー・ライト級ではさらに体格のハンデが大きくなるからだ。ちなみに過去24戦のなかで自身の最重量は61.4キロだった。63.5キロが体重上限のスーパー・ライト級とは2キロ以上の差がある。

しかも、今回の相手、バリオスは身長178センチ、リーチ180センチと大柄なのだ。2019年9月に王座を獲得し、昨年10月のデービス対サンタ・クルスと同じリングに上がり6回KO勝ちで初防衛を果たしている。スーパー・ライト級を主戦場にしてから4年以上が経つ。戦績は26戦全勝(17KO)。まだ評価は定まっていないが、伸びしろのある選手だ。相手が入ってくるところに突き上げるアッパー系のパンチは破壊力がある。

それでも下馬評はデービス有利に傾いており、オッズは4対1という一方的な数字が出ている。スピード、創造性、爆発力など総合的な戦闘能力で勝るデービスが、そのまま差を見せつけるだろうと考えられているのだ。その確率が高いことを認めたうえで、一方ではデービスが体格の壁に直面する可能性も決して低くはないように思える。

装甲戦車が大きな相手をも踏みつぶしてしまうのか、それとも泥濘にはまって操縦不能に陥るのか。

「ヒットマン」チャーロ ビッグマッチへKO防衛がノルマ

村田諒太(35=帝拳)がWBAスーパー王座に君臨しているミドル級は選手層が厚く、世界的な注目度も高い階級として知られている。そのミドル級のWBC王者、ジャモール・チャーロ(31=アメリカ)が19日(日本時間20日)、アメリカのテキサス州ヒューストンでWBC4位にランクされるファン・マシアス・モンティエル(27=メキシコ)を相手に5度目の防衛戦に臨む。誰もが認める実力者でありながらビッグマッチに恵まれないチャーロにとっては、その先に繋げるためにも内容が問われる試合といえる。

チャーロは、双子の弟でWBA、WBC、IBF世界スーパー・ウェルター級王者、ジャーメルとともに兄弟世界王者としても有名だ。ちなみに兄弟世界王者は30組を超すが、そのなかで双子は5組しかいない。

チャーロは2015年にIBF世界スーパー・ウェルター級王座を獲得し、3度防衛後にミドル級に転向。2018年4月に2階級制覇を果たし、ミドル級でも危なげなく4度の防衛を重ねてきた。身長183センチ、リーチ187センチと恵まれた体格からスピーディーな左ジャブを飛ばして牽制し、切れのある右ストレート、さらに左フックとパンチは多彩でパワフルだ。ニックネームは「ヒットマン(暗殺者)」。戦績は31戦全勝(22KO)でKO率は70パーセントを超す。

ただ、ミドル級に上げてからは4度の防衛中、KO勝ちはひとつだけに留まっており、自慢の強打はやや湿りがちといえる。それでもV4戦では難敵とみられたセルゲイ・デレビヤンチェンコ(ウクライナ)を圧倒、改めて実力を証明している。

25歳で初めて世界王者になったときから6年経ったが、まだビッグマッチと呼べる試合には恵まれていない。31歳と充実期に入ってきた現在、村田のほかIBF王者のゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)、WBO王者のデメトリアス・アンドレイド(アメリカ)ら他団体王者との統一戦も視野に入っているはず。そのためにも今回は豪快なKO防衛がノルマといえる。

挑戦者のモンティエルは28戦22勝(22KO)4敗2分の戦績を残している強打者で、左右どちらの構えでも戦えることとパワーが売りの選手だ。意外な角度とタイミングで放たれるアッパー系のパンチや執拗な連打には注意が必要だが、総合力ではチャーロに遠く及ばない。オッズも20対1でチャーロ有利と出ているほどだ。

「モンティエルが手強い相手であることは分かっている。構えを左右に変える攻撃型の選手であることも知っている。でも、俺は最高のコンディションだし、迎え撃つ準備は万端だ」――そう話すチャーロに慢心がなければ中盤までのKO防衛が濃厚だ。

ロマチェンコを破ったロペス 今度は自ら強い光を放ち輝けるか

昨年10月、階級の壁を超越したボクサーの最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」で現役NO,1の評価を得ていたワシル・ロマチェンコ(33=ウクライナ)に12回判定勝ち、ライト級の4団体王座統一を果たしたテオフィモ・ロペス(23=アメリカ)が19日(日本時間20日)、アメリカのフロリダ州マイアミで初防衛戦に臨む。挑戦者はIBFとWBOで1位、WBA8位、WBC12位にランクされるジョージ・カンボソス(27=オーストラリア)。スター選手を破ったロペスが、今度は自ら強い光を放って輝くことができるのか注目される。

ロペスは両親の故国ホンジュラス代表として2016年リオデジャネイロ五輪に出場後、19歳でプロデビュー。豪快なKO勝ちと勝利後にバック転を披露するなど派手なパフォーマンスで売り出した。2年前にはIBFの挑戦者決定戦で中谷正義(32=井岡⇒帝拳)に12回判定勝ち。その5カ月後、リチャード・コミー(34=ガーナ)に鮮やかなカウンターを決めて2回TKO勝ちを収め、IBF王座を獲得した。そして3団体の王座を持っていたロマチェンコにも勝ち、プロ16戦目(全勝12KO)で4本のベルトを手に入れた。

これらの実績によってアメリカの老舗専門誌「リング・マガジン」のPFPでは7位にランクされているロペスだが、中谷戦とロマチェンコ戦の内容が競っていたこともあり、まだ評価が定まっているとはいえない。今回のカンボソス戦は、そんな疑問の声に対する一定の答えを出す機会ともいえる。

挑戦者のカンボソスも19戦全勝(10KO)と挫折を知らない。ただ、直近の2試合は元世界王者を相手に判定が割れる僅差の判定勝ちで、ロペスと比べると実績で大きく見劣りし、存在感も薄い。その一方、3年前から自国を離れアメリカ、マレーシア、ギリシャ、イギリスと世界各地を転戦してきた逞しさがある。4年前には6階級制覇王者、マニー・パッキャオ(42=フィリピン)のスパーリング・パートナーを務めるなど貴重な経験もしている。侮れない相手といっていいだろう。

オッズは17対2、王者有利と出ている。自ら踏み込んで打ち込むパワフルな右フックや左フックに加え、カウンターがとれるのもロペスの強みだ。カンボソスは細かく動いて的を絞らせず、スピードとスタミナの勝負に持ち込みたい。

同じ日にラスベガスではWBA、IBF世界バンタム級王者、井上尚弥(28=大橋)のV5戦が行われるが、マイアミの試合にも要注目だ。

6階級制覇マニー・パッキャオ、2年1カ月ぶりの試合は厳しい戦い

6階級制覇の実績を残している世界的なスター選手、マニー・パッキャオ(42=フィリピン)が8月21日(日本時間22日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでWBC、IBF世界ウェルター級王者のエロール・スペンス(31=アメリカ)と対戦することになった。パッキャオにとっては一昨年7月以来、2年1カ月ぶりの試合となり、厳しい予想が大勢を占めている。

パッキャオは19歳でフライ級王者になり、20代でスーパー・バンタム級、スーパー・フェザー級、ライト級を制覇。30歳でウェルター級、31歳のときにスーパー・ウェルター級で戴冠を果たした。

2018年7月にはWBA世界ウェルター級王座を獲得して返り咲いたが、長期ブランクのため今年1月に“休養王者”に格下げされた。

しかし、オスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ)と並ぶ史上2人しかいない6階級制覇と、10代、20代、30代、40代すべてで王座に君臨するという初の記録を樹立するなど実績や存在感、知名度は群を抜いている。今回はスペンスの持つ2団体王座にパッキャオが挑戦する構図になるが、イベント主催者は「パッキャオ対スペンス」と6階級制覇王者の名前を先に出してPRしているほどだ。

体重の壁を突き破って数々のミラクルを起こしてきたパッキャオがウェルター級を主戦場にしてから10年以上が経つ。この間の戦績は17戦13勝(2KO)4敗。自身が王座を明け渡した選手を含め対戦相手17人すべてが世界王者経験者と中身は濃いが、勝率は約76パーセント、KO率は約12パーセントと、意外に低い数字が並ぶ。やはり加齢からくる衰えは隠せないようだ。

今回は、それに加えてスペンスが上り坂の世界王者であるため、パッキャオにとっては厳しい戦いが予想される。スペンスは2012年ロンドン五輪出場後にプロ転向を果たし、9年間で27戦全勝(21KO)をマーク。キャリアではパッキャオ(71戦62勝39KO7敗2分)に劣るものの、それでも6度の世界戦を経験している。攻防ともにハイレベルの万能型で、アメリカの老舗専門誌「リング・マガジン」のパウンド・フォー・パウンド・ランキングで6位に入っている実力者だ。身長166センチ/リーチ170センチのパッキャオに対し、177センチ/183センチと体格面でも大きなアドバンテージがある。

注目のサウスポー対決まで2カ月半。5月末時点のオッズは4対1でスペンス有利と出ている。

ウバーリ対ドネアを皮切りに始まるバンタム級ウォーズ

WBC世界バンタム王者のノルディーヌ・ウバーリ(34=フランス)対元世界5階級制覇王者、ノニト・ドネア(38=フィリピン/アメリカ)のタイトルマッチが29日(日本時間30日)、アメリカのカリフォルニア州カーソンで行われる。この試合の勝者に対し、4団体の王座統一を目指しているWBAスーパー王者、IBF王者の井上尚弥(28=大橋)が対戦を希望していることもあり、日本のファンにとっても注目のカードといえる。

ウバーリとドネアは一昨年11月7日、ともにさいたまスーパーアリーナのリングに上がり、ウバーリが井上尚弥の弟・拓真に12回判定勝ち、ドネアは尚弥と激闘を繰り広げたが12回判定で敗れた。

その後、WBCはウバーリに対しドネアとの指名防衛戦を課し、それに従って興行権入札が行われ、一度は昨年5月に対戦が決まった。

しかし、コロナ禍の影響で6月に延期され、さらに12月12日に再延期された。

ところが、試合まで1カ月を切ったところでウバーリが新型コロナウイルスに感染。WBCはウバーリを“休養王者”にスライドさせた。これを受けドネアは試合日を1週間延ばして別の相手と王座決定戦を行うことになったが、今度はドネアにも陽性反応が出たため試合はキャンセルになった。今年に入ってWBCは回復したウバーリを正王者に復帰させ、改めてドネアとの防衛戦を義務化したという経緯がある。

2度の五輪出場経験を持つウバーリは身長161センチと小柄だが筋肉隆々の肉体美を誇るサウスポーで、17戦全勝(12KO)と挫折を知らない。拓真戦で見せたように巧みに位置取りをしながら積極的にテンポよく手数を出していくタイプだ。

一方のドネアはプロキャリア20年のベテランで、世界戦だけでもウバーリの全試合数を超える22戦を経験(17勝11KO5敗)している。その高い経験値と左フック、右ストレートの強打が売りの万能型といえる。さすがに衰えは隠せないものの、井上尚弥をあわやというところまで追い込んだようにパンチ力と頭脳、集中力は38歳のいまも健在だ。

ウバーリとドネアは2019年1月にスパーリングで手合わせした経験があり、また日本でも対面しているため相手の体格や攻防のパターンは頭に入っているはず。それを前提にウバーリはスピードと手数で主導権を握ろうとするのではないだろうか。これに対しドネアは得意の左フックと右ストレートでKOを狙うものと思われる。数多くのサウスポーと対戦してきた経験を持つドネアだが、動きの速いタイプには苦戦するケースが目立つ。そうしたデータが13対6でウバーリ有利というオッズに表れているのかもしれない。

4団体の王座統一を目指している井上尚弥は6月19日(日本時間20日)にIBF1位のマイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)と防衛戦を行うことが決定。また8月14日(日本時間15日)にはWBO王者のジョンリエル・カシメロ(32=フィリピン)対WBAレギュラー王者、ギジェルモ・リゴンドー(40=キューバ)戦が行われる。ウバーリ対ドネア、井上対ダスマリナス、カシメロ対リゴンドー-バンタム級ウォーズが始まる。

テイラー対ラミレス 5人目の4団体統一王者はどちらだ

プロボクシングではWBA(世界ボクシング協会)、WBC(世界ボクシング評議会)、IBF(国際ボクシング連盟)、WBO(世界ボクシング機構)が主要4団体といわれ、各統括団体が独自の世界王者を承認しているのが現状だ。こうしたなか共通の利益が見込める場合は選手や陣営が手を組み、団体の枠を超えて王者同士が互いの王座をかけて戦うことがある。近年、この世界王座統一戦は増加傾向にあり、特に今年は4団体の王座統一戦がトレンドになりつつある。

1988年に4つめの団体としてWBOが発足してから33年。他団体の王者との統一戦を経て自力で4本のベルトを収集した選手は下記の4人しかいない。

(1)バーナード・ホプキンス(アメリカ)04年 9月 ミドル級

(2)テレンス・クロフォード(アメリカ)17年 8月 S・ライト級

(3)オレクサンデル・ウシク(ウクライナ)18年 7月 クルーザー級

(4)テオフィモ・ロペス(アメリカ)  20年10月 ライト級

※このほかジャーメイン・テイラー(アメリカ)がホプキンスに勝って4団体王座を継承した例がある

2017年以降は毎年のように4団体統一王者が誕生しているが、今年はこのあと一気に4人が偉業を達成する可能性がある。内定と計画を含め下記のように5月から9月の間に4試合の4団体王座統一戦が予定されているのだ。

(1)5月22日@アメリカ S・ライト級 WBA、IBF王者ジョシュ・テイラー(イギリス)対WBC、WBO王者ホセ・ラミレス(アメリカ)

(2)7月17日@アメリカ S・ウェルター級 WBA、WBC、IBF王者ジャーメル・チャーロ(アメリカ)対WBO王者ブライアン・カスターニョ(アルゼンチン)

(3)8月7日or14日@サウジアラビア ヘビー級 WBA、IBF、WBO王者アンソニー・ジョシュア対WBC王者タイソン・フューリー(ともにイギリス)

(4)9月@アメリカが有力 S・ミドル級 WBA、WBC、WBO王者サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)対IBF王者ケイレブ・プラント(アメリカ)

間近に迫っているテイラー対ラミレスは2団体王者同士の組み合わせで、しかも全勝(テイラーが17勝13KO、ラミレスが26勝17KO)の英米対決になる。ふたりはアマチュア時代から同じオリンピック、世界選手権に出場していたが、ともに途中で敗退したため直接対決はなかった。プロ転向後はラミレスが2018年に世界王座を獲得して先に出世したが、テイラーが1年後に追い付いている。むしろ最近の評価はテイラーの方が高く、今回も15対7のオッズで有利と見られている。徹底した攻撃型のラミレスを万能型サウスポーのテイラーが巧みに迎撃するだろうという予想が多いのだ。

「5人目」となるのはテイラーか、それともラミレスか。実力が拮抗しているだけに引き分けという結果も考えられる。

4団体王座統一目指す井上尚弥を中心に動き始めたバンタム級トップ戦線

バンタム級のWBAスーパー王座とIBF王座に君臨する井上尚弥(28=大橋)の次戦が6月19日(日本時間20日)、アメリカのネバダ州ラスベガスで行われることが正式決定したことで、この階級のトップ戦線はさらに注目度がアップすることになった。5月末から8月中旬にかけ、暫定王座を含め世界王者5人が相次いでリングに上がるのだ。

まずは現在のバンタム級主要4団体の世界王者を整理しておこう。

WBAスーパー:井上尚弥(28=大橋)

          ★20戦全勝(17KO)

正規:ギジェルモ・リゴンドー(40=キューバ)

     ★22戦20勝(13KO)1敗1無効試合

WBC  正規:ノルディーヌ・ウバーリ(34=フランス)

          ★17戦全勝(12KO)

     暫定:レイマート・ガバリョ(24=フィリピン)

          ★24戦全勝(20KO)

IBF    :井上尚弥(28=大橋)

WBO    :ジョンリエル・カシメロ(32=フィリピン)

          ★34戦30勝(21KO)4敗

このなかで最も高い評価を得ているのが井上であることは誰もが認めるところであろう。アメリカの老舗専門誌「リング・マガジン」が発表している全階級を通じた最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド」で2位に名を連ねているほどだ。3階級制覇のカシメロ、五輪連覇とプロで2階級制覇を果たしているリゴンドー、尚弥の弟・井上拓真(大橋)に勝っているウバーリ、これに井上尚弥に善戦した元5階級制覇王者のノニト・ドネア(38=フィリピン)を加えた4人が第2グループを形成し、少し離れてWBC暫定王者のガバリョが追う展開となっている。こうしたなか井上の次戦が正式決定したため以下のようにトップの6選手全員が3カ月以内に試合を行うことになった。

■5月29日(日本時間30日)@カーソン(アメリカ カリフォルニア州) ウバーリ対ドネア WBCタイトルマッチ

■6月19日(日本時間20日)@ラスベガス(アメリカ ネバダ州)

 井上尚弥対マイケル・ダスマリナス(28=フィリピン) WBAスーパー&IBFタイトルマッチ

■7月9日(日本時間10日)@アメリカ(開催地未定) ガバリョ対相手未定 WBC暫定タイトルマッチ

■8月14日(日本時間15日)@アメリカ(開催地未定) カシメロ対リゴンドー WBOタイトルマッチ

井上尚弥はIBF1位のダスマリナスの挑戦を受けるが、力の差は歴然としており、王者が調整に大失敗するなどのアクシデントがないかぎり王座の移動はないと思われる。実力が拮抗しているのがウバーリ対ドネア、カシメロ対リゴンドーの2カードだ。勢いではウバーリとカシメロが上回っているが、経験値の高いドネアとリゴンドーも底力があるだけに勝負はどう転ぶか分からない。4団体の王座統一を目指している井上も、この2試合には強い興味を持っているはずだ。

5月から8月にかけて行われる4試合を経て、この秋、はたしてバンタム級トップ戦線の顔ぶれはどうなっているのだろうか。

原功(はら・いさお)

 1959年(昭34)4月7日、埼玉県深谷市生まれ。日大法学部新聞学科卒業。82年、ベースボール・マガジン社入社。以来18年間「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間同誌編集長。現在はWOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。著書に「タツキ」「ボクシング 名勝負の真実・日本編/海外編」ほか。