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大相撲裏話

31年ぶり2度目の茨城・古河夏巡業 2000席が即日完売 感染対策徹底してファンもてなす

この時を待ちわびていた相撲ファンも多いのではないだろうか。名古屋場所を終えて一息つくと、いよいよ夏巡業が始まる。コロナ禍前の19年12月の冬巡業以来、約2年8カ月ぶりの開催。各実行委員会では、チケットの販促や会場設営など来る日に備えて準備を進めている。

今回の開催地は首都圏の5カ所(8月5日=東京・立川、6日=千葉・船橋、7日=さいたま市、11日=茨城・古河、14日=埼玉・春日部)。このうち31年ぶり2度目の開催となる茨城・古河会場では、既に約2000席のチケットが完売した。担当者は「先行販売が始まったその日に売り切れになりました」と人気の高さに驚く。コロナ禍でも同会場では、ファンをもてなす心遣いを忘れない。禁じ手をユーモアを交えて紹介する「初切(しょっきり)」、相撲甚句、公開稽古、幕内取組などの恒例の催しに加え、力士たちとの記念撮影会も行う予定だ。なお初日の東京・立川会場のチケットは少し残っているという。

名古屋場所14日目までに戦後最多21人が休場に追い込まれるなど、コロナの感染拡大は止まらない。それでも、巡業は地域の活性化、普及面などで重要な役割を持つ。関係者はコロナ対策のさらなる徹底を図り、ファンに満足してもらえるよう努力している。【平山連】

コロナ続出の名古屋場所 力士像にマスク、全館消毒や大声声援禁止…場所完遂へ1人1人の努力

会場内にある力士像にもマスクが(撮影・平山連)

力士ら部屋関係者の新型コロナウイルス感染が相次ぎ、途中休場者が続出する今場所。感染症対策を徹底し、いかに大相撲を楽しんでもらうか。運営側は開催を継続するべく腐心している。

大声での声援の禁止を促したり、手洗い30秒を呼びかける掲示物を会場内に貼ったり。等身大ほどの大きさがある木製の力士像には口元にマスクを着用させ、来場客に注意喚起をしている。コロナ感染の急拡大で、10日目の19日から会場のドルフィンズアリーナでは座席での飲食を禁止した。熱中症対策として水分補給は認めるが、アルコール飲料は禁止。飲食の際は同アリーナ内外の専用スペースを利用するよう呼びかけている。

その日の全取組が終わると、清掃作業が行われる。出入り口、トイレ、客席の座布団1枚1枚に至るまで、スタッフが丁寧に消毒作業をする姿があった。芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「とにかく千秋楽までなんとか開催していくため、できるかぎりのことをしている」と話した。地道な1人1人の努力が、本場所成功につながる。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

その日の全取組終了後に翌日に向けて清掃作業が行われる会場(撮影・平山連)

「ロレックスデイトナほし~い」3年ぶりの七夕企画 短冊に書いた願い事について聞いてみた

七夕企画「関取衆の願い事」で書かれた千代大龍の短冊(撮影・鈴木正人)

関取衆の書いた七夕の短冊が中日まで会場内に飾られ、来場客を楽しませた。約3年ぶりの企画に参加した力士に願い事について聞いてみた。

「男気のある男になれますように」と書いたのは幕内の翠富士(25=伊勢ケ浜)。理由を尋ねると「おとこ気ある人の方がかっこよくないですか?」と同意を求められた。どんな人物が該当するのかと問うと「期待してもらったら、しっかり勝てるような人になりたいです」と力強く言った。

幕内の千代大龍(33=九重)は「(腕時計の)ロレックスデイトナほし~い」と願望たっぷり。数年前から手に入りづらくなったといい「正規店で300万で買ったとしても、質屋に入ると600万円ぐらいで売られるんですよ」と解説した。十両の天空海(31=立浪)は「甘い物をたらふく食べたいハート」と愛嬌(あいきょう)ある言葉を添えた。今場所は7日目から4連勝で好物の洋菓子カヌレやマスカットをご褒美に、白星を積み上げたい。

上位陣も「角番脱出」(大関正代)、「もっと上に行けますように」(関脇大栄翔)、「自分の相撲を極めたいです」(小結阿炎)など思い思い願いを書きつづった。新型コロナウイルスの影響が深刻さを増す中で「無事に15日間終わりますように」(横綱照ノ富士)と切に願うばかりだ。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

七夕企画「関取衆の願い事」で書かれた翠富士の短冊(撮影・鈴木正人)
七夕企画「関取衆の願い事」で書かれた短冊(撮影・鈴木正人)
七夕企画「関取衆の願い事」で書かれた一山本の短冊(撮影・鈴木正人)

全員白星先行の武隈部屋 力士支える滞在先「くつろぎ天然温泉湯楽」心づくしの効果てきめん

男風呂と女風呂の入り口前に設けられた武隈部屋をPRするのれん(撮影・平山連)

<大相撲名古屋場所>◇8日目◇17日◇ドルフィンズアリーナ

武隈親方(元大関豪栄道)が独立し新設した武隈部屋が、名古屋場所中に滞在している「くつろぎ天然温泉湯楽」(愛知・津島市)。心の行き届いたおもてなしで力士たちを支えている。

隣接する土俵で稽古に励む力士たちに、栄養バランスを考えた食事や自慢の温泉やサウナを提供。効果はてきめんで、十両デビュー場所の豪ノ山(24)を筆頭に4人全員が中日を終えて白星先行とした。

同店の村雲稔樹店長によると、親会社の社長と知り合いだった武隈親方からの、滞在先として使いたいという要望がきっかけ。親方や豪ノ山など計5人を受け入れた。食事スペースには仕切りを設け、お風呂の利用は一般客と接触を避けるため、開店前と閉店後のみに限定。新型コロナ対策を徹底しつつ、快適に過ごせるよう腐心した。

店内には親方や豪ノ山を紹介する特製ボードが置かれ、男風呂と女風呂の入り口前には「武隈部屋」と書かれた大きなのれんが。朝稽古見学後に店に寄ってくれるファンもいるといい「滋賀や岐阜といった県外から来たという方もいて、店も活気づいてます」と同店長。好調を維持する力士たちの活躍を何よりの楽しみにしながら、残りの期間も最大限バックアップしていく。【平山連】

「くつろぎ天然温泉湯楽」の店内に置かれた武隈部屋をPRするボード(撮影・平山連)
「くつろぎ天然温泉湯楽」の店内に置かれた武隈部屋を紹介する特製ボード(撮影・平山連)
武隈部屋の滞在先となっている「くつろぎ天然温泉湯楽」(撮影・平山連)
「くつろぎ天然温泉湯楽」で実施中の武隈部屋の応援イベント(撮影・平山連)

日本で合宿、相撲ウクライナ代表が米国で開催中の国際総合大会「ワールドゲームズ」で快進撃

ワールドゲームズで9個のメダルを獲得した相撲のウクライナ選手団(ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所提供)

ロシアの軍事侵攻で練習拠点を失い日本国内で事前合宿した相撲のウクライナ代表が、米国で開催中の国際総合大会「ワールドゲームズ」で快進撃を見せた。男女計8階級で金3個を含む計9個のメダル獲得。大会に出場した17カ国中、日本に次ぐ2位の成績を収めた。事前合宿の支援に当たったウクライナ相撲連盟JAPAN事務所代表の松江ヴィオレッタさんは「これ以上ない素晴らしい結果」と興奮が冷めない様子だ。

選手団は5月末に来日後、6月から大分・宇佐市と愛媛・西予市で実施。大会では合宿に参加した6人全員がメダリストになった。「『日本で練習できていなかったら、この結果にはならなかった』『このメダルの半分は君たちのおかげだ』と言ってくれて、活動をやって良かったと思いました」と心が打たれた。

選手たちの頑張りが、自身にとっても大きな刺激になった。「どんな状況でも生き生きと相撲に打ち込む姿に元気をもらいました」となつかしむ。「今度は戦争の理由じゃなくて、日本に来たい」と言ってくれた言葉が忘れられない。「ウクライナの相撲文化を知ってもらうという最初の目標は達成した」と大会に向けた支援は終えたが、引き続きサポートを惜しまない。「これからどういう広がりを見せられる。それが一番大事」と両国の架け橋となる。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大会前に日本で事前合宿を行った相撲のウクライナ選手団と支援者たち(ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所提供)

大栄翔の日大大学院修士論文は「相撲文化継承への提言」 大関とりの足固めへ指導教授もエール

名古屋場所4日目 隆の勝(右)を激しく攻める大栄翔(撮影・鈴木正人)

関脇大栄翔(28=追手風)は今春まで日大大学院の総合社会情報研究科に通い、相撲部屋制度に通じる同族経営、ファミリービジネスについて修士論文を書き上げた。

以前その内容を問うと、次世代に相撲文化を継承するための提言を40ページにわたって論じたことを教えてくれた。

指導に当たった加藤孝治教授によると、論文では国内スポーツ界における大相撲を位置づけた上で、相撲部屋の経営手法や協会の制度的な課題を分析。大相撲の文化が活性化するために必要なことを提言した。「特徴的なのは、自分が相撲と出合った時の経験を交えて論じたこと。若い人たちが相撲と触れ合う機会をどうやって作っていくかという問題意識が高かった。たしか量的に5万字くらい書いていた」と懐かしむ。

「20代後半という現役バリバリで活躍している時に大学院へ通った経験は大きな意義」と話す加藤教授は、今も大栄翔と連絡を取り合うなど交流が続く。殊勲賞を獲得した先場所後に連絡を入れると、お礼の言葉が返ってきた。前半戦で出遅れたが、巻き返しを図る今場所。大関とりの足固めを目指す教え子へ「文武両道の『文』が修了したので、今度は『武』で頑張ってほしい」とエールを送った。【平山連

21年4月21日「日本大学校友会大阪支部」による化粧まわし贈呈式に出席した大栄翔(左端)

朝乃山復帰に思い寄せる故郷呉羽町「中学時代から散髪に来るヒロ君」理容店・川上さん思い出語る

地元富山市呉羽町から朝乃山を応援する理容店「ネッスル」の川上さん(撮影・平山連)

<大相撲名古屋場所>◇2日目◇11日◇ドルフィンズアリーナ

朝乃山にひときわ特別な思いを寄せているのが、故郷・富山市呉羽(くれは)町の住民たちだ。同町内の理容店「ネッスル」の川上奈々子さん(51)もそんな1人。「拡大鏡を使って番付表の中からしこ名を見つけた時には、本当にうれしかった」と心を躍らせた。

朝乃山は中学時代から髪を切りに来る常連客。散髪中はたわいのない話で盛り上がり、角界入り後も帰省した際には、ひげをそりに店に寄ってくれるなど義理堅い。「私にとっては中学時代から散髪に来るヒロ君(=本名・石橋広暉から)。昔から優しくて真面目で、うちの小さい子どもたちをかわいがってくれて面倒見が良いの」。思い出話に、笑みが絶えない。

場所中は、なじみの客たちとテレビを食い入るように見るのが恒例だった。「千秋楽に欠かさず店に来て、髪を切りながら観戦するお客さんもいた。勝ったらまるで自分のことのように喜び、負けたら通ぶって取組を分析する。そんなに詳しくないのにね(笑い)」と懐かしむ。

復帰後初の白星は、ただの1勝ではない。再び地元を相撲で盛り上げるための、価値ある1歩目になったはず。川上さんは「場所後に、また店に立ち寄っていろいろ話すのが楽しみ」と、再会する日を心待ちにしている。【平山連】

地元富山市呉羽町から朝乃山を応援する理容店「ネッスル」の川上さん(左)と店主の高見さん(撮影・平山連)
朝乃山の故郷富山市呉羽町の理容店「ネッスル」に飾ってある直筆サインや手形(撮影・平山連)
剛士丸(左)と立ち合う朝乃山(撮影・鈴木正人)

ジョージア出身の相撲ヨーロッパチャンピオンが角界入り目指す「相撲の文化が好き」迫る年齢上限

好きな日本語は「頑張る」。ジョージアから角界入りを目指すアミラン・ツィコリゼ(撮影・平山連)

ジョージア出身の若者が、角界入りを目指して入門できる相撲部屋を探している。アマチュア相撲ヨーロッパチャンピオンに輝いたアミラン・ツィコリゼ(23)は、知人を頼り5月に来日。複数の部屋に訪れて入門先を探したが、今回の約1カ月間の滞在では見つからなかった。力士になれる年齢上限が迫る中でも、希望は失わない。近く再来日し入門先を決めたいという。

帰国前の6月中旬、都内でアミランに会った。大好きな相撲について質問すると、英語と独学で学んだ日本語を駆使して一生懸命に語る。好きな力士には「北の湖、千代の富士、白鵬」を挙げ、現役幕内力士の栃ノ心(34=春日野)や元小結の臥牙丸らジョージアから海を渡った先輩たちに憧れていることを熱弁した。自分もいつかスポットライトを浴びる日を夢見てやまない好青年に映る。

幼い頃は柔道に打ち込んだ。「新しいチャレンジがしたい」と、相撲大会に出るようになったのは5年ほど前。16年にモンゴルで行われた世界選手権U-18部門で優勝すると、アマチュア相撲界のトップ選手に名乗り出た。21年度は欧州選手権のU-23部門で優勝、シニア部門では3位、さらに欧州杯のシニア部門で優勝した。199センチ、170キロの恵まれた体格で「押しも四つもどっちもできる」という万能さが武器だ。

日本の相撲界に入りたかったが、世界的に拡大が続いた新型コロナウイルスにより来日が遅れた。気がつけば、23歳。日本相撲協会が定める新弟子検査受検の年齢制限はスポーツ経験者を対象に23歳未満から25歳未満に緩和される特例があるため、少し時間は残されている。ただ、同協会の内規により外国出身力士は1部屋1人と決まっているため、入門先を探すだけでも一苦労だ。

入門先が決まらず少し落ち込んでいるように見えたが、今後について尋ねると「あきらめるつもはないよ」と強調した。相撲の魅力について「ただ、体がデカいだけではないけない。心技体を合わせて向かっていく、相撲の文化が好きなんです」と目を輝かせた。そんな若者の行く末に注目せずにはいられない。【平山連】

ジョージアから角界入りを目指すアミラン・ツィコリゼ。好きな日本語は「頑張る」(撮影・平山連)

正代、豊山が「ペコちゃん」「ポコちゃん」化粧まわし 縁結びは東農大「多くの社員を採用」

大相撲夏場所 初日 正代は菓子メーカー「不二家」のペコちゃんがデザインされた化粧まわしで土俵入りする=2022年5月8日

大関正代(30=時津風)と平幕の豊山(28=同)が土俵入りした際に締める化粧まわしが注目を集めている。

老舗洋菓子メーカーの不二家のマスコットキャラクター「ペコちゃん」「ポコちゃん」が描かれ、正代はペコちゃん、弟弟子の豊山はポコちゃんを着用。同社が化粧まわしを制作したのは初めてで、そもそも相撲界との接点も今までなかったという。一体どんな経緯で贈呈に至ったのか。

同社の広報担当者は「2人は東京農業大学出身。食品メーカーということもあり、同大学から多くの社員を採用している縁がありました」と答えた。また、本社近くの護国寺で行われる節分行事で部屋の関係者と顔を合わせていたということもあり、応援する気持ちが強くなったという。

化粧まわしにペコちゃん、ポコちゃんを選んだ理由については「代表するキャラクターですし、当社を示すのに一番わかりやすい」と説明。気になるお値段は「回答を控えさせていただきます」。社内でも話題になっているようで「かわいらしくて、目立っていてインパクトもあると好評です」と答えた。千秋楽を残し2人とも負け越しが決まったが、「最後までケガなく、みんなが元気になれるような相撲を取ってほしい」とエールを送った。【平山連】

大相撲夏場所 初日 豊山は菓子メーカー「不二家」のポコちゃんがデザインされた化粧まわしで土俵入りする=2022年5月8日

鎮魂の思いが込められた幟…常盤山親方の元兄弟弟子が「きっと天国から」見守っている聖地の土俵

2月に死去した千葉公康さん名で贈られた常盤山部屋の幟(のぼり)

湿気を含んだ春風に乗って、色とりどりの幟(のぼり)が両国国技館の敷地内にはためく。ひいき筋が、身びいきする部屋や関取衆のしこ名を記し提供するものだ。その中に、鎮魂の思いが込められた幟がある。「常盤山部屋さん江 ちゃんこ料理新 千葉公康」。そのひいき筋は天国から聖地の土俵を見守っている。

新花山のしこ名で幕下まで相撲を取り引退後は大阪で、ちゃんこ料理店を営んでいた千葉公康さんが2月1日、57歳で死去した。その千葉さんの名前を借りて幟を作ったのが常盤山親方(元小結隆三杉)。現役時代、二子山部屋で兄弟弟子の関係にあった。引退後も親交があり相撲道場で指導していた千葉さんの教え子も同部屋に入門した。「心臓が悪かったのは現役時代から知っていたけど急だったからね。僕の5年ぐらい後輩だけど弟同然。20年以上も店を開けたのも千葉ちゃんの人徳だからね」。

春場所千秋楽翌日には千葉さんの教え子だった新隆山(三段目)、今場所から序ノ口に番付が載った雷輝勝を連れ千葉さん宅で線香を上げた。以前に立てた幟は「大阪ちゃんこ新」の名義だったが、今回の幟は前述のように本名も入れた新調品だ。毎年夏場所で、この幟を必ず掲出すると決めた常盤山親方は少し涙声だった。「きっと天国から応援してくれているからね」。【渡辺佳彦】

2月に死去した千葉公康さん名で贈られた常盤山部屋の幟(のぼり)

ウクライナ出身獅司対ロシア出身狼雅 国技館を包んだ温かい拍手

<大相撲夏場所>◇10日目◇17日◇東京・両国国技館

両者のしこ名と出身地がアナウンスされると、東京・両国国技館内は温かい拍手に包まれた。幕下上位のウクライナ出身初の力士の獅司(25=入間川)とロシア出身の狼雅(23=二子山)が対戦し、狼雅が下手投げで制した。勝ち名乗りがあがると、再び館内に大きな拍手が起こった。狼雅は2勝3敗、獅司は1勝4敗で負け越しが決まった。

狼雅(右)の寄りをこらえる獅司(撮影・野上伸悟)

この一番を特別な思いで見守ったのが、ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所代表の松江ヴィオレッタさん(37)。7月に米国で行われるアマチュア相撲の世界大会に出場するため、今月下旬から大分・宇佐市などで事前合宿を行うウクライナ選手団をサポートしている。仕事の都合でテレビ観戦できなかったが、ウクライナを訪れた際に会った獅司が負け越したと聞いて残念がった。それでも両力士をたたえる拍手が館内から送られたと伝えると「相手のことを深く敬う相撲の良さを感じます」と、ひときわ感慨深げに話した。

ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所代表を務める松江ヴィオレッタさん(左)と共同代表の三池さん(撮影・平山連)

母がロシア人、父が日本人の松江さんは「どこの国で生まれたかということよりも、人と人の信頼関係が大事」と信じる。「負けた相手を敬う相撲の考え方を広めたい」(ウクライナ相撲連盟のセルゲイ名誉会長)という言葉に共感して設立したJAPAN事務所はまだ始まったばかりだが、この日の取組から受けた刺激を活力にして自分の道を突き進む。

【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

「忘れてもらいたくない」人がいる 御嶽海が育った長野・上松町で続くパブリックビューイング

<大相撲夏場所>◇8日目◇15日◇東京・両国国技館

長野・木曽郡上松町は「相撲どころ」と称される。本場所初日を迎えると、同町の公民館は地元住民でにぎわいを見せる。大関御嶽海(29=出羽海)を応援しようと、PV(パブリックビューイング)が行われるから。初土俵を踏んだ時から続く恒例行事だ。

遠藤(右)をはたき込みで破る御嶽海(撮影・野上伸悟)

主催する同町のスポーツクラブ「木曽ひのきっ子ゆうゆうクラブ」事務局長の辺見元孝さん(63)は「優勝争いに絡む場所では、ほぼ毎日やりますよ」と胸を張る。コロナ禍では感染症対策のために大会議室でイスの間隔を空けるなどして開催。今場所は従来通り公民館玄関のロビーに会場を移した。初日に平幕の高安を退けた一番には、テレビ中継を見ようと25人が駆けつけた。しこ名が入ったそろいのタオルやうちわを手にして応援する姿は、地域に一体感を与える。

PVは今後も実施していく。なぜ続けるのかと尋ねると、辺見さんは「上松町で育った大道久司(御嶽海の本名)のことを忘れてもらいたくないから」と答えた。厳しい戦いが続く今場所だが、「10勝は絶対最低限クリア」と誓う29歳の巻き返しを期待していた。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

7月世界相撲大会へウクライナ代表の日本合宿をサポート “日本の代理人”松江ヴィオレッタさん

ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所代表を務める松江さん(左)と共同代表の三池さん(撮影・平山連)

「ウクライナの相撲文化を知る私だからこそやれることがある。このまま見過ごすことはしたくない」。ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所代表の松江ヴィオレッタさん(37)が、4月に発足した団体の経緯を切実な声で訴えた。7月に米国で行われる世界大会に出場する代表選手たちは、ロシアの軍事侵攻により満足に稽古を積めていない。大分・宇佐市などで事前合宿を行うため今月下旬に来日するにあたり、松江さんはサポートを買って出た。

ウクライナの競技人口は3000人ほどだが、同国初の力士で幕下の獅司(25=入間川)がいる。松江さんは仕事で過去に2回現地を訪れ、相撲連盟名誉会長のセルゲイ氏の教えの下で老若男女幅広い世代が稽古に励む姿を見た。

第2の都市ハリコフは第48代横綱、大鵬の納谷幸喜さんの父親の出身地。日本との縁を感じた。セルゲイ氏が「負けた相手を敬う相撲の考え方を広めたい」と話す言葉にも共感し、JAPAN事務所の旗揚げに協力した。

ロシアの軍事侵攻で隣国に避難した代表選手もいる。稽古を再開できていない人も多い中、世界大会が刻々と迫る。大会に向けてピークに持っていこうとする選手団20人のために、「日本の代理人」という松江さんは仲間とともに準備を急ぐ。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

東大・須山2連勝 同部屋・志摩ノ海「東大生らしい学ぼうという姿勢」宇良「自分たちも刺激に」

前相撲で須山は若大根原を破り2連勝(撮影・足立雅史)

日本の最難関大学とされる東大から初の角界入りを果たした須山(24=木瀬)が前相撲2日目も白星を挙げ、初日に続き2連勝を飾った。対戦相手はともに10代だったが、「(土俵に上がれば)年齢なんて関係ないです」ときっぱり言った。師匠の木瀬親方(元前頭肥後ノ海)から言われた「前に出ろ」というアドバイスを忠実に実践している。

異色の経歴を持つ須山は、一から学ぼうとする姿勢を崩さない。先輩の幕内力士たちも、そんな弟弟子に大きな注目を寄せている。

同じ木瀬部屋に所属する平幕の志摩ノ海(32)と宇良(29)に後輩について尋ねると、2人とも貪欲な姿に好感を持っていた。志摩ノ海は「すごく学ぼうという姿勢がある。いろいろ聞いてきてくれて、そこが東大生らしい」と答えた。

宇良は須山とまだ世間話程度しか会話したことがないようで、「(相撲を学ぶ相手として)この人は違うなと思われてるかもしれない」と笑った。それでも「学ぼうという姿勢は自分たちも刺激になる。こちらも東大に興味があるし、(須山は)相撲取りに興味がある。これからが楽しみですね」と、後輩との交流を心待ちにしていた。【平山連】

前相撲で須山(左)は若大根原を破り2連勝(撮影・足立雅史)

元兄弟子の元稀勢の里が見た高安「力強さ戻り培った経験が加わった」優勝あと1歩に迫った春場所

高安(2022年3月18日撮影)

若隆景による新関脇優勝で幕を閉じた3月の春場所。千秋楽時点で優勝の可能性があったのは3人と盛り上がりを見せた春場所だったが、序盤戦から場所を引っ張ったのが平幕の高安(32=田子ノ浦)だった。

勝てば優勝が決まる結びの一番で関脇阿炎に負け、優勝決定戦では若隆景に土俵際で逆転負け。千秋楽の数日前までは「ついに初優勝か」と周囲もうずうずしていただけに、肩を落としたファンも多かったはず。

場所中に取材に応じた高安の元兄弟子の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)もその1人だろう。春場所14日目に高安の優勝に備えて取材したのだが、お蔵入りになってしまってはもったいないので、当時取材した話を当コラムに記そうと思う。

昨年8月に独立するまでの約16年間、二所ノ関親方は高安の苦楽を間近で見てきた。厳しい稽古や集団生活になじめず、何度も部屋から脱走して実家に逃げ帰った新弟子時代を思い返し「まさか関取になるとは思わなかった力士ですから。優勝するなんて夢にも思っていない」と笑った。

春場所では“新高安”を実感したという。ちょうど1年前。部屋付き親方として田子ノ浦部屋にいたころ、高安と三番稽古をしていても力強さや重さを感じなくなった。「あぁ、もう高安これで終わりかなって諦めた時もあった」という。その後に独立し、高安の姿を見るのは本場所だけに。昨年九州場所の時も印象は変わっていなかったが春場所は違った。実際に体重は大関時代の183キロまで増量。同親方は「肩から背中の張りがすごい。腰まわりもかなり太い。ハムストリングも復活した」と目を見張った。

加えて、経験の多さが高安の強みでもあった。「苦しいことやつらいことをたくさん味わってきた。今場所は集大成」と同親方。「高安の良さと今までやってきた我慢強い相撲が融合している。ここ何年も見てないような相撲になっている」と分析した。体を大きくしたことで本来の力強さが戻り、そこに培ってきた経験が加わり結果につながった。「考え方と技術と体力が融合されて新しい高安になってきた」と話す。

環境が変わったことも大きな要因となった。二所ノ関親方が独立し、高安の稽古相手は幕下以下の力士だけとなった。最近、高安の胸まわりの体毛が薄くなったのでは、と記者に問われると「胸を出しているんじゃないですか。『稽古しない力士は毛が増える』って先代(故鳴戸親方=元横綱隆の里)がよく言っていたから」と冗談交じりに話したが「非常に工夫しながら若い衆と稽古できているのかもしれない」と推測していた。

二所ノ関親方は取材当時、「優勝できる」「優勝して欲しい」といった直接的な言葉こそ使わなかったが、言葉の端々には、今場所こそは、という思いがにじみでていた。

兄弟子や周囲の大きな期待を背負った高安だったが、あと1歩届かなかった。それでもまだまだ視線は下に落とさない。

大相撲夏場所(5月8日初日、東京・両国国技館)の番付発表前の4月下旬、両国国技館の相撲教習所で行われた合同稽古に参加した際、高安は春場所を振り返り「優勝は出来なかったけど、たくさんの人から激励の言葉をいただいた。まだまだ頑張れるというのは示せたので、裏切らないように、もっと頑張っていきたいですね」と語った。大関経験者の実力あるベテランの視界には、まだ賜杯が色濃く映っている。【佐々木隆史】

大相撲でも裏話でもないけれど…伝説の佐々木朗希2戦を生で見届け、目の当たりにした健全な姿

10日のオリックス戦で完全試合を達成したロッテ佐々木朗希

その還暦は超えていると思しき男性は、懇願するような口調で球場係員に問い掛けていた。「当日券ないの? 当日券。ないの?」。手には1000円札2枚が握り締められていた。スポーツ観戦のチケットもオンライン販売が幅を利かせ、ましてやコロナ禍の折、当日券販売も多くはない、このご時世。あえなく「当日券は売り切れました」の返答に、うなだれる男性の姿は実に気の毒だった。試合開始まで3時間以上もあるというのに。ただ、こんなシーンに少しだけ、スポーツが日常に戻ったことを感じさせられた。めったにお目にかかれない快投を見に行きたい、という衝動に駆られた人も多かっただろう。4月17日のことだった。

その1週間前。ZOZOマリンスタジアムで佐々木朗希の完全試合を生で見届けた。柄にもなく「ああ、もう思い残すことはない」と、しばらく座席から立てないほどの充足感、脱力感に体中が襲われた。背番号17が演じた、21世紀初の快挙を生で見届けてから1週間。再び足はスタジアムに運ばれていた。幸い、快挙前に前売り券はオンラインで購入していた。あの千円札を握り締めていた男性には、本当に申し訳ないが…。

2試合連続? よもや再び? まさかねえ…などという凡人の思いをよそに、令和の怪物は凡打の山を築いていく。いや、プロだよ、一回りすれば1本ぐらい打たれるだろうに…。裏腹にある期待の思いを胸の中に押し殺し、それでも4回、5回、6回とイニングを重ねても走者を1人も許さぬ快投。だが8回の攻撃が終わって、佐々木朗希がマウンドに上がることはなかった。

昭和のオジサン記者としては、投げる姿を見たかった。せめて9回まで。大切に育てたいのは分かる、分かるけど、ここを乗り越えたらもっと成長出来るんじゃないのか、100球を超えると肩、肘が壊れるのか…。さまざまな感情が込み上げてくる中、交代がアナウンスされ次に投げる守護神のアップテンポな登場曲が流れる。手拍子と小躍りで迎える場内の空気になじめず、喫煙所まで小走りした。その狭いスペースには、恐らく私と同じような感情を胸に押し殺していたような、何とも言えない空気が充満していた。

ただ、世間の受け止めからすれば、私のような「昭和のオジサン」的な思考は少数派のようだ。各種のネットアンケートなどを見れば「交代は正解」が7、8割を占める。今後10年、20年と将来のある青年のことを考えれば…ということのようだ。それも時代か…。そう自分を納得させると同時に、物議を醸す事象が起こるのは決して悪いことではないとも感じた。

今回の交代劇にファンの論調は「二分(にぶん)」どころか昭和のオジサン大劣勢の8対2ほどの差があるが、人ぞれぞれ感情や思いを抱き、発することは精神衛生上、悪ではない。ヘイトや誹謗(ひぼう)中傷は、もっての外であることは言うまでもない。たとえ9回以降を投げていたとしても、勝ち投手となって達成される完全試合が成立していた保証はない。予測を含んだ議論に「正解」などないはずだ。何かと思考停止になりがちなコロナ禍の中、あの男性が当日券を求めてスタジアムに足を運んだことも、交代劇で論議を呼んだことも、至って健全な姿だったと思う。

週明けには大相撲夏場所の番付発表があり、5月8日には初日を迎える。佐々木朗希と同じ東北出身の若隆景には、大関昇進への足固めが期待される(こじつけも度が過ぎるか…)。再び若武者に立ちはだかる横綱照ノ富士の復帰土俵にも注目したい。東大生力士の初土俵やいかに…。背番号17ほどの衝撃は与えられないにしても、プロ野球に負けず劣らずの白熱戦をファンは待っている。最後に。「大相撲裏話」のタイトルからは大きく逸脱してしまいました。「大相撲」でも「裏話」でも何でもない話ばかりに終始してしまい、申し訳ございません。この借りは必ずや…。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

ロッテ佐々木朗希(2022年4月17日撮影)
優勝決定戦で若隆景(右)は高安を上手出し投げで破り初優勝を飾る(2022年3月27日撮影)

悲願の賜杯にあと1歩届かなかった高安「もう1回優勝を目指します」夏場所での挑戦に期待

優勝決定戦で若隆景(右)は高安を上手出し投げで破り初優勝を飾る(撮影・和賀正仁)

大相撲春場所は関脇若隆景(27=荒汐)が、初優勝を飾った。千秋楽に優勝の可能性があった3力士がいずれも本割で敗れる波乱。12勝3敗で並んだ優勝決定戦を若隆景が、高安(32=田子ノ浦)を上手出し投げで制した。

勝者よりも、敗者に目がいってしまう。悲願の賜杯はあと1歩、手の届くところにあった。東前頭7枚目で迎えたこの場所、初日から10連勝するなど優勝争いをけん引した。しかし、11日目に若隆景に初黒星を喫すると、終盤5日間で3敗と失速した。

それでも望みをつないだ優勝決定戦。相撲の流れは高安だった。土俵際まで追い詰めた圧力に膝がくの字に折れた若隆景。勝機は九分九厘、高安にあったが最後に見放された。

「これが結果です」と声を絞り出した取組後のオンライン取材が印象的だった。悔しさを全身からにじませながら、現実を受け止めているように映った。

「力足らずです。最後は気持ちしかなかった。すべてを出し尽くしました。負けたということはまだまだ稽古が足りないということです。本当に勉強させていただきました」

決してエリートではない、苦労人だ。10年九州場所の新十両昇進まで34場所を要した。11年名古屋場所の新入幕後も、好成績のあとはけがに泣く。そんな繰り返しだった。

17年名古屋場所で大関に昇進も在位15場所中、途中休場を含めて6度の休場。大関陥落となった19年九州場所では幕内土俵入りの後にぎっくり腰を発症して休場を余儀なくされた。

不完全燃焼による悔しさをかみしめてきた。それだけに今年の春場所は期するものがあったのだろう。170キロ台に落ちていた体重をトレーニングで183キロまで増やした。その重みを生かした相撲で初優勝に迫り、届かなかった悔しさは見ている側にも伝わった。

「もう1回優勝を目指します。この気持ちを忘れず、挑戦したいです」。この思いが稽古に、土俵に向かわせるはず。5月8日、東京両国国技館で初日を迎える夏場所。注目したい力士の1人にあげたい。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

衰え知らずの37歳“鉄人”玉鷲「まだまだ新弟子」若さの秘訣は入門以来欠かさぬ体へのこだわり

春場所14日目、玉鷲は阿武咲(手前)をはたき込みで破る(撮影・小沢裕)

“鉄人”玉鷲が、着々と記録を更新し続けている。初土俵からの連続出場記録は今場所で1421回に届く見込み。このまま来場所も突っ走れば、1425回の高見山を抜いて歴代4位の記録となる。5日目には横綱照ノ富士を破って2場所連続の金星。37歳4カ月での金星は歴代5位と、元気ハツラツの相撲を見せている。

若さの秘訣(ひけつ)は何か。玉鷲に聞くと「周りの接してくれている人のおかげです」。年齢のことを言われると「27歳ですよ、僕」と、とぼけたように話す。「まだまだ若いですから。強い相手とやるのが楽しくてしょうがない」。いつも笑顔で話す姿からは、確かに若さを実感する。

しかし、実際は体のケアなどにこだわりを持つ。ある親方は、玉鷲のケアについて「取組が終わってから部屋に戻った後に毎日1時間ぐらいはストレッチなどに割いている」と明かす。入門してから18年たった今も欠かさないとか。

ただ、本人はいつも冗談口調で若さをアピールする。過去には「まだまだ新弟子なのでよろしくお願いしまーす」と話す時もあった。心身ともに若さあふれる鉄人が、これからもまだまだ土俵を沸かせる。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

春場所5日目、玉鷲に押し倒しで敗れる照ノ富士(2022年3月17日撮影)

若ノ勝、3年前の体験入門で貴景勝から受けた金言「プロとアマは違うぞ」実感

当時の千賀ノ浦部屋で稽古する貴景勝(手前)と体験入門として稽古に参加した現若ノ勝の竹田章一郎(19年2月撮影)

プロになった実感が沸々と湧いてきた。昨年1月の全国高校選手権で準優勝に輝いた西序ノ口11枚目の若ノ勝(本名・竹田章一郎、18=常盤山)は「所作や覚えることはたくさんあるけど、徐々に慣れてきた」と胸を張る。先場所が初土俵で、今場所から番付にしこ名が載った。

3年前の19年2月上旬だった。栃木・若草中3年時で、埼玉栄高進学前のこと。千賀ノ浦部屋(現常盤山部屋)に、体験入門として稽古に参加した。同部屋所属で当時関脇の貴景勝は、後に高校の先輩となり、兄弟子になる。同じ突き押し相撲。「あのときから憧れの人だったので、その人に指導してもらえてうれしかった」。大関とりという大事な場所を控える貴景勝も、目をかけた。自身の稽古を止めつつ助言を惜しまなかった。

貴景勝に繰り返し言われた言葉がある。「技術はアマチュアでも教えてくれるけど、プロとアマは違うぞ」。入門から約3カ月。若ノ勝は「高校3年間でプロに入れる体づくりをしてきたが、プロは相撲を取る回数が倍以上。あのときの言葉通り、プロは違う」。3年前に言われた“金言”を大切にしている。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

新隆山「いい報告がしたい」亡くなった恩師・千葉公康さんのしこ名と意思を受け継いで出世目指す

新隆山(2022年3月18日撮影)

故郷の大阪で、場所後に会えるはずだった。東三段目60枚目の新隆山(あらたかやま、18=常盤山)は「信じられなかった。本当にショックで…」と言葉が出てこない。

場所前の2月1日に、東大阪相撲道場での恩師、千葉公康さんが57歳で亡くなった。「新花山」のしこ名で、最高位は西幕下13枚目。師匠の常盤山親方(元小結隆三杉)とは旧二子山部屋の兄弟弟子で、引退後は東大阪市でちゃんこ料理店も営んでいた。新隆山は小5から中3まで同道場で師事。「気持ちの面で絶対に弱気になっちゃいけないと教わった」とかみしめる。

昨年7月の名古屋場所で「若洸闘」から、恩師と同じ読みのしこ名に変えた。初土俵は19年春場所。入門前から、新幕下昇進などを機に改名できればと考えていた。「そのとき負けが続いていたので、師匠が『心機一転変えよう』と。千葉先生は喜んでいました。『お前が継ぐと思っていなかったよ』と言われて、自分もうれしかった」。

自身の最高位は、先場所の西三段目33枚目。「先生がかなえられなかった関取を目指して、いい報告がしたい」。道半ばだが、しこ名と意思を受け継いで出世を目指す。【佐藤礼征】

 取組を見るだけじゃ分からない、日刊スポーツの大相撲担当記者が土俵周辺から集めてきた「とっておきネタ」をお届けします。