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リングにかける

RIZIN牛久絢太郎「勝率100%」戦でクレベル・コイケに敗れ王座陥落 初敗北糧に今後に期待

22年10月23日、牛久絢太郎対クレベル・コイケ クレベル・コイケに敗れ、観客に頭を下げ引き揚げる牛久絢太郎

「勝率100%」の試合に敗れ去った牛久絢太郎(27=K-Clann)が、再びはい上がる。

10月23日にマリンメッセ福岡で開催された総合格闘技イベントRIZIN39大会。そのメインイベントを飾ったのは、格闘技ファンの誰もが心待ちにしていた一戦だった。RIZIN・DEEPフェザー級王者の牛久が、“鬼神”クレベル・コイケ(ブラジル、32=ボンサイ柔術)と2度目の防衛戦で激突した。

昨年10月、RIZINに初参戦を果たすと、群雄割拠のフェザー級でいきなりタイトル奪取に成功した牛久。片や、20年12月にRIZIN初参戦し5戦全勝、その全てを一本勝ちで飾るという驚異的な成績でタイトルマッチを迎えたクレベル。榊原CEOが「最上級のものが見ていただける」と胸を張ったように、まさに日本最高峰の決戦だった。

その試合で、牛久は勝利を確信していた。所属ジムのK-Clann、出稽古先のパワーオブドリームでは週4、5回の朝練習で走りこみ、体力面で自信を深めた。クレベル戦に向け、今年4月から半年かけて対策を練り上げた。「出来上がっている。(勝率は)100%。すごく自信を持って戦えます」と手応えは十分だった。

だが、試合は思いもよらぬ結末を迎える。「やってはいけないことをやってしまった」。1回に繰り出した左フック。試合後、「あれは出さないように作戦を立ててきたのに…」と唇をかんだ。

パンチのタイミングでできた一瞬の隙。「最強の挑戦者」は、それを見逃してはくれなかった。組み付かれ、相手の得意のグラウンドの攻防に発展。なんとか1回はしのいだものの、体力を消耗。2回に三角絞めを決められる要因を、自らの手で作ってしまった。

もっとも自信のあったはずの体力。そこでも上回られた。翌24日に迎えるはずだった「王座獲得1年記念日」は、幻となった。

それでも、この1年で得たものの大きさを実感した。大会から5日たった28日。自身のユーチューブチャンネルを更新した。「1年前と比べて応援してくれる人が本当に多くなった。恵まれているなと感じました」と、前向きな表情で振り返った。

「まぐれで勝った」「華がない」とバッシングされることもあった初戦から丸1年。牛久は間違いなく、自らの力で道を切り開いてきた。RIZINの王座は失えど、決してその存在感まで失われていないはずだ。今後については「代表と相談している」と話すにとどめた。RIZIN初敗北を糧に、また一回り大きくなった牛久の今後に期待したい。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

22年10月23日、牛久絢太郎対クレベル・コイケ 牛久絢太郎に勝利し、歓喜に沸くクレベル・コイケ
大相撲裏話

ネクスト大関は若隆景が約3割と最多 秋巡業で「大関」について100人アンケート

大相撲の秋巡業で日刊スポーツは、「大関」に関することをテーマに来場者約100人にアンケートを行った。

<1>今の大関陣の活躍についての満足度(大変良い、良い、どちらでもない、やや悪い、悪い)とその理由

<2>大関とはどんな存在であるべきか

<3>ネクスト大関候補とその理由の3点について尋ね、<3>では関脇の若隆景(27=荒汐)を挙げる声が回答のうち約3割に上った。

大関候補No.1に選ばれた若隆景

29票を得た若隆景は、同じ関脇の豊昇龍(23=立浪)らを抑えてダントツだった。ファンからは「安定した相撲を取れている」「今後の相撲界を背負って立つ存在になって」などと好意的な評価が相次いだ。埼玉・久喜市内の男性は「千代の富士のような体をしていて相撲がうまい」。埼玉県在住の38歳女性は「勝ち越しを続けているし、何より『華』があります」と絶賛した。

先場所は初日から3連敗を喫するなど出遅れたが、そこから8連勝。12日目に平幕の高安(32=田子ノ浦)に敗れはしたが、11勝4敗で技能賞を獲得。大関取とりへの起点とした。1年を締めくくる九州場所(11月13日初日、福岡国際センター)で大関取りの足固めを狙いたいところ。

2位は共に12票で2人の名が挙がった。1人は関脇豊昇龍、もう1人は大関経験者で幕下の朝乃山(28=高砂)だ。

秋巡業で稽古に参加する豊昇龍

前者については叔父の元横綱朝青龍を重ね合わせるファンも少なくなく、「スケールが大きい」(茨城県在住30歳男性)。「血筋からいっても、遅かれ早かれいつか綱を張れる」(埼玉県在住55歳女性)といった声も。新関脇として臨んだ先場所も8勝を挙げて勝ち越すなど、「最近の活躍がめざましい」(群馬・前橋市の43歳男性)と目の肥えた相撲ファンもうならせた。

かたや幕下でありながら、大関経験者の朝乃山。ファンの期待は今も変わらないようで、「大関に返り咲くの時間の問題」(群馬・桐生市の68歳男性)といった声が数多くあった。日本相撲協会の新型コロナウイルス対策ガイドライン違反による6場所出場停止処分が明けた名古屋場所で7戦全勝して三段目優勝し、7戦全勝なら十両復帰が確実だった秋場所は六番相撲で負けて6勝1敗。九州場所での十両復帰とはならずも、「この人しかいない。大関、いや横綱になれる人でしょ!!」(千葉市の51歳男性)と期待を寄せる声は依然高い。

ネクスト大関候補としては他に、6票→琴ノ若、4票→大栄翔、霧馬山、阿炎、高安、3票→明生、隆の勝が続いた。【平山連】

秋巡業で稽古に参加する大関正代

秋巡業でファンのサインに応じる大関貴景勝

○…秋場所時点の3大関(貴景勝、正代、御嶽海)の活躍の満足度については、最多が「やや悪い」(25人)で、1票差で「良い」(24人)が続いた。

「やや悪い」とした理由について、「あっけない取組が多いような気がする」(東京都在住66歳女性)「大関陣が定着せず見ごたえがない」といった厳しい意見が並んだ。その一方で「良い」と答えた人の中には「ずばぬけた存在がいないため、観ていてハラハラする」(群馬・太田市の25歳男性)など実力伯仲の状況について好意的に捉える声も。

埼玉・久喜市内の53歳男性は「ふがいないという部分はあるけどれ、誰が勝ってもおかしくないという場所は逆に面白い」という理由で、「大変良い」と回答していた。

○…「大関とはどんな存在であるべきか」という問いには、優勝争いに絡んでほしいという声が目立った。「横綱を目指し、横綱や勢いのある平幕を倒せる本場所の『要』」(埼玉・久喜市の11歳男性)「最低でも10勝を」(さいたま市38歳男性)というように、その地位にふさわしく求められるハードルの高さがうかがえた。

◆大関 江戸時代を通じて最高位で、1890年までは横綱免許を授与された力士も番付上は「大関」と記載された。1909年に横綱が制度化されたが、大関は番付から欠いてならないとされる。現在、東西に大関が1人ずついない場合、横綱が大関の地位を兼ねて「横綱大関」として地位を書かれることがある。

大相撲裏話

正代のメンタル的強さを垣間見た 負け越した秋場所…取材の場に現れなかった当時の心境を即答

大関昇進披露祝賀会、壇上であいさつする正代(2022年10月23日=代表撮影)

11月13日に福岡国際センターで、一年納めの大相撲九州場所が開催される。熊本出身でご当地場所となる大関正代(30=時津風)は、10月23日に自身の大関昇進披露祝賀会に参加。九州場所に向けて「(九州)出身としていい相撲を見せたい。いい成績で終えられるようにしっかり調整したい」と意気込んだ。

正代とは言えば、よく“ネガティブ”の代名詞がついてまわった。実際にネガティブな発言が多く、温厚な性格がゆえに、報道陣からもネガティブ思考について少しいじられるような形で取材を受けることも多々あった。ただ、20年秋場所で初優勝して大関に昇進して以降は自信をつけたのか、本人の口からネガティブな言葉が出ることは少なくなったように思えた。

コロナ禍になって、本場所中の取材はオンラインで行われるようになった。取組を終えて帰り支度を済ませた力士は、任意でパソコン画面の前に立って報道陣の質問に受け答えしている。その日の取組に負けたらオンライン取材に応じない力士が多い中、正代は勝っても負けてもオンライン取材の場に現れた。ただ、2日目から9連敗して早くも負け越しが決まってしまった秋場所だけは、オンライン取材の場に現れなかった。

秋場所以降、久しぶりの公の場となった自身の大関昇進祝賀会で、秋場所中の対応について話題を振られた。すると正代は「記者さんにあたりそうになったので。メンタル的に整理できてなくて」と即答した。止まらない連敗、九州場所では自身5度目のかど番、周囲からの声、などなど。簡単には受け止めることができない現実に直面した当時の心境を明かした。この心境にうそ偽りはないと思った。本当にそう思ったのだろう。ここまで正直に答える力士も珍しいと思うと同時に、きっぱりと答えた姿に正代のメンタル的強さを垣間見た気がした。

当然、気持ちを強く持つだけで急に強くなれるわけはない。ただ、ポジティブな気持ちは絶対に有利に働くと記者は思う。正代は祝賀会で「優勝争いを先頭で引っ張りたい。今日祝賀会に来た皆さんがパーティーに来て良かったと思えるようにしたい」と意気込んだ。大関に昇進してからの2年間、優勝争いに絡むことができず歯がゆい場所が続いてきた。秋場所での11敗は大関に昇進して以降ワースト。これ以上ない逆境を乗り越えられるかどうか。“ポジティブ”正代なら、きっとやってくれそうだ。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

正代(2022年9月24日撮影)
原功「BOX!」

「ハイテク」ロマチェンコ再起第3戦 「テクニシャン」オルティス倒しヘイニーへ挑戦アピール

2年前まで「パウンド・フォー・パウンド」現役最強の評価を受けていた元世界3階級制覇王者、ワシル・ロマチェンコ(34=ウクライナ)が29日(日本時間30日)、アメリカのニューヨーク市で再起第3戦に臨む。相手はライト級でWBC8位、WBO12位にランクされるジャメイン・オルティス(26=アメリカ)。17戦無敗の新鋭を侮ることはできないが、王座奪回に向けロマチェンコがどんなパフォーマンスを見せるかという点に注目が集まる。

ロマチェンコは五輪連覇後にプロに転向し、3戦目にフェザー級、7戦目にスーパーフェザー級、12戦目にライト級王座を獲得した技巧派サウスポーで、「ハイテク(高性能)」というニックネームを持つ。瞬間的に立ち位置を変えながら攻防を組み立て、攻めてよし守ってよしという極めて高度で隙のないボクシングに定評がある。世界中のボクサーのなかで最も高い評価を受けていたのもうなずける。

しかし、30歳を超えたころから故障やブランクが増え、2020年10月には若くて勢いのあるテオフィモ・ロペス(アメリカ)に12回判定負けを喫してライト級王座から陥落した。昨年6月、中谷正義(帝拳)に9回TKO勝ちを収めて再起し、12月には元世界王者のリチャード・コミー(ガーナ)に12回判定勝ちを収めている。戦績は18戦16勝(11KO)2敗。現在はライト級でWBCとWBOで1位、IBFで3位、WBAで4位にランクされている。

一方、「テクニシャン」というニックネームを持つオルティスは半年前までは無名に近い存在だったが、5月に元WBO世界スーパーフェザー級王者のジャメル・ヘリング(アメリカ)に10回判定で完勝し、WBC世界ライト級8位、WBO12位に浮上してきた。戦いの最中に右から左、左から右と頻繁に構えを変える変則のスイッチヒッターで、17戦16勝(8KO)1分と無敗をキープしている。どちらの構えでも細かくジャブを突き、それを突破口にして攻めることが多いがパワーには欠ける。

「ハイテク」と「テクニシャン」の試合だけに技術戦が予想されるが、オッズが14対1でロマチェンコ有利と出ているようにレベルの差は歴然としている。元3階級制覇王者が瞬間移動しながら速くて多彩な左右のコンビネーションを叩きつけて圧倒しそうだ。

ライト級は4団体王座に君臨するデビン・ヘイニー(アメリカ)、WBAレギュラー王座を持つジャーボンテイ・デービス(アメリカ)、そしてロマチェンコの「3強」が並走している状態が続いている。ロマチェンコは新鋭に圧勝してヘイニーへの挑戦をアピールしたいところだ。

リングにかける

野上奈々会長、夫野上真司とジム立ち上げ後初のタイトルマッチ 夢は日本初の師弟で女子世界王座

初タイトル戦へ意気込む吉川(左)と元世界王者の野上奈々会長(2022年10月12日撮影)

ボクシング元女子世界王者では日本初となるジム会長が、夢へ動きだした。

大阪・堺市のディアマンテジム野上奈々会長(44)は、好川菜々のリングネームでWBO、WBC暫定女子世界フライ級王座を獲得した。15年に元WBOアジアパシフィック・スパーフェザー級王者の野上真司(47)と結婚。4年前にジムを立ち上げ、夫はオーナー兼プロモーター、自身が会長に就任した。

現在、1歳の男の子を育てる母でもある。王者の父母の遺伝子を受け継ぐその未来は? の問いに「世界王者にしないといけないでしょう。宿命です」と会長は即答した。

その前に「愛弟子」を王者にする夢がある。10月12日に、11月27日にソフィア堺で行う興行について会見した。メインはWBO女子アジアパシフィック・ミニマム級王座決定戦で、同ジムの日本同級3位の吉川梨優那(21)が、WBC女子世界アトム級3位のノルジ・グロ(32=フィリピン)と対戦する。ジムがかかわる興行で初のタイトルマッチとなる。

吉川は6戦4勝(1KO)1分け1敗の右ボクサーファイター。小学3年から始めたキックボクシングがスタートだが、野上会長は「彼女が小さい時から見てきた。思い切りのよさは持っている。ジムに初のベルトをもたらしてほしい」。子ども時代から目をかけてきた吉川だけに、思いも期待も深い。

アジア王者の先には当然、世界王者を見据える。師弟で女子世界王座を獲得すれば、もちろん日本初。吉川は「チャンスをもらえれば絶対にチャンピオンになりたい」と意気込む。

野上会長は17年4月にWBOフライ級のベルトを失った。負傷判定の悔しい結果でベルトを奪われた相手が、モンセラート・アラルコン(メキシコ)。現在もWBA世界女子アトム級王座に君臨する。

将来的に“愛弟子”吉川が、師匠の無念を晴らしにいく可能性もある。野上会長は「そうなったらドラマすぎますね。ぜひ実現してもらいたい」とプロモーターの夫に圧をかけた。まさに家族のようなジムが、一丸の力で世界へ乗り出していく。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

WWEの世界

「妖艶女王」マンディ・ローズら所属のNXTの未来は?現場責任者トリプルHの“W杯”構想

NXT女子王者として君臨する「妖艶女王」マンディ・ローズ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved

<第44回WWEの世界>

WWEでロウ、スマックダウンに続く第3のブランド、NXTが7月以降、変わりつつある。22日(日本時間23日)には同ブランドとして22年初のプレミアム・ライブイベント、NXTハロウィーン・ハボック大会が米オーランドで開催される。9月に英ロンドンを拠点にしたNXT・UKが終了。来年にはNXTヨーロッパ設立が予告される。NXTを統括するショーン・マイケルズ(57)、WWEマットの現場責任者となるトリプルH(53)が計画するNXT構想に迫る。

◇  ◇  ◇  ◇

日米マットで活躍したリック・スタイナー(61)の息子となるブロン・ブレイカー(25)が王者、そして「妖艶女王」マンディ・ローズ(31)が女子王者に君臨しているNXTが変貌しつつある。育成部門とされながらも、現在はロウ、スマックダウン所属のレスラーも登場。「キング・オブ・ストロングスタイル」中邑真輔(42)も3年ぶりにNXTマットに立った。を現在はUSAネットワークで毎週水曜日に生中継されており、人気ブランドとなっている。

12年、トリプルH肝いりで設立され、第3ブランドとして世界各国の団体からのトップレベルの選手を獲得。レベルも上がった。21年には「NXT2.0」としてリニューアルされ、育成重視になったと思われたが、今年7月にビンス・マクマホン会長兼CEOが引退表明した後、再び「NXT」に戻っていた。

現在、NXTの現場を仕切るのはWWEでトップスターとして活動した「HBK(ハートブレイク・キッド)」が愛称のショーン・マイケルズとなる。16年にWWEの「道場」パフォーマンスセンターでトレーナーとして働き始め、18年にNXTプロデューサーに就任。米メディアのインタビューでマイケルズは「NXTからNXT2.0となり、そして現在、そのハイブリッドになった」と進化の様子を口にした。

さらに「WWE、レスリングビジネス全体が楽しさ、エンターテインメントに戻ろうとしている。将来、ロウやスマックダウンのレスラーとなる選手を育成することに興奮している」と付け加えた。1度はロウに“昇格”したローズがNXTに戻った後に人気が高まったような例もあり、ファンはNXTがロウ、スマックダウンと並ぶブランドと認識しているほどだ。

現在、NXTのさらなる育成マットとなる「NXTレベルアップ」が誕生。今月には「NXTデッドライン」という商標が登録されるなどブランド内でレベル分けが始まるムードがある。さらにマクマホン氏に代わり、WWEの全現場を統括する立場となったトリプルHはNXTの世界的な拡大を計画。NXT・UKの終了と同時に来年のNXTヨーロッパの設立を発表し「NXTヨーロッパを世界中にもたらすことが意図。NXTオーストラリア、NXT南アフリカ、南米、メキシコ…これらがすべてW杯のようなシステムにしたい」との構想を明かした。

「W杯」と呼称するだけに、世界一を決めるプランとなる。トリプルHは「NXTのW杯決勝があり、ある年はロンドン、翌年にメキシコシティーで開催されるかもしれない」とのビジョンまで明かした。来年30周年を迎えるロウ、24年目に突入しているスマックダウンという歴史の長いブランドを伝統的に継続。と同時に、設立10年が経過したNXTを米国以外で盛り上げるイメージは膨らむ。いずれ日本、インドなどアジアと広がる可能性もあるだろう。来年以降のNXTにも目が離せなくなりそうだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

NXTを統括する「HBK」ショーン・マイケルズ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved
大相撲裏話

九州場所で31年ぶり“珍事”も…全場所で異なる優勝力士 横綱、大関が引っ張るV争いが見たい

1年納めの九州場所が11月13日から始まる。力士にとっては、2カ月に1度は本場所が開催されるサイクルなのだから、1年で何かを区切るということはないかもしれない。私たちのように、1年全ての場所に立ち会ってきた報じる側も、同じような感覚だが、時代の流れをくみとる上で「この1年」と区切って振り返るのも悪くはない。何せ九州場所の結果次第では、31年ぶりの珍事が起こるかもしれない“混戦ぶり”なのだから…。

若隆景(22年7月撮影)

関脇御嶽海の3度目の優勝で始まった2022年。場所後に大関昇進を決め、大関初陣も11勝を挙げ「さあ横綱への足固め…」と思いきや、肩のケガもあってその後の低調ぶりは周知の通り。納めの場所が大関復帰挑戦の場所になろうとは誰が想像しただろうか。その春場所は新顔が賜杯を抱いた。新三役の関脇若隆景が高安との優勝決定戦を制し、出身地の福島に光を当てた。休場明けの照ノ富士が横綱の面目を保ったのが夏場所。中盤からの7連勝で、何とか優勝ラインを12勝でキープした。休場明けといえば名古屋場所の逸ノ城も同じ。前場所をコロナで全休したが、フタを開ければ怪力復活を見せつけ若隆景同様、初優勝をもぎ取った。記憶に新しい秋場所は「鉄人」玉鷲が、突き押しのパワーさく裂で2度目の優勝を果たした。

もうお分かりでしょう。今年はここまで、全ての場所で優勝力士が異なっている。仮に納めの九州場所で前述の5人以外が賜杯を抱くことになれば、年6場所制となった1958年(昭33)以降、3度目の“混戦イヤー”となる(別表<1>)。

別表<1>年6場所で全て異なる優勝力士輩出

最初が今から50年前の72年で、当時の在位とのちの昇進を含めれば横綱3人(北の富士、琴桜、輪島)が名を連ね、名脇役といえる3人(栃東、長谷川、高見山)が賜杯を抱いた。

2度目は31年前の91年。30代に足を踏み入れた私も相撲担当を拝命していた時代で、記憶に残っている。この時は2場所連続で佐渡ケ嶽勢(琴富士、琴錦)の平幕優勝こそあったが、現役終盤ではあっても横綱、大関陣が互いの意地をぶつけ合い横綱北勝海(現八角理事長)ら4人(ほか旭富士、霧島、小錦)がメンツを保った。

仮に今回、3度目の珍事となった場合、過去2度と比べると少々、物足りなさを感じる印象だ。横綱、大関陣で照ノ富士しか名を連ねていないこと、近い将来の横綱、大関をうかがえる力士が果たしているのかを考えると…。現状では辛うじて若隆景がその候補の1人で、その若隆景に非は全くないのだが、明るい未来を描くには心もとないのが現状の勢力図だ。豊昇龍、霧馬山、琴ノ若、隆の勝、明生…ら有望力士として名前は挙がるが、壁を突き破るまでには至っていないのが現状だ。

そんな兆候は、ここ数年に見られる傾向だ。今から2年前も同じように、優勝力士の顔ぶれがコロコロ変わった。この年は5月の夏場所が、新型コロナウイルスの感染拡大で開催が中止され「年5場所」となったため前述の珍事は起こらなかったが、5場所全てで優勝力士が変わった。また、横綱白鵬が引退前の約5年間は休場が繰り返されたが、その休場場所では初優勝力士の誕生や平幕優勝が続出した。その頃から角界の現状を言い表す「過渡期」という言葉は、今も続いているように思う。

優勝力士の顔ぶれが多彩なのは、それはそれで優勝争いが盛り上がる上で悪くはない。ファンによって「推し力士」が分かれるのは、多様化の時代にあって健全な姿かもしれない。ただそれも「番付社会」にあっては、強い横綱、大関が壁となって立ちはだかり、その壁を突き破ってこそ価値も上がろうというもの。ここ数年は場所の中盤にして「今場所は優勝ラインが11勝に下がるんじゃないか」と心配することが多い。やはり強い横綱、大関が引っ張る、ハイレベルの優勝争いが見たい。秋場所の優勝を決める千秋楽の玉鷲-高安戦は、本来の番付順では幕内前半戦に組む割を後半に回したと聞く。審判部の苦肉の策がなければ、千秋楽の後半戦が“消化試合”の様相を呈したと思うと寂しい限りだ。

31年ぶりの“珍事”となるか、回避されるのか-。その結果は九州場所で出る。過去、初場所から秋場所までの5場所全てで異なる優勝力士を輩出したが、最後の九州場所で年間複数回優勝力士が出た例は、別表<2>のように3例ある。

別表<2>初~秋場所まで異なる優勝力士

いずれも珍事を回避したのは大鵬、曙、白鵬の横綱勢だ。その伝で言えば、両膝の状況次第というリスクをはらむが、照ノ富士が3場所ぶりの賜杯で横綱の意地を見せるのか。また、2度目の大関挑戦となる若隆景が足固めを2度目の美酒で飾るのか-。もちろん余勢を駆っての玉鷲、驚異の巻き返しで御嶽海、捲土(けんど)重来の逸ノ城も、珍事回避の担い手だ。

一方で、31年前の混戦イヤー再現に手ぐすね引く力士が出現するのも、活性化の上で悪くはない。過去2度の12場所中、4人が名を連ねた佐渡ケ嶽勢の再現となれば琴ノ若など、そろそろ大化けしてもいいだろう。土俵を所狭しと動き回る翔猿などが旋風を巻き起こしても面白い。もちろん、2年前に優勝を果たした貴景勝が、番付上位の意地を見せてくれるのもいい。どちらに転んでも千秋楽の、これより三役で決まるようなハイレベルの優勝争いに期待したい。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

御嶽海(22年7月13日撮影)

逸ノ城(22年7月15日撮影)

照ノ富士(2022年9月13日撮影)

玉鷲(2022年9月23日撮影)

原功「BOX!」

井上尚弥対バトラー、4団体王座統一戦12・13決定 2度の“すれ違い”経て実現

バンタム級のWBAスーパー、WBC、IBF王者の井上尚弥(29=大橋)とWBO王者のポール・バトラー(33=英国)が12月13日、東京・有明アリーナで4団体王座統一戦として拳を交えることになった。

直接対決は今回が初めてとなる両者だが、実は過去に2度の“すれ違い”があった。

井上がバンタム級に転向したのは2018年5月25日のこと。東京でWBA王者のジェイミー・マクドネル(英国)に挑戦して1回TKO勝ち、ライトフライ級、スーパーフライ級に続く戴冠で3階級制覇を達成した。

これより20日前の5月5日、バトラーはエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)の持つIBF世界バンタム級王座に挑戦するはずだったが、前日計量で1.5キロ近くも体重超過して失格。試合は行われたが、バトラーは初回に2度のダウンを奪われたすえ大差の12回判定負けを喫した。

この1年後、井上とロドリゲスは階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」の準決勝で対戦することになる。ここから先は「たら、れば」を繋ぎ合わせた強引な仮説になるが、もしもバトラーが規定体重でロドリゲスに勝ってIBF王者になり、かつWBSSに参戦していれば、その時点で井上とバトラーは対戦していた可能性があったことになる。

もうひとつは2019年5月18日、英国スコットランドのグラスゴーで行われた井上対ロドリゲスの王者対決の際、バトラーが同じイベントに出場していたという事実だ。この日、バトラーは引き分けを挟んで3連敗中のサルバドル・エルナンデス・サンチェス(メキシコ)と戦い6回KO勝ちを収めている。当時、バンタム級でIBF3位にランクされていたバトラーが井上対ロドリゲスに興味を抱いていないはずはなく、会場のどこかで頂上対決を凝視していたものと思われる。もしかしたら記者会見や前日計量の際、井上とバトラーはすれ違っていた可能性もあるわけだ。当時のことに関して井上は「バトラーも出ていたんですか? 知らなかった」と話している。そもそも井上がバトラーの存在を意識するようになったのは、バトラーがジョンリエル・カシメロ(フィリピン)の持つWBO王座に挑戦することが決まったころ(2021年秋 ⇒ 2022年4月に延期 ⇒ 中止)だったというから、3年半前の時点で気にしていなかったのも当然といえよう。

2度の“すれ違い”を経て実現することになった井上対バトラーの4団体王座統一戦。オッズは25対1で圧倒的に井上有利と出ている。バトラーの勝利は20倍の配当になっているほどだ。それでも井上は「いつものように相手を過大評価して、自分が圧倒的不利だとイメージして(練習に)入っていく」と気を引き締めている。

ますます2カ月後の試合が楽しみになってきた。

リングにかける

井上尚弥の強さ浮き彫り 井上に負けたロドリゲス、モロニーが次期挑戦権獲得も再戦を望まず

ロドリゲス(右)をパンチでのけ反らせる井上(2019年5月18日撮影)

海外リングでプロボクシングWBAスーパー、WBC、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)の「次期挑戦者」たちが決まった。

15日(日本時間16日)に米ニューヨークで、元IBF世界同級王者で同級6位のエマヌエル・ロドリゲス(30=プエルトリコ)が、同級4位ゲリー・アントニオ・ラッセル(29=米国)とWBA、IBF世界同級挑戦者決定戦に臨み、10回0分2秒、負傷判定勝利を挙げた。8月のラッセル戦は1回の相手バッティングで無効試合となり、今回も相手の頭直撃でカットし負傷判定となったものの、試合内容はロドリゲスが圧倒。9回にはダウン寸前まで追い込んでいた。

ロドリゲスは19年5月、階級最強を決めるトーナメント、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ準決勝で当時のWBA正規王者井上尚弥(29=大橋)に2回TKO負けを喫して王座陥落。18年5月にはポール・バトラー(33=英国)とのIBF世界同級王座決定戦で判定勝利を収めている。対戦した2人が12月13日、東京・有明アリーナで4団体王座統一戦で拳を交えることが決まった。ラッセル戦前、ロドリゲスは「バトラーが井上と5回も持つとは思えない。井上は私が今まで対戦した中で最高のファイターだ」と褒めちぎった。

WBAスーパー、IBF王座はともに井上が保持しており、ロドリゲスは再戦の権利を得たことになるが「井上はバトラーに勝てば階級を上げると信じているので、世界王座を狙っていきたい」との見通しを明かした。強豪ラッセルに快勝したロドリゲスだったが、井上との再戦を望まず、王座返上を待つ姿勢を貫いた。

さらに16日にはオーストラリア・メルボルンでWBC世界同級挑戦者決定戦も開催された。同級1位ジェーソン・モロニー(31=オーストラリア)が同級2位ナワーポン・ソールンビサイ(31=タイ)と対戦し、3-0の判定勝利でWBC同級挑戦権を獲得した。タフなナワーポンに対し、ボディー攻撃や手数で攻め続けて試合の主導権を握り続けた。

20年10月、米ラスベガスで井上に7回KO負けした後から再起し、再び王座挑戦できるランクまで浮上してきたモロニーは試合後に「井上がどうするか様子を見たい。彼はスーパーバンタム級に上げるようだ。だからWBC王座は空位になるだろう。それが私の夢だ。次はWBC世界王座だ」とロドリゲスと同様、モンスターの王座返上を待つ姿勢を示した。

バンタム級世界王座の次期挑戦者決定戦で、勝者はいずれも井上が撃破した相手だった。いずれも快勝したロドリゲス、モロニーの次期挑戦者2人が再戦を望まず、王座返上を待っていることが、あらためて井上の強さを物語る。バンタム級の世界上位ランカーたちも井上の4団体王座統一を信じて疑っていない。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

大相撲裏話

気になる“くにもん”新十両・対馬洋「幕内、三役を目指していきたい」ご当地九州場所から飛躍

9月28日、新十両会見を行う対馬洋と師匠の境川親方

大相撲の館内アナウンス。力士を呼び上げる際、所属部屋とともに「○○出身」が紹介される。同郷を示す「くにもん」という言葉があるように、同じ地元出身の力士に相撲ファンは熱い視線を注ぐ。

ちなみにこの原稿を書いている記者は長崎市の生まれ。報道する公平であるべき立場ではあるが、やはり「くにもん」は気になる。

秋場所では長崎・平戸出身の22歳、平戸海が新入幕を果たした。若者らしい、立ち合いから思い切りのいい相撲で初日から3連勝と場所を盛り上げたが、4日目に千代翔馬の立ち合い変化を食らってから少し歯車が狂った。千秋楽に残念ながら負け越しとなったが、楽しみな将来性は示した。苦い経験を糧に必ず、幕内上位で活躍してくれると思っている。

そして九州場所(11月13日初日、福岡国際センター)で、同じ境川部屋の対馬洋(29)が新十両昇進を果たした。秋場所は東幕下4枚目で5勝2敗。何度も幕下10枚目内で関取昇進のチャンスを得ながら、つかめなかった関取の座。新十両会見では「まだ実感がわいていない。ふわふわした感じです。自分が今場所できることはすべてやった。結果だけをドキドキしながら待っていました。師匠の口から昇進したと聞き、すごくうれしかったです」と心からの喜びを語った。

しこ名から長崎・対馬の出身かと思ったが、諫早市で両親が対馬の生まれという。さらに大正時代に出羽海部屋で大関として活躍した「対馬洋弥吉」にちなむ。師匠の境川親方(元小結両国)は「最初は(元大関が)おじいさんだかひいじいさんとか思っていたが、調べたら違った」と裏話を明かした。血縁こそないが対馬洋は「(しこ名は)大きいと思いました」と励みにしてきた。

元大関は資料によると190センチ台の長身ながら体重は100キロを少し超えた細身。しかし、つり技を得意にするなど取り口は豪快だったという。現代の対馬洋も身長は185センチだが、体重は130キロ台後半と大きくはない。「精神的にも肉体的にも強い力士になりたい」と先人に学ぶところは多い。

日大で東日本学生相撲選手権優勝などの実績を残した。しかし4年時に左膝に大けが。16年夏場所で初土俵も、左膝のけがのため全休と異例の事態から大相撲人生がスタートした。

初土俵では1場所“兄弟子”だが、年はかなり下の同郷、平戸海は「気になる存在」だ。これからは稽古場で同じ白まわし。切磋琢磨(せっさたくま)してともに番付を上げていきたい。

境川親方は「運動神経がいい。スピード感がある。最後の最後まであきらめない」と素質を評価する。その言葉を受けた対馬洋は「気合を入れて、相撲に向き合っていきたい。これから番付を上げて幕内、三役を目指していきたいです」と意気込みを語った。ご当地九州場所が“出世の階段”への入り口となる。

さてあなたの「くにもん」は? 調べてみると相撲観戦の楽しみの幅が増えること必至です。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

対馬洋(2021年11月26日撮影)
原功「BOX!」

ウェルター級4団体王座統一戦スペンス対クロフォード、暗礁に乗り上げる 半年以内に実現するか

ウェルター級のWBA、WBC、IBF王者、エロール・スペンス(32=アメリカ)対WBO王者のテレンス・クロフォード(35=アメリカ)の4団体王座統一戦は当初、11月19日にアメリカのネバダ州ラスベガスで行われる計画だったが、契約の詰めの段階に来て暗礁に乗り上げたと伝えられる。まだぎりぎり年内開催か来年1月か2月に開催の余地はありそうだが、先行きは不透明になってきた。

5年前にIBF王座を獲得し、2019年にWBC王座、今年4月にWBA王座を吸収したスペンスは28戦全勝(22KO)の戦績を誇る。アマチュア時代には2012年ロンドン五輪にも出場しウェルター級でベスト8入りを果たしており、10年以上もエリート街道を走り続けてきたことになる。身長177センチ、リーチ183センチと体格にも恵まれた万能型サウスポーで、「THE TRUTH(本物)」と呼ばれる。

一方のクロフォードはライト級時代にWBO王座を獲得し、2度防衛後に返上。転向したスーパーライト級では主要4団体王座を統一するなど通算6度の防衛を記録した。この王座も返上してウェルター級に転向し、初戦で現在の王座を獲得して5度防衛中だ。構えを左右に変えるスイッチヒッターで、38戦全勝(29KO)の戦績を残している。ライト級から上げてきたこともあり身長173センチと決して大きくはないが、直近の5年間で世界戦9連続KO勝ちと手の付けられない強さを見せつけている。

ちなみにボクサーの強さ指標ともいえるアメリカのリング誌の「パウンドフォーパウンド」ではクロフォードが3位、スペンスが4位にランクされている。

そんな両雄の直接対決はクロフォードが3階級制覇を果たした4年前から期待されてきたが、プロモーターが異なるため交渉は一向に進まないまま時間だけが無為に過ぎていった。しかし、昨年11月にクロフォードがトップランク社を離れてフリーになったことで両陣営は急接近。この夏には「11月19日、ラスベガス開催で基本合意」と報じられた。あとは細かな部分を詰めて発表-と思われた。

ところが、以後は情報が途絶え、最近は「11月19日開催はなくなった模様」と複数のメディアで報じられている。報酬面で折り合いがつかなくなった、再戦条項に関する意見が食い違っている、などと推測が飛び交っているが、真相は不明だ。

こうしたなかIBF1位にランクされるジャロン・エニス(25=アメリカ)が指名挑戦権の行使を主張し、スペンスへの挑戦をアピールするのではないかともいわれている。“三角関係”になってスペンス対クロフォードは先送りという可能性も出てきたわけだ。エニスは30戦29勝(27KO)1無効試合の戦績を残しているスラッガーで、身長178センチ、リーチ188センチと体も大きくて勢いがある。スペンス、クロフォードどちらと戦っても勝つ可能性を持っているスター候補だ。

待望のスペンス対クロフォードは半年以内に実現するのか、あるいは先にスペンス対エニスが行われることになるのか、そして勝者がクロフォードとの統一戦に臨むことになるのか-。ウェルター級戦線、場外戦の行方に注目したい。

リングにかける

細川バレンタイン氏がエンタメ色強める格闘技界に警鐘「競技の価値を下げかねない」

笑顔でポーズを取る細川氏(撮影・勝部晃多)

プロボクシング元日本スーパーライト級王者で、昨年7月に現役を引退した細川バレンタイン氏(41)が、日刊スポーツを通し、エンターテインメント色に傾く現在の格闘技界に警鐘を鳴らした。

先月25日に行われた格闘技イベント「超(スーパー)RIZIN」で行われたボクシングに準じたエキシビションマッチでプロボクシング元世界5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(45=米国)と対戦した総合格闘家の朝倉未来(30=トライフォース赤坂)を、「ぜんぜん相手にならなかった」と辛口評価。現状のままでは、格闘技界の発展はないと一石を投じた。

◇   ◇   ◇

世界50カ国以上に配信された「超(スーパー)RIZIN」では、人気総合格闘家がボクシング界のレジェンドに対し、相手の土俵に立って「挑戦」するという構図が話題を呼んだ。試合では朝倉がメイウェザーの顔面にパンチを当てるなど、善戦。2回終了間際にメイウェザーのカウンターの右ストレートでTKOを喫したものの、朝倉の世間の評価は高まった。

だが、細川氏の意見は異なるものだった。

「たいていの人間は最後のKOで倒れたところだけを見て『やっぱりメイウェザーだ』と思っていると思うんですけど、パンチの当たり方、それまでの持っていき方…。はっきり言ってボクサーやジャッジしている人たちからしてみると、朝倉は相手になっていなかった」と言い切った。

そして「もし3ラウンド戦いきっていたら(世間に)『互角に戦った』と思われていたわけですよ。そうならなくて本当によかった。メイウェザーはよくやってくれた」と、ため息をもらした。

なぜ、こうまで言うのか。細川氏は、運営がボクシングに対するリスペクトを欠いていると主張する。

「ある意味、彼らがやろうとしていることは、『自分の競技でもないボクシングを片手間でやってもこんなにできるんだよ』というのを見せつけることですよね」

確かに、エキシビション戦(非公式試合)であるにもかかわらず、運営側もメディアも「真剣勝負」「世紀の一戦」といったように大々的なプロモーションを行った。細川氏は、そういった行為に対し、「競技の価値を下げかねない」と非難。「あれはただのショー。本来であればそのように伝わらないといけない」と、不快感をあらわにした。

もちろん、細川氏に朝倉やRIZINをおとしめようという魂胆があるわけではない。「RIZINもあんなことができるんだからすごい」「朝倉選手は本当にすごいと思う。当てることのできる日本のボクサーは何人いるの?」と、一定の評価を下した。だが、このままでは格闘技界の発展はないと断言する。

「こういった(否定的な)意見を言うと、必ず『アンチだ』とたたかれてしまう。白か黒か、ゼロか100かでしか物事を見られない人が多い。でも、それはおかしいと思う。格闘技界も、今回のようなプロモーションを続けることで、結果的に競技をしりすぼみにさせていると思います」。

ボクシング、格闘技への愛ゆえ、その訴えには熱がこもっていた。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

◆細川バレンタイン(ほそかわ・ばれんたいん)1981年(昭56)4月16日生まれ。宮崎県宮崎市出身。06年に宮田ジムからプロデビュー。16年に角海老宝石ジムに移籍。17年に4度目となるタイトル挑戦で日本王座を獲得するなど活躍した。昨年7月に引退。現役時代から外資系金融機関で働くなど、“インテリ”ボクサーとして注目を集めており、現在は不動産賃貸事業や宿泊事業、ユーチューブなど、さまざまな分野で幅広く活動。ユーチューブチャンネル「前向き教室」では、歯に衣(きぬ)着せぬ発言で人気を博している。https://www.youtube.com/channel/UCRKutOrnx5S0tTxUR_wNYqA

10年、現役時代の細川バレンタイン氏
WWEの世界

解雇された巨獣、紫の妖精、夫婦ユニットらがトリプルH新体制で次々と復帰

<第43回WWEの世界>

WWEマットはビンス・マクマホン会長&CEO(77)の引退後、トリプルH(53)がクリエーティブ部門と選手関連部門の現場責任者に就任した。20~21年まで新型コロナウイルスの影響による経費削減のために選手、スタッフら100人以上が解雇&契約満了となったが、新体制移行とともに退団した選手たちが復帰している。第43回「WWEの世界」は10月1日現在でWWEにカムバックした主要メンバーたちの現状をまとめた。

  ◇  ◇  ◇  ◇

<1>ブラウン・ストローマン(39) 最高位王座の1つ、WWEユニバーサル王座も獲得し、「巨獣」の愛称を持つ人気レスラーだったが、昨年6月に突然、解雇。他団体と契約することなく、今年9月5日のロウ大会から電撃復帰。チャド・ゲイブル、オーティスのユニット「アルファアカデミー」らと標的に大暴れしている。

元WWEユニバーサル王者の「巨獣」ブラウン・ストローマン(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<2>カリオン・クロス(37)&スカーレット夫人(31) WWE傘下のNXTでNXT王座2度の戴冠した実力派。ルーマニア系米国人のスカーレット夫人をセコンドにつけた人気夫婦コンビだったが、昨年11月に解雇。その後、「キラー・クロス」のリングネームで米団体MLWや新日本プロレスの米マットに参戦していたが、今年8月5日のスマックダウン大会で電撃カムバック。WWEヘビー、ユニバサール統一王者ローマン・レインズや元WWEヘビー級王者ドリュー・マッキンタイアと抗争を繰り広げ、最高位シングル王座獲得を狙う。

カリオン・クロス(左)とスカーレット(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<3>ダコタ・カイ(34) NXTを主戦場にしていたが、今年4月に解雇を通達。WWEマットから去ることになったが、今年7月に再契約し、ベイリー、イヨ・スカイ(紫雷イオ)との3人ユニット「ダメージCTRL(コントロール)」を結成。先月にはスカイとのコンビでWWE女子タッグ王座を獲得するなど勢いづく。現在はロウ女子王者ビアンカ・ブレア、アスカ、アレクサ・ブリスらと抗争を繰り広げる。

ベイリー(左端)、イヨ・スカイ(右端)とユニットを組むダコタ・カイ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<4>ジョニー・ガルガノ(35) 16年にWWEと契約を結び、参加のNXTを主戦場としていたが、昨年12月に解雇された。8月22日のロウ大会で約9カ月ぶりに復帰し、NXT時代に盟友だったオースティン・セオリーに牙をむいている。

ジョニー・ガルガノ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<5>キャンディス・レラエ(37) ガルガノの妻で今年2月に第1子が誕生した後、同5月にWWEと契約満了。そのまま退団となっていたが、9月26日のロウ大会で再登場。背中に羽根がはえた「紫の妖精」コスチュームで入場し、復帰戦ではニッキー・A.S.Hを「102秒殺」した。

「紫の妖精」キャンディス・レラエ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

<6>ヒットロウ “トップ・ドラ”AJ・フランシス、アシャンテ・ジー・アドニス、女子レスラーのF-FABの3人組ユニット。NXTで人気アップし、昨年10月にWWEドラフトでスマックダウンに昇格したものの、翌11月に急きょ解雇の憂き目に。米団体GCWなどに出場していたが、8月13日のスマックダウン大会で再びカムバック。ノリの良い男女ユニットがマットに熱を与えている。

アシャンテ・ジー・アドニス(左端)、B-FAB(中央)、トップ・ベラ・AJフランシスによるユニット「ヒットロウ(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved.

トリプルH新体制で次にカムバックする大物として注目されているのが、“ザ・フィーンド(悪霊)”として人気レスラーだった元WWEユニバーサル王者ブレイ・ワイアット(35)だろう。21年4月のレッスルマニア37大会でランディ・オートン戦を最後にマットを離れ、同年7月にWWEを解雇。今だ他団体にも出場していない。

海外メディアのインタビューで、トリプルHは「私が今まで出会った中で最もクレイジーでクリエーティブ人の1人」と怪奇的かつ、独創性のあるレスラーとして高く評価している。またWWE女子タッグ王座を巡る問題で退団したサーシャ・バンクス、ナオミ組の復帰も期待されている。現在、解雇されたレスラーたちの復帰劇もWWEファンにとって大きな注目となっている。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

大相撲裏話

「手押し相撲界の横綱を目指せるかも」親方に2連勝&ちゃんこ三昧で大盛況の感謝祭楽しむ

手押し相撲で元幕内誉富士の楯山親方(右)を下す平山記者

6、7日と東京・両国国技館で行われた大相撲のファン感謝祭は、2日間で計約9000人を動員した。降りしきる雨や冷たい風に悩まされる悪条件の中でも、関取衆と親方衆を巻き込んだ魅力ある企画が盛況につながった。来場客の笑顔と陽気な声が会場内の至る所から聴こえてきた。取材する記者も楽しんだ。

仕事が一段落した最終日の夕暮れ時。手押し相撲コーナーに並んで、元幕内誉富士の楯山親方と対戦した。土俵シートの真ん中で見合うと、180センチ、100キロ超の体は親方と全く遜色ない。イケる! そう心の中で自分にハッパをかけた直後、親方が視界から消え、鋭い立ち合いからもろ差しを許すと、なすすべなく土俵外へと追いやられた。手押し相撲だと思っていたので出遅れたにしても、やはり相撲では全く歯が立たない。

ただ、手押し相撲は違う。実は記者、この競技で負けたことがほとんど記憶にない。両膝をほんの少し曲げてバランスを取りつつ、相手が仕掛けたところでカウンターをお見舞いする戦法。サッカーと山登りで鍛えてきた足腰が自慢で、小学校、中学、高校、大学と連戦に連戦を重ねて数々の白星をつかんだ。

楯山親方との一番でも、その力を存分に発揮した。2連勝。勝ち名乗りを受けても土俵から下りず、後ろで並んでいたファンを少し待たせてしまうほど喜んでしまった。当然、親方は手加減してくれているだろう。それでも親方と手押し相撲ができたこと、奇跡的に2連勝で締めくくれたことは自分がファン感謝祭に参加した思い出として、一番心に強く残った。

そばで見ていた人たちからもたたえられ、「手押し相撲界の横綱を目指せるかもしれない!」と調子に乗るほど上機嫌。終わったあとにはちゃんこグランプリに出場した3部屋のちゃんこを食べて、大満足の2日間になった。

実行委員長で事業部長の陸奥親方(元大関霧島)は「今のお相撲さんは、ファンサービスがうまくて優しいね。たくさん来てホッとした」。17年ぶりの感謝祭。次回はどんなかたちで行われるのか。開催が待ち遠しくなった。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

ファン感謝祭で販売されたちゃんこ(撮影・平山連)
原功「BOX!」

ライト級4団体統一王者ヘイニーが前王者カンボソスと4カ月ぶり再戦 存在感示す結果出せるか

スター選手が揃うライト級の4団体統一王者、デビン・ヘイニー(23=アメリカ)が16日、オーストラリアのメルボルンで前王者のジョージ・カンボソス(29=オーストラリア)の挑戦を受ける。両者は今年6月5日に対戦し、そのときはWBC王者のヘイニーがWBAスーパー、WBCフランチャイズ、IBF、WBOの4王座を持っていたカンボソスに12回判定勝ちを収めている。4カ月の短期間で行われる直接再戦はヘイニーが圧倒的有利とみられている。

ヘイニー対カンボソスの初戦はメルボルンのマーベル・スタジアムに4万人超の観衆を集めて行われた。カンボソスは地元ファンの期待に応えようとしたが、闘志が空転。ヘイニーのスピードとテクニックの前に見せ場をつくれないまま敗れた。採点は118対110がひとり、116対112がふたり、完敗といえる内容だった。プロ21戦目にして初の敗北(20勝10KO1敗)を喫し4本のベルトを失ったカンボソスだが、意気消沈している間もなくダイレクト・リマッチを要求。初戦の際の契約に基づいて今回の試合が行われることになった。

再戦はメルボルンのロッド・レーバー・アリーナで行われる。集客数は約1万5000人で、マーベル・スタジアムの3分の1程度となる。これがそのままカンボソスに対する地元の期待度ということになりそうだ。初戦はヘイニー有利のオッズだったが5対4と接近。しかし、今回は8対1と大差がついている。「両者の力関係は初戦で証明済み」という見方が多いようだ。28戦全勝(15KO)のヘイニーが冷静にカンボソスの動きを見極めてテクニックでコントロール、ポイントを積み重ねていく可能性が高い。

今回の再戦よりも、むしろファンや関係者の関心はヘイニーの近未来、つまりいつ元王者のワシル・ロマチェンコ(34=ウクライナ)やWBAレギュラー王者のジャーボンテイ・デービス(27=アメリカ)と戦うのかという点に移っている感がある。そのためにもヘイニーは存在感を示す内容と結果を出す必要があるといえる。

この日は前座でWBC世界バンタム級挑戦者決定戦、1位のジェイソン・マロニー(31=オーストラリア)対2位のナワーポン・ソールンビサイ(31=タイ)の12回戦が組まれている。いうまでもなくWBCの世界バンタム級王者は井上尚弥(29=大橋)だが、この試合の勝者が井上に対する最優先挑戦権を手にするというわけだ。ただし井上は12月にWBO王者のポール・バトラー(33=英国)との4団体王座統一戦が計画されており、その試合後にスーパー・バンタム級に転向することが既定路線となっている。2年前、井上に7回KOで敗れたマロニーが悲願の戴冠に王手をかけるのか、それとも58戦56勝(46KO)1敗1分の戦績を誇るナワーポンが初の国外試合で力を発揮するのか。メインともどもメルボルンから届く結果を楽しみに待ちたい。

リングにかける

今思えば猪木さんらしく思える 03年「猪木祭」“惨敗”後に披露した凡人には理解不能な謎の一句

「神戸ルミナリエ」会場付近でマイクを持ちイノキボンバイエをアピールするアントニオ猪木さん(2003年12月25日撮影)

アントニオ猪木さんが亡くなった。1日に79歳で、心不全だった。

大病を患い、その闘病中の様子も映像などで見せていた。弱々しい姿を隠すことなく、おそらくその後に復活する元気のいい姿を想定していたのだと思う。実際、再び元気になった姿を映像などを通じて見せてくれていた。その直後の訃報に驚きだが、亡くなる間際まで自己プロデュースにたけた人だったのだと、あらためて思う。

猪木さんとは間接的を除けば、かかわりは多くない。直接的には19年前までさかのぼる。03年の年末。当時は格闘技ブームで、テレビ各局による大みそかの「視聴率バトル」の展開となっていた。

TBS系がK-1、フジテレビ系がPRIDE。その先行2大イベントに勝負を仕掛けたのが猪木氏が手がける日本テレビ系の「猪木祭」だった。

舞台は神戸ウイングスタジアム(現ノエビアスタジアム神戸)で、そのPR活動に密着した。先行する2大格闘イベントにより、とにかく選手集めに大苦戦した。約1週間前の会見で猪木氏は「選手が決まんねーんだもん、なかなか。31日までギリギリの勝負だ」と本音をもらした。リング上での勝負よりも、立たせるまでの“大戦争”が舞台裏で繰り広げられていた。

猪木氏の行動力はさすがだった。PRのために神戸市内中を行脚。当時、最も人が集まるイベント「ルミナリエ」の会場にもゲリラ的に登場。「猪木祭に来てくださーい」と声を張り上げた瞬間、警備員が飛んでくるとそそくさ退散した。

カード決定が、遅々として進まない中、猪木氏は語った。「(神戸に)波を起こしに来たんだ」。イベントの成功へ、他人に頼らず自ら突破口を開こうとした。神戸から波を起こせば何かが起きる。「迷わず行けよ 行けば分かるさ」そのものの生きざまだった。

結果的に「猪木祭」は視聴率争いで惨敗した。その結末がうっすら見えていても、猪木氏は全力で盛り上げるために身を注いだ。

神戸の会場での会見後、夕闇をにらみつけながら一句披露した。「暗雲たれこめ…何にしようかな、朝日が見えず、曙暮らしのボブ・サップ…」。凡人には理解不能な謎の句が、今思えば猪木さんらしく思える。あの世でもきっと「道」を貫くのだろう。合掌。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

猪木祭2003(イノキバンバイエ2003) 恒例のカウントダウン「ダー」をリング上で叫ぶアントニオ猪木さん(中央)(2003年12月31日撮影)
大相撲裏話

秋場所奮闘も苦難の場所…北勝富士“中日勝ち越し”もV争いの重圧かかり「あと7番もあるの?」

隆の勝(手前)と張り合う北勝富士(2022年9月17日撮影)

9月25日に幕を閉じた大相撲秋場所は、平幕の玉鷲が昭和以降最年長優勝を果たすなど鉄人ぶりを見せた。

横綱照ノ富士は途中休場し、大関陣や三役陣らは振るわず、平幕力士らが優勝争いを引っ張った。初優勝を狙う力士も多く、中でも初日から9連勝と勢いに乗っていた西前頭8枚目北勝富士(30=八角)の奮闘は目立った。

8日目に自身初の“中日勝ち越し”を決め、9日目にはここ直近の場所で存在感を出している若元春を下して9連勝とした。さぞ体の調子も良く、精神的に波に乗っているだろうと思い感想を聞くと「実は精神的にも肉体的にきつかった。勝ち越しなのに余裕がないというか」と振り返った。

意外な答えだった。連勝が続くと前向きな気持ちを口にする力士がほとんどなのだが、北勝富士はそうではなかった。では、なぜそう思ったのかを聞いた。

北勝富士 自分の場合はいつもなら11日目とか13日目とかぐらいに勝ち越しが決まる。連勝を続けるのは難しいし、場所終盤に何とか勝ち越せることが多い。だけど今回は初めて初日から8連勝して8日目に勝ち越しが決まった。だから「まだあと7番もあるの?」という気持ちになってしまった。やっぱり初日から当たり前のように連勝する横綱や大関のすごさを身に感じました。

どの力士も、まずは勝ち越すことを一番に考える。横綱、大関陣らはさらにその先の優勝争いを見据えて土俵に上がるだろうが、平幕力士はまずは勝ち越して番付を上げ、三役を目指す。もちろん、優勝を狙わない力士はいないが、やっぱりまずは勝ち越すことが大事だ。三役経験者の北勝富士も秋場所は平幕として臨み、返り三役に向けてまずは勝ち越し、というのが一番にあったはず。

そういった心境で臨み初日から9連勝した。自身最速で勝ち越しを決めたのは喜ばしいことだが、次にのしかかるのはいつ黒星を喫してしまうのかや、優勝争いへの重圧などだ。結果、初黒星を喫した10日目から3連敗するなどし、14日目に優勝争いから姿を消した。1つの目標である勝ち越しを決めたとは言え、北勝富士にとっては苦難の場所だったようだ。

しかし「今場所は勉強になりました。この年になっても学ぶことはまだあるんだなと思った」と1場所を通して、新たな発見があったという。強豪の埼玉栄高から日体大に進み、15年春場所で初土俵を踏んで7年。7月に節目の30歳を迎えた実力者の北勝富士は、秋場所の経験を糧に、さらなる高みを目指す。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

ユーバンク・ジュニア対ベン 親子2代にわたる壮大なライバル対決、どんな形で決着するか

元WBA暫定世界ミドル級王者のクリス・ユーバンク・ジュニア(33=英国)と、ウェルター級の世界ランカー、コナー・ベン(26=英国)が10月8日(日本時間9日)、英国ロンドンで対戦する。このふたりは、父親がともに元世界2階級制覇王者で1990年代前半に2度対戦したことがある。つまりユーバンク家とベン家は親子2代にわたってライバル関係にあるわけだ。親はユーバンクが1勝1分と勝ち越したが、はたして息子たちは?

父ユーバンクと父ベンは1990年11月に初対戦し、ユーバンクが9回TKO勝ちを収めてWBO世界ミドル級王座を奪い取った。最後は挑戦者のユーバンクが連打でレフェリー・ストップに持ち込んだのだが、それまではジャッジ二者が1ポイント差で王者のベン有利と採点していた接戦だった。1993年10月、ふたりは再び拳を交える。今度はユーバンクがスーパー・ミドル級のWBO王者、ベンがWBC王者として統一戦に臨んだのだ。結果は115対113(ユーバンク)、114対113(ベン)、114対114の三者三様のドローだった。この試合の観衆が4万7000人だったことでも両者の人気ぶりが分かるだろう。その後、ユーバンクはWBO王座の防衛回数を14まで伸ばしたが1998年に引退。ベンは9度防衛後、1996年の試合を最後に引退した。戦績はユーバンクが52戦45勝(23KO)5敗2分、ベンは48戦42勝(35KO)5敗1分。

そんな英雄ふたりの息子同士が対戦するのだから話題にならないはずがない。

ユーバンク・ジュニアは2011年11月にプロデビューし、2015年と2019年の2度、WBA暫定世界ミドル級王座を獲得している。自分から攻めて出るボクシングもできる一方、相手に攻めさせておいてカウンターを合わせる迎撃ボクシングもできる。ワンツー、左フック、右アッパーなどパンチは多彩だ。戦績は34戦32勝(23KO)2敗。現在は72.5キロが体重上限のミドル級でWBO2位、WBC3位にランクされている。

対するベンは2016年4月にプロデビューし、6年間で21連勝(14KO)をマーク。実績面ではユーバンク・ジュニアに及ばないが、2018年に獲得したWBAコンチネンタル王座を7度防衛中だ。特に直近の5試合は元世界王者ら強豪を相手に圧勝しており勢いを増している。卓抜したスピードと切れのあるワンツー、左ボディブローなどが主武器だ。66.6キロがリミットのウェルター級でWBAとWBOで4位、WBCとIBFで5位にランクされている。

本来ならばベスト体重が約6キロ異なるが、両者が歩み寄って157ポンド(約71.2キロ)の契約体重で試合が行われる。しかし、ユーバンク・ジュニアが身長180センチ、ベンが173センチと体格差は歴然で、実際にふたりが並ぶと一回り違う。それもありオッズは2対1でユーバンク・ジュニア有利と出ている。

「体重をつくることは厳しいが、それだけの価値がある試合だと思う。私にとって最も重要な試合」とユーバンク・ジュニア。ベンも「これは運命、避けては通れない戦い。タイトルやランキングは関係なく、私たちファミリーにとっては終わっていない試合なんだ」と父の仇討ちに意気込む。

親子2代にわたる壮大なライバル対決。どちらがどんなかたちでけりをつけるのだろうか。

大相撲裏話

宮城野部屋、朝稽古ならぬ夕稽古で下半身強化 現役時代から取り入れていた親方発案トレ早速効果

川副(手前)は切り返しで北天海を破り勝ち越しを決める(撮影・小沢裕)

外はやや薄暗い。時間は5時。午前、ではなく午後5時だ。宮城野部屋の力士らがまわしを締めて、8月からの新天地、旧東関部屋の稽古場で体を動かす。涼しい風を感じながら、朝稽古ならぬ、夕稽古で場所前に調整していた。

7月末に師匠になった宮城野親方(元横綱白鵬)の発案だ。同親方が現役時代から取り入れていた稽古方法。朝稽古とは別に実施し、主に下半身トレーニングを行う。朝稽古後の午後にジムなどでトレーニングを行う力士は多くなってきたが、部屋の稽古場で体を動かすのは珍しい。30キロのサンドバッグをかついで土俵を歩くなど、出身のモンゴル式ともいえるメニューで下半身をいじめ抜いた。

若い力士を中心に早速、効果は現れている。序ノ口デビュー場所で優勝した大谷は「あのトレーニングを続けて下半身を強化したから、場所前の出稽古で幕下力士と相撲を取っても勝てた」と手応えを口にする。21年学生横綱で幕下15枚目格付け出しデビューの川副も、この日、7番相撲で勝ち越しを決めた。「場所前の師匠のトレーニングのおかげです」と話している。いきなり、指導力を発揮している。【佐々木隆史】

序ノ口優勝を決めた大谷(撮影・小沢裕)
入門会見で宮城野親方と握手する川副圭太(22年8月22日撮影)
WWEの世界

米マット席巻の統一王者ローマン・レインズ率いるユニット、ザ・ブラッドラインとは?

ローマン・レインズ(前列右)率いるユニット、ザ・ブラッドラインのメンバー。後列左からジェイ・ウーソ、ジミー・ウーソ、ソロ・シコア、サミ・ゼイン。前列左はポール・ヘイマン(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved

<第42回WWEの世界>

WWEヘビー、ユニバーサル統一王者ローマン・レインズ(37)率いるユニットが米マットを席巻している。そのユニット名はザ・ブラッドライン。血統を意味する名前の由来通り、レインズの親族を中心とした選手で構成される。ユニット顧問のポール・ヘイマン(57)を含めたレインズ一派のメンバーを同ユニットの歴史とともに紹介する。

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有名なプロレス一家となるアノアイ・ファミリーが結束したユニットがザ・ブラッドラインとなる。レインズがヒール転向した20年8月、ブロック・レスナーら数多くの人気レスラーのマネジャーやスポークスマンを務めてきたヘイマンを顧問として迎えたところからユニットは始まった。

◆ローマン・レインズ(37) ザ・ブラッドラインの設立者。20年8月、WWEユニバーサル王者ブレイ・ワイアット、ブラウン・ストローマンとの3WAY形式王座戦を制し、王座獲得。同王座を懸けて対戦したいとこのジェイ・ウーソを皮切りに、ジェイの双子の兄弟ジミー・ウーソも仲間に引き込んでユニットを拡大。王者としても22年4月、年間最大の祭典レッスルマニア38大会でWWEヘビー級王者ブロック・レスナーとの王座統一戦を制した。9月23日現在、ユニバーサル王座の保持期間は754日となる。

◆ジェイ・ウーソ(37) 20年9月、WWEユニバーサル王座挑戦権をつかみ、いとこの同王者レインズに挑戦したものの、陽動作戦にはまって連敗。レインズの軍門に降り「右腕」として活動開始した。ジェイがレインズへの忠誠心が強すぎた時期にジミーと意見相違で対立したものの、最終的に和解。21年7月にはレインズ、ジェイ&ジミーのウーソ兄弟、ヘイマンによる現在のユニットが誕生した。

◆ジミー・ウーソ(37) 21年7月にジミーがザ・ブラッドラインに加入し「ウーソズ」が再結成されると、すぐにジェイとタッグ戦線に殴り込みをかけた。21年7月、プレミアム・ライブイベント、マネー・イン・ザ・バンク大会でスマックダウン(SD)タッグ王者レイ・ミステリオJr.、ドミニク・ミステリオ組を下し、5度目のSDタッグ王座戴冠を果たした。22年5月にはロウ・タッグ王者ランディ・オートン、リドル組とのタッグ王座統一戦に勝利し、ユニットメンバー全員でシングル、タッグ両最高位王座を統一した。

◆ソロ・シコア(29) 「ウーソズ」の弟シコアは22年9月のWWE英国イベント、クラッシュ・アット・ザ・キャッスル大会で初登場。挑戦者ドリュー・マッキンタイアに苦戦した王者ローマン・レインズのセコンドとして姿をみせた。マッキンタイアを妨害し、レインズの王座防衛に貢献した。その直後のSD大会で新メンバーとして正式に紹介された。

◆サミ・ゼイン(38) 22年4月、マッキンタイアとの抗争を繰り広げる中でザ・ブラッドラインのロッカールームに入り込み、レインズとヘイマンに忠誠心をみせた。その後、ユニットの試合を支援し、ユニットのTシャツを着用。最終的にレインズの信頼を得た。所属メンバーの中でただ1人、血族ではない。

シングル、タッグのWWE最高位王座を独占し、今なおザ・ブラッドラインは勢力を拡大し続ける。盤石にも見える同ユニットだが、唯一の懸念材料は「裏切り」「造反」を得意とするお調子者のゼインの存在だろう。時にジェイとはリング内外で“内紛”を起こしている関係にある。ユニット内部崩壊の危機が漂うメンバー構成が、ファンの耳目を集めるという面白いユニットになっている。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

ザ・ブラッドラインのメンバー。左端からジェイ・ウーソ、ポール・ヘイマン、ジミー・ウーソ、ローマン・レインズ、ソロ・シコア、サミ・ゼイン(C)2022 WWE, Inc. All Rights Reserved