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au版ニッカン★バトル

原功「BOX!」

スーパー・ウェルター級4団体王座統一戦チャーロ対カスターニョ再戦迫る

スーパー・ウェルター級の4団体王座統一戦が14日(日本時間15日)、アメリカのカリフォルニア州カーソンのディグニティ・ヘルス・スポーツ・パークで行われる。WBA、WBC、IBFの3本のベルトを持つジャーメル・チャーロ(31=アメリカ)とWBO王者のブライアン・カスターニョ(32=アルゼンチン)が対戦するもの。両者は昨年7月に今回と同じ立場で拳を交え、打撃戦のすえ三者三様の12回引き分けに終わっている。ふたりとも「今度こそ」の思いが強いだけに今回も激闘になりそうだ。

10カ月前の初戦は「年間最高試合」の候補に挙がるほどの熱戦だった。序盤はチャンスとピンチが交互に訪れるスリリングな展開になり、中盤はカスターニョ、終盤はチャーロが支配するという試合だった。ややカスターニョ優勢かと思われたが、採点は117対111(チャーロ)、114対113(カスターニョ)、114対114で決着はつかなかった。ふたりとも「接戦だったが俺が勝っていた」という思いを抱いてリングを降りた。

試合後、両陣営は再戦に向けて交渉を開始。今年2月26日が候補日に挙がったが締結には至らなかった。このあと3月19日に試合日が決まったが、2月にカスターニョがスパーリング中に右の上腕二頭筋を痛めたため2カ月延期された経緯がある。チャーロは「ただ単に練習する時間が欲しかったんだろう」と負傷に対して懐疑的な見方をしている。真偽のほどは分からないが、すでに場外で心理戦が始まっているのは間違いない。

初戦は9対4でチャーロ株が高かったが、今回は3団体王者有利は変わらないものの11対8に差が縮まっている。前回はカスターニョの知名度不足がオッズに響いたようだ。

WBC世界ミドル級王者、ジャモール・チャーロの双子の弟としても知られるチャーロは身長180センチ/リーチ185センチと体格に恵まれ、階級随一のスピードを誇る。36戦34勝(18KO)1敗1分とKO率は決して高くないが、最近はパンチに鋭さが出てきた。

対するカスターニョはこの階級では身長171センチ/リーチ171センチと小柄だが、頑丈な体を利して相手に肉薄、回転の速い連打を叩きつける好戦的なスタイルを持つ。戦績は19戦17勝(12KO)2分。

距離を詰めないと仕事がやりにくいカスターニョは初戦同様、積極的にプレッシャーをかけていくものと思われる。これに対しチャーロがどんな選択をするかがカギといえる。意地とプライドを見せて打撃戦に応じるのか、それとも初戦の反省を生かしてスピードと足をつかってアウトボクシングをしようとするのか。いずれにしても一瞬も目の離せない試合になることは間違いない。

高度円熟期を迎えたカネロ・アルバレス 1階級上のライト・ヘビー級王座に挑む

現在のボクシング界で最も高い評価を受けているスター選手、サウル・カネロ・アルバレス(31=メキシコ)が7日(日本時間8日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでドミトリー・ビボル(31=キルギス/ロシア)の持つWBA世界ライト・ヘビー級スーパー王座に挑む。4階級制覇を成し遂げ、現在はスーパー・ミドル級4団体統一王者の肩書を持つアルバレスにとっては1階級上の王座への挑戦となるが、4対1で圧倒的有利と見られている。

アルバレスは2011年から2022年にかけてスーパー・ウェルター級、ミドル級、スーパー・ミドル級、ライト・ヘビー級と約10キロの体重の壁を乗り越えて4階級制覇を成し遂げている。特に2018年以降はミドル級 → スーパー・ミドル級 → ミドル級 → ライト・ヘビー級 → スーパー・ミドル級と試合ごとに階級を上下させて世界戦を行ってきた。一時期は3階級の王座を同時に保持するなど、まさにスター選手の特権を享受してきたといえる。

それを非難する声があるのも事実だが、直近の8戦で全勝、しかもゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)をはじめ4人の無敗王者を下しているのだから実力を認めないわけにはいかない。20度の世界戦(18勝11KO1敗1分)を含むトータル戦績は60戦57勝(39KO)1敗2分というみごとなものだ。

15歳からプロとして戦ってきたアルバレスは7月で32歳になるが、歴戦のダメージや加齢による衰えは感じられない。むしろ2年前にスーパー・ミドル級に定着してから強さが増した印象だ。スピード、パワー、テクニック、耐久力、ボクシングIQに経験値が加わり高度円熟期に入ったといっていいだろう。

そんなアルバレスの挑戦を受けるビボルは、モルドバ人の父親と韓国人の母親の間にキルギスで生まれた。ロシア国籍だが現在はアメリカのカリフォルニア州インディオに住んでいる。ボクシングは6歳のときに始め、アマチュアで283戦(268勝15敗)を経験後、23歳でプロに転向した。初陣から1年半、わずか7戦目でWBA世界ライト・ヘビー級暫定王座を獲得し、2度防衛後に正王者に昇格。さらに8度防衛後にスーパー王者として認定された。11度の世界戦を含む戦績は19戦全勝(11KO)で、6年間に10度防衛中だ。

スピードのある左ジャブを突いて間合いをつくり、機を見て決め手の右ストレートを打ち込む。返しの左フックも正確で強い。ただし、王座を守る意識が強くなったのか直近の6試合はすべて12回判定勝ちで、アピール度に欠ける試合が続いている。アルバレスにとっては2年半ぶりのライト・ヘビー級での試合で、いわば冒険マッチともいえるが、最近のビボルを見て与し易しと感じた可能性もある。

ビボルは身長/リーチとも183センチで、それぞれアルバレスを10センチ/4センチ上回っている。このアドバンテージとスピードのある左ジャブで4階級制覇王者をコントロールできれば勝機は広がるだろう。加えてカウンターの右が機能すればポイントを奪うこともできそうだ。ただ、アルバレスの圧力に押されて距離を詰められ、中近距離での戦いに持ち込まれると苦しい。ビボルは長丁場の戦いに慣れてはいるが、終盤になってもパワーが落ちないアルバレスが相手となると分は悪い。番狂わせの可能性があることは否定できないが、オッズどおり20パーセント程度ということになるだろう。アルバレスがまたひとつ勲章を増やしそうだ。

バルデス対スティーブンソン 五輪出場、2階級制覇、全勝の王者が激突 尾川堅一も王座統一に興味

30日(日本時間5月1日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでスーパー・フェザー級のWBC王者、オスカル・バルデス(31=メキシコ)対WBO王者、シャクール・スティーブンソン(24=アメリカ)の王座統一戦が行われる。五輪出場、2階級制覇、全勝と共通項の多い両王者だが、バルデスが打撃戦を得意としているのに対しサウスポーのスティーブンソンは技巧派と戦闘スタイルは対照的だ。中量級の主役になると期待されているスティーブンソン有利とみられているが、バルデスの強打を推す声もある。

ふたりともトップランク社とプロモート契約を交わしているが、プロデビューはバルデスが5年早い。2008年北京大会、2012年ロンドン大会と2度の五輪出場を果たしたバルデスは2012年11月にプロ転向を果たし、4年後にWBO世界フェザー級王座を獲得。一方のスティーブンソンは2016年リオデジャネイロ五輪に出場したあと、バルデスのWBO世界フェザー級王座2度目の防衛戦の前座でプロデビューを果たした。2017年4月のことだ。

その後も両雄の縁は続く。バルデスが6度の防衛後に王座を返上してスーパー・フェザー級に転向すると、空位になったWBO世界フェザー級王座の決定戦にスティーブンソンが出場して判定勝ち、バルデスの後継王者になった。ただし、スティーブンソンは初防衛戦を行わずに王座を返上、スーパー・フェザー級に転向している。

昨年2月、バルデスがスーパー・フェザー級でWBC王座を奪取すると、その4カ月後、スティーブンソンはWBOの暫定王座を獲得。

9月にバルデスが初防衛を果たすと、1カ月後にスティーブンソンは団体内統一戦を制して正王者に昇格し、デビューから5年で“先輩”に追いついた。

5対1という一方的なオッズが出ているように、すでに評価ではスティーブンソンが上回っている。持ち味のスピードを生かしたアウトボクシングが冴えればWBO王者が序盤から着々とポイントを重ねることになりそうだ。バルデスのパンチを空転させ、戦闘能力と意欲を削いでしまえば終盤のストップ勝ちも考えられる。

厳しい戦いが予想されるバルデスは工夫を凝らして距離を潰し、破壊力のある左右フックやアッパーを狙いたいところだ。名匠エディ・レイノソ・トレーナーがどんな戦術を練るのかという点にも注目したいが、それでも勢いのあるスティーブンソンを捕まえるのは難しいと思われる。

戦績はバルデスが30戦全勝(23KO)、スティーブンソンが17戦全勝(9KO)。この階級にはIBF王者の尾川堅一(帝拳)がおり、近い将来の王座統一にも興味を持っているだけに勝負の行方が気になるところだ。

フューリー対ホワイト チケット売り切れ、収容9万ウェンブリー・スタジアム開催の対決に要注目

23日(日本時間24日)、英国ロンドンでWBC世界ヘビー級タイトルマッチ、正王者タイソン・フューリー(33=英国)対暫定王者ディリアン・ホワイト(34=ジャマイカ/英国)の12回戦が行われる。

フューリーに約36億円、ホワイトに約9億円の報酬が最低保証された注目ファイトだ。

身長206センチ、リーチ216センチ、直近の試合の体重が125キロのフューリーはヘビー級のなかでも超がつく大型選手だが、構えを右から左、左から右とチェンジしたりステップを踏んだりと器用な面もある。戦績は32戦31勝(22KO)1分で、KO率は70パーセント弱だが、スピードとテクニックに加え戦術にも長けている。パワー型の選手ではないが、2020年2月にデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)を7回TKOで下してWBC王座を獲得し、3度目の対決では11回KOで下している。2試合で計5度のダウンを奪っているようにパンチ力もある。引き分けに終わった2018年12月の初戦を加えたワイルダーとの世界戦3試合で経験値が大きく上がり、充実期に入った印象だ。

ホワイトは30戦28勝(19KO)2敗のプロ戦績を残している強打者で、2019年7月に暫定王座を獲得した。このときは初防衛戦で元WBA王者のアレクサンダー・ポベトキン(ロシア)に敗れて失ったが、昨年3月の再戦では4回TKOで雪辱、7カ月でベルトを取り戻した。フューリーと比較すると小さく感じられるが、身長193センチ、リーチ198センチ、体重112キロ(ポベトキンとの再戦時)は現在のヘビー級では平均的な体格といえる。右はストレートのほかに横殴りのフックもあり、またコンパクトな左フックも打てる。パンチは多彩でスピードもある。

当初、フューリーは3団体王者のオレクサンダー・ウシク(ウクライナ)との統一戦を目指したが交渉が進展せず、その間にWBCから団体内統一戦を義務づけられていた。興行権を巡って入札になり、フューリー側が両選手の合計報酬として約50億円を提示して落札した経緯がある。フューリーに約36億円、ホワイトに約9億円が保証され、勝者には5億円のボーナスが加算される。

この英国人同士の対決は注目度が高く、収容人員9万人のウェンブリー・スタジアムで行われる。チケットは早々に売り切れ、プロモーターが4000席を追加したほどだ。

オッズは13対3でフューリー有利と出ている。前後左右に動いて揺さぶりをかけ、遠い距離から右ジャブ、左ストレートで攻めるものと思われる。早い段階で正王者が主導権を握るようならば勝負は中盤を待たずに終わるかもしれない。一方、ホワイトはフューリーが攻め込んできたところに右のカウンターや左フックを狙ってひと泡吹かせたいところだ。ワイルダーとの3試合では尋常ならざる体力と回復力をみせつけたフューリーだが、初戦で2度、3度目の対戦でも2度のダウンを喫しており、打たれ脆くなっていることも考えられる。フューリーのKO勝ちが順当な線だが、番狂わせが起こる可能性も決して低くはないように思える。

ウェルター級3団体王座統一戦スペンス対ウガス どちらがクロフォードとの頂上決戦に駒を進めるか

ウェルター級のWBC王座とIBF王座を保持するエロール・スペンス(32=アメリカ)とWBAスーパー王者のヨルデニス・ウガス(35=キューバ)が16日(日本時間17日)、3団体の王座統一をかけてアメリカのテキサス州アーリントンで対戦する。万能型サウスポーのスペンスとテクニックが売りのウガス。攻撃力で勝るスペンス有利の予想のなか、昨年8月に元世界6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(フィリピン)を引退に追いやったウガスは再び番狂わせを起こすことができるのか。

この両者は昨年8月、ダブル世界戦に出場するはずだった。メインカードはスペンス対パッキャオで、セミ格としてウガス対ファビアン・マイダナ(アルゼンチン)が組まれていた。しかし、試合2週間前になってスペンスが眼疾のため出場不可となり、マイダナは負傷のため挑戦を辞退。それにともない急きょ、パッキャオ対ウガスにカードが変更され、ウガスが判定勝ちを収めた経緯がある。知名度の低いウガスは2戦連続でスター選手との試合に臨むことになり、実力をアピールする絶好の機会を得たといえる。ただ、4対1でスペンス有利のオッズが出ているように、ウガスにとっては厳しい戦いが予想される。

スペンスは2012年ロンドン五輪ではウェルター級ベスト8に甘んじたが、プロでは6度の世界戦を含めて27戦全勝(21KO)の戦績を残している。パワーとテクニックを兼ね備えたサウスポーで、世界的に高い評価を得ている。不安があるとすれば体調面だろう。2019年10月に車で自損事故を起こして入院し、1試合挟んで昨夏には左目の網膜剥離が判明。これが1年4カ月ぶりのリングとなる。

ウガスも五輪戦士だ。こちらは2008年北京五輪ライト級で銅メダルを獲得しているほか、2005年の世界選手権では優勝するなどトップアマとして活躍。24歳になる直前にプロデビューし、12年間で31戦27勝(12KO)4敗の戦績を残している。数字のインパクトではスペンスに遠く及ばないが、先のパッキャオ戦で評価と知名度を大きくアップさせている。

より攻撃的なのはスペンスだが、ウガスも正面から圧力をかけて出るタイプだけに、まずは序盤の主導権争いが注目される。地元の声援を背に右ジャブから左に繋げる攻めが見られるような展開ならばスペンスのペースといえる。逆にウガスが相手の打ち終わりを迎え撃って正確にパンチを当てることができればWBAスーパー王者のペースといえる。

この階級にはWBO王者のテレンス・クロフォード(アメリカ)がおり、今回の試合の勝者との4団体王座統一戦を熱望している。クロフォードとの最終的な頂上決戦に駒を進めるのはスペンスなのか、それともウガスなのか。

4・9ゴロフキン対村田諒太戦を前に歴史ある伝統の階級ミドル級のグレートたちを紹介

9日にさいたまスーパーアリーナで行われるWBA、IBF世界ミドル級王座統一戦、ゲンナディ・ゴロフキン(39=カザフスタン)対村田諒太(36=帝拳)の大一番まで3日-。ミドル級は140年近い歴史を持つ伝統の階級で、これまでに時代を彩るスター選手を数多く輩出してきた。ゴロフキンもそのなかのひとりといえる。注目の一戦を前に72.5キロを体重リミットとするミドル級のグレートたちを簡単に紹介しよう。

もともとボクシングは体重に関係なく戦われていたが、1800年代半ばに体重制が採用された。まずヘビー級(重量級)とライト級(軽量級)に分けられ、その間にミドル級(中間階級)が誕生したわけだ。近代ボクシング史最初の世界ミドル級王者はジャック・デンプシー(アイルランド)で在位は1886年から1891年とされる。

20世紀初頭にはスタンリー・ケッチェル(アメリカ)のようにミドル級王者がヘビー級王者に挑むケースもあったが、厚い壁に跳ね返されている。

1940年代になると「鉄人」と呼ばれたトニー・ゼール(アメリカ)や映画「傷だらけの栄光」で知られるロッキー・グラジアノ(アメリカ)らが登場して人気を博し、ヘビー級と並ぶ注目を集めるようになった。さらに1950年代に入るとウェルター級王者だったシュガー・レイ・ロビンソン(アメリカ)がミドル級に転向。史上最多となる同一階級5度の戴冠を果たした。同じ時代には映画「レイジング・ブル」でお馴染みのジェーク・ラモッタ(アメリカ)もいた。

1970年代には「アルゼンチンのライフル」カルロス・モンソンが7年間に14度の防衛を記録した。

1980年代に入るとマーベラス・マービン・ハグラー、シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ(いずれもアメリカ)、ロベルト・デュラン(パナマ)の4選手が直接対決をしてミドル級黄金時代を築いた。ミドル級史のなかでも特別に輝いた10年だった。

1990年以降ではロイ・ジョーンズ、バーナード・ホプキンス、オスカー・デラ・ホーヤ(いずれもアメリカ)らがミドル級を制覇。特にホプキンスは分裂していた4団体のベルトを統一し、連続20度の防衛も記録している。

ホプキンス以降ではゴロフキンとサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)の力量と実績が突出している。ゴロフキンはホプキンスと並ぶ20度の防衛を果たし、この間、史上最多タイの17連続KO防衛をマーク。ゴロフキンと1勝1分のアルバレスはミドル級を含めた4階級で戴冠を果たしている。ふたりともミドル級史を飾る名王者といっていいだろう。

このミドル級は欧米を中心に選手層が厚いだけにアジア圏のボクサーは割って入ることが難しいクラスでもある。東洋人の世界ミドル級王者はセフェリノ・ガルシア(フィリピン)、竹原慎二(沖)、そして村田の3人しかいない。ガルシアと竹原は長期政権を築くことはできなかった。

こうしたなか、すでに2度の戴冠と通算2度の防衛を果たしている村田は、さらに「ゴロフキン狩り」という実績を積み上げることができるのか。4月9日の大一番が待ち遠しい。

スーパー・ウェルター級ティム・チュー、近い将来の世界王座挑戦確実 当階級の注目度アップ

26日(日本時間27日)、アメリカのミネソタ州ミネアポリスで行われたスーパー・ウェルター級世界ランカー対決で、WBO1位、WBCとIBFで3位にランクされるティム・チュー(27=オーストラリア)がWBO10位のテレル・ゲシェイ(34=アメリカ)に12回判定勝ちを収め、近い将来の世界王座挑戦を確実にした。この階級では5月に4団体の王座統一戦が予定されていることもあり、最強の座を巡る争いが一段とヒートアップしてきた印象だ。

元世界王者を父に持つパワー型のチューと、2012年ロンドン五輪出場の実績を持つ技巧派のゲシェイの試合は戦前から9対1でチュー有利と見られていたが、そのとおりの結果となった。初回に右を浴びてチューがダウンを喫するなど波乱含みのスタートとなったが、攻撃力で勝るチューが中盤にはペースを掌握。そのままポイントを重ねて3対0の判定勝ちを収めた。これでデビューから21連勝(15KO)のチューは初の世界挑戦に大きく前進。敗れたゲシェイは2度目の世界挑戦から後退した。26戦22勝(11KO)3敗1分。

このあとスーパー・ウェルター級トップ戦線の試合としては、4月9日にアメリカのネバダ州ラスベガスでWBC1位のエリクソン・ルビン(26=アメリカ)と2位のセバスチャン・フンドラ(24=アメリカ)がWBC暫定王座決定戦で拳を交えることになっている。「ハンマー」と呼ばれる25戦24勝(17KO)1敗のルビンに対し、19戦18勝(12KO)1敗のフンドラは197センチの長身サウスポーとして知られる。才能に恵まれた強打者のルビンに分のあるカードだが、長い腕を折りたたんで意外な角度からパンチを打ち込んでくるフンドラの戦法に巻き込まれる可能性もある。

さらに5月14日には4団体の王座統一戦がアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで行われる予定だ。WBA、WBC、IBF3本のベルトを持つジャーメル・チャーロ(31=アメリカ)と、WBO王者ブライアン・カスターニョ(32=アルゼンチン)が対戦するもので、勝者が名実ともに階級最強を名乗ることになる。両者は昨年7月に対戦して三者三様の引き分けに終わっており、総合力は互角とみられている。オッズはチャーロ有利と出ているものの5対4と接近している。スピードとパンチの切れで勝るチャーロが4本目のベルトを手に入れるのか、それとも馬力とスタミナに定評のあるカスターニョがアルゼンチン人として初の4団体統一王者になるのか。戦績はチャーロが36戦34勝(18KO)1敗1分、カスターニョが19戦17勝(12KO)2分。

親子世界王者を狙うチュー、強打のルビン、長身サウスポーのフンドラに加え、WBO世界ウェルター級王者のテレンス・クロフォード(34=アメリカ)がスーパー・ウェルター級への参入を狙っていることもあり、この階級は注目度がアップしている。しばらくは目が離せない状態が続きそうだ。

8年前長谷川穂積下した2階級制覇王者キコ・マルチネス、正念場の初防衛戦

8年前、長谷川穂積(真正)に7回TKO勝ちを収めたこともあるIBF世界フェザー級王者のキコ・マルチネス(36=スペイン)が26日(日本時間27日)、英国リーズで元王者のジョシュ・ウォーリントン(31=英国)の挑戦を受ける。昨年11月に35歳にして2階級制覇を果たしたマルチネスにとっては正念場の初防衛戦だ。

マルチネスが長谷川と対戦したのは2014年4月のこと。保持していたIBF世界スーパー・バンタム級王座の2度目の防衛戦として大阪城ホールのリングに上がった。強打に定評のあったマルチネスだが、長谷川のスピードについていけないのではないかという予想もあった。しかし、マルチネスは2回にダウンを奪うと7回には2度のダウンを追加して長谷川をストップしてみせた。

ところが、その5カ月後にIBF世界スーパー・バンタム級王座を失うと、そこから茨の道が待っていた。無冠になった元王者は与し易い相手と判断されたのか世界戦の話は何度も舞い込んだが、すべて失敗に終わった。スコット・クイッグ(英国)には2度倒されて2回TKO負け。レオ・サンタ・クルス(メキシコ)にも2度のダウンを奪われて5回TKOの完敗。ゲイリー・ラッセル(アメリカ)戦では顔面を切り裂かれたうえ何もできずに5回でストップされた。

昨年11月、IBF世界フェザー級王者のキッド・ガラハド(カタール/英国)に挑戦したときも、アンダードッグとして相手のホームに赴いた。マルチネスは攻勢には出たもののクリーンヒットが少なく、毎回のようにポイントを失っていった。ところが5回終了間際、マルチネスが飛び込むようにして放った右がクリーンヒット。ガラハドは後方にはじかれるように倒れた。ここはラウンド終了ゴングで好機を寸断されたが、マルチネスは6回開始と同時に同じパンチを直撃し、再び王者からダウンを奪った。今度はレフェリーがノーカウントで試合をストップ、マルチネスの勝利を告げたのだった。12対1のオッズがひっくり返ったこの試合は2021年の「アップセット(番狂わせ)・オブ・ザ・イヤー」に推薦されたほどだった。

今回、初防衛戦で拳を交える相手のウォーリントン(32戦30勝7KO1敗1分)とは5年前に地域王座戦で対戦し、マルチネスは判定で敗れている。今回も初戦と同様、ウォーリントンの地元に乗り込んでの試合だけに厳しい予想が大勢を占めている。オッズは4対1でウォーリントン有利と出ているほどだ。

大ベテランの域に入ったマルチネスが敵地で雪辱を果たして初防衛に成功するのか、それともウォーリントンが地元で返り討ちにして王座奪回を果たすのか。世界ランクに名を連ねる日本王者の丸田陽七太(24=森岡)や東洋太平洋王者の清水聡(36=大橋)ら日本人選手にとっても気になる試合といえる。

王者対決・春の陣 ゴロフキン対村田諒太を皮切りに4月と5月は王者同士のカードがめじろ押し

ゲンナジー・ゴロフキン(39=カザフスタン)対村田諒太(36=帝拳)のWBA、IBF世界ミドル級王座統一戦(4月9日、さいたまスーパーアリーナ)まで1カ月を切ったが、この試合を皮切りに4月と5月は毎週、世界王座の統一戦、あるいは階級の異なる世界王者同士の注目ファイトが予定されている。ボクシング界はひと足早く熱い季節を迎える。

3月12日時点で決定している王者同士の対戦カードは以下のとおりだ。

★4月9日@日本 世界ミドル級王座統一戦 IBF王者ゲンナジー・ゴロフキン(39=カザフスタン 43戦41勝36KO1敗1分) vs WBAスーパー王者 村田諒太(36=帝拳 18戦16勝13KO2敗)

★4月16日@アメリカ 世界ウェルター級王座統一戦 WBC、IBF王者エロール・スペンス(32=アメリカ 27戦全勝21KO)) vs WBAスーパー王者ヨルデニス・ウガス(35=キューバ 31戦27勝12KO4敗)

★4月23日@アメリカ WBC団体内世界ヘビー級王座統一戦 WBC王者タイソン・フューリー(33=英国 32戦31勝22KO1分) vs WBC暫定王者ディリアン・ホワイト(34=ジャマイカ/英国 30戦28勝19KO2敗)

★4月30日@アメリカ 世界スーパー・フェザー級王座統一戦 WBC王者オスカル・バルデス(31=メキシコ 30戦全勝23KO) vs WBO王者シャクール・スティーブンソン(24=アメリカ 17戦全勝9KO)

★5月7日@アメリカ WBA世界ライト・ヘビー級タイトルマッチ 王者ドミトリー・ビボル(31=キルギス/ロシア 19戦全勝11KO) vs 4団体統一世界スーパー・ミドル級王者サウル・カネロ・アルバレス(31=メキシコ 60戦57勝39KO1敗2分)

いずれもKO決着が期待される好カードだが、最も注目度が高いのはビボル対アルバレスであろう。すでにライト・ヘビー級を含めて4階級制覇を成し遂げているアルバレスが、スピードとテクニックに定評のある全勝王者のビボルに挑む。オッズは7対2でアルバレス有利と出ているが、体格で勝るビボルが番狂わせを起こす可能性も十分にある。

このほか契約間近と伝えられる王者同士のカードもある。ライト・ヘビー級のWBC、IBF王者アルツール・ベテルビエフ(37=ロシア)対WBO王者ジョー・スミス(32=アメリカ)、バンタム級のWBA、IBF王者 井上尚弥(28=大橋)対WBC王者ノニト・ドネア(39=フィリピン)、そしてライト級の4団体統一王者ジョージ・カンボソス(28=オーストラリア)対WBAレギュラー王者デビン・ヘイニー(23=アメリカ)だ。コロナ禍の影響やロシアのウクライナ侵攻などで不透明な部分を残してはいるが、これらの試合もファン垂涎のカードといえる。

王者対決・春の陣。まずは先陣を切って行われるゴロフキン対村田に注目したい。

コラレスら来日して日本人ボクサーと世界王座を争った5選手がパナマでそろい踏み

ジェスレル・コラレス(30=パナマ)、アンセルモ・モレノ(36=パナマ)、リボリオ・ソリス(39=ベネズエラ)、ネオマール・セルメニョ(42=ベネズエラ)、そしてヒルベルト・ペドラサ(29=パナマ)-かつて来日して日本人ボクサーと世界王座を争った5選手が12日(日本時間13日)、パナマシティで行われる興行に揃って出場する。いずれも現在は世界王座を持ってはいないが、前3選手はWBAで10傑内にランクされており、再び大舞台に上がる可能性もある。中米からどんな結果が届くのだろうか。

コラレスは暫定王者時代の2016年4月に初来日して内山高志(ワタナベ)を2回でKO、WBA世界スーパー・フェザー級スーパー王座を奪い取ったことで知られる。8カ月後の再戦でも12回判定勝ちを収めて安定政権を築くかと思われたが、3度目の防衛戦を前に体重超過のため失格。試合でも8回KO負けを喫した。その試合を含め直近の6戦は3勝3敗だ。27戦全勝(25KO)のミゲール・マドゥエノ(23=メキシコ)と対戦する。

WBA世界バンタム級王座を12度防衛した実績を持つモレノは2015年9月に山中慎介(帝拳)の持つWBC同級王座に挑戦したが惜敗。1年後に再来日して山中に再び挑んだが、今度は7回TKOで返り討ちに遭った。その後、引退したが2019年に戦線復帰。4連勝を収めて返り咲きを狙える位置に戻ってきた。対戦相手は25戦19勝(12KO)6敗の世界挑戦経験者、セサール・ラミレス(34=メキシコ)。

セルメニョはベネズエラ生まれだが、プロデビュー時からパナマを活動拠点にしてきた。2017年4月にWBA世界スーパー・バンタム級王者として来日したが、久保隼(真正)に10回終了TKO負けを喫して無冠になって帰国した。その試合を含め3連敗して引退したが、昨年10月に3年半ぶりにリング上がり1回TKO勝ちを収めて再起を果たした。11戦全勝(6KO)のオタール・エラノスヤン(28=ジョージア)との10回戦が予定されている。

ソリスもセルメニョと同様にベネズエラ出身だが、キャリアの途中からパナマを主戦場にしてきた。初来日はWBA世界スーパー・フライ級暫定王者だった2013年5月で、このときは正王者の河野公平(ワタナベ)に小差の判定勝ちを収めた。7カ月後、IBF同級王者の亀田大毅(亀田)と統一戦を行うために再来日したが、前日計量で体重超過のため失格。試合では勝ったもののトラブルメーカーの印象を残して離日した。バンタム級に転向したソリスは2016年3月、2階級制覇を狙って山中慎介に京都で挑戦。ダウンを奪う健闘をみせたものの自身も2度倒され大差の判定で敗れた。その後、3度の世界挑戦を試みたが目的を達成できないまま現在に至る。15戦10勝(6KO)3敗2分のアテハンドロ・ゴンサレス(22=メキシコ)と対戦する予定だ。

ペドロサは2017年12月に寺地拳四朗(BMB)の持つWBC世界ライト・フライ級王座に挑んで4回TKO負け。半年後、再起戦として再来日したが、のちに世界王者になる矢吹正道(緑)に2回KOで敗れた。この2敗を含め5連敗を喫したが、昨年12月に8回判定勝ちでトンネルを抜け出した。2戦2勝(1KO)のアンソニー・オラスクアガ(23=アメリカ)戦が組まれている。

5人とも自分よりも若い選手との対戦となるが、はたして経験を生かすことができるか。

元4階級制覇王者ローマン・ゴンサレスが1年ぶりの再起戦 「ロマゴン」復活なるか

4階級制覇の実績を持つ前WBA世界スーパー・フライ級スーパー王者、ローマン・ゴンサレス(34=ニカラグア)が3月5日(日本時間6日)、アメリカのカリフォルニア州サンディエゴでWBC世界フライ級王者、フリオ・セサール・マルチネス(27=メキシコ)とノンタイトル12回戦を行う。昨年3月、WBC王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(31=メキシコ)との統一戦で惜敗したゴンサレスにとっては1年ぶりの再起戦となる。

日本では「ロマゴン」の愛称で知られるゴンサレスはミニマム級、ライト・フライ級、フライ級、スーパー・フライ級で世界王座を獲得してきた。フライ級時代には全階級を通じたボクサーの総合評価ともいえる「パウンド・フォー・パウンド」で最上位にランキングされたこともある。しかし、スーパー・フライ級に上げてから王座は獲得したものの体格の壁にぶつかり、以前のような無敵ぶりは影を潜めた。2017年には痛烈なKO負けを含めてシーサケット・ソールンビサイ(タイ)に2連敗して王座を失い、さらに膝の故障も重なって選手生命の危機にも直面した。そこから這い上がり、2020年2月に返り咲きを果たしたが、エストラーダに敗れて失冠。現在はWBA1位、WBC2位に甘んじている。

もともと過去1勝1敗のエストラーダと昨年10月に決着戦を行う予定だったが、ゴンサレスが新型コロナウイルス検査で陽性だったため延期。3月5日にリセットされたが、今度はエストラーダが陽性だったため一時は試合が宙に浮いたかたちになった。そのタイミングでゴンサレスとの対戦に名乗りを上げたのがマルチネスだった。

ゴンサレスと比べると知名度や実績では見劣りするマルチネスだが、デビュー戦で敗れたあとは6年以上も負けがなく、2度の無効試合を挟んで18連勝中だ。その勢いと27歳の若さ、徹底した攻撃ボクシングは番狂わせの予感を漂わせている。

ただ、マルチネスは身長157センチと小柄で、スーパー・フライ級の体重で戦うのは8試合ぶりとなる。ディフェンスに難があるのも気になるところといえる。

ファイター型のマルチネスが前に出て、万能型のゴンサレスが迎え撃つ展開が予想される。元4階級制覇王者がカウンターを含めた正確なパンチでフライ級王者を仕留めるとみるが、突進に手を焼いて乱戦に持ち込まれると逆の結果も考えられる。戦績はゴンサレスが53戦50勝(41KO)3敗、マルチネスが21戦18勝(14KO)1敗2無効試合。ゴンサレス有利とみられているもののオッズは11対8と接近している。

4団体統一王者テイラーの防衛戦 圧倒的王者有利のなか挑戦者カテロールに秘策はあるか

スーパーライト級の4団体統一世界王者、ジョシュ・テイラー(31=英国)の防衛戦が26日(日本時間27日)、WBO1位のジャック・カテロール(28=英国)を相手に英国スコットランドのグラスゴーで行われる。昨年5月に4団体の王座統一を果たしたテイラーにとっては6試合連続で全勝の相手との対戦となる。「タータン・トルネード(スコットランドの竜巻)」の異名を持つテイラーの強打が炸裂しそうだ。

テイラーは2012年ロンドン五輪に出場の3年後にプロデビューし、6年半で18戦全勝(13KO)をマークしている。2019年5月にIBF世界スーパーライト級王座を獲得し、5カ月後にWBA王者に勝って2冠目をゲット。昨年5月、WBC王座とWBO王座を持つホセ・ラミレス(アメリカ)に勝って完全制覇を成し遂げた。他団体王者との対戦を経て4団体統一を果たしたのはテイラーが史上5人目となる。

身長178センチと体格に恵まれたサウスポーで、自ら攻めることもカウンターで迎え撃つこともできる万能型だ。全階級の選手を体重が同一と仮定した「パウンド・フォー・パウンド」では、老舗専門誌「リング・マガジン」で井上尚弥(大橋)のひとつ下、5位にランクされている。それほどの実力者なのである。特筆すべきは、5試合連続で全勝の相手を下しているという点だ。そのうち3人は現役の世界王者だから高く評価されて当然だろう。今回も9対1という大差のオッズで支持されている。

挑戦者のカテロールも26戦全勝(13KO)のレコードを残しているサウスポーで、これまでに英国王座やWBO欧州王座などを獲得している。2018年12月から3年以上もWBO1位の座をキープしてきただけに待ちに待った大舞台といえる。こちらもサウスポーで、戦闘スタイルは王者と似たところがある。しかし、スピードやパワー、テクニックなど個々の戦力ではテイラーのレベルには届かない。「ガト(山猫)」というニックネームがあるが、相手に脅威を与えるほどの攻撃力は感じられない。同じ英国出身とはいえテイラーの地元に乗り込んでの試合だけに厳しい戦いを覚悟しなければなるまい。

テイラーの圧勝が予想されるカードだが、王者にも不安がないわけではない。この試合はもともと昨年12月に行われる予定だったが、10月にテイラーが膝を痛めたために2カ月延期された経緯があるからだ。番狂わせの可能性は極めて低いといえるが、勝負ごとでは何が起こるか分からない。テイラーが圧倒的有利とみられているなか、カテロールに秘策はあるのか。

「本物」スペンスとパッキャオを引退に追いやったウガスがウェルター級王座統一戦

ウェルター級のWBC王座とIBF王座を持つエロール・スペンス(31=アメリカ)とWBAスーパー王者のヨルデニス・ウガス(35=キューバ)が4月16日(日本時間17日)、アメリカのテキサス州アーリントンで王座統一戦を行うことが決定した。「THE TRUTH(本物)」と呼ばれる27戦全勝(21KO)のスペンスと、昨年8月にマニー・パッキャオ(フィリピン)を引退に追いやったウガス。やや停滞気味だった階級が一気に盛り上がりをみせそうだ。

スペンスはサウスポーの万能型強打者で、2017年5月にIBF王者になったときには大ブレークの予感が漂ったものだ。その期待に応えるように2度の防衛戦で圧勝してスケールの大きさを感じさせた。しかし、3度目の防衛戦から3試合続けて判定勝ちに留まり、ややトーンダウンした印象が強い。相手が3人とも王者経験者だったことなど考慮すべき点はあるが、この間に飲酒運転で自損事故を起こして1年3カ月のブランクをつくりイメージでもマイナス点がついている。加えて昨年8月、WBA休養王者だったパッキャオとの統一戦を前に行われた検診で網膜剥離が判明したため6階級制覇王者とのビッグマッチを辞退。以来、再び1年以上の空白が続いており、近況は芳しいものとはいえない。それでも総合的な評価は高いままで、アメリカの老舗専門誌「リング・マガジン」の階級を超越した強さランキング、パウンド・フォー・パウンドでは6位をキープしている。

一方のウガスは2008年北京五輪銅メダルを手土産にプロ転向したが、最初の4年間で3敗するなど挫折を味わった。2年以上の活動休止期間を経て復帰し、以後は13戦12勝(5KO)1敗の戦績を収めている。2020年9月にWBA世界ウェルター級王座を獲得し、4カ月後にスーパー王者に格上げされた。それでも地味な存在のままだったが、昨年8月にスペンスの代役としてパッキャオと対戦し、下馬評を覆して判定勝ちを収めて評価と知名度を上げた。圧力をかけながら中近距離で巧さを発揮するタイプで、スタミナもある。通算戦績は31戦27勝(12KO)4敗。

スペンス対ウガスは3団体の王座統一戦であると同時に、WBO王者のテレンス・クロフォード(アメリカ=38戦全勝29KO)との頂上対決の権利をかけた試合でもある。クロフォードがウェルター級に進出してきた4年前からスペンスとの対戦が期待されながらすれ違いが続いてきたが、昨秋にWBO王者がプロモーターを変えたことで障壁が小さくなったところだ。もちろんスペンス対クロフォードが最も盛り上がるカードであることは間違いないが、もしもウガスが勝ち上がってクロフォード戦が実現した場合も興味深いものになるだろう。アマチュア時代の2007年、両者はパンアメリカン大会で対戦してウガスが27対10の大差でクロフォードにポイント勝ちしている因縁があるのだ。

いまのところスペンス対ウガスは7対2でスペンス有利と出ている。2カ月先の注目ファイトが待ち遠しい。

英国のライバル同士カーン対ブルック ノンタイトル戦も世界戦並みの注目、チケット10分で完売

10代のときから互いの存在を意識してきた英国のライバル同士、元世界スーパー・ライト級王者のアミール・カーン(35)と元世界ウェルター級王者のケル・ブルック(35)が19日(日本時間20日)、英国マンチェスターで対戦する。試合は149ポンド(約67.5キロ)契約のノンタイトル12回戦として挙行されるが、人気者同士の対戦とあって世界戦並みの注目を集めている。

アマチュア時代にカーンは17歳でアテネ五輪に出場してライト級で銀メダルを獲得、一躍人気者となった。これに対しブルックの活躍は英国内に留まっていた。スポットライトを浴びる同い年のカーンに嫉妬したとしても不思議ではない。

プロ転向はブルックが2004年9月で、カーンは2005年7月だった。しかし、先に世界に飛び出したのはカーンだった。2009年7月に22歳の若さでWBA世界スーパー・ライト級王座を獲得したのだ。この日、ウェルター級の英国王者だったブルックは前座試合に出場して3回TKO勝ちを収めている。この時点で両者の間にはそれだけの力量差と人気の差があったといえる。

出世が早かったカーンだが、下降も早かった。2011年12月に王座を失うと、次戦でもTKO負けを喫して評価は急落。それでもトップ戦線に踏みとどまっていたが、2016年5月にサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)の持つWBC世界ミドル級王座に挑んで6回KO負け。2019年4月にはWBO世界ウェルター級王者のテレンス・クロフォード(アメリカ)に挑戦したが、途中棄権して6回TKO負けとなった。

ブルックはカーンと入れ替わるようなタイミングで世界戦線に参入してきた。2014年8月にIBF世界ウェルター級王座を獲得し、3連続KO防衛を果たして評価は急上昇。このまま世界的なスター選手になるかと期待されたが、一気に2階級上げて挑んだゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)戦で5回TKO負け、ミドル級制覇を阻止されて初黒星を喫した。さらに8カ月後の再起戦でエロール・スペンス(アメリカ)に11回KO負け、保持していたIBF世界ウェルター級王座を失った。3連勝後の2020年11月、クロフォードのWBO世界ウェルター級王座に挑んだが、4回TKOで跳ね返されている。

ともに近況は芳しくなく、カーンは2019年7月の再起戦以来2年7カ月ぶりの実戦で、ブルックもクロフォード戦以来1年3カ月ぶりの再起戦となる。そんな両者は昨年11月下旬に行われた発表会見で対面した。ふたりは鼻を突き合わせてトラッシュトークを応酬、乱闘寸前のところを関係者に止められている。カーンは言う。「彼が私のことを嫌っているのは分かっている。今回、私が勝ったらさらに憎むだろうな」。ブルックも「これは個人的な禍根だね。お互いに嫌いなんだから。彼は試合をしたくなかったはずだが、長いこと戦いを望んだ私に追い込まれたのさ」と応じている。

英国では知名度抜群の両選手の対戦とあってファンの反応も早かった。会場のマンチェスター・アリーナは2万3000人の収容能力を持つが、12月中旬に発売されたチケットは先行販売分が4分、本発売分が6分、合計10分で完売になったほどだ。

戦績は、スピードと切れのあるパンチが持ち味のカーンが39戦34勝(21KO)5敗、カウンターを含め総合的に高い戦力を誇るブルックが42戦39勝(27KO)3敗。カーンは5敗のうち4敗がKO負けで、ブルックは3敗すべてがKO負けと、ふたりとも耐久力に課題を抱えている。それだけに初回からスリリングな試合になりそうだ。

オッズは3対2でブルック有利と出ている。どちらが勝つにしてもKO決着が確実といえる。

東京五輪フライ級金メダリストのガラル・ヤファイが兄たちの背中を追いプロ転向

東京五輪フライ級金メダリストのガラル・ヤファイが兄たちの背中を追いプロ転向

昨夏に開催された東京オリンピックのボクシング競技、フライ級で金メダルを獲得したガラル・ヤファイ(29=英国)がプロに転向することになった。デビュー戦は2月27日(日本時間28日)、英国ロンドンで予定されている。

28歳で東京オリンピックに出場したヤファイは初戦こそ3回レフェリー・ストップ(RSC)勝ちだったが、2回戦から決勝までの4試合はいずれもジャッジの見解が割れる判定勝負だった。それでもしぶとく勝ち残って表彰台の最上段に上り、金色に輝くメダルを獲得した。

ヤファイはイエメン出身の両親のもと英国バーミンガムで生まれた。3歳上の兄カリド、1歳上の兄ガマルもアマチュアを経てプロボクサーになっている。特に2008年北京五輪に出場したカリドは2016年12月にWBA世界スーパー・フライ級王座を獲得し、村中優(フラッシュ赤羽)や石田匠(井岡)らを相手に5度の防衛を果たした。

2020年2月にローマン・ゴンサレス(ニカラグア)に敗れて失冠。以来、リングには上がっていない。2013年世界選手権出場の実績を持つガマルも2014年にプロ転向を果たし、スーパー・バンタム級の英連邦王座や欧州王座を獲得。世界ランキングにも入っていたことがある。2021年5月に欧州王座を失ったばかりで、こちらも次戦は決まっていない。戦績はカリドが27戦26勝(15KO)1敗、ガマルが20戦18勝(10KO)2敗。

そんな兄たちの背中を追うガラル・ヤファイはプロ転向に際し、前世界ヘビー級王者アンソニー・ジョシュア(英国)らを擁するマッチルーム・ボクシングとプロモート契約を結んだ。2月27日に予定されるプロデビュー戦はいきなり10回戦になる可能性があるという。実力に加えプロ転向には遅い29歳という年齢が考慮されたものと思われる。ガラル・ヤファイは「多くの金メダリストたちがプロでも世界一の座についてきたことは知っている。私もその一員に加わりたい」と意欲をみせている。

130年を超す近代ボクシングの歴史上、兄弟世界王者は40例近くあるが、3兄弟の世界王者となると亀田兄弟(興毅、大毅、和毅)の1例しかない。最近では英国のスミス兄弟(ポール、スティーブン、リアム、カラム)やメキシコのアルバレス兄弟(リゴベルト、ラモン、サウル)、さらに現役で活躍中のアメリカのラッセル兄弟(ゲイリー、アントニオ、アントゥアン)らが有名だ。弟のガラルのプロ転向に影響を受け、兄のカリドとガマルが戦線復帰して世界王座獲得を目指す可能性もあるだけにヤファイ3兄弟の今後に注目したい。

再起戦サーマン対バリオス どちらがウェルター級トップ戦線に踏みとどまるか

元WBA世界ウェルター級スーパー王者のキース・サーマン(33=アメリカ)が2月5日(日本時間6日)、アメリカのネバダ州ラスベガスで再起戦に臨む。サーマンは2019年7月にマニー・パッキャオ(フィリピン)に12回判定負けを喫して失冠。これが2年半ぶりのリングとなる。相手は前WBA世界スーパー・ライト級王者のマリオ・バリオス(26=アメリカ)で、こちらも再起戦となる。どちらがトップ戦線に踏みとどまるのか興味深いカードだ。

サーマンは2013年7月にWBA世界ウェルター級暫定王座を獲得し、正王者になったあとスーパー王者へと昇格し、さらに統一戦を経てWBC王座も獲得した。しかし、交通事故や練習中の負傷などで長期ブランクをつくることもあり、7度目の防衛戦と8度目の防衛戦の間隔は1年10カ月に及んだほどだ。在位は5年半、防衛は8度だった。この間、何度かプライベートで来日し、会場で世界戦を生観戦したこともある。

通算9度目の防衛戦で拳を交えたのがWBA世界ウェルター級“レギュラー王者”のパッキャオだった。この試合は団体内統一戦だったが、サーマンは初回にパッキャオの変則的なコンビネーションを浴びてダウン。中盤から追い上げたものの届かず、小差の判定で敗れ王座を失った。その後、何度かカムバックの計画が伝えられたが実現には至らず、とうとう2年半のブランクができてしまった。戦績は31戦29勝(22KO)1敗1無効試合。

対するバリオスはサーマンが暫定王座を獲得した4カ月後(2013年11月)にプロデビューし、サーマンが無冠になった2カ月後(2019年9月)にスーパー・ライト級のWBA王座を獲得した。この王座は昨年6月、ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)に明け渡した。前半は好調だったバリオスだが中盤からデービスのスピードとパワーに押され、8回に2度のダウンを喫し、11回に力尽きた。戦績は27戦26勝(17KO)1敗。これが再起戦であると同時にウェルター級転向初戦となる。

オッズは8対5でサーマン有利と出てはいるものの不確定要素が多いカードといえる。サーマンは2年半のブランク、バリオスは3度のダウンを喫して敗れた前戦のダメージと転級の不安が重なる。

サーマンに勘の鈍りがなければ経験とパワーがものをいいそうだが、錆びついているようだと若いバリオスに付け込まれそうだ。

ウェルター級はWBO王者のテレンス・クロフォード(アメリカ)とWBC&IBF王者のエロール・スペンス(アメリカ)を中心に選手層が厚く、年内にも4団体王座の統一が期待されている注目度の高い階級だ。

実績と知名度のあるサーマンがウェルター級トップ戦線に舞い戻るのか、それともバリオスが激戦階級に新規参入を果たすのか。世界タイトルはかからないが、なかなか興味深い試合だ。

エストラーダ対ゴンサレス3度目の対戦決定 井岡交えSフライ級4団体王座統一戦現実味

スーパー・フライ級のWBAスーパー王座とWBCフランチャイズ(特権)王座を持つファン・フランシスコ・エストラーダ(31=メキシコ)と、4階級制覇を成し遂げている前WBA同級スーパー王者、ローマン・ゴンサレス(34=ニカラグア)が3月5日(日本時間6日)、アメリカのカリフォルニア州サンディエゴで対戦することになった。ふたりは過去に世界戦で2度対戦して1勝1敗と星を分けていて、これが決着戦となる。スーパー・フライ級にはWBO王者の井岡一翔(32=志成)がいるだけに日本のファンも気になるところだ。

エストラーダとゴンサレスが初めて拳を交えたのは2012年11月のこと。すでに高い評価を得ていたゴンサレスが12回判定勝ちでWBA世界ライト・フライ級王座の防衛に成功したが、無名のエストラーダの善戦も光った試合だった。その後、ゴンサレスはフライ級、スーパー・フライ級でも戴冠を果たし、ミニマム級と合わせて4階級制覇に成功。一方のエストラーダもゴンサレスに敗れた4ヵ月半後にフライ級で世界王座を獲得し、2019年4月にはWBCスーパー・フライ級王座も手に入れた。

そんな両者は昨年3月、スーパー・フライ級の王座統一戦で再び対戦。WBAスーパー王者のゴンサレスとWBC王者のエストラーダは一歩も引かずに真っ向から打ち合い、「年間最高試合」の声も出るほどの激闘を展開した。結果はエストラーダの12回判定勝ちと出たが、115対113(エストラーダ)、117対111(エストラーダ)、115対113(ゴンサレス)とジャッジ三者の見解が割れる僅少差の勝負だった。敗れたゴンサレスはもちろんのこと、勝ったエストラーダも試合直後から3度目の対戦を希望し、一度は昨年10月16日に決着戦がセットされた。しかし、ゴンサレスが新型コロナウィルスに感染したため試合は5ヵ月延期になったという経緯がある。

第3戦を前にエストラーダは「これは誰が最強のスーパー・フライ級なのかを決める試合だ。過去の2戦は接戦だったが、今度こそ私の方が優れたボクサーだと証明してみせる」と意気込んでいる。ゴンサレスも「(第3戦は)すごい試合になるだろうし、勝者はその戦いに勝った者として記憶されるはず」と話している。戦績はエストラーダが45戦42勝(28KO)3敗、ゴンサレスが53戦50勝(41KO)3敗。両者の現在の力関係そのままに1月中旬時点のオッズはイーブンと出ている。

このスーパー・フライ級にはWBO王者に井岡がおり、昨年の大晦日にはIBF王者のジェルウィン・アンカハス(フィリピン)との統一戦が決まっていたが、コロナ禍のなかアンカハスの来日が困難になったため延期になっている。再交渉が順調に進めば初夏にもWBOとIBFの王座統一戦が実現する可能性がある。

エストラーダ対ゴンサレス、井岡対アンカハスの勝者同士による4団体王座統一戦も夢ではない状況といえる。今年はスーパー・フライ級が熱くなりそうだ。

ラッセル断然有利も約2年ぶりの試合に不安「七夕チャンピオン」の汚名返上だ

7年前に戴冠後、1年に1回というスローペースでリングに上がっているWBC世界フェザー級王者、ゲイリー・ラッセル(33=アメリカ)が22日(日本時間23日)、アメリカのニュージャージー州アトランティックシティで6度目の防衛戦に臨む。相手は23戦全勝(16KO)の戦績を誇る2位のマーク・マグサヨ(26=フィリピン)。

9対2のオッズでラッセルが断然有利とみられているが、勘の鈍りなど不安要素もある。

ラッセルは2008年北京五輪のアメリカ代表に選ばれたが、初戦を前に体調不良のため棄権、檜舞台に上がれずに帰国した。173戦163勝10敗のアマチュア戦績を残して2009年1月にプロデビューし、24連勝をマーク。2014年6月には初の世界戦に臨んだが、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に判定で敗れ、相手に「プロ3戦目で世界王座獲得」という勲章を与えてしまった。

その9カ月後、長谷川穂積を倒してベルトを奪ったジョニー・ゴンサレス(メキシコ)を4回TKOで破りWBC世界フェザー級王座を獲得。3度のダウンを奪う圧勝だっただけに一気にブレークするかと期待されたが、ここから防衛ペースがガクンと落ちてしまう。自身の負傷やビジネス上の摩擦、さらにコロナ禍が重なったのが理由だが、20代後半の充実期に以下のように1年に1回の防衛ペースでは忘れられた存在になりかねない。

2015年3月 ジョニー・ゴンサレス    〇 4回TKO 王座獲得

2016年4月 パトリック・ハイランド   〇 2回TKO  防衛(1)

2017年5月 オスカル・エスカンドン   〇 7回TKO  防衛(2)

2018年5月 ジョセフ・ディアス      〇12回判定 防衛(3)

2019年5月 キコ・マルチネス      〇 5回TKO  防衛(4)

2020年2月 トゥグッソト・ニャンバヤル 〇12回判定 防衛(5)

これでは「七夕チャンピオン」と言われても仕方あるまい。最近は弟のアントニオ・ラッセルやアントゥアン・ラッセルの試合のサポートにまわることも多い。

そんなラッセルだが、スピードとテクニック、戦術には定評があり、平均以上のパンチ力も備えている。王座だけでなくボクサーとしての評価も維持しているといえる。戦績は32戦31勝(18KO)1敗。

ただ、今回は1年11カ月ぶりの試合となるだけに勘の鈍りが心配される。加えて相手のマグサヨが70パーセントのKO率を誇る強打者という点も不安を煽る要素といえる。このマグサヨは昨年8月、挑戦者決定戦で元世界王者のフリオ・セハ(メキシコ)とダウン応酬の激闘を展開して知名度を上げたところだ。セハにボディを攻められて弱点もさらしたが、若く勢いがあるだけに侮れない。

総合的な戦力で勝るサウスポーのラッセルがスキルを生かして挑戦者を翻弄してしまうのか、それともマグサヨが待望の大舞台で躍動するのか。

2022年のボクシング界はアルバレス、村田諒太、井上尚弥らを軸に展開

この数年、世界のボクシング界はメキシコ出身のスーパースター、サウル・カネロ・アルバレス(31)を軸に回転している。昨年は3試合を行い、いずれもTKO勝ちを収めて4団体の王座統一を果たすなど大車輪の活躍をみせた。2022年のボクシング界もアルバレスを中心に動いていくものと思われる。

4階級制覇を成し遂げているアルバレスは今年、5階級制覇を目指すことになりそうだ。1月29日に行われるWBC世界クルーザー級タイトルマッチで王者のイルンガ・マカブ(コンゴ民主共和国)が防衛すれば、5月にアルバレスが挑戦という青写真が描かれている。これまでアルバレスが臨んだ最重量の試合は79.1キロだが、クルーザー級(約90.7キロ以下)はさらに11キロ以上も重い。アルバレスにとっては危険度の高い試合といえる。そんな冒険マッチが本当に実現するのか。そしてアルバレスは5階級制覇を果たすことができるのか-。今年もアルバレスの動向から目が離せない。

最重量級のヘビー級ではWBA、IBF、WBOのベルトを持つオレクサンダー・ウシク(ウクライナ)と、WBC王者のタイソン・フューリー(英国)による4団体王座統一戦が期待される。19戦全勝(13KO)のウシクは身長191センチ、リーチ198センチ、体重約100キロ。32戦31勝(22KO)1分のフューリーは身長206センチ、リーチ216センチ、体重約125キロ。無敗の技巧派サウスポー同士の対決となる。ただし、ふたりとも春にそれぞれ次戦が計画されており、直接対決が実現したとしても早くて夏以降ということになる。

村田諒太(帝拳)がWBAスーパー王座に君臨するミドル級も注目階級だ。昨年12月29日に予定されたIBF王者、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)との統一戦がコロナ禍関連の事情で延期されたが、春に実現するのかどうか。その試合の勝者とWBC王者、IBF王者とのさらなる統一戦が期待される。

井上尚弥(大橋)を軸にしたバンタム級戦線も注目度が高い。井上は4団体の王座統一を目標に掲げているが、早ければ春にWBC王者、ノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)との再戦が実現する可能性がある。WBO王者のジョンリエル・カシメロ(フィリピン)との対戦も消滅したわけではないため、リング外の交渉の動きにも注目が集まる。

25戦全勝(24KO)のWBA王者、ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)を中心にしたライト級も、若くて勢いのある実力者が揃い活況を呈している。WBAスーパー王座、WBCフランチャイズ王座を含め4本のベルトを持つジョージ・カンボソス(オーストラリア)、27戦全勝(15KO)のWBC王者、デビン・ヘイニー(アメリカ)、そして3階級制覇の実績を持つ元王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)。さらに前4団体王者のテオフィモ・ロペス(アメリカ)、元WBC暫定王者のライアン・ガルシア(アメリカ)、元3階級制覇王者のホルヘ・リナレス(帝拳)もいる。どの組み合わせも興味を引くだけに、どんなカードが組まれていくのか注目したい。

昨年は4団体王座統一戦が3試合行われたが、その傾向は引き継がれることになりそうだ。今年はバンタム級のほかスーパー・ウェルター級、スーパー・バンタム級、ウェルター級でも王座統一が期待される。

2021年最優秀ボクサーはアルバレスで文句なし 2022年はどんな名勝負が生まれるか

2021年もコロナ禍のなか世界戦を含めて各国で数多くの注目ファイトが行われた。1年前までは無観客で開催されるケースが目立ったが、今年は1万人以上の集客イベントもあった。そんな2021年の世界のボクシング界を優秀選手を選ぶ形式で振り返ってみよう。

今年、最も顕著な活躍をした最優秀ボクサーは、スーパー・ミドル級の4団体王座統一を果たしたサウル・カネロ・アルバレス(31=メキシコ)で決まりだ。今年は3試合していずれもTKO勝ちを収めている。WBAとWBC王座に君臨していたアルバレスは2月にWBCの指名挑戦者を3回終了で棄権に追い込み、5月にWBO王者のビリー・ジョー・サンダース(英国)に8回終了TKOで圧勝。11月にはIBF王者のケイレブ・プラント(アメリカ)を11回TKOで屠って4本のベルトを収集した。文句なしのMVPであると同時にKO賞もゲットだ。

殊勲賞にはライト級のジョージ・カンボソス(28=オーストラリア)を推したい。11月に4団体王者のテオフィモ・ロペス(アメリカ)に挑み、ダウン応酬の激闘を判定で制して王座継承者になった。

戦前のオッズは8対1でロペスが圧倒的有利とみられていたが、そんな下馬評を覆しての戴冠だけに価値がある。

敢闘賞はスーパー・ライト級で4団体王座統一を果たしたジョシュ・テイラー(30=英国)と、一時期は3階級の世界王座を同時に保持していたWBAライト級レギュラー王者のジャーボンテイ・デービス(27=アメリカ)、そして3月にローマン・ゴンサレス(ニカラグア)を下して2団体の王座統一を果たしたスーパー・フライ級のファン・フランシスコ・エストラーダ(31=メキシコ)の3人を挙げたい。

技能賞はヘビー級でアンソニー・ジョシュア(英国)を破って2階級制覇を成し遂げたオレクサンデル・ウシク(34=ウクライナ)。ウェルター級のWBO王者、テレンス・クロフォード(アメリカ)、バンタム級の2団体王者、井上尚弥(大橋)が続く。

年間最高試合は10月に行われたWBC世界ヘビー級タイトルマッチ、タイソン・フューリー(33=英国)対デオンテイ・ワイルダー(36=アメリカ)で決まりだ。約115キロのフューリーと約108キロのワイルダーが真っ向から打ち合い、両者合わせて5度のダウンというド迫力の試合だった。

新鋭賞にはスーパー・ウェルター級のティム・チュー(27=オーストラリア)を推したい。元世界王者コンスタンチン・チューの息子としても知られるチューは今年、世界挑戦経験者ふたりを含む3人と対戦して3勝(2KO)を収めた。来年は親子王者を狙って大舞台に上がる可能性が高い。

上記の賞とは別に今年はカムバック賞を設け、ノニト・ドネア(39=フィリピン/アメリカ)とキコ・マルチネス(35=スペイン)を受賞者としたい。井上との激闘で知られるドネアは5階級制覇の実績を持っているが、今年は5月にノルディーヌ・ウバーリ(フランス)を4回KOで下してWBC世界バンタム級王座を獲得。12月には暫定王者のレイマート・ガバリョ(フィリピン)を技ありの左ボディブローで4回KO、団体内の王座統一を果たした。元IBF世界スーパー・バンタム級王者のマルチネスは11月にキッド・ガラハド(英国)を6回TKOで破りIBF世界フェザー級王座を獲得、2階級制覇を成し遂げた。7年の雌伏を経ての戴冠だった。

2022年は誰が活躍し、どの階級が活況を呈するのだろうか。そしてどんな名勝負が生まれるのか楽しみだ。

原功(はら・いさお)

 1959年(昭34)4月7日、埼玉県深谷市生まれ。日大法学部新聞学科卒業。82年、ベースボール・マガジン社入社。以来18年間「ボクシング・マガジン」の編集に携わり、88年から11年間同誌編集長。現在はWOWOW「エキサイトマッチ」の構成などを担当。著書に「タツキ」「ボクシング 名勝負の真実・日本編/海外編」ほか。