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リングにかける

73歳フレアー引退試合で見せた「男の意地」 11年ぶりリングへ猛練習1日500回スクワット

ジ・アンダーテーカー(上左)やブレット・ハート(下左端)、ミック・フォーリー(同2番目)と話すリック・フレアー(フレアーのインスタグラムより)

日米のマットで人気を博した米国人レジェンドレスラー、リック・フレアー(73)はラストマッチで「男の意地」を示していた。7月31日(日本時間8月1日)、米テネシー州ナッシュビルで開催されたプロレスイベント、スターキャスト5大会のメインイベントで「リック・フレアー・ラストマッチ」として引退試合に出場。公式マッチは11年9月以来、約11年ぶり。義理の息子となるアンドラデ・エル・イドロ(32)と組み、WWE殿堂入り者ジェフ・ジャレット(55)、ジェイ・リーサル(37)組と対戦。26分40秒、ジャレットを右ナックルパートと足4の字固めでKOし、3カウントを奪った。

何発も逆水平チョップを放ち、決めぜりふ「Wooo(ウー)!」と叫んだ。試合途中の場外乱闘で額から流血し、顔は血まみれになった。50年近くのキャリアを勝利で締めくくると、フラフラになりながらもリングサイドで試合を見届けた「地獄の墓掘人」ジ・アンダーテイカー、ブレット・ハート、ミック・フォーリーらと抱擁を交わすと涙を流した。

集結したファンから「フレアー、感謝します」コールを受けると、「ナッシュビルのファンを愛している。(ナッシュビル出身のアーティスト)キッド・ロックと一緒にお祝いする」とあいさつ。その後、アンドラデのサポートを受けつつ、自ら花道を歩いてバックステージに戻った。健康状態を懸念するファンの声が上がっていたが、試合後のロッカールームで医師2人に健康チェックを受け、流血以外の問題は特になかったという。フレアーは「空腹でご飯を食べにいきたい。ナッシュビルの夜を楽しみたい」と元気な姿のまま会場を立ち去った。

WWEでは08年のレッスルマニア24大会でショーン・マイケルズ戦が最後のリング。11年9月、米団体インパクト・レスリングでのスティング戦以来のファイトだった。その後、WWEなどでスーツを着用し、娘のシャーロット・フレアーのセコンドに入ったり、他選手と抗争したりとリングに絡んでいたが、試合はしていなかった。

フレアーは「リングに入り気取って『Wooo!』と言うだけの男だと思われているのは分かっていた。私がしなければならないのは自らを満足させ、みんなに『なんてこった』と言わせること」と往年のファイトを見せることを予告。トレーニング中では、1日500回のスクワットやエアロバイクなどのフィジカルから鍛えなおしていた。あまりのハードメニューで急激に心拍数が上がったり、胸の痛みに襲われて肺炎のような症状になったとも振り返っていた。足底筋膜炎も患ったそうだ。しかし「試合延期することは決してない。これを実現するために多くの人々が時間と労力を費やしてきた。今の状態を100%維持したかっただけだ」とプロ意識を貫いた。さらに「お酒を飲まないとうまくいかない」と引退試合まで毎晩、飲酒していた事実も口にしていた。

全日本プロレスでは天龍源一郎、ジャンボ鶴田、長州力、2代目タイガーマスク(三沢光晴)、輪島大士、新日本プロレスでも藤波辰爾、アントニオ猪木と対戦。米WCWでは武藤敬司の化身グレート・ムタと抗争を繰り広げた。米国では16度の世界王座(NWA、WCW、WWEを戴冠した実績を誇る。昭和、平成初期のプロレス界で歴史を築いてきたフレアーが、令和になった現在も大観衆の前で「まだやれる」というファイトをみせた姿は男らしくみえた。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

新日本G1、半数占める海外勢「ぜひ生で見てほしい」社長が明かすユニークな魅力と素顔

大張高己氏(2019年10月21日撮影)

新日本プロレスの真夏の祭典「G1クライマックス32」が、16日に北海道・北海きたえーるで開幕した。団体創設50周年を迎えた今年のG1は、史上最多となる28人が出場。半数の14人が外国人レスラーで、そのうち5人が初参戦となった。新日本の大張高己社長(47)に、外国人G1戦士の素顔を聞いた。

◇   ◇   ◇

海外勢が熱い。今春のニュージャパンカップ覇者ザック・セイバーJr(35)やIWGP世界ヘビー級王者ジェイ・ホワイト(29)、USヘビー級王者ウィル・オスプレイ(29)ら、おなじみの外国人選手に加え、米国の新日本で活躍してきたジョナ(33)、デビッド・フィンレー(29)らが海を渡った。

中でも、大張社長が「ぜひ生で見てほしい」とイチオシなのが、オカダ・カズチカらと同じAブロックにエントリーしたトム・ローラー(39)だ。米総合格闘技UFCでも活躍した経験を生かし、初代NJPW STRONG無差別級王者を獲得した経験を持つ。満を持しての初参戦となった。

「MMAから上がってきた選手で、独特のプロレススタイルを持っている。力も十分だし、雰囲気もおもしろい」と大張社長。「なんせ、見た感じが野人。あの骨格の太さは見たことがない。普通のマッチョマンとは違う」。だからこそ、間近で見てほしいと呼びかける。初戦は26日、東京・後楽園ホールで、米AEWで活躍するランス・アーチャー(45)と激突する。

そのアーチャーは、3年ぶりにやってきた身長203センチ、体重120キロの怪物。「そうとう大きい。僕は怖くて話ができていないんです。威圧感がすごくて近づけない」。社長ですらも、本人を目の前にすると萎縮してしまうという迫力の持ち主だ。

2年連続5回目の出場、Bブロックに入ったタマ・トンガ(39)は、決意の夏を迎えている。今年3月に長年在籍してきたヒール集団「バレットクラブ(BC)」から離脱し、本隊と合流した。大張社長は、会場の中ですれ違った際に「今まで散々、悪い事をしてごめんね」と謝られたという。「人間が変わったということを言いたかったんでしょうけど、軽いなと。そんな程度で許されるのかと…」と苦笑。「でも、みんな許してくれているんでしょうね。邪道さんもそうだし、本隊と仲良くやっているんでしょう」と、生まれ変わった姿に期待する。

正義の道に進む者がいれば、悪に身を染めた者もいる。2年ぶり5回目の出場となったジュース・ロビンソン(33)は、今年5月に本隊からBCに寝返った。「普段は本当に陽気な人だった」と大張社長。「BCに入る前はアメリカの大会に行くと、ホテルのロビーで酒盛りを始めて、ピザやワインを買ってきて、抜け出せなくなるくらい一緒にお酒を飲んでいましたね」と懐かしんだ。

「何があったんだろうか…」と、大張社長の頭を悩ませているロビンソン。王座剥奪になったにもかかわらずUSヘビーのベルトを持ち歩き、Dブロック公式戦では元IWGP世界ヘビー級王者鷹木を下すなど、猛威を振るっている。

個性豊かなメンバーが勢ぞろいしたG1クライマックス。8月の東京・日本武道館大会では、史上初めてとなるユニット別応援シートも設置される。まだまだ夏は、始まったばかり。リング上の熱い戦いはもちろん、各選手の裏側にあるストーリーにも注目だ。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

44歳の国内現役最年長ボクサー野中悠樹が3度目防衛戦へ「燃え尽きるまで」現役にこだわる思い

国内現役最年長記録を更新する44歳、WBOアジアパシフィック・ミドル級王者野中悠樹(渥美)の3度目防衛戦が、24日に大阪・堺市産業振興センターで行われる。相手は18歳下の26歳、日本ウエルター級7位の能嶋宏弥(薬師寺)。ベルトを失えば現役も失う野中は「相手は死に物狂いでくると思うが、自分も同じ」。その思いに迫った。

19年2月、国内最年長記録の41歳で東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王座を獲得した野中悠樹

試合2週間前にジムを訪れると、野中は大学生3人を相手に10ラウンドのスパーリングをこなしていた。汗だくになり、息も切れる。「さすがに体力的には厳しくなりましたよね。疲れもとれにくくなった」。それでも現役にこだわる理由を「とにかく世界に挑戦だけはしたい。トップレベルの世界を肌で感じたいんです」と熱をこめた。

かつてはサッカー少年だった。兵庫・尼崎市の小田南中で、2学年上に38歳で亡くなった元日本代表MF奥大介さんがいた。一応、FWでプレーしたが、有望だった兄には及ばず、サッカーは断念。手に職をつけようと浪速工高(現・星翔高)に進学、ギターを手にする高校生活だった。

転機は19歳。バイク事故を起こした。「別にやんちゃとかないですよ」と言うが、時速160キロで吹っ飛び、左鎖骨を骨折した。幸い命に別条はなかったが約2週間、自宅で安静療養となった。その間に考えた。「健康のありがたみを痛感した。ダラダラ過ごしていてはダメだと」。健康のためにたどり着いたのがボクシング。「一からやってみよう」と地元の尼崎ジムに入門。プロデビューは21歳と遅咲きだった。

ここまで4ジムを渡り歩き、その間にピンチは何度もあった。14年には左アキレス腱(けん)断裂に、左拳を骨折。それでも気持ちは折れなかった。「やめなあかんでやめたくない。世界戦をしたいという思いだけでした」と振り返る。

ただ、世界のミドル級の壁は分厚い。巨額なファイトマネーも動く。現在、WBO世界同級15位。ランキングを上げるため、今回の試合後は海外の強豪ランカーとの試合を模索する。そのための資金をクラウドファンディングで目標額300万円で募った。

ただ、負ければすべてのプランが崩れ落ちる。「もう少しで世界に手が届く。燃え尽きるまでやりたい」という生きざまを24日の一戦にぶつける。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

日本スーパーウエルター級タイトルマッチ10回戦 判定勝利した野中悠樹(2016年7月20日)

井岡一翔、オンリーワンのプライド 「賛否もあるし好き嫌いもある」井上尚弥とのスタイルの違い

5度目の防衛に成功し、一夜明け会見に臨んだWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔

ボクシングWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔(33=志成)は「オンリーワン」としてのプロ意識を口にする。1階級上で3団体を統一しているWBAスーパー、WBC、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)とのボクシングスタイルの違いについて問われても、そこにブレはなかった。

約18年間負けなし、自らも18年大みそかに敗れている元世界4階級制覇王者ドニー・ニエテス(40=フィリピン)との5度目防衛戦が13日に行われ、3-0の判定勝利でリベンジに成功。試合直後の記者会見で、井上とのスタイルの違いについて問われた。井岡は、こう言った。

「それはスタイルがありますから。僕には僕にしかできないスタイルがある。良くも悪くも自分しかできないボクシングがある。それには賛否もあるし、好き嫌いもある」。

先月7日に1階級上の井上尚弥(29=大橋)が現役王者で世界5階級制覇王者のノニト・ドネア(39=フィリピン)との3団体王座統一戦に臨み、2回TKO勝利を飾っていた。階級の違いはあれど、同じリマッチでもあり、状況は似ていた。同じ日本人世界王者でもあり、比較されるは当然だろう。それをすべて胸に受け止めた上での発言だったと思われる。

1度、井岡は現役引退している。世界王者であり続けること、プロボクサーの苦悩から解放された時期を経て、ボクシングへの捉え方や価値観が間違いなく変わったように見える。前述の発言にもあるように「ナンバーワン」から「オンリーワン」への変化と言える。同階級の最終ターゲットは2団体(WBAスーパー、WBCフランチャイズ)統一王者フアン・フランシスコ・エストラーダ(32=メキシコ)と設定したものの、14日の一夜明け会見では「(王座統一の)タイトルというよりも、世界的に評価が高いエストラーダとやりたい」との言い方だった。

引退期間中だった18年2月、同階級の強豪が集うSuperfly2(米イングルウッド)を視察した際、WBC世界同級タイトル戦に臨むエストラーダの姿を目に焼きつけたことも現役復帰へのきっかけだった。その時に胸に芽生えた「世界的に評価のある選手と試合したい。米国リングで戦いたい」という原点の気持ちにはブレがない。

時に笑顔を交えながら井岡は報道陣に向け「みなさんも一緒に取材しても、違う記事を書くから紙面として違って(読者が)買われるわけじゃないですか。好みがあるじゃないですか。多分、プライドとしてこっちの記事がいいでしょと。それと一緒です。僕にしかできないことをみせて、僕が見せたい景色、一緒に景色をみたいと言っている人に対して、期待に応えたい」と率直な気持ちを口にした。自ら信念を貫くこと。ブレないこと。覚悟を決めて厳しい世界を生き残る術を伝えられたようだった。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

9回、井岡(右)はニエテスを攻める(撮影・足立雅史)
試合後、井岡(手前)を祝福するラウンドガールの、左から波田妃奈、ぽぽちゃん、倭早希(22年7月13日撮影)

無期限休養宣言の武尊、リングを降りると“優しいお兄さん” 魅力と才能あふれる唯一無二の存在

6月27日、会見で心境を話す武尊

6月末、キックボクシングK-1の3階級制覇王者武尊(30)が、保持していたスーパーフェザー級王座を返上し、無期限休養を宣言した。同月19日に行われた「THE MATCH 2022」。RISE世界フェザー級王者那須川天心(23)との58キロ契約体重3分3回(延長1回)で、0-5の判定負けを喫した。1回に左カウンターでダウンを喫するなどし、失意の中で“世紀の一戦”を終えていた。

約10年間、最前線を突き進み続けた代償は、肉体や精神に表れていた。特に精神面ではパニック障害、うつ病と診断されるなど大きな支障をきたしていた。それでも「今日から海外で少しの間療養してきます。久しぶりに何も考えずにゆっくり時間を過ごしてまた元気な姿で帰ってきます!」と、将来のリング復帰を見据え、心身の回復に努める意向を示した。

リング上では「ナチュラル・ボーン・クラッシャー(生まれながらの壊し屋)」と呼ばれても、ひとたび降りると“優しいお兄さん”だ。18年に3階級制覇を達成し、唯一無二のキックボクサーになってからも、若手の時から態度は全く変わらなかった。所属するK-1ジム相模大野KREST渡辺雅和代表からは「困っている人がいたら助けてあげるタイプ」と評される。誰に対しても分け隔てない振る舞いは、記者間でも話題になるほどだった。

特に、子供に対してはひとかたならぬ関心を寄せる。保育士になろうと、高校は保育が学べる学校を選んだほど。格闘技も「子供たちに見てほしい」という思いは強く、「THE MATCH」の地上波での放送がなくなると、同じく子供好きの那須川とともに、都内の子供たち200人を自腹で招待した。

芸能界にも広い交友関係を持ち、信頼関係も厚い。ONE OK ROCKのボーカルTakaは「兄」と慕う存在で、SNSに度々登場。自身も中学時代にバンドを組んでいた経験があり、今でもギターやピアノなどの楽器演奏をたしなむ。歌唱力にも定評があり、過去にはテレビ番組「THEカラオケ★バトル」の「芸能界隠れ歌うま王決定戦」にも出演。アグレッシブな試合からは想像もつかない優しい歌声は、武尊のユーチューブチャンネルでも聞くことができる。

格闘家としての強さだけではなく、人間としてもさまざまな魅力と才能にあふれる武尊。地元鳥取の、穏やかな海岸線が続く弓ケ浜の白砂や、明峰・大山(だいせん)の緑のように、こらからもファンに夢を与える唯一無二の存在であり続ける。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

THE MATCH 2022 判定勝ちした那須川天(右)は雄たけびを上げる。左は武尊(2022年6月19日撮影)
THE MATCH 2022 判定勝ちの那須川(右)は武尊に深々と頭を下げる(2022年6月19日撮影)

亀田興毅氏のボクシング興行改革は「選手ファースト」 前座からド派手演出、すべての選手に光を

7日、ドネア(手前)を破り3団体統一王者となった井上尚弥

ボクシングの興行形態が大きな変革期を迎えているように感じる。

今までの“常識”はいかに大きな箱(=会場)を準備して、どれだけ観客を入れられるか。また、世界戦では地上波によるテレビ中継が当たり前だった。

最近は動画配信が主流になってきた。“モンスター”井上尚弥のドネア戦はAmazonプライムで独占中継。ネットの環境が整っていれば、世界中で視聴することができる。

そんな世の流れに敏感に反応している1人が、元世界3階級制覇王者の亀田興毅氏(35)だ。昨春に大阪市内でジムを立ち上げた時から「選手ファースト」の改革を打ち出していた。

大きな柱は2つ。選手が他に仕事をしなければ生活できない現状を打破するべく、ファイトマネーの明確化と充実。そして、いわゆる興行の前座とされる4回戦の試合まで、すべての選手に光を当てることだ。

興毅氏はアベマTVとタッグを組む形ですでに実行。入場から派手な演出を施し、オープニングの試合から中継した。次回興行は8月14日にエディオンアリーナ大阪の第1競技場というでかい箱で行う。メインに但馬ミツロが最速2戦目でタイトルを狙う日本ヘビー級王座戦、セミは東洋太平洋スーパーフェザー級王者・力石政法の初防衛戦とタイトルマッチは組まれたが、世界戦が行われる舞台で異例の興行となる。

このほどプロモーターライセンスを取得し、会長業からプロモート業に専念する意向で、肩書も「創始者」を意味するファウンダーに変更する。興毅氏は「今の状況のままなら選手がかわいそうやん。だれかが変えていかんと。自分がその口火を切っていきたい」と意気込む。

井上はドネア戦で日本選手最高額のファイトマネー、推定2億円超とされる。しかし海外の選手と比較すれば、決して「高い」とは言えない。

時に命を張り、他競技に比べて選手生命も長いとはいえないのがボクシング。将来を見据え、「やりたい」と思わせる魅力をどれだけ乗せられるか。「先駆者」になろうとしている興毅氏の手腕に注目したい。【実藤健一】

8・14興行の会見を行なった亀田興毅会長(中央右)ら(2022年6月25日撮影)

リハビリ中のぱんちゃん璃奈、来春復帰目指す「1カ月後からシャドーができるようなので楽しみ」

右拳を突き出し、元気な姿をみせる人気キックボクサーのKNOCK OUT女子2階級制覇王者ぱんちゃん璃奈

人気キックボクサーでKNOCK OUT-BLACK女子2階級制覇王者のぱんちゃん璃奈(28=STRUGGLE)は1年後のリング復帰に向けてリハビリを続けている。

4月、練習中に断裂した左ひざ前十字靱帯(じんたい)の手術を受けたぱんちゃんは今月12日、東京・書泉グランデでファースト写真集「虹色ぱんちゃん」の発売記念イベントに参加。ファンとのサイン本お渡し会、特典会前に報道陣に対応し、リハビリ状況なども報告した。

1年後の復帰に向け、はやる気持ちを抑えることはできないのだろう。トレーニングの負荷をあげた影響で左ひざに水がたまり、2週間程度の安静を担当医から指示されたことも明かした。イベントも歩き方も左足をかばっていた。他ファイターがリングで躍動しているところがうらやましいのだという。

ぱんちゃんは「すごくストレスがたまります。格闘技の試合を見るたびに『いいな…』と。1カ月後からシャドー(ボクシング)ができるようなのでそれを楽しみにしています」と自身の気持ちをコントロールしようと心掛けている様子がうかがえた。

アスリートは常にけがと隣り合わせでプレーしている。サッカーなどの取材を通じ、何人もひざ前十字靱帯を断裂する選手を目の当たりにしてきた。アスリートたちが周囲から言われる言葉は共通している。「休むことも練習だ」と。難しいことかもしれないが、立ち止まることもトレーニングという心身のコントロールが大事になる。長く競技生活を続けるためにも重要なのだと思う。

ぱんちゃんは「(リング復帰まで)1年は待てなくて、10カ月とか11カ月弱では復帰したいなと。来年2、3、4月ぐらいにやりたいなと思って、焦ってしまったので…。4月13日に手術したので、1年はかからずに復帰したいです」と意欲を示していた。

再びリングで躍動するため、今は忍耐の時。何も花が咲かぬ日は下へ下へと根を伸ばす-ではないが、来春、パーフェクトな状態でぱんちゃんがカムバックすることも、ファンに向けた恩返しの1つになるのではないか。焦らないで欲しいと切に願うばかりだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

自身の初写真集を披露する人気キックボクサーのKNOCK OUT女子2階級制覇王者ぱんちゃん璃奈

朝倉未来のメイウェザー攻略の糸口は?過去のエキシビションマッチ3戦を振り返り解説

9月に日本での対戦が決定したメイウェザーと朝倉 (C)RIZIN FF

プロボクシング元世界5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(45=米国)が9月に日本で、RIZINフェザー級を主戦場とする朝倉未来(29=トライフォース赤坂)とエキシビションマッチで対戦することが14日、発表された。

詳細日程、会場、ルールは今月中に発表される予定。17年の正式引退後、4試合目となるエキシビションマッチとなる。過去3戦を振り返りながら、メイウェザー攻略の糸口を探る。

   ◇   ◇   ◇

ヘッドギアを装着しないボクシングのスパーリング形式というエキシビションマッチの新分野イベント。自ら考案したと主張するメイウェザーは相手によってパターンを変えつつも、現役時代の「打たせずに打つ」スタイルを貫き、イベントを成功させてきた。過去3戦を振り返りながらエキシビションマッチ仕様メイウェザーの攻略ポイントをチェックしてみる。

<1>那須川天心戦(18年12月31日=さいたまスーパーアリーナ)身長173センチのメイウェザーが同165センチの那須川にヒヤリとさせられた。スピード感あふれる左ストレートが顔面をかすめるとリラックスした表情と動きが一変。引退直前はウエルター級(66・6キロ)だったメイウェザーに対し、那須川はRISEフェザー級(57・15キロ)。ボクシングの階級で言えば4階級下となるため、体格差を生かした圧力をかけて距離を詰め、左フックなどでダウンを奪ってみせた。

<2>ローガン・ポール戦(21年6月6日=米マイアミ・ハードロック・スタジアム)人気ユーチューバーでプロボクサーのポールは身長188センチでクルーザー級(90・72キロ)が主戦場。メイウェザーにとって5階級上の相手だったが、体格差の不安は杞憂(きゆう)に終わった。ポールがボクサーらしい右ストレートを打てないと分かると、自らの距離を保って強烈な左右両フックも堅いガードやタイミングで回避。判定なしのルールのために最終8回まで戦い切ろうとクリンチしてきたポールに合わせて戦った。会場からはブーイングが出たものの、終始笑顔だった。

<3>ドン・ムーア戦(22年5月21日=UAEアブダビ・エティハド・アリーナ)42歳のムーアは16年に引退した19戦無敗の元ボクサー。メイウェザーの叔父ロジャー氏のもとで現役を続け、メイウェザーの練習パートナーでもあった間柄。体格はほぼ同じで、メイウェザーは身長178センチのムーアとの距離感をすぐつかみ、ロープに追い込んで連打する展開を続けた。6回終了後にはラウンドガールの持つラウンドボードを持ってリングを歩くパフォーマンスとダンスも披露。最終8回、左ボディーでダウンも奪った。判定なしも、内容は完勝だった。

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今回、エキシビション4戦目の対戦相手となる朝倉はRIZINフェザー級(66キロ)が主戦場。身長177センチでムーア戦と同様、ほぼ同じ体格、ウエートでの対戦になりそうだ。過去3戦でただ1度、ヒヤリとさせられたのは那須川戦のスピード感ある左拳。メイウェザーにとって那須川戦以来となるサウスポーとの対戦でもある。

朝倉が左ストレートのスピードを上げ、狙いどころを磨いていけば、活路があるのではないかとみる。45歳となったメイウェザーの動体視力の低下もあるだろう。ボクシングのスキル、経験で百戦錬磨のメイウェザーにかなわないが、現在未定の決着ルールに関係なく、いかにパンチを当てることができるかで観客や視聴者は勝敗を判断するだろう。

朝倉が左拳のスピード、的中率を上げることが大きなカギになると見ている。そういった想像を膨らませながら9月を待つのも面白い。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

朝倉未来、堀口恭司の予想は天心 6・19「THE MATCH」那須川天心-武尊戦勝敗予想

2022年4月7日、「THE MATCH 2022」記者会見でポーズを決める那須川天心(左)と武尊(右)。中央は榊原信行実行委員

立ち技格闘技界の世紀の一戦、あなたはどちらが勝つと予想しますか?

RISE世界フェザー級王者・那須川天心(23)-K-1の3階級制覇王者で現スーパーフェザー級王者・武尊(30)戦をメインに組んだ「THE MATCH 2022」が19日、東京ドームで開催される。41戦無敗の那須川と、41戦40勝の武尊。最強の中の最強を決める戦いは、スポンサーや所属団体の問題などを乗り越え、8年越しで実現した。

格闘技ファンならば1度はその実現を妄想し、勝敗を議論して楽しんだことがあるという人もいるのではないだろうか。試合だけでなく、大会前の勝敗予想や展開予想も格闘技の醍醐味(だいごみ)の1つ。ここでは、プロ格闘家が今回の一戦をどのように予想しているのか、振り返っていきたい。

◆RIZINファイター朝倉未来 勝利予想:那須川(自身のユーチューブチャンネルより)

「那須川天心の判定勝ちです。スピードは那須川選手の方が絶対に早い。パワーは武尊選手があるし、KO率も高い、根性もあります。そう考えるといい試合になるかと思うが、武尊選手はスロースターターなんですね。天心が1回はもらわずに当てていく。武尊選手はパンチが空振りになっちゃうと思う。2回くらいまでは天心有利の展開が続くんじゃないか。ギアを上げて、だんだん詰められて、さばききれなくなる。3回は武尊選手。延長も同様。ぎりぎり天心の判定勝ちなんじゃないか」

◆RIZINバンタム級王者堀口恭司 勝利予想:那須川(ABEMA格闘技CH公式ユーチューブチャンネルより)

「KOでも天心君だと思うし、判定でも天心君がとりに行くんじゃないかなと思う。細かい技術であったり、体重の戻しの制限など、武尊君に不利まではいかないけれど厳しい条件なんじゃないか。テクニックとスピードの天心君と、パワーとスタミナの武尊君って感じです」

◆日本人初のK-1 WORLD MAX世界王者魔裟斗 勝利予想:那須川より(ABEMA格闘技CH公式ユーチューブチャンネルより)

「天心は子供の頃から格闘技の英才教育を受けてきたエリート。武尊は努力と根性でここまで上がってきた根性の塊。勝負は1回。天心のスピードがすごくあると思うので、そこに武尊がついていけるか。しかもサウスポーで、どちらかと言ったら武尊はサウスポーがそんなに得意じゃない。1回に天心の攻撃、左ストレートなどが見えないとちょっと怖い。1回をクリアできれば、武尊のぺースになるが、ボコボコに打たれたらそのまま1回決着の可能性も」

◆RIZINバンタム級日本GP2021優勝者扇久保博正 勝利予想:武尊(自身のユーチューブチャンネルより)

「武尊選手の判定勝ち。体格差や階級さもあるので、押し切りそうなイメージがある。最初は蹴りで削っていくので軸がぶれない。サウスポーに対して、どれだけ右のインロー、右の前蹴りを蹴っていけるかじゃないか。ただ、天心選手を捕まえるのはなかなか難しい」

番外編

◆ABEMA視聴者投票

9日放送の特番内で視聴者によるリアルタイム投票を実施。武尊が70%、那須川が30%を獲得した。

◆ベットチャンネル

13日現在、那須川のオッズが1・89倍、武尊が1・87倍となっている。

【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

元3階級王者田中恒成、完全復活へ米武者修行で刺激 目標はSフライ級で4団体制覇

2日、WBOAP王者の西田(右)とスパーリングを行う元世界3階級制覇王者の田中恒成

元世界3階級制覇王者でWBO世界スーパーフライ級3位の田中恒成(26=畑中)が今月1日、2日と大阪市の六島ジムへ“出稽古”を行った。WBOアジアパシフィック・バンタム級王者の西田凌佑(25)と両日とも4ラウンドのスパーリング。「課題は入り方、距離感の意識。米国で教えてもらったことに取り組んでいる」と語った。

田中は20年12月に4階級制覇をかけた同級王者の井岡一翔(志成)との一戦で初黒星を喫した。昨年12月に再起を果たし、6月29日に後楽園ホールでWBOアジアパシフィック・スーパーフライ級王者の橋詰将義(28=角海老宝石)と同タイトルをかけた対戦が決まっている。

日本選手最年少で3階級制覇を成し遂げた。すでに十分な実績を残しているが、その向上心は尽きることがない。3月上旬から約1カ月、ボクシングの本場米ラスベガスに武者修行。井岡も師事するイスマエル・サラス・トレーナーの指導を受ける目的もあった。

「(学んだことは)バランスです。自分のよさを取り戻そうとしている。スパーリングでも変化あり、よかったと思う。いろんな国の人が集まり、本当に多国籍。刺激は受けました」

井岡戦に敗れた後は守りの強化に取り組んできたが、石田匠(井岡)との再起戦も2-1判定勝ちと精彩を欠いた。「自分に最も合っている階級だし(選手も)粒ぞろいなんで」というスーパーフライ級で輝きを取り戻そうとしている。

「4つのベルト(WBA、WBC、WBO、IBF)すべてとりたい」

橋詰との次戦もあくまで通過点と位置づける。「自分はその先を見ている。早く世界王者になりたい」と力をこめた。まだ26歳。その伸びしろは、どこまでの可能性を秘めているのか。今後の進化を楽しみにしたい。【実藤健一】

20年12月31日、WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチで井岡一翔(手前)に敗れた田中恒成
2日大阪市の六島ジムへ出稽古を行なった元世界3階級制覇王者の田中恒成(右)とWBOAP王者西田

井上尚弥「トレーニングの熱量が違います」弟拓真、いとこ浩樹ら再集結の連帯感を胸にドネア戦へ

4月下旬に長野県内でフィジカル合宿に取り組んだ井上尚弥(中央)。左端はいとこの浩樹、右端は弟拓真(大橋ジム提供)

6月7日、さいたまスーパーアリーナでプロボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)がWBC世界同級王者ノニト・ドネア(39=フィリピン)との3団体王座統一戦を控えている。同興行には、元WBC世界同級暫定王者の弟拓真(26)も日本、WBOアジア・パシフィック・スーパーバンタム級の2冠を懸けた統一戦に臨み、2年7カ月ぶりに兄弟同時出場を果たす。今年2月に現役復帰を表明した元日本、WBOアジア・パシフィック・スーパーライト級王者のいとこ浩樹(30=ともに大橋)も一緒にトレーニングし、年内リング復帰を目指している。

ドネアとの再戦に向け、横浜市内の所属ジムで最終調整を続ける井上は、緊張感を保ちつつも「井上家」の連帯感に胸を躍らせている。拓真との同時出場について「試合までに一緒の気持ちでトレーニングしていけるのは、すごくプラス面になっています。何か一緒に話すことはないですが、やはり普段のトレーニングの熱量が違います。切磋琢磨(せっさたくま)というか、拓真の試合に向け、自分の試合に向けて活性化するという感じがします。もちろん刺激もあるし、相乗効果はあります」と笑顔を浮かべた。

もちろん弟も気持ちは同じだ。「調整は一緒にできるので、高め合いながらできる。きつい時こそ一緒に頑張っていけるかなと思います」と拓真。父真吾トレーナー(50)も「同じ空気、同じメニュー、同じ練習、同じ気持ち、そして同じように仕上がる。減量に入る時も同じなので絶対にいいはずです」とコメント。兄弟同時出陣のシチュエーションは、大きくプラスに働いているようだ。

さらに20年7月に日本王座陥落後、現役引退を表明していた浩樹は今年2月から一緒に練習を再開。昨年11月から井上が始めた元世界3階級制覇王者八重樫東トレーナーによるフィジカル練習にも合流している。井上は「やはり幼少期から一緒にやってきたので、違った良いものがありますね。頼れる存在が身近にいて一緒にやれることが自分には大きなプラス面になっています。3人で練習して試合するのは久しぶりなので」と心身ともに充実している様子だ。

3人そろってトレーニングする状況下で迎える井上の世界戦も19年11月以来。階級最強を決めるトーナメント、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズのバンタム級決勝となるノニト・ドネア戦以来約2年7カ月ぶりとなる。前回は12ラウンドの激闘の末、判定勝利を挙げているが、今回は日本人初の3団体統一も懸かった重要な1戦となる。 絶好のタイミングに井上家が再集結し、ドネア戦に臨む形となったのは運命的とも言える。3人の連帯感が大一番を控えた井上にとって大きな後押しになっている。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

4月下旬にフィジカル合宿した井上家。左端から八重樫東トレーナー、井上浩樹、井上拓真、井上尚弥、井上真吾トレーナー(大橋ジム提供)

棚橋弘至「歴史残せた」USヘビー初防衛戦敗れても気分は別格 再奪取へ「止まっていられない」

5月15日、新日本米ワシントンDC大会で、ハイフライアタックを仕掛ける棚橋(新日本プロレス提供)

成長させてくれて、ありがとう-。14日(日本時間15日)開催の新日本プロレス米ワシントンDC大会で、IWGP・USヘビー級王座の初防衛に失敗したエース、棚橋弘至(45)は、敗れたにもかかわらず、どこか晴れやかな表情を浮かべていた。

それもそのはずだ。初戴冠となった昨年8月以来、約9カ月ぶりとなった米国での「USヘビー」タイトル戦。地元の大歓声。昨年から「アメリカで巻いてこそ意味がある」と“ベルトがあるべき場所”での対戦を熱望してきた通り、気分は別格だった。「ここにベルトを巻いて戻ってこられた。俺としても歴史は残せたかな」。試合後はそう、しみじみと振り返った。

メインイベントの同級選手権試合でジュース・ロビンソン、ジョン・モクスリー、ウィル・オスプレイと4WAYマッチで対戦した。場外の長机にモクスリーをセットし、コーナーポストから場外へハイフライフローをさく裂するなど見せ場を作ったが、王者から直接勝利しなくても他3選手のいずれから白星を挙げれば新王者が決まる一戦だ。リング内で戦っていたロビンソンが、オスプレイにHHB(フィッシャーマンズドライバー)を決めて3カウントを奪取。その瞬間、3度巻いた愛着のあるベルトとともに帰国するという夢は、はかなく散った。

昨年8月、米ロサンゼルス大会でランス・アーチャーを破り、初の日本人同級王者となった。ジェイ・ホワイトに続き史上2人目となる新日本4大シングル王座全戴冠を達成。順風満帆かと思われたUSヘビー級王者だったが、その道のりは険しかった。

昨年11月にKENTAに敗れてベルトを失うと、今年1月の東京ドーム大会ではKENTA発案のノーDQ(反則裁定なし)タイトルマッチを経験。高さ5メートルの巨大ラダーからハイフライフローを決めて勝利するも、「あるのは虚無感だけ」と話した混沌(こんとん)の一戦に、わだかまりは残った。2月にはSANADAに敗れて防衛に失敗。3度目の戴冠は、王者のケガによる返上で巡ってきたチャンスだった。今月1日の福岡大会(ペイペイドーム)で、石井智宏との王座決定戦。20分超の熱戦を制し、再び米国への切符をつかんだ。

酸いも甘いも、ともにしてきたベルトだ。今回のワシントンDC大会では、自身が直接3カウントを奪われて負けたわけではない。もちろんそこには、悔しさも、もどかしさもあったはずだった。だが、棚橋は言い切った。「止まってられないから。次に進むから。USヘビーで得た経験は俺を成長させてくれたから」。そう、敗戦も前向きに捉えている。

4度目に会う時は、一回り大きくなった棚橋を約束する。「またいつか巡り合う日が来るのを俺は信じてる。最後に、USヘビー。本当にありがとう。また、いつか…」。そう、相棒に一時の別れを告げた。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

現役続行表明した矢吹正道、「終わり」から「復活」へ駆り立てた子どもたちの存在と伝えたい思い

21年9月22日、チャンピオンベルトを腰に声援に応える矢吹正道

前WBC世界ライトフライ級王者の矢吹正道(29=緑)が現役続行を表明した。8月11日に愛知・刈谷市でWBO世界同級5位のタノンサック・シムシー(21=タイ)と契約50・0キロの10回戦で対戦する。

昨年9月に安定王者の寺地拳四朗(30=BMB)から10回TKOでベルトを奪った矢吹だが、今年3月の初防衛戦、ダイレクトリマッチで3回KO負けを喫した。「もう辞めようと思って1週間ぐらいだらだら暮らしていました」。そんな「終わり」から「復活」へ駆り立てたのが子どもたちの存在だった。

長女の夢月(ゆづき)ちゃん(11)、長男の克羽(かつば、8)くんとも、お父さんの影響を受けてか、ボクシングを始めた。特に克羽くんは通学前、毎朝6時に矢吹を相手にミット打ちを行うのが日課。そのセンスは、この時点で一目瞭然だ。

矢吹はボクシングの底辺拡大を目指し、昨年から所属の名古屋市内の緑ジムでこどもの日、5月5日に「スパーリング大会」を開催する。「この中から世界王者が誕生してほしいですね」と夢を語る。

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もちろん、相手の脳を揺らす生死をかけた危険なスポーツだが、人生をかけた魅力的な競技でもある。厳しい体重制。各自の減量法によっては数日で10キロ近く落とす過酷なスポーツだからこそ、勝利にたどりつくドラマは深い。

矢吹も補導歴50回超の壮絶な少年時代から、ボクシングと出会って世界王者にまでなった。そんな逆転人生をいまだくすぶっている少年少女に伝えたい思いがある。

そんな子どもたちの存在にも刺激を受けて、矢吹は再び立ち上がる。「立て、立つんだジョー!」は不朽のボクシングマンガ「あしたのジョー」で、悪事に手を染め少年院に行った「悪童」の主人公・矢吹丈をボクシングで更正させた丹下段平の名セリフだ。

ボクシングとは、奥が深い。これまで長い取材担当で極めていた気になっていたが、子どもを通じた矢吹の思いにあらためて教えられた思いだ。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

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ボクシング王者フューリーが好む“異種格闘技マッチ”UFC王者&WWE元王者との対決に意欲

4月23日の試合後リングでUFCヘビー級王者ガヌー(右)と対戦希望を口にするWBC世界ヘビー級王者フューリー(トップランク社公式ユーチューブより)

プロボクシングWBC世界ヘビー級王者タイソン・フューリー(33=英国)は本当に“異種格闘技マッチ”が好きなのだろう。

4月23日(日本時間24日)、英ロンドンのウェンブリースタジアムに9万4000人の観客を集め、WBC世界同級暫定王者ディリアン・ホワイト(34=英国)との団体内王座統一戦に臨むと右アッパーで粉砕。6回2分59秒、TKO勝ちで王座統一&2度目の防衛に成功した。すると現役引退の意向を示した。

その直後、試合視察していたUFCヘビー級王者フランシス・ガヌー(35=カメルーン)と並び、対戦実現を誓い合った。フューリーは「この対戦が実現すれば爆発的な戦いになるだろう」と真剣な表情。ガヌーも「地球上で誰が一番強いのかを知りたいだろう」と応じると「おお良い男だ、フランシス!」と絶叫していた。

しかしホワイト戦後の会見で、今度は米プロレスWWEへの再参戦にも意欲をみせた。絶妙のタイミングで、9月3日にWWEの英スタジアム興行「WWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスル」が予定される。ウェールズ・カーディフのプリンシパリティ・スタジアム(収容7万4009人)が会場。92年にロンドンのウェンブリースタジアムでビッグイベントのサマースラムを開催して以来の英スタジアム大会だ。この興行を見据え、まずフューリーは7月30日、米ナッシュビルで開催されるサマースラム大会への出場を希望した。

19年にWWEに初参戦した際には、サウジアラビアで「巨獣」ブラウン・ストローマンとプロレスルールで対戦。TKO(リングアウト)勝利を飾っている。フューリーは「(9月に)カーディフにいたい。特にレスリングのために、英国の中心舞台にいたい。前回のサウジアラビアは楽しませてもらった。素晴らしい経験をここ(英国)でするのは驚異的だ。(WWEと)連絡を取り、サマースラム(の出場)を実現できるかを確認する」とノリノリなのだ。

これまでフューリーは英国人初のWWEヘビー級王者となったドリュー・マッキンタイア(36=英国)との対戦を熱望していた。母国で人気の高い元王者マッキンタイアとのヘビー級対決が実現すれば、大きな話題になるだろう。WWEでマッキンタイアと対決した後には、現UFCヘビー級王者ガヌーとのメガマッチを迎えることになるのだろうか。

ボクシングでは3団体(WBAスーパー、WBO、IBF)統一ヘビー級王者オレクサンドル・ウシク(35=ウクライナ)が前3団体統一同級王者アンソニー・ジョシュア(32=英国)との再戦を予定しており、4団体王座統一戦の実現は先の話になる。

試合後リングでアカペラで歌い、愛称「ジプシーキング」通り、キングの王冠を装着して入場するフューリーはボクシング界のエンターテイナーそのもの。ただ4本のベルトを統一するチャンスをじっと待つことよりも、他格闘技の王者クラスとの対決が魅力的に見えるのだろう。その心意気が、大金を稼ぐ世界的スターにのし上がった理由なのだとつくづく思う。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

相手も逆境も関係ない「格闘技が好き」な堀口恭司 ベラトールで敗退も早期カムバックに意欲

ベラトール・バンタム級GP1回戦敗退から一夜明けて、オンラインで日本メディアの取材に応じる堀口恭司(2022年4月25日撮影)

「どんな形でも勝つことを目標に掲げます」。米総合格闘技ベラトールのバンタム級グランプリ(GP)初戦で敗れたRIZINバンタム級王者の堀口恭司(31=アメリカン・トップチーム)が大会後に語ったのは、そんな力強いひとことだった。

23日(日本時間24日)、米ハワイで臨んだ同GP1回戦でベラトール同級2位パトリック・ミックス(28=米国)と対戦した。10センチ以上身長差のある相手。長い手足を使って引き寄せられ、得意とするグラウンドの攻防に誘(いざな)われた。5回フルラウンドを戦い抜き、最後まで極めさせなかったが、判定で1ポイント差の敗退。現地で見届けたRIZIN榊原信行CEO(58)が「ここまで(堀口の)良さが消された試合は記憶にない」とするなど、そのポイント差以上に厳しい展開を強いられた戦いだった。

昨年12月、王者ペティスに4回KO負けを喫して以来の再起戦も、プロ入り初の連敗。19年11月以来の同級ベルト奪回のチャンスも、遠ざかった。

それでも、一夜明けた24日(日本時間25日)、日本メディアの取材に応じた堀口が口にしたのは、後悔よりも将来に向けた言葉だった。「メシをばかばか食って筋肉をつけまくる。マッチョになる」と、バンタム級仕様の肉体強化を宣言。「夏ぐらいには(次の試合を)できるのではないかと思います」と、早期カムバックに強い意欲を示した。完敗ともいえる敗戦直後の会見。そこで、これほどまでにビジョンを明確にできる選手は、決して多くはないはずだ。

何が堀口を突き動かすのか。それは「格闘技が好き」というシンプルな思いだ。大会前に言っていた。ケガをしても練習がきつくても、ペティスに敗れても体格差が歴然のミックスが相手でも…「格闘技を忘れたいと思ったことは1度もありません」。どんな相手であろうと、どんな逆境であろうと、ワクワクする戦いに変えてしまうのが堀口なのだ。

18年9月、神童、那須川天心と対戦した時もそうだった。グラップリングを封印し、キックボクシングルールで対戦。当然、不利の状況だが、試合では笑顔を隠さなかった。「自分はなんでも言われるがままなので(笑い)。対戦相手を拒まないし『なんでもいいからやります』って言っちゃうんです」。それは、どうしてか。「これが嫌だ、あれが嫌だというのは、自分の考えでは『逃げ』。誰が来ても問題ないと思っているので」。そう、自信あふれる笑顔で教えてくれた。

ケガに対する考え方にも表れる。19年11月には、右膝前十字靱帯(じんたい)断裂と半月板損傷により、RIZINとベラトールのベルトを返上。ここ2年間は1年1試合のペースで実戦をこなしてきた。それでも「コンディションは全く問題ない。マイナスになるようなことは考えてもしょうがない。壊れるときは壊れるなって」と、あっけらかん。どこまでも前向きだ。

今回のGPでは、同級暫定王者のベルトも優勝賞金100万ドル(1億2500万円)も、手にすることはできなかった。だが、これまで幾度となく逆境を乗り越えてきた堀口だ。こんなところで足踏みしている暇はないと、そう言うだろう。「日本人史上最強ファイター」は、既に次を見据えている。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

2022年4月23日、ベラトールのバンタム級ワールドグランプリで、ミックス(奥)の蹴りを受ける堀口(ベラトール公式インスタグラムより)

女子ボクシング界の新星「赤林檎」は元GK 日本拳法、キックボクシング経て世界へ羽ばたく

WBOアジアパシフィック王座を獲得した赤林檎(2022年4月16日撮影)

女子ボクシング界に登場した楽しみな新星と言っていいだろう。

16日にエディオンアリーナ大阪第2競技場で、女子のタイトルマッチ3試合が行われた。メインはWBO女子アジアパシフィック・バンタム級王座決定戦で3戦3勝(2KO)無敗の新王者が誕生した。その名も赤林檎(あか・りんご、27=真正)。もちろん本名ではない。

「自分らしい、楽しめる試合ができた。これからもガンガンいくスタイルで派手にいけたら。世界を目指します」

この試合が24戦目とキャリア豊富な平安山裕子(35=平仲BS)と対戦。攻撃的なスタイルで序盤から圧倒。2回TKOで戴冠を果たした。

「赤林檎」につながる、そのキャリアがおもしろい。大阪・山田高ではサッカー部。対人でバチバチやれるフィールドプレーヤーを望んだが、GKに指名されて「おもしろくなくてやめました」。

追手門学院大で高校から取り組んでいた日本拳法へ本格転向。卒業後は本格的に格闘技にのめり込んだ。総合格闘技から立ち技のキックボクシングへ。リングネームは“地下格闘技”時代、まわりのおもしろいリングネームに負けじと友人が名付けてくれたという。

しかし、その由来は「分からないですね」。しいて言えば「赤いほお」という。本名は中井麻美(なかい・あさみ)だ。

ボクシング転向を決めて真正ジムに2年前、入門した。まだ総合格闘技の時代から、スパーリングでジムを訪れていた。「こんなわけの分からないやつも受け入れてくれた」と感動したことが決め手だった。

昨年4月にデビューを飾り、順調に進んできた。次戦は今夏にも計画される。真正ジムの山下正人会長も「ハートが強いわね」と期待し、チャンスがあれば早期の世界挑戦にも前向きだ。「今は蹴らなくていい。投げなくていい。充実しています」と笑顔を見せる生粋の格闘家が、まずは最初のベルトを手にした。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

元RIZIN王者プロハースカ、UFC3戦目で王座挑戦 初の両団体王座獲得なるか

自らの公式SNSでUFCライトヘビー級王者テイシェイラ(左)への挑戦を報告した元RIZIN同級王者プロハースカ

元RIZINライトヘビー級王者イリー・プロハースカ(29=チェコ)がアジアでUFC王座に挑戦する。6月12日、シンガポール・インドア・スタジアムで開催されるUFC275大会で同級王者グローバー・テイシェイラ(42=ブラジル)に挑む。RIZIN時代、ヘビー級トーナメント準優勝、ライトヘビー級王座獲得と重量級で活躍し、20年1月にUFCと契約。同団体ではランカーに2連勝し、同級ランキングで2位。日米の格闘技で好成績を収め、ついにUFC王座に王手をかけた。

現王者テイシェイラは21年10月、UFC267大会で当時の王者ヤン・ブラホヴィッチに2回一本勝ち。ランディ・クートゥアの保持する43歳に次ぐ、歴代2位となる42歳での年長王座獲得を成し遂げた。ベテランとは言え、初防衛戦となるだけにプロハースカがUFC3戦目で王座奪取する可能性は十分にある。王座挑戦決定後、プロハースカは「ステップ・バイ・ステップ、一直線」と自らの公式SNSを通じて意気込みを示した。

UFCは14年にシンガポールで大会初開催。17年、18年、19年と継続でイベントを実施し、今回が5回目となる。UFCナンバーシリーズは初めて。PPV(ペイ・パー・ビュー)のイベント開催は東南アジア初でもある。UFCのデイナ・ホワイト社長は「シンガポールで初めて開催するPPVイベントを楽しみにしています。東南アジアの素晴らしいファンのために、最高のカードを用意するつもりです」とコメント。既にプロハースカのライトヘビー級王座挑戦とともに、UFC女子フライ級王者ワレンチナ・シェフチェンコ(34=キルギス)が同級4位タイラ・サントス(28=ブラジル)との7度目の防衛戦も発表されている。

また元UFCミドル級王者ロバート・ウィテカー(オーストラリア)が、タイトル挑戦経験を持つマービン・ヴェットーリ(イタリア)と対戦するなど他3カードも発表済み。近日中に追加カードも随時、決まっていくという。

大会会場となるシンガポール・インドア・スタジアムは、日本人ファイターも多く参戦する格闘技団体ONEチャンピオンシップのホームスタジアムとなる。UFCがコロナ禍ながら3年ぶりにシンガポールで大きなイベントを再開させることがアジア格闘技界にどんな化学反応を起こすかも見ものだろう。

日本では17年大会を最後にUFCイベントが開催されていない。日本人ファイターの減っているのは残念でならないが、RIZINをステップにUFCに殴り込みをかけたプロハースカによるタイトル挑戦は期待感十分。RIZIN、UFCの両団体で王座を獲得する初めてのファイターになるか。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

RISE豪快勝利で那須川天心を送り出したYA-MAN「俺の試合は絶対に面白い」今度は自分の番

1回、伊藤から3回目のダウンを奪い勝利するYA-MAN(2022年4月2日撮影)

14年のプロデビューから8年間で無敗の連勝神話を築き上げ、立ち技格闘技のRISEをけん引してきた“神童”こと那須川天心(23=TARGET/Cygames)が、2日に行われた代々木大会(東京・代々木競技場第1体育館)で同団体を卒業した。

「Tenshin Nasukawa RISE Final Match」と銘打って行われた同大会は、オープニング試合を含めた16試合中11試合でKOが飛び出す、好ファイトが連発。メインで登場した那須川が「RISEには俺以外にもたくさんいい選手がいる」と話した通り、見ごたえのある大会となった。

中でも、圧倒的な存在感を発揮したのが第5試合に登場したYA-MAN(25=TARGET SHIBUYA)だった。昨年5月から3連勝を挙げ、総合格闘技RIZIN大みそか大会にも出場。人気ファイターの皇治を退けるなど、昨年1年間で一躍その名を上げた男は、この日も違いを見せつけた。

オープンフィンガーグローブマッチで、スーパーライト級5位の伊藤澄哉(すみや、25=戦ジム)と対戦。1回中盤にストレートを当てられ、眉間をカット。流血しながらも、それぞれ右フック、右フック、右アッパーで3度のダウンを奪い、壮絶な打撃戦を1回2分33秒KOで制した。

フォーカスすべきなのは、1度目のダウンを奪った直後。右ストレートを合わせられ、ダウンを奪い返された。普通なら、心が折れそうになる場面だが、YA-MANは違った。血だらけの顔面でにっこり。さらには、試合中にもかかわらず、相手をたたえるように左拳を高々と突き上げる。狂気さえ感じさせる勝負度胸だった。

パンチを受けても、親指を骨折しても「全く痛くなかった」。試合後に自身の動画を確認したYA-MANは「一言でいうと、俺やべえスね。もう1人の自分がいるんじゃないですか」と、今度は穏やかに笑った。

リングを下りると礼儀正しい青年だが、勝負勘は中高生の時のストリートファイトで培った。キックボクシングを始めたのは19歳の時。頭脳派でもある。東海大工学部建築学科出身で、「意外に理系なんですよ」。観客の興奮度を計算して(?)倒し倒される、しびれる戦いを演じ、「盛り上がってたスか? それはよかった~」と満足げに振り返った。

さらなるRISEドリームをつかみ取る。試合後、YA-MANは叫んだ。「やっとここまで来たよ、天心!」。3年前、同じTARGET所属の那須川から、「早く俺のところまで上がって来いよ」とエールを送られた。今度は自分の番。「俺の試合は絶対に面白い。俺を見にRISEに来てください」。豪快な勝利で友を送り出したYA-MANが、一気呵成(かせい)にスターの階段を駆け上る。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

1回、YA-MAN(左)は伊藤から2回目のダウンを奪う(2022年4月2日撮影)

全日本2連覇但馬ミツロの目標は「マイク・タイソン」 亀田興毅会長も「えげつない」と期待

但馬ミツロ(2021年12月16日撮影)

元世界3階級制覇王者で3150ファイトクラブの亀田興毅会長(35)は、日本ボクシング界の改革を掲げる中でヘビー級を重視している。

全日本ライトヘビー級2連覇など、アマチュアで実績を積んできた但馬ミツロ(27)は緑ジムから移籍。4月29日にメルパルクホール大阪で行われる興行で、韓国ヘビー級3位のキム・サンホとのデビュー戦を迎える。

3月26日に行われた試合の会見で、但馬は「やっとスタートが切れる。うれしい」と話し、目標に「マイク・タイソンです」とレジェンドをあげた。興毅会長は「えげつないですよ」とその素材を楽しみにし、「将来的に楽しみになる」と太鼓判を押した。

90年代。タイソンを筆頭にヘビー級は活性化し、巨大なマネーも生んだ。現時点で沈静化しているが、体重制限のあるボクシングの中で、それを課されない唯一の階級はおもしろいし、楽しい。

ただ、日本選手を含め、アジアのボクサーに適しているかといえば、否定的でしかない。かつて日本での重量級第一人者となった西島洋介山も、階級下のクルーザー級で東洋太平洋タイトルを獲得したが、世界レベルでは悪戦苦闘した。

ナチュラルにでかい海外選手に対し、日本選手などはやはり体を作り上げていかないといけない。その壁が高く立ちはだかっている。

ただ、興毅会長は本気だ。「可能性を秘めたボクサー。フルサポートで最強化計画を進める」と言った。当初は海外で武者修行を行う計画も、新型コロナウイルス感染症の影響などでプラン変更を余儀なくされた。その中でも「モンスター」を育成するモチベーションは衰えていない。

ヘビー級の世界戦線に日本選手が殴り込みをかけるとなれば、まさにドリーム。但馬がその扉を開くか。4・29はまさに、その1歩目となる。【実藤健一】

亀田興毅会長(2021年5月22日撮影)

ロンドン五輪金メダルから10年 世界王者村田諒太がプロで挑む最強の「頂」4・9ゴロフキン戦

ゴロフキンとの世界ミドル級王座統一戦が決まりポーズを決める村田(22年3月3日撮影)

12年ロンドン・オリンピック(五輪)から10年。同五輪ボクシング男子ミドル級で日本勢48年ぶりの金メダルを獲得したプロボクシングWBA世界同級スーパー王者村田諒太(36=帝拳)が、ついに世界的スターとなる同級最強の「頂」と拳を交える。

4月9日、さいたまスーパーアリーナで元3団体統一同級王者となる現IBF世界同級王者ゲンナジー・ゴロフキン(39=カザフスタン)との王座統一戦を控える。1度は昨年12月29日の開催が発表されながら新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の水際対策の影響で、約4カ月後に延期となったメガファイト。約3週間後には決戦のゴングが鳴る。

「金メダルにすがりたくない」と13年にプロに転向した村田は17年、再戦でWBA世界ミドル級王者アッサン・エンダム(フランス)を下して日本初の五輪金メダリスト世界王者となった。五輪金、プロ世界王座と2つの頂点を極めた村田は涙を流しながら悲願の世界王座戴冠を喜んだ直後、リングで言った。

「金メダルは取った後からが大変でした。(世界王座の)ベルトも取ってしまってからが大変だと思います。(世界)4団体あり、ミドル級には強い王者がいます。ボクより強いミドル級王者がいることは知っていると思います」。その貪欲な姿勢を受け、観客席から「ゴロフキンだ!」と名前が出ると「そう! そこを目指して頑張りたい」とミドル級最強の「頂」を目指すことを宣言していた。

ゴロフキンは2つの「世界記録」を保持する。元WBC世界スーパーバンタム級王者ウィルフレド・ゴメス(プエルトリコ)に並ぶ世界戦歴代最多タイの17連続KO防衛に成功したのは16年。さらに18年には世界ミドル級で元4団体統一同級王者バーナード・ホプキンス(米国)と並ぶ歴代首位タイの20連続防衛にも成功。現在の村田の年齢となる36歳の時だった。中量級の「怪物」と言っていい。

14年7月、村田は米カリフォルニア州ビッグベアでゴロフキンの強化合宿に2週間、帯同した。スパーリングも経験した。長い月日を経て、昨年11月に都内で開催されたゴロフキンもオンラインで出席した対戦発表会見で、村田は「(14年時は)ゴロフキン選手の強さを実感した。ただ自分が通用するとも感じた。世界の壁の高さを感じたと同時にやはり上りたいと思った。ようやくここまで来て、ゴロフキン選手と試合をするにふさわしい立場になった」と口にした。当時抱いた「通用する」という自信を確信に変えるための準備が整ったという意識が感じられた。

村田にとって19年12月の初防衛戦以来、2年4カ月ぶりの試合となるが、一方のゴロフキンも20年12月以来、1年4カ月ぶりのリングとなる。お互いにプロ転向後最長のブランクを経て拳を交える。プロ転向から9年でたどり着いた大舞台に向け、村田は「ベストを尽くします」と決意を示した。その飾らない言葉が、自らの勝利を確信している表れではないだろうか。

五輪金メダル、プロ世界王者に続く、ミドル級最強という「頂」に到着するため、村田は残り3週間も「史上最強」の自分自身を作り上げていることだろう。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

村田とゴロフキン比較表